特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

長谷川滋利氏

2007年05月20日 | 憲章見直し

元マリナーズの長谷川滋利氏が自身のブログで次のように述べています。

Shiggy From USA>高校野球特待生
正直私は高校野球の規則の中で、特待生が禁止されている事はまったく知りませんでした。

とぼける実益があるとも思えませんので、本当に知らなかったのでしょう。長谷川氏でさえ知らないようなら、今の高校生が知っているはずもありませんし、校長先生あたりが知らないのはむしろ当然です。

厳密には、特待生を禁じているのは「高校野球の規則」ではなく、学生野球憲章であり、その解釈の問題です。まあ、大学側は事実上不問に付しているわけですから、高野連様の(勝手な解釈による)規則であるとの認識は間違いではありませんけど…。


今まで私達をはじめ、皆が暗黙の了解として認めていた事を急に今年から禁止し、生徒を罰するという事(5月中の対外試合禁止など)は、どう考えてもおかしいと思います。

はい、おっしゃるとおりです。これを先月(4月)にうちに語っていたら、私は長谷川氏を将来のコミッショナー候補に考えるのですが…(NPBのコミッショナーはオーナー会議で選出されます。まあ、「たかが選手」と発言した元オーナーがおられたぐらいですから、すくなくとも今のところ可能性はきわめて低いのですが、10~20年後も同じだとは限りません)。


今からでも遅くないと思うので、まずは特待生制度を認め、ブローカーを排除する事に主眼をおいて取り組みなおしたほうが良いと思います。ついでに言わせて貰いますが、プロ野球選手(大リーグ選手も含めて)が高校生を指導できないという、どうしようもないルールもこの際撤廃してもらいたいと思います。野球界の発展を考えればこのルールは完全に足かせとなっています。

はい、そのとおりです。排除すべきは特待生でも野球留学でもないのです。田名部氏はともかく、脇村氏はそのことがわかっているはずです(そのわりには発言が一貫しません…)。

「どうしようもないルール」も学生野球憲章に行き着きます。04年の話ですが、こんな記事もあります。

落合監督、高野連に謝罪 長男が選手と一緒にビールかけ
(スポニチアメックス大阪>名古屋 2004年10月9日)
5年ぶりにリーグ優勝を決めた中日がナゴヤドームで行った祝勝会に落合監督の長男で国士舘野球部の福嗣さん(17)が参加していたことについて球団が日本高野連に謝罪していたことが8日、分かった。<略>事前に学校側から東京都高野連に対して試合観戦などの許可はとっていたものの、祝勝会参加については触れていなかった。

試合観戦だけなら許可は必要ないはずですが、野球部員でなければ、こんな面倒な手続きは要らないわけです。04年のドラゴンズが優勝を決めたのは10月1日です。謝罪がいつなのか記事だけではわかりません。

高野連側が発表していることから、球団側が違反?に気づいて慌てて謝罪したのではなく、高野連側が違反?を指摘して、球団側が応じただけなのではないかと思われます。きっと田名部氏は祝賀会の中継をご覧になっていたのでしょう。あるいは田名部氏と同じ“信者”の誰かが注進に及んだのかもしれません。親が認めた同席にダメ出しするのはいかにも高野連様らしいと言わざるを得ません。

ところで、分離ドラフト以前は、退部届を出したプロ志望の高校3年生は宙ぶらりんの状態に置かれていました。成長のチャンスが奪われていたのです。分離ドラフトによって少しだけ状況が改善されましたが、たとえ親子であっても(元)プロが高校生を指導できないことに変わりはありません。13条以外にも見直すべきところはたくさんあるのです。


少年野球側の反応

2007年05月19日 | 高体連など

日本の野球界は複雑怪奇です。高野連様と大学野球連盟のほかに学生野球協会なる団体があることに戸惑う人も多いことでしょうが、この程度はまだ序の口です。

硬式少年野球の団体を4つ以上言える野球ファンはいたって少数派です。今回の事件以前に学生野球憲章を読んだことのある人でも、まずそこまでは知りません。

横浜旭ベースボールクラブ>雄叫び第1号
ご存知の通り、中学生の硬式野球の組織は大変難しいことが多く、中学生の硬式野球の組織団体は、全国で6団体あり、その団体にそれぞれ殿様が君臨しており、他の団体と交流することを避けております。 

2大勢力であるシニアとボーイズは他流試合を禁じています。たしかにルールが多少違いますが、同じ年代で同じ硬式野球をやっているのに、練習試合さえできないのです。こんな競技がほかにあるでしょうか?

