山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

栃木県の輪中・洪水の横にある暮らし

2015-09-21 | 山里

  *前の記事の続き

先日の鬼怒川決壊をきっかけに取り寄せた『聞き書 栃木県の食事』(農文協)に、水郷地帯の洪水への備えについて書かれてあった。
栃木県のその地帯は、鬼怒川沿いではなく、小さな3つの川にはさまれた生井村という所で、現在の渡良瀬遊水地の隣でもある。渡良瀬遊水地の中にも、かつては谷中村という輪中があったということだ。

以下、生井村について、『聞き書 栃木県の食事』から引用(要約)。渡良瀬川流域の項。
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下都賀郡生井(なまい)村は、栃木県では最も土地が低く、水郷地帯というべきところである。むらは三河川によってたびたび水害に見舞われる。そのため生井村は、たえず洪水の心配をしなければならない。
とくに初夏から秋にかけては、台風による洪水に悩まされる。田畑をはじめ、ときには家畜や家屋までも、濁流の中へ水没してしまうような被害を受けることがある。このような被害を防ぐために、むらのまわりを高い堤防で囲んだ輪中の里になっている。

また、洪水の危険から逃れるための一つの方法として、どこの家でも小高く土盛りした上に水塚(水屋)を建てている。
水塚を建てるところだけでなく、母屋や物置が建つところまでも土盛りする場合が多い。高く土盛りした塚の斜面には、洪水で崩れないように、土止めとして岩舟石で石垣を築いたり、木を植えたり、せきしょうを植えたりする。
輪中では、ちょっとした洪水では冠水の心配はないが、いったん水が入るとなかなかひかない。このような場合を考えて、水塚の中に丈夫な台をつくり、その上に畳、衣類、米俵、味噌樽、漬物樽、乾物類、そのほかの食料品や貴重品などを置いて、常に備えている。

木舟/輪中の里は何日間も水浸しになる。その間、ほかとの行き来は舟にたよらざるをえない。そのためどこの家でも手漕ぎの木舟を持っている。ふだんは納屋や台所の梁下につるし、洪水が予想されると庭先におろし、杭につないで冠水に備える。

輪中の里は、水量豊かな河川に恵まれ、農業以外に船頭や魚とり専業者もいる。
とれる魚は、なまず、ふな、こい、うなぎ、どじょう、雑魚、川えび、たにし、からす貝、しじみなど。
また、思川、巴波(うずま)川は、常には生活に重要な物資輸送の中心になっている。薪、炭、竹、麦類、大豆などが東京や浦安に向かって荷積みされる。
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ここでは、湿地特有の作物として、行李柳、いぐさもある。いぐさはもちろん畳表の良い材料になり、行李柳では行李や弁当箱を作る。


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写真/愛知県高浜市の長田川。川の両岸には家はなく、水田が広がっている。水田の向こうには、特産の瓦の工場などがあり、昔ながらの集落が続く。ここでも、水害に備え堤防のかさ上げ工事を行っている。
今の時期、オギの穂が銀色に光ってきれい。(2014年)

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