続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

早気は病か 二.

2007年02月18日 | 極意探求
では、なぜ弓に押し負けてしまうのだろうか?

この問いは単純なようで実は奥が深い。なぜなら、よくよく考えて見れば「弓に押し負けること」こそ、自然な事であるからだ。

どういうことか?以前書いたように弓の理想形は、「会」(深い会)からの離れにある。「会」というのは完全に伸びきった状態であるということだ。(必ずしも弓手が伸び切っていることを言ってはいない。実際には下筋(後述)さえ張っていれば「会」となる)

このときひとつの疑問が生じる。はたして伸びきった状態で弓に押し負けず、さらに弓を押していくことができるのだろうか?

普通に考えれば困難であると言わざるを得ない。実際、誰もが初心者の頃、この命題に悩む事になる。つまり「伸び合っていけ」と言われ、会に入ってもなお伸び合い続けるが、しまいには力が入り切らないところまで伸び切ってしまい、(逆に弓の反発力は最大になるので)弓に負ける。

結果、もどり離れになったり、負けまいとがんばるから馬手離れになったりする。(だからといって、会で余力を残すと会は浅くなり、離れは鈍く、弦音も悪くなる)そして、このようなことを続けていくと、しだいに弓に押し戻されることが怖くなり、早気におちいる危険性が高まっていく。

これを解消するのが「詰合い」である。「詰合い」とは、伸び切った状態でなお力を保ち、さらにそこから大きな力を発揮するための技術である。完全に伸びきってしまう「会」において「詰合い」は、それを十分に保ち、さらに伸び合えるだけの余力を与えてくれるのだ。

「詰合い」は、特殊な技術では決してない。むしろ、我々が日常的に活用している技術である。たとえば、重いものを運ぶときや強い力で何かを押すとき、誰もが無意識に「詰合い」を利用している。

早気を生まないためにも、指導者はまず「詰合い」をこそ教えるべきであろう。