これらの硬式少年野球の(一部の)団体が社会人野球を統括する日本野球連盟の傘下にあることなど、一般的野球ファンには想像できないはずです。

特待制度の存続意見大勢=硬式少年野球7団体
(時事通信 2007/05/16-19:16)
 日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)など硬式少年野球の全7団体の懇談会が16日、東京都内の日本野球連盟で行われ、高校野球で問題となっているスポーツ特待制度について話し合い、同制度の存続へ日本高校野球連盟が前向きに検討することを望む意見が大勢を占めた。
 今後、日本野球連盟が中心となって調整を重ね、日本高野連に対し、意見を開示するという。次回の会合は7月下旬の見込み。
 日本野球連盟には、全日本リトル協会、日本少年連盟、全日本少年硬式連盟の3団体が加盟している。

「全日本リトル野球協会」は(リトル)シニア、「日本少年野球連盟」はボーイズであり、この両団体は財団法人認可を受けています。全日本少年硬式野球連盟とは先の横浜旭も属しており、通称はヤングリーグです。このほかに、ポニー(日本ポニーベースボール協会)、サン(全国少年硬式野球協会)、フレッシュ(九州硬式少年野球連盟)、ジャパン(日本硬式少年野球連盟)の各リーグがあります。

さて、次のような記事があります。

球界改革・現金供与:プロ野球 西武、170人内訳公表--調査委最終報告書
(毎日新聞 2007年4月26日 東京朝刊)
 西武の現金供与問題に関する調査委員会は25日、入団謝礼金を支払ったアマチュア野球関係者延べ170人の大まかな内訳を明らかにした。<略>謝礼金を受け取ったのは、高校の監督ら指導者が七十数人、大学が約30人、社会人約40人。残りの30人弱はその他の関係者で、少年硬式野球チームの指導者らが含まれているとみられる

このブログでは「裏金」には深入りしませんが、もし裏金をやるなら、複雑怪奇な日本の野球界の現状を把握していないと的を外すことになります。硬式少年野球まで含めて、初めて役者が揃うのです。

ところで、私はこんな記事もちゃんとストックしています。

高校野球特待生問題、「高野連」の考え方に準拠=日本少年野球連盟
(2007年05月04日 PJニュース 渡辺直子ジャーナルサイト)
 先月25日、高野連が本格的に、野球憲章違反の実態調査を開始した件で、PJニュースは先月27日、日本少年野球連盟(大阪市浪速区)に出向き、特待生問題に関する日本少年野球連盟の考え方を聞いた。
 ―日本学生野球協会は、プロ野球西武の調査委員会が、高校・大学・社会人の監督ら延べ170人や契約前の5選手に不適切な金銭供与があったと公表した問題で、正式にコミッショナー側から同様の報告があった場合、名簿の開示を求めることにしたなどと、新聞などで報じられていますが、170名の実名公表について、日本少年野球連盟の見解はどのようなものなのでしょうか。
 「わたしどもとしましては、基本的に、高野連の考え方に準拠する姿勢です。したがって、170名の実名公表の要望についての考え方も同様です」

目のつけどころはよかったのです。野球留学とは中学生が高校に進学する際に問われている問題であって、高野連様が特待生をエサにした勧誘を嫌っていることは間違いありません。

脇村氏によれば「特待生と野球留学は密接な関わりがある」のですから(これは半分正しいのですが)、中学硬式野球に目を向けたのは「大正解」です。まあ、マスメディアが怠慢なだけですけど…。

