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浪速夢見頃>日本昔ばなし(72)
♪ 改心した、おいはぎ(千葉県の民話)
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あらすじ
むかし、千葉県中部の東金(とうがね)には上総木綿(かずさもめん)の
問屋がたくさんありましたその頃は、上総木綿を江戸まで運ぶと
大変なもうけがあったそうです。 その東金には三代続く
商人の宗兵(そうべい)という人がいて商売が上手な事で江戸にもその名前が
知れ渡っていました。
ある日の事、宗兵が江戸で大もうけをして帰って来ると、山田の坂に
さしかかった所で、刀を持ったおいはぎが現われたのです。
辺りは薄暗くて人気が無く、助けを求める事も出来ません。おいはぎは
宗兵に刀を突きつけて言いました「おい、こら!あり金を残らず置いていけ!」
しかし宗兵は名の通った商人だけあって度胸も座っており、あわてる
事なく相手の様子を観察しました。 よく見ると、おいはぎはまだ
若くて、突きつけた刀の先がぶるぶると震えています(ははーん。
こいつおいはぎをするのは今日が初めてだな。それなら)
宗兵は相手になめられない様にしっかりした口調でしかし相手を
怒らせない程度に腰を低くして言いました「有り金と言いましても
今は仕入れの帰りで一両ほどしか持ち合わせがありません。
仕入れた品はありますが、とても素人さんには売り
さばけない品です。そこで、どうでしょう?
東金の街まで、一緒に来てくれませんか?それなら
もう少し出せるのですが」「うっ、うそじゃ、ないだ
ろうな?」「はい、わたしも商人です。
うそは、申しません。
それにお前さんが一緒に来てくれると、これからの
道のりも安心ですし、荷車の後押しをしてくれれば
さらに助かりますので」「・・・本当に、金をくれる
のだな?」「はい本当です。だます様な事はしません」
「・・・わかった」
こうして話しがまとまり、宗兵とおいはぎは東金の
街へと向かったのです。おいはぎが荷車の後押しをして
くれたおかげで、あっという間に東金の街へ着く事が
出来ました。そして自分の店の前まで来た宗兵は、
大きな声で言いました。「おーい、今帰ったよ」
「あら、お帰りなさい。早かったですね」奥さんや
お店の人たちが、店から大勢出て来ました。
それを見て、おいはぎの顔色が青くなりました。
これだけ大勢が相手では、いくら刀を振り回して
も勝てそうにありません。おいはぎがすきを見て逃げ
出そうと思っていると、宗兵は奥さんにおいはぎを
紹介しました。
「実はな、この人が手伝ってくれたおかげで、早く
帰って来られたんだ。礼をしたいので、奥に入って
もらうよ」そして宗兵はおいはぎと奥の部屋に入ると
大事な話があるからと他の人たちを追い払いました
おどおどするおいはぎに、宗兵が言いました。
「まずは、これは約束のお金だ」そう言って
おいはぎの前に二両のお金を出しました。
「次にこれは、ここまで荷車を押してくれたお礼だ」
そしてさらに一両のお金を追加すると、宗兵は
おいはぎに言いました「見れば、お前さんはまだ
若いようだし行く当てがないのなら、わたしの所で
働いてみてはどうだ? もちろん今日の事はわたしの
胸に収めておくよ」
それを聞いたおいはぎの目から涙がこぼれました
これほど人の心を温かく感じたのは生まれて
初めてです。宗兵の人柄にすっかりほれ込んだ
おいはぎは、深々と頭を下げました。
「すみません。よろしくお願いしやす」
それから心を入れ替えて一生懸命働いたおいはぎは
やがて自分の店を持つほどに出世したという事です
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