今年の1月から半年間にわたって『漢方の味』をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
もしこれをお読みになって、西洋医学が病気の原因を治療しないという根本的な大問題を抱えていることに気づいていただけたなら幸いです。
さて、せっかく漢方の知識が増えたところなので、今回は胃がんに効く漢方薬をご紹介しましょう。
『漢法医学講演集 第1輯』(森田幸門:述、木曜会:1940年刊)という本によると、香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)という漢方煎薬で胃がんの患者が治ったことがあるそうです。
まず最初に六君子湯について説明しますと、この薬は、胃腸が弱く精神力の振るわない人に用いる四君子湯(しくんしとう)に、胃の中を乾かす半夏(はんげ)と、胃壁に溜まっている粘液を掘り返して止める陳皮(ちんぴ)を加えたもので、胃腸が荒れた状態を緩和してくれるそうです。
六君子湯 = 四君子湯+半夏+陳皮
ちなみに、四君子湯は、血液の循環を活発にして胃腸を健やかにする人参(にんじん)と、胃の中のうっ血をとる茯苓(ぶくりょう)と、胃部の働きを助けすべての薬の働きを調和させる甘草(かんぞう)と、胃液の分泌過多を防ぐ白朮(はくじゅつ)から構成されているそうです。
四君子湯 = 人参+茯苓+甘草+白朮
この薬は、胃の働きが麻痺しているのを治すだけでなく、痔の出血が止まらない場合にも有効だそうです。
さらに、四君子湯から茯苓を去って黄耆(おうぎ)を加えると寝小便によく効くことや、四君子湯に当帰(とうき)を加えると創傷の傷口がふさがること、四君子湯と六君子湯は右半身の不随に有効であることなどが書かれていて、やはり漢方は奥が深いと感心させられます。
さて、本題の香砂六君子湯ですが、これは六君子湯に、興奮発散剤の香附子(こうぶし)と、健胃剤の縮砂(しゅくしゃ)と、吐逆(とぎゃく=食べたものの逆流)を治す藿香(かっこう)を加えたものだそうです。
香砂六君子湯 = 六君子湯+香附子+縮砂+藿香
この薬は、胃腸が弱くて顔色がわるく気分が勝(すぐ)れない場合や、気管支炎の気味で食べすぎると胸やけがする場合に用いるそうですが、胃がんの患者には、胸がモヤモヤして食事ができないときに用いるとよいそうです。
また、何人もの医師から胃がんと診断された患者がいて、森田氏はその人から薬を乞われ、胃がんには薬はないと言って断ったのですが、たっての希望で香砂六君子湯を十日分作って送ったところ、その人の胃がんの塊がとれてしまったことがあったそうです。
つまり、香砂六君子湯は胃がんの特効薬ではないのですが、まれに特効を示す場合があるようです。
がん治療の基本は、やはり生活のすべてを抗がん作用のあるものに変えることだと思いますので、本ブログの「癌はこれで治る」でご紹介したがん治療の五原則の三番目、
3.指定の生薬、栄養物を服用すること
に加えるべき薬の候補として、胃がんの場合には香砂六君子湯を考えてみてはいかがでしょうか。
また、ご自身の生活を見直す場合の参考として、本ブログの「胃がんの治し方」をご覧いただければ幸いです。
最後に、当然のことですが、漢方薬は自己判断で服用するのは危険ですから、漢方医の診断を受けてから処方してもらうようにしてください。
なお、お近くの漢方医を探す際には、「漢方のお医者さん探し」というサイトを使って候補を絞り、各医院のホームページを見て「日本東洋医学会」の会員になっている人を選ぶのがよいと思います。