視点は鋭かったのですが、そこは素人の悲しさです。ボーイズの誰が語ったのかという一番肝心なところが抜けてしまっています。匿名条件で答えたのかもしれませんが、それならそれで書きようもあるでしょう。

ボーイズが「高野連様に準拠する」のは裏金問題だけだったのでしょうか? …と、意地の悪い突っ込みを入れるのは控えておきますが、少年野球サイドが特待生維持を訴えているという時事通信の記事は貴重なものです。

野球留学に限れば、これら硬式少年野球の団体と高野連様がテーブルにつけば、大筋において解決を見る問題です。田名部氏や脇村氏はけっして手をこまねいてきたわけではありませんが、交渉窓口が1つではないというのが、彼らにとっても足かせだったに違いありません。まあ、殿様と天皇の対決は見ものでもありますが…。

歴史的・組織的背景から、少年硬式野球の統一組織はまず無理でしょうし、他流試合解禁も難しいでしょうが、同じ年代で同じ競技をやっているのですから、せめて会議体ぐらいは持ってもらわないと話は進みません(あるのかもしれませんが…)。

こんなときだけ一堂に会して、しかも日本野球連盟を通じて要求を出すというのはいささかご都合主義というものでしょう。言いたいことがあるならやはり自分たちで言わないと、伝わるものの伝わらないはずです。


浦和学院

2007年05月18日 | 高校別

浦和学院高のWebサイトに「野球部特待生問題について」が掲げられています。高野連様のお墨付きを得ているようです。

学校法人明星学園 浦和学院高等学校>トピックス
本校野球部の生徒の中にも入学後に奨学金を付与されている生徒が存在することは事実であります。しかし、それは決して野球部員であること、あるいは野球の技能が秀でていることをもって付与されているものではなく、所謂「スポーツ特待生制度」とは別途に定められている、本校の「特別奨学生制度」という内規に準じ、厳正な審査を経た上での措置であります。その内規と審査基準については、本校の募集形態のあり方も含め、過日すべて日本高野連に送付したところであることも付言しておきます。

埼玉では打者紹介の場内アナウンスが「1番ライト安倍くん、2年生、成蹊学園中学、背番号9」という具合に放送されます。浦和学院は埼玉県大会準決勝で負けて春の関東大会には進めませんでした。その試合を見に行った人によれば、北海道の選手もいたようです。

まあ、首都圏では隣県への進学は特別に珍しいわけではなく、一茂や松坂もそのクチです。さすがに北海道から埼玉の高校への進学となると、何か特殊な事情がなければ、なかなかできないことでしょう。私はそれが悪いとはちっとも思いませんし、学校側が物心両面でサポートしたとしても、否定されるべきではないと考えています。

さて、高野連様は浦和学院を「セーフ」とジャッジしたわけです。浦学には北海道の選手がいました。個別の選手の事情を斟酌するつもりはありませんが、もし高野連様が野球留学をターゲットに据えて今回の騒動を引き起こしたのだとしても、「憲章の順守」だけでは野球留学を防ぐことはできません。

上のページでは、学校側は内規や審査基準を高野連に送付したと述べています。その範囲でとどまるなら、別に問題はありませんが、個々の選手の成績なり、家庭の経済状況なりは、簡単に外部に出せる性質のものではないでしょう。もし、これらを高野連様が要求したり、学校側が自主的に提出したりしていたら、また社会的問題になります。


現実に存在する公私間の学費の格差ゆえに志望を断念せざるを得ない生徒及びご家庭に対し、入学後に一定の基準を設けて厳正な審査の上、幾許かの奨学金を付与するということ自体は学校の専権事項であると考えます。

これはこのとおりであって、これまで繰り返し書いてきたように、一競技団体の分際で口を挟むような問題ではありません。つまり、高野連様は形式的審査ができるだけで、現実の内容に踏み込んで憲章に触れるかどうかを審査する権限がないのです。

