日本艦隊司令部

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大砲撃戦!!

2011-08-07 00:35:32 | 第二部 東洋激突編
 ついに敵潜水艦との決戦です。


「な、何だ!?あれは。」
 輝は愛機スカルリーダーのコックピットで息を呑んだ。
 上空のバルキリーからでも確認されたその潜水艦は「天龍」から3千メーターは距離を置いているにもかかわらずその巨大さが窺い知れた。全長250メーターの「天龍」と同等かそれ以上の巨体である。
「隊長!!あれは一体!?それにあのマークは!!」
 そう言ってきたのは第三小隊長のギム・ケイリング少尉だった。彼はドイツ人である。彼が生まれる以前に母国が掲げていた旗に描かれていたマークを見て動揺している様だ。いや、彼だけではない。航空隊全員が動揺している。だが今は戦闘中だ。動揺は死に繋がることも多い。輝はバルキリー隊全員の通信を開いて伝えた。
「みんな落ち着け!!とにかく敵機に集中しろ!!まずはそれからだ!!」
 その言葉で全員気がついたのか各隊が編隊を組み直していった。

 「天龍」の艦橋でも謎の敵潜を前に全員が驚きを隠せないでいた。
「ナチスドイツ!!司令、ナチスのマークです!!」
 双眼鏡を構えていたスプルーアンス参謀長がそう言った。メンバーも一応卍のマークがかつて第二次大戦時に暗躍したナチスドイツ第三帝国の掲げたマークと言う事は知っている。
「しかしなぜ今ごろあのようなマークを掲げた艦がいるんでしょう?」
 未沙はそうつぶやいた。それは全員の疑問でもあった。各艦も動揺していたが対艦攻撃の態勢に移行しつつある。
 その時、敵艦が突然咆哮を響かせた。直後左舷に位置していた軽巡「比叡」が水柱に包まれた。
「「比叡」が!!」
 誰かがそう叫んだ。水柱が消えた時「比叡」の後部から黒い煙が上がっていた。
「ひるんではいけません!!攻撃開始!!目標、敵大型潜水艦!!」
 未沙の号令に合わせたかのように各部から報告が届いた。
「第一第二各速射砲準備完了!!弾種鉄鋼弾!!発射します!!」
「対艦ミサイル砲データ入力!!攻撃開始!!」
 次の瞬間、「天龍」右舷の第一艦橋前に設置された15.5センチ第一速射砲が火を噴いた。続いて右舷に据えられたミサイル・ランチャーから対艦ミサイルが発射された。
「司令!!「白神」も砲撃を開始した模様です!!」
 スタッフの言葉に前方を未沙は確認した。重巡「白神」の主砲から煙が上がっている。「白神」は「天龍」よりも一回り大きい20・3センチ単装速射砲が2基装備されている。
 次々と敵艦周辺に水柱が上がる。何発かも命中したようだがよほど装甲が厚い為かあまり手ごたえが無い。
「ミサイル着弾3秒前、3!!2!!1!!」
 オペレーターのカウントダウンに全員が敵艦に目を向けた。しかし、
「ミサイル目標喪失!!命中無し!!」
 艦橋に信じられない報告が届いた。全員が驚きの表情を隠せないでいる。
「くそ!!電波妨害だ!!司令!!ミサイルに対して電磁防壁で迷走させているものと思われます!!」
 スプルーアンス参謀長がそう告げた。いつになく興奮したような言い方だった。
「ミサイルは効果がありません。速射砲と魚雷に頼るしか…」
 その時「天龍」に衝撃が走った。敵の砲弾が甲板端に直撃したのだ。
 艦橋内のスタッフは手近なものにすがって転倒を免れた。
「全員無事!?」
 帽子を落とした未沙がすぐさま声を発した。
「な、何とか無事です。」
「司令、航行に支障はありません。」
 スタッフから声が上がっていた。どうやらけが人はいないようだ。
「司令、甲板右舷後部に直撃弾です。幸い重傷者はいないようです。鋼鉄の甲板が少し傷ついただけで運用に支障はありません。」
 エマ大尉からの報告に全員が安堵した。
 だがまだこれからだ。敵を沈めなければ安心はできない。その時だった。
「監視所より司令室!!バルキリーが敵艦へと向かっています!!」
 その声に未沙は司令席を離れ手近な窓から上空を見上げた。

