サトルはぽかんと口を開けて聞いていましたが、どうやら会社で働く人を探しているんだとわかると、急に眉をひそめて、ぼくは働きに来たんじゃない、と言おうとしました。
「――あの」
「あーっ! 泊まるところならちゃんとある。私と一緒に夢見の町で過ごすことになるが……まぁ家族同然のように扱うつもりだから、安心したまえ……。
そうそう給料のことだが、ウチの社員が実らせた木の実、篭三分の一杯だ。ほかじゃなかなかもらえんぞ……。そのかわり、ウチの会社は朝が早いから、そのつもりでな……」
「あの、違うんです。ぼくは違うんです――」と、サトルは思いきって言いました。
「はぁ? なにが違うのかね」と、男の人がパイプに火をつけながら言いました。
「ぼくは今、死の砂漠から上の世界に登ってきて、どこともわからない土地に出てしまったんです」と、サトルは自分の胸を叩きながら言いました。「だから、ここが本当にぼくが落っこちてしまった所かどうか、聞きに来たんです」
けれど、男の人は逆にぽかんと口を開けたまま、なにやらわからないというように首をかしげました。
「……ちょっと待った。まあ、話はだいたいわかったが、とにかく、この土地は初めてなんだろう……それに、泊まる所と働く所を探している……」
「はい。働く所を探しているというのは違っていますが、泊まる所がないのは、本当です……」と、サトルは言いました。
「ハッハッハッ」と、男の人は笑って言いました。「そりゃちょうどいいじゃないか。私も同居しながら働いてくれる人を探していたんだから。お互い好都合というものだろう……なっ!」
男の人が、サトルに片目をつむって見せました。
サトルはちょっとしかめっ面をしていましたが、
「え、えぇ……」
と、煮え切らない返事をしました。
サトルとリリは、自ら工場長と名乗る男の人にうながされるまま、渡されたポケットだらけの、少し大きな作業着に身を包みました。サトルは、なんの仕事をさせられるんだろう、とリリと顔を見合わせました。
不安な気持ちで、あてがわれた臨時の更衣室に腰を下ろしていると、工場長が、ヘルメットを二人分持って、部屋に入ってきました。
「これから、私の工場へ案内するから……」
と言って、工場長は、二人にヘルメットを渡しました。
二人が階段を下りて外に出ると、天馬が心配そうにこちらを見ていましたが、どうやら危なそうなことはない、とわかったのか、静かに飛び去ってしまいました。
「――あっ」と、サトルは天馬にむけて手を伸ばしましたが、天馬は振り返りませんでした。
「あれは君の馬だったのか」と、工場長が、ヘルメットを被りながら言いました。「てっきり、工場で働く人を探してくれていた人かなと、勘違いしていたよ」
「……」と、サトルとリリは、天馬が飛んでいった空の先を、不安そうに見上げていました。
「――あの」
「あーっ! 泊まるところならちゃんとある。私と一緒に夢見の町で過ごすことになるが……まぁ家族同然のように扱うつもりだから、安心したまえ……。
そうそう給料のことだが、ウチの社員が実らせた木の実、篭三分の一杯だ。ほかじゃなかなかもらえんぞ……。そのかわり、ウチの会社は朝が早いから、そのつもりでな……」
「あの、違うんです。ぼくは違うんです――」と、サトルは思いきって言いました。
「はぁ? なにが違うのかね」と、男の人がパイプに火をつけながら言いました。
「ぼくは今、死の砂漠から上の世界に登ってきて、どこともわからない土地に出てしまったんです」と、サトルは自分の胸を叩きながら言いました。「だから、ここが本当にぼくが落っこちてしまった所かどうか、聞きに来たんです」
けれど、男の人は逆にぽかんと口を開けたまま、なにやらわからないというように首をかしげました。
「……ちょっと待った。まあ、話はだいたいわかったが、とにかく、この土地は初めてなんだろう……それに、泊まる所と働く所を探している……」
「はい。働く所を探しているというのは違っていますが、泊まる所がないのは、本当です……」と、サトルは言いました。
「ハッハッハッ」と、男の人は笑って言いました。「そりゃちょうどいいじゃないか。私も同居しながら働いてくれる人を探していたんだから。お互い好都合というものだろう……なっ!」
男の人が、サトルに片目をつむって見せました。
サトルはちょっとしかめっ面をしていましたが、
「え、えぇ……」
と、煮え切らない返事をしました。
サトルとリリは、自ら工場長と名乗る男の人にうながされるまま、渡されたポケットだらけの、少し大きな作業着に身を包みました。サトルは、なんの仕事をさせられるんだろう、とリリと顔を見合わせました。
不安な気持ちで、あてがわれた臨時の更衣室に腰を下ろしていると、工場長が、ヘルメットを二人分持って、部屋に入ってきました。
「これから、私の工場へ案内するから……」
と言って、工場長は、二人にヘルメットを渡しました。
二人が階段を下りて外に出ると、天馬が心配そうにこちらを見ていましたが、どうやら危なそうなことはない、とわかったのか、静かに飛び去ってしまいました。
「――あっ」と、サトルは天馬にむけて手を伸ばしましたが、天馬は振り返りませんでした。
「あれは君の馬だったのか」と、工場長が、ヘルメットを被りながら言いました。「てっきり、工場で働く人を探してくれていた人かなと、勘違いしていたよ」
「……」と、サトルとリリは、天馬が飛んでいった空の先を、不安そうに見上げていました。