経済的事情だと学校側に主張されるなら、それを信じるしかない立場にあります。だとすれば、今回の騒動は何の意味もなかったわけです。そんなことは最初からわかっているはずですから、何のためにわざわざ“自爆”に突き進んだのかというナゾが残ります。

ちなみに、準決勝で浦学に勝ったのは県立富士見高校です。ケ○の穴の小さい人たちはさぞかし喝采したことでしょう。めでたし、めでたし。


次年度の基準

2007年05月17日 | 高体連など

日本私立中学高等学校連合会からの牽制球です。

「野球特待生を認めるべきだ」私立中高連会合で意見相次ぐ
(2007年5月16日3時1分  読売新聞)
 高校野球の特待生問題で、全国約1400の私立高校が加盟する日本私立中学高等学校連合会(田村哲夫会長)の全国理事会・評議員会が15日、都内で開かれ、「野球部員を対象とした特待生制度を認めるべき」との意見が大勢を占めた。
 日本学生野球憲章13条が野球部員であることを理由に学費、生活費などを受け取ってはならないとしていることについて、同連合会の田村会長は「他のスポーツや学業優秀な生徒を対象とした特待生制度は社会で認められているもの。野球だけが認められないというのは時代に合わない」と話した。
 特待生問題を巡って、同連合会は野球部員を対象とした特待生容認を求める要望書を日本高校野球連盟(脇村春夫会長)に提出している。日本高野連は在校生に限っての救済措置を加盟校に対して認めており、今後は来年度以降の特待生の基準作りを進めるが、田村会長は「新たな基準により、在校生と新入生の間で、不公平が出るおそれがある」との懸念も示した。

在校生に関しては「救済措置」でしのぐことになりましたが、来年度以降については高野連様の特待生問題私学検討部会が6月末をめどに基準づくりを急ぐことになっています。

この私学検討部会は都道府県レベルではおおむね私立高校の校長で構成されるようです。だとすると、日本私立中学高等学校連合会と同じ反応にしかなりません。検討部会で上がってきたものを高野連様の理事会がどう処理するかという問題になります。

学費・寮費の減免はOKだが「お小遣い」はNG、というのが世間相場でしょうから、今度は学生野球憲章の空洞化が際立ってくることになります。原理主義者サイドとしては「やぶへび」に終わりかねないわけです。

私は「プレイヤーズファースト」

この特待生問題は、アマチュアリズムという名の“宗教”の「最後の抵抗」なのです。

と書きましたが、多少の揺れ戻しがあるにせよ、方向はすでに定まっているのです。じたばた抵抗すればするほど、みじめな結末にしかなりません。まあ、歴史が読めないからこそ抵抗するのでしょうが…。

というわけで、このブログではその「最後の抵抗」を余すところなく記録するつもりです。これからがむしろ本番です。


北風より太陽

2007年05月16日 | 田名部語録

緩和措置を決めた5月10日の理事会後の記者会見で、田名部氏は池井氏の「壊滅」発言に対して、次のように反論しています。

特待制度に緩和措置 高野連が緊急理事会
(中日新聞 2007年5月11日)
西武が設置した調査委員会の池井委員長が、関係者の「実名を公表したら夏の甲子園なんてできない」などと発言した件。田名部参事は「アマ側が悪いかのように話すなど、とんでもなく不用意な発言」と強い口調で批判し、今後も実名公表を求めていく姿勢を強調した。

そこまでおっしゃるのなら、特待生で申告させたのと同じように、裏金でも申告させればよろしかろう、と…。現に、社会人はそういう対応をしています。

倫理行動宣言後「不正なかった」…日本野球連盟調査
(2007年5月11日22時19分  読売新聞)
 社会人野球を統括する日本野球連盟は11日、プロ野球実行委員会が2005年6月に採択した「倫理行動宣言」以降の不適切な金銭授受について「調査の結果、不正はなかった」と発表した。
 加盟361チームを対象にアンケートを行い、企業全85チームと、クラブの約75%にあたる207チーム、計292チームから回答があったという。同連盟は、追加の調査について「問題が出れば別だが、現段階では行う予定はない」としている。

