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デザインクラス通信15「色のある場所」

2012-03-05 14:24:58 | デザインクラス

「色彩を使った空間構成」と銘打った二月の課題。せっかくなので今回のデザインクラス通信は、色と建築にまつわる話をしようと思います。

僕の専門はグラフィックや絵画など主に平面の分野なので、特別に建築の勉強をしてきた訳ではありませんし、もともと関心もそれ程強くありませんでした。しかし、学生のときに初めて自分の意志で海外を訪れ、色々な場所を巡り歩く中で、ひとつひとつの建物の中に入る度に、新鮮で、今まで感じたことのない空気に触れるお驚きや 興奮を味わうこととなりました。異国の建物は、その天井の高さや光を採る窓や照明の仕組み、そして色彩などあらゆる要素が日本のものと違っていて、その差を肌で感じたことが、僕が建築への興味のアンテナを伸ばすきっかけであったように思います。

僕の目にした数々の印象的な建築の中で、とくべつ色彩の印象が濃く残っている建築を二つ、今回は紹介します。

まず一つ目は、「ロンシャンの礼拝堂」。
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こちらは建築界の大巨匠、ル・コルビュジエによるもの。フランスの片田舎の小高い丘の上ぽつんと建っています。険しい山道をえんやえんやと登っていると、パッと木々が消え、この不思議な建物がすっと見える。その感覚は、どこか非現実的です。 中に入ると待っていたのは闇に響くような色と光のシャワー。もう言葉なんて出てきません。そのくらい美しい。くり抜かれたような窓や、光を受けて輝く椅子達は、本来の機能とはまた別の、礼拝堂としての神聖な空気を生む役割を担っていると言えます。色の使い方はステンドグラスのような装飾的な使い方ですが、それはただの飾りというより、まるで空間自体に色彩がちりばめられたような、そんな印象を与えます。

コルビュジエは「詩」を歌ったんだ。
この建築を体験した際、僕はそう強く感じました。建物を建てたのではなく、歌った「詩」が建物となった。そう思えるほど、この礼拝堂には理屈では表現しきれない美しさで溢れていました。この感覚は、僕の建築の概念をひっくり返す程の衝撃でした。

そして二つ目は、「ヒラルディ邸」。
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こちらも建築界の大巨匠、ルイス・バラガンの最後の作品です。
バラガンはその色使いが有名なメキシコの建築家で、奇抜(と思われがちな)な色の壁面を用いた建築を数多くデザインしています。
上の画像は邸宅の中にある、玄関から続く廊下です。
この黄色い廊下を抜けた先は、
Photo

青と赤のプールのあるリビングルームです。
彼の建築の魅力はその色彩の演出ですが、その一見奇抜に見える色彩が、その空間にぴったりとなじみ、派手さとは逆のむしろ静寂と言っても良いくらい、落ち着いた印象を生むところにあると思います。それは、色をただの平面的な要素としてではなく、光を受けることで如何様にも変化するものして捉え、デザインに取り入れているからこその表情なんだと思います。写真だけで見たら、こんなとこ住めたもんじゃない、なんて思う人もいるかもしれませんが、実際この場所を訪ねてもらえれば、出てくるころには全く逆の意見になっていることでしょう。

今回紹介したものは二つとも海外の建築でしたが、もちろん日本にも素晴らしい建築はたくさんあります。しかし、どこか日常と違う違和感を感じることより、空間に対するセンサーが敏感に働くのは、異国の建築体験ならではなのかもしれません。
とにもかくにも、建築の表現するその壮大な芸術に触れる度、絵描きの自分としては「うーん、ずるいなあ…」と思わずにはいられません。
(アベカイタ)


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