とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

雨の日はオペラ サロメを観る。

2017年09月17日 | 雨の日はオペラ

 先日放映されたNHKのプレミアムシアターを録画していた。この日は、サロメとペレアスのどちらも近代オペラの代表作で、どちらも既に手持ちの数はそこそこあるがとりあえずHDに録画した。

 とりあえず台風接近で「鳥撮り」に出られず家でサロメだけを見た。まず気になったのは「オランダ国立歌劇場」の名称だ。国立歌劇場という組織があるのだろうか?通常ネーデルランドオペラと呼ばれているが、ピットい入るオケは演目で様様なようだ。以前ベルリオーズの「ベンベヌートチェリーニ」が放映されたときは、ネーデルランド・オペラ合唱団の名が表記されていたが、今回の表記の差の違いは何なのだろうか?いずれにしても演奏された建物は、アムステルダム・ミュージックシアターなのだが?。

 指揮者 ダニエレ・ガッティはオペラで評価を得てきた指揮者だけに、それこそ世界トップランクのオーケストラの首席に就任しての、本格的オペラ指揮だけに、この放映は注目していた。私の結論は音楽だけならば素晴らしいかったが、オペラは舞台が命。演出があまりにも中途半端に思えた。しかも政治信条を表現しないのならば、現代の読み替えの目的は何なのかが伝わらない。この演出の目的が私には理解できず、それならば原作を変更してまで表現したいものがわからない演出は無意味だろうと思った。特にこのオペラのハイライトと言うべき7つのベールの踊りも、サロメの踊りというより、訳の分からぬ群衆の踊りにベールも消えてしまったことは、このオペラの魅力までもを捨てた演出ではなかろうか。

 またこのオペラを決める、サロメとヨカナーンのキャラクターが演出でかすんでしまうのは、オペラそのものが成り立っていないと思った。ただ演出でこのオペラでは魅力が半減したが、サロメ役のマリン・ピストレムは歌唱は素晴らしい素質の持ち主と思った。演出に恵まれれば素晴らしい舞台が期待できそうだ。

(私の手持ちあれこれ)

私が最初に全曲を観たのはレーザーディスク盤だった。当時のパイオニア製のLD装置は高くバブルの恩恵でボーナスをつぎ込み購入したが、「絵の出るレコード」としてVHSよりも映像も音声も素晴らしくそれだけで感動した。映像と音声は別どりで、映画同様のもので、オペラの様な劇場での臨場感はないものの、反面完成度は高く、ベーム+VPOの無駄のない音はある意味ではベームの作曲者直伝の再現に思えた。また小柄なストラータスだが、持ち前の演技力が舞台の臨場感を生み出し、迫力すら感じさせる。またヘロディアス役がの往年のワグナー歌手のヴァルナイが貫禄と、迫力を示すなど、サロメ役との対比が明確で、舞台の緊張感を生んでオペラ舞台とは違った魅力を引き出して完成度の高い作品に仕上がっている。オペラ映画と割り切ればBestな選択といえる。

 今度ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任した、フィリップ・ジョルダンのいわば最初の昇段試験合格作品ともいえるものだ。バランスの取れた演出に、音楽が見事に調和し保守的な仕上がりだが、不満のない見ごたえのある舞台だと思う。歌手、音楽、演出がバランスが取れた調和を生み出し、オペラっていいな!!!て思う作品と思う。

上記と同じ1992.5.30のコヴァント・ガーデンのプロダクションだが、オペラ上演史上でもスキャンダルを巻き起こした舞台だ。何しろ演出が物語に忠実で7つのベールの最後は舞台中央で、紳士・淑女の真ん前でサロメ役のユーイングがスポットライトを浴びて全裸をさらけ出したのだから。その後我らが日本放送協会もBS全国放送で放映したのだから、芸術?に理解があったのだ。(私の手元にあるのはこの時の放映を録画したもので、わざわざDVDを購入したものではない。)正直話題性はあるが、観賞価値は金を払ってまで購入する気にはなれない。

 正直なところできればジェームス・レバインの指揮で観たいオペラだったがかなわなかった。(だからNHKの放映したものを録画したが、今処分する気でいる)音楽。演出、歌手ともに中途半端で魅かれるものはないが、唯一舞台装置は一見の価値はある。



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