たとえ実効性のない形式的なものであっても、特待生問題に先んじて、こっちの「調査」こそ必要だったはずです。もちろん、バカ正直に自己申告してくるとは思えませんから、本当にこの件を追及していく気があるなら、処分を振りかざすのは逆効果です。むしろ免責を与えて自己申告を促せばいいのです。

むろん、もし法律に触れるなら、その部分については高野連様に免責を与える権限などありません。それでも、内部では処分をしないことを約して、いわば「司法取引」に持ち込むべきなのです。「罪を憎んで人を憎まず」でいいのです。

免責を与えることで実態を把握し、そこから予防策を講じるのが建設的というものです。「倫理宣言」以前の話なら他団体への影響は少ないのですから、墓場まで持っていくことを潔しとしない人物からポツポツと出てくるはずです。(「倫理宣言」後を調べた日本野球連盟はまるでやる気がないことがわかります)。

まあ、高野連様単独でやるより、本当はプロ、社会人、大学、シニア、ボーイズを加えた6団体でやるのが理想ですが、これを望むのは今のところ「ないものねだり」になります。この問題はこれからもくすぶり続けるでしょう。ボディブローになります。今回の件を契機に統一組織ができるなら、それだけでも大きな収穫です。


岡崎城西

2007年05月16日 | 高校別

岡崎城西が特待生を練習試合に出場させていた件は、その後、新たな動きがありませんので、どうやら不問に付されるような雲行きです。

岡崎城西高:特待適用選手、遠征試合に出場させていた
(毎日新聞 2007年5月11日 21時22分)
 岡崎城西
高は野球部員17人を特待制度の適用選手として日本高野連に申告した。適用選手は校長の指導で5月中の対外試合には出場しないことになっているが、今月3~5日に行った静岡、神奈川両県への遠征には2、3年生の適用選手10人が同行し、4試合に延べ18人が出場した。中井秀雄監督は当初「ベンチに入れて球拾いなどはさせたが、試合には出していない」などと説明していた。
 しかし11日になって、実際は試合に出場させたことを小林哲郎野球部長に報告。「3年生には最後の遠征なので試合に出してやりたかった」などと説明したという。

短時間とはいえ「隠蔽」があるのですが、これに対する高野連様の態度がやけにおとなしいのです。

対外試合禁止の特待生が練習試合出場 岡崎城西 - 特待生制度
(朝日新聞 2007年05月11日22時14分)
 日本高野連は「愛知県高野連から11日、口頭で連絡を受けた。今後、文書での報告を待つ」とした。選手の5月中の対外試合出場差し止めは高野連としての処分でなく、各校に指導を要請しているもので、山口雅生事務局長は「岡崎城西の学校長には、改めて指導の徹底をお願いしたい」と話した。

学生野球協会を通じた正式な出場「停止」処分ではなく、各学校長の判断に基づく自主的な出場の「差し止め」にすぎないので、指導を徹底してくれればそれでよいとのことのようです。もともと強制力はないのだとでも言いたげです。

今回の件を強制力のない「お願い」だと言われても、誰が真に受けるというのでしょう。それなら、最初から大騒ぎしなくてもよかったのでは?ということにしかなりません。

00年のセンバツ出場が決まっていた敦賀気比は部員の無免許・飲酒運転が発覚して、開幕1週間前に出場「辞退」に追い込まれました。表面的には「辞退」でしたが、実際には出場「取り消し」でした。

辞退したのではなく、辞退させられたとしか思えません。北陸勢初優勝の呼び声も高かった00年の敦賀気比でしたが、その後は明らかに弱体化しました。あのときの仕打ちに嫌気がさしたとしても不思議ではありません。

さて、岡崎城西ですが、特待生制度の詳細はわかりません。06年夏は5回戦で愛産大三河に1対2、05年夏は3回戦で瀬戸に2対5で敗れています。88年秋には愛知3位で東海大会に進み、準々決勝で日生第二に敗れています(当時の東海枠は3)。