「ちくしょお!!よくもやってくれたな!!」
 頭に血が上ったロメル・ウォーカー少尉のバルキリーが敵艦へと向かっていく。
「ロメル少尉!!戻れ!!バルキリー一機で突っ込むなんて無茶だ!!」
 そう言って輝が彼の後を追った。
「一発ぶちかましてやる。至近距離じゃ狂わせられねぇだろうよ!!」
 さらに彼はスピードを上げた。視界の中で敵艦が徐々に巨大になってくる。
「もう少しだ、充分引きつけて…」
 ロメルは汗だくであった。恐怖とも興奮とも言えるような気持ちが己を支配して言っているように思えた。ミサイルの発射体勢に入った。
「くらえや!!」
 ロメルがミサイルを放ったその時だった。
「うわっ!!」
 突然敵艦から火花のような光が上がった。すさまじい対空砲火だった。
「くそっ!!」
 あわてて機を上昇にかかる。すぐに敵艦の対空射撃圏外へと脱出を試みる。彼の体がGで座席に押し付けられる。
「ロメル!!後ろだ!!」
 その輝の言葉を聴いた瞬間彼は驚いた。敵艦は対空砲火だけでなくなんと対空ミサイルも放っていたのだ。電磁防壁でミサイル攻撃は出来ないと踏んでいたロメルだったがその考えはあっさり否定された。後に判明したことだが敵の対空ミサイルはコンピューター制御の電波探知方式ではなく単純な熱探知式だったのだ。つまり一定の高度に上がってから熱を探知して追尾するタイプだったのだ。
「しまった!!」
 あわててバトロイドに変形して落下しながらガンポッドとレーザーで対応したが一発がバトロイドの右足を襲った。
「うわぁぁぁっ!!」
 すさまじい衝撃に叫んでいた。

「ロメル!!脱出だ!!脱出しろ!!」
 その一言の為かコックピットから人が飛び出した。まもなくパラシュートが開き彼は海上へと降下していった。
 輝は敵艦に目を向けた。敵は悠々と「天龍」へと向かっていた。

 通信席のエマ大尉がすぐさまヘリ部隊にロメル少尉の救助指示を出した。
 改めて未沙は各艦の様子を見た。「金剛」「比叡」は2,3発を喰らって艦が傾き、「涼月」を除く全艦が大破ないし中破となっている。
 未沙は考えをめぐらせた。このままでは全艦がやられてしまうこともありえなくも無い。ここは一旦後退とも考えた。
 その時、エマ大尉が驚きを隠せない表情で司令席の未沙に振り返った。
「し、司令!!敵艦からの通信です!!メインスクリーンに映します!!」
 全員がさらに驚きメインスクリーンを凝視する。
 間もなくスクリーンが砂嵐から徐々に映像に変わっていった。司令室と思しき背景を背に一人の女性が座っている。大き目のサングラスと長い黒髪が表情を分かりにくくしていたが、一目でアジア系と分かる顔立ちであった。
『新地球統合海軍所属航空母艦「天龍」に告ぐ。貴艦の艦長早瀬中佐と話がしたい。』
 その女性はそう伝えてきた。敵はどうやらこちらのことをある程度知っているらしい。そもそも未沙が艦長と言う事は軍広報の宣伝もあって軍内部では広く知られてもいた。
「「天龍」並びに本特務艦隊司令官、早瀬未沙です。」
 未沙はそう返した。相手は一呼吸置いて返してきた。
「真帝国太平洋艦隊総司令官、ヘルディ・マイヤーだ。「天龍」に告ぐ。直ちに降伏せよ。我々の力は分かったはずだ。貴様らの貧弱な軍艦では相手にならん。素直に従ったほうが身のためだ。」
 一方的にそう告げてきた。
「あなた方は何者です?何故こんなことを起こしたの?」
 未沙が少し語気を強めて相手に言い放った。相手は少し笑みを見せてこう語った。
『しれたことよ!!現在の統合政府はただの飾りに過ぎん。世界の為にも大いなるリーダーの下に全人類は統制されるべきなのだ。現に見てみよ。あのマクロスシティ防衛戦を!!一握りの反乱分子にあれほどまでにやられた政府など必要ない。我々選ばれた人間によって世界を治め、その意志の下において初めて世界は一つとなるのだ。』
 相手の言葉に未沙は少しづつ悪寒に近いものを感じた。敵の司令官はさらにまくし立てた。
『そしてそのための理想こそが我らが仕えるナチスだ!!この艦、潜水戦艦「グナイゼナウ」に描かれた鉤十字の紋章がその証なのだ!!』
 相手は次々と言葉を言い放った。その内容に彼女は驚いていた。いや、彼女だけではない。その場にいた全員が驚きを隠せなかった。ナチスの存在が現代に続いているなど到底信じられない。だが確かに今ここでそれは実在していると全員が認識せざるを得なかった。
『もう一度言う。早く降伏したほうが身のためだ。大型艦艇以外はすでに満身創痍。むざむざやられるだけだぞ。すぐにおとなしく我々の…』
 その瞬間だった。突然遠雷のような音が海上に響き渡った。そして次の瞬間、それまでより二回りは大きいかと思われる巨大な水柱が敵潜水戦艦のそばに立ち上った。

 続く

 急用でしばらく家を離れていた為遅れてしまいました。どうもすいません。
 それと今後についてですが自分は帰省などのため来週一杯は更新を控えさせ頂きます。
 それでは皆さんどうかお体などお気をつけて下さい。次回いよいよ決着です。

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