Dear Happy Days*

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生きながら火に焼かれて

2005-04-17 | 読書ノート

スアド 松本百合子訳

中東シスヨルダンという町でスアド(仮名)という当時19歳の女性が
結婚前に男性と恋に陥り、妊娠をしてしまったという、
ただそれだけの理由で、義理の兄より火あぶりにされた。
これはあまりにもショッキングなノンフィクションの書物だ。

表紙は、真っ白い仮名をかぶった女性が
何かを訴えるような目をこちらにむけている。
その目は、とても悲しみに満ちているが、
しかし、その瞳の奥底には強い意志と決意が感じられる。
とても印象的というか、衝撃的な本の表紙だ。

まだ自分の知らない世界がたくさんあり、その中で
苦しみ死に至らしめられている多くの女性がいることを知る。
私たちの世界では、当然とされている価値観、世界観、権利、教育も
ひとつ世界が違えば、善悪もまったく逆になってしまう。
スアドの生まれ育った世界では、悪が堂々とまかり通り、
殺人すら正当化される。
父親が娘を折檻することは当たり前。
女はただひたすら男に使え、人として生きていくための当然の権利も
与えられない。結婚まで処女を守り、初夜に処女の証の血を流すこと
これが彼らの世界ではまっとうなことだった。
だから、結婚前に男性と話をしたり、ましては関係を持つことは
言語道断なことであるし、妊娠などしようものなら
一族の恥であり汚点となり、その子は肉親によって
殺されることによって浄化されるという・・
なんと、こんなバカなことが世界のどこかで未だに
密かに行われている、その数年間6000人にも及ぶという。

そんな中で奇跡的に生き残ったスアドが、
心を決して世の中に訴えた告発の書が本書である。

スアドが本書で語っている、
「たとえば、鏡のない世界で、きみの目はブルーだと人から言われたら
一生、自分の目はブルーだと信じるだろう。
鏡というのは文化や教育、自己および他者の知識を写し出す。
~知らないというのは、本当におそろしいことだ。」

そしてもっとおそろしいのは、他者や他の世界について
無関心でいることだと深く感じる。