【07/05/18追記】16日に開かれた高野連様の定例審議委員会で、岡崎城西は学生野球協会に上申されず、県高野連からの「指導」にとどまりました。それなら、どこも辞退しなくてよかったのでは?ということになってしまいます。


高体連が小委員会設置

2007年05月15日 | 高体連など

高体連に動きがあったようです。

29競技で調査の可能性も (共同通信 2007年05月14日 20:27)
全国高等学校体育連盟(全国高体連)は14日、基本問題検討委員会を開き、高校野球で問題となっているスポーツ特待制度に関する小委員会を新設することを決めた。
 野球以外の高校の競技を統括する全国高体連には特待制度についての明確な規定がなく、梅村和伸専務理事は「特待制度の全面否定は望まないが、社会的な問題になっており、高体連としての見解を出さないといけない。規定を明文化するか、付加することになる」と設置の理由を説明した。
 また同専務理事は「どういう弊害があるのか、どういうメリットがあるのか検討する」と話し、インターハイで実施する29競技で特待制度の実態を調査する可能性も示唆した。
 小委員会は金丸哲志・千葉県高体連理事長を座長に基本問題検討委員会メンバーのうち5人で構成され、年度末までに見解をまとめる方針。

高野連様のように、年度途中で解約を迫り、該当者を処分するというものではありません。年度末までに見解をまとめるということは、もし何らかの制限が設けられることになっても、現在の2年生は「セーフ」ということにしかなりません。

まあ、特別協賛企業として日本コカコーラが名を連ねている全国高体連の場合、高野連様のような態度に出ることはまずあり得ません。高体連には32競技の専門部がありますが、もともと競技人口が多くないマイナー競技では特待生を歓迎することはあっても、否定することにはならないでしょう。

あまり知られていないかもしれませんが、「もう1つの甲子園」の元祖とも言うべき「全国高等学校定時制通信制軟式野球大会」を主催しているのは全国高等学校定時制通信制軟式野球連盟や東京都教育委員会などであり、高野連様は文部科学省や全国高等学校長協会などとともに後援に回っているにすぎません。

高体連には32競技の専門部のほかに「定通部」がありますので、同じ野球であっても定通大会に関しては高体連側の“管轄”になるわけです。

なお、高体連の「競技者及び指導者規程」第1条には「高等学校における体育・スポーツ活動は、学校教育の一環として行われるものであり、その活動はアマチュア・スポーツマン精神に則り実施されなければならない」と定められています。学生野球憲章にはない「アマチュア」が堂々と出てくるのです。

第3条の第4項には「スポーツ活動を行うことによって、物質的な利益を自ら受けない」とあり、同条第5項は「スポーツ活動によって得た名声を、自ら利用しない」と定めています。しかしながら、高体連は自らこれを反故にした歴史があります。

日本卓球協会が競技者規定でプロ登録を認めたのは1986年でした。1999年に福原愛は10歳でプロ登録しました。プロである福原は、全中にもインターハイにも国体にも(例外的に)出場しています。

ちなみに、卓球協会は2001年にプロ制度を廃止しました。「廃止」とは、プロを認めないという意味ではなく、わざわざ登録しなくても誰でもいつでもプロになれるという意味です。もはや卓球ではプロもアマもありません。そんな区別などなくなっているのです。「アマチュア規定(規程)」なるものは“20世紀の遺物”なのです。

今回の件で「悪法も法」だと主張した人たちは、きっと福原がインターハイに出たときにも、同じように「悪法も法なのだから、出るのはまかりならぬ」と主張されたに違いありません。

ついでに言えば、卓球協会がマスタープランを制定したのは2003年です。 Jリーグが「百年構想」を打ち出したのはリーグ発足3年後の1996年でした。一方では、100年先を見据えている競技団体があるわけです。他方には、60年前につくられた憲章で選手を縛りつける団体もあります。

