とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

2017年バイロイト音楽祭 マイスタージンガーをNHKで観る

2017年08月26日 | オペラ

NHKのBSプレミアムで2017年7月25日の今年のバイロイト音楽祭の目玉と目された「ニュルンベルグのマイスタージンガー」を録画して雨続きの日に観た。

正直、このところのバイロイト音楽祭には、失望というより「あきれて」見る気も起らなくなり、ここ数年は、録画しても途中であきれ果てて削除廃棄していた。今年は指揮が、フィリップ・ジョルダンでパリオペラ座での評判と、今後ウィーン国立歌劇場のシェフとなるなどいわば久しぶりのオペラ振りのスターとなる可能性を秘めた注目指揮者のバイロイト初登場とあって期待してが、これこそ末期症状的なバイロイトの演出で、しかも現況のナチズム vs シオニズムの醜悪さを臆面もなく、芸術の舞台にさらけ出したある種露悪的演出に、世界各地からはせ参じたワグネリアン?=ブルジョワ人種が拍手喝采する姿が、異常に思えた。

◇バイロイト音楽祭2017

楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」8月21日放映(0:02:30~4:50:00)
ワーグナー 作曲
<出 演>
ハンス・ザックス(靴屋):ミヒャエル・フォレ
ファイト・ポーグナー(金細工師):ギュンター・グロイスベック
ジクストゥス・ベックメッサー(市役所の書記):ヨハネス・マルティン・クレンツレ
ワルター・フォン・シュトルチング(フランケン地方出身の若い騎士):クラウス・フロリアン・フォークト
ダーヴィット(ザックスの従弟):ダニエル・ベーレ
エヴァ(ポーグナーの娘):アンネ・シュヴァーネヴィルムス
マグダレーネ(エヴァの乳母):ヴィープケ・レームクール          ほか

<合 唱>バイロイト祝祭合唱団
<管弦楽>バイロイト祝祭管弦楽団
<指 揮>フィリップ・ジョルダン
<演 出>バリー・コスキー

<字 幕>北川千香子

収録:2017年7月25日 バイロイト祝祭劇場(ドイツ)

 正直、このところのバイロイト音楽祭には失望続きだが、この演出は、ワグナー=ヒットラー=ナチスの連想ゲームで成り立った何物でもない。幕開け冒頭で、ワグナー家の応接間が描かれ、リストの娘でありワグナーの妻となったコジマを囲みリストとワグナーが談話し、一人その場になじめぬ、初演を指揮したユダヤ人指揮者の、白けた雰囲気の中、キリスト教への祈りを拒否するユダヤ人指揮者を際立てクロースアップする演出は何を言いたいのかが極めていやらしいほど政治的であり、歌合戦の場が、「ニュールンベルグ」をまさに「ニュールンベルグ裁判所」に仕立て、「ナチス=ワグナー」を露骨に表現することに、どんな意味があるのだろう。この演出家=バリー・コスキーがユダヤ人であることは、次回の演出は、是非とも、同様の演出で舞台をパレスチナに移した舞台でパレスチナ人の立場で演出を願いたいと思ったほどだ。あまりにも独善的なイデオロギーに満ちた演出で期待した、ジョルダンの音楽は消し飛んでしまった。

 もちろん録画は即日廃棄した。それにしても21世紀に入り、バイロイトは不毛の音楽祭になった。しかし高い金を払えるブルジョワの集まる音楽祭だが、そのブルジョワ層はユダヤ人が過半を占めるのだろうか?

(私の手持ち)

最初に全曲を観たのは、NHKのTV(当時の教育TV)だ。1987/03/28 NHKホールでの実況録画だ。

 当時世界トップレベルの放送技術を誇った、NHKと国産電機メーカーの技術をもってしても、1987年のNHKホールの実況録画は、映像は暗く悪く、音響もいまいちだが、当時東西に分裂されたドイツは経済では大きく引き離された、東ドイツが、芸術=音楽とスポーツで西ドイツを凌ぐべく、力を注ぎ、その結果として西側へのPRに送り込んだベルリン国立歌劇場の日本引越し公演は素晴らしかった。私は、1983年の来日公演のタンホイザーを東京文化会館で観たが、正直この公演でオペラの虜になった。1987年の公演も是非とも見たいと思ったが、転勤時期になりチケットの購入をためらい、事実3月に転勤辞令を受けた。

 スイトナーの指揮もザックスのテオ・アダム、ベックメッサーのジークフリート・ロレンツもすばらしく、ペーターシュライヤーがダヴィト役の端役で出ていたのだからすごい。できることなら現在のNHKの技術でこの映像を補正しHiVison版にリメイクできないものだろうか。皆様のNHKにお願いしますだ!!!!。

私の推薦版: 隔週刊版デァゴスチーニ DVD オペラコレクション 1990円

 価格の安さと、日本語字幕付きに魅かれ、My Collectionの穴埋めに全巻ではないがこのシリーズを結構な数を購入した。その中でも、この2枚組は平凡な演出と言われるが、昨今のバイロイトの音楽を邪魔する演出に比べれば、月とスッポンの違いがあるほど素晴らしい。主役3人がそろい、シュタインの音楽作りが素晴らしい。

 その他の手持ち

 このDVDはレヴァインの音楽はいつも通り、素晴らしく不満はないが、役者と役柄が合わず、音だけでは文句はないが映像となるとマイナスが出る。

特にポーグナーのルネ・パーペ、ヴァルターのヘップナーは引いてしまう。役柄に逢わないし演技でカバーできていない。

ごたごたのワグナー家相続問題を引きずってのひ孫のカタリーナ・ワグナーの演出だが、このご本家の演出から、現在の演出の「なんでもありのバイロイト」が大手を振って主流に上ったといってよいだろう。この演出でバイロイト音楽祭は終わった。



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