競技者もファンも競技団体の幹部を選ぶことができません。半世紀先のビジョンを示してくれと言いたいわけでありません。どうせ高野連様だけでは示しようもないのです。せめて半世紀前の憲章ぐらいは古文書として博物館に収めてほしいというのが野球ファンとしてのささやかな望みです。


朝日だけではありません

2007年05月14日 | ブルータス

出しそびれているうちに先を越されて、この件に関しては「お任せ」のつもりでしたが、続報が出ませんので便乗します。

高野連「熱烈擁護」の記事 書いた朝日記者は高野連理事
(J-CAST ニュース 2007/5/ 7)
朝日新聞だけが高野連を擁護するかのような「記事」を掲載した。一見すると、一般の記者が署名入りで主張を書いたかのように見えるが、記者は高野連の理事も務めていた。

よくある話であって、別に珍しいことではありません。今回は佐山氏もそうでした(尾藤氏には高野連常任理事の肩書が載っていましたが…)。たしか「21世紀枠」のときも同じことをやっていました。いつもの手口です。今さら私は驚きません。

高野連:特待制度根絶策 中止徹底を最優先 今後、二重基準に
(毎日新聞 2007年4月21日 東京朝刊)
◇他競技も調査を--大阪本社運動部長・堂馬隆之
 専大北上の特待生問題を発端に、日本高野連が加盟校に対し、特待制度の全国実態調査と同制度解消に踏み切る。学業との両立が本分の高校スポーツの健全化に向けた第一歩として評価したい。ただし、これが野球だけにとどまっていては中途半端ではないか。他競技団体も調査するなどのアクションを起こすべきだ。

このように主張している(た?)堂馬隆之氏もまた高野連様の理事を務めています。高野連様の理事がよその競技団体に対して、「お前らも俺の後をついて来い」なんてことを言っているわけです(肩書きを変えればそうなります)。

私はストックしていたこの記事を読んで、大阪本社運動部長の肩書だけでピンと来ました。実は、堂馬氏の名前を見つけようとしたら、佐山氏の名前も見つかったという次第です。引用しなかった部分を含めて、堂馬氏の論旨は次のようなものです。

  1. 専大北上高野球部は学生野球憲章違反で解散に追い込まれた。
  2. 同校は他競技でも同じような特待制度を運用している。
  3. 他競技には学生野球憲章のようなルールがない。
  4. この際、他競技も実態調査すべきだ。

言論は自由です。記者個人として、このような発言をすることは別に否定されることではありません。脇村氏や田名部氏がこんなことを言えば(言ったようですが…)、“内政干渉”にしかなりません。傲慢きわまりない話です。「大きなお世話」だと言い返されるだけでしょう(穏便に済んだようですが…)。

しかしまあ、こうして見ると、4月21日付の毎日新聞は、高野連様の幹部が肩書を替えて第三者であるかのごとく装いながら、高野連様の広報を垂れ流していただけだったようです。残念ながら、思惑どおりに進まなかったようですが…。


山形県高野連会長

2007年05月13日 | 憲章見直し

県立山形南高校長で4月20日に山形県高野連会長に就任した高橋健二氏が読売新聞のインタビューで学生野球憲章の見直しに言及しています。

特待生問題「野球憲章見直し必要」 県高野連会長
(2007年5月12日  読売新聞山形版)
――山形県では東北地方で最も多い11校(計388人)が、日本学生野球憲章13条が禁じた特待生制度があったと申告した。
 「ルールは順守するのが筋で、各校はそれに従ったということ。数字自体を気にすることはない。ただ、申告した各校の制度に関する要項を見たが、どれも野球部員だけを特別扱いしたものではなかった。憲章の解釈を巡り、現場が苦渋の選択を迫られたのは事実。憲章は文言が古く、規制に重点を置いている点を考えると、今の時代にそぐわない。この機会に、前向きな見直しを検討した方が良い」

都道府県高野連の役員は、ほとんどの場合、加盟校の校長が兼務しています。野球部とは無縁だった先生がたまたま会長になることもあるわけです。むしろ、そのほうが多いのかもしれません。理事長については、野球部長か監督の経験が求められるのではないかと思われます。

いずれにせよ、都道府県高野連の幹部クラスが公にこうした発言をするのは、私の知る限りでは初めてのことです。しかも、高橋氏は私学側ではありません。公立高校の校長先生です。なお、高橋氏は高体連との連携についても発言していますので、記事のほうもご覧ください。

山形がそうだと言うわけでありませんが、一部の県高野連では、特待生について日本高野連が先般示した基準とは異なる解釈をしていたのではないかと思われるフシがあります。大量申告になったのは、そういう背景があったのだと解釈するのが自然です。田名部氏の言う「僕たちのコミニュケーション不足」です。

高野連、軟化 明確な基準作りへ「私学部会」設置
(2007年5月4日06時03分  スポーツ報知)
田名部和裕参事(61)は「甲子園を沸かせたチーム、選手の顔が浮かんだ。寝られなかった。僕たちのコミュニケーションが不十分だとあらためて思った」と声を詰まらせ、涙をぬぐった。

「僕たちのコミニュケーションが不十分」だったと認めるのなら、第一義的な責任の所在は日本高野連の指示を加盟校に徹底しなかった(させられなかった)歴代の都道府県高野連幹部にあるわけです。今の生徒に責任を押しつけるのは横暴というものです。

高橋氏の発言は、過去に(直接的)責任を負わない新任会長だからこそ、問題を冷静に見つめられるということなのでしょう。


堤遺産の行方

2007年05月11日 | アマチュアリズム

日本体育協会が「アマチュア規定」を廃止して、「スポーツ憲章」を制定したのは1986年です。国際オリンピック委員会に遅れること12年でした。日本オリンピック委員会が財団法人化されたのは1988年です。その初代会長は堤義明氏でした。

堤氏のアイスホッケー好きは有名ですが、スキーやゴルフも堤氏とそのグループ企業が支えてきたスポーツです。また、2人しかいない五輪フィギュアの日本人メダリストは、いずれもプリンスホテル所属です。

成田好三氏のブログには堤氏に関するこんなコラムがあります。

堤義明氏と「西武商店」からの贈り物を大切に
 堤氏は、アマチュアスポーツ界のドンでもあった。アマチュアスポーツの実態をすべて熟知していた人物である。金銭の供与を受けないというアマチュアの建て前がまったくもつて実態とは離反していることも身をもって知っていた人である。彼は、アマチュアスポーツ界における最大の「たにまち」だったからである。
 世界のスポーツ界には、もはやアマチュアという概念は存在しないということも、彼はとうの昔から知っていたはずである。

この「成田好三のスポーツコラム・オフサイド」が3回に渡って特待生問題をとりあげていました。

高野連は生きた化石(1)-メデイアと甲子園
高野連は生きた化石(2)-アマチュアリズムの権化
高野連は生きた化石(3)-有森裕子のプロ宣言

ここらを読んでいただければ、私がアマチュアリズムのことを書く必要もないわけです。まあ、放映権料はないはずですが、もらって各出場校に分配すれば、けっして評判がいいとは言えない寄付金集めもしなくて済むのではないかと思われます。

06年に春夏連続出場を果たした南陽工高のWebサイトには、後援会による収支報告書が掲載されています。

第78回選抜高等学校野球大会 収支決算報告書
第88回全国高等学校野球選手権大会 収支決算報告書

「収総額」とあるのは「収総額」、「収の部」は「収の部」のことでしょうが、春は3900万、夏も1800万の剰余金が発生しています。これらにしても、考え方によっては「アマチュアリズム」を逸脱しているとも言えるわけです。

21世紀になって、「アマチュア規定」だの「アマチュア違反」だのという言葉を聞くことになるとは思ってもいませんでした。そんなことを言い出すのは、(今では)アマチュアボクシング連盟と高野連様だけです。