長らくお待たせいたしました。今回いよいよ第3部終盤です。
ちなみに今回若干気分を害するような描写がございますのでご注意下さい。
鍔迫り合いを続けていた両者が一旦距離をとった。お互いに息を整えている。
周囲では久野一矢大尉をはじめとする面々が固唾を呑んで見守っていた。銃を構えた者、警棒を握った者、果てはフライパンを構えた者までいる。
「はあっ!!」
風見健吾が一気に敵へと警棒を構えて突きを繰り出す。狭い通路の為大振りな攻撃が制限されるのだ。
「むんっ。」
敵は小太刀で受け止めるが風見はそれを狙っていた。
「おらぁ!!」
右脚を繰り出す。剣と格闘を混合した戦いだ。
バシッ、という音が響き渡る。健吾の足技は敵の右腕にガードされた。敵はサウスポーであったために防がれてしまった。
「ちっ!!」
再び距離をとるが今度は敵が突っ込んできた。
キィン!!と高い音をたてて警棒と小太刀が交差する。
「きええい!!」
「やああ!!」
通路に雄たけびが響く。周囲の者達も手に汗握っている。
その最中、健吾は妙な感覚を覚えていた。相手の動きがどこかおかしい。まるで楽しんでいるかのようだ。
だが、ゆっくり考え続ける時間は無い。とにかく敵の攻撃を凌がなければならない。彼は警棒を握りなおした。
艦橋に響いた銃声に誰もが身を堅くした。輝は思わず目を瞑ってしまった。銃口を下げてしまっていたため反撃できなかった。
「ぐああっ!!」
叫びが艦橋に響いた。右腕を抱えてふらついたその男へと一人の影が飛び掛った。
「この野郎!!よくもやりやがったな!!」
飛び掛ったのはなんと柿崎幸雄伍長であった。そして彼が飛び掛ったのは右腕を抑えた偽グラントだったのだ。
その状況に誰もが唖然としていた。なぜ柿崎が動けるのか?誰もが視線を少しずらすとそこに移ったのはさらなる驚愕の状況であった。
「な、なぜだ…。なぜ…」
柿崎に抑えられた偽グラントが驚愕の目で見たのは自らへと構えたワルサーを向けている仲間の男の姿であった。
「残念だったな。お前達の計画はすでに暴露された。」
そう言いながら艦橋へと入ってきたのは情報部のポール・J・フォスター大佐であった。
「グラント大尉、君と同じことを我々もさせていただいたというわけさ。」
「な、なんだと…。」
そのやり取りを見ていた一同を代表するように未沙が問いかけた。
「フォスター大佐、あなたはこの事態を事前に察知していたのですか?」
未沙へと向き直ったフォスター大佐が答えた。
「その通りです。すいません。敵に察知されない為にあえてだまっていたのです。柿崎君には損な役回りを強制することになって申し訳ない。」
そういいながらフォスター大佐は頭を下げた。
「『敵を欺くにはまず味方から』か。柿崎、偶然とはいえ大変な役回りを演じる羽目になったな。」
そう言いながら輝が銃をホルスターへと戻した。沖野誠二中佐もそれにならった。
「しかし、お前もとんだピエロにされたもんだな。」
その誠二の一言に偽グラントは悔しげに唇をかんだ。
「ま、演じていて中々楽しいショーだったよ。」
そう言うとワルサーを構えた男とリモコンを握った女がヘルメットを外した。二人とも20代半ばの日本人に近い面立ちであった。
「おれは木戸丈太郎。愛称はキッド、特技は射撃だ。よろしく。」
「私はエンジェル・お町。お町って呼んでね。爆弾はニセモノばかりだから心配ないわ。」
そう言うとお町はリモコンのスイッチを押して見せた。
「そろそろハンニバル大佐たちも他の連中を抑えている頃だ。」
キッドのその言葉に対してグラントはうめいた。
「くそぅ!!よくも、よくも!!」
その時だった。グラントが口から血を吐き始めた。
「きゃあああ!!」
エマ少佐の叫び声が響き、思わずグラントを抑えていた柿崎伍長が彼を放した。艦橋にいた全員が緊張の度合いを高めた。
グラントの顔色が見る見る蒼白となっていく。
「ぐっ…、い、今に…逆らった…お前達も、地獄行きだ…ハ…ハイル…ブ…」
そう言うと自らの喉を掴みながらグラントは倒れこんだ。
全員が言葉を失った。少し間をおいて誠二が片手に銃を構えたまま傍にしゃがみこんで首筋に手を当てた。
首を振りながら彼は口を開いた。
「絶命しています。どうやら毒物を隠し持っていたようです。」
それを聞いて銃を構えていた全員がホルスターへとしまい始めた。
フォスター大佐が保安員へと指示を出す。
「遺体安置室へ頼む。」
その一言に直ちに二人の保安員が担架を使って艦橋から運び出していった。
「早瀬司令、自分は所持品の調査と検死に立ち会いますので、失礼致します。」
フォスター大佐はそう言うと敬礼して艦橋から出て行った。キッドとお町も「お騒がせしました。」と言いながらそれに続いて出て行った。
「エマ少佐、各艦へ通達、戦闘態勢解除、警戒続行。」
場が落ち着くようにと未沙が軍帽を被りなおしながら指示を出した。
が、艦橋内は静まり返っている。
全員の視線がエマ少佐へと注がれる。彼女はそれにも気付かず、ただ大きなショックを受けたようにたたずんでいた。
「エマ少佐!!」
未沙の言葉が響いてエマは驚いた。
「は、はい!?」
「しっかりしなさい。各艦へ通達、戦闘態勢解除、警戒続行。」
「イ、イエッサー!!」
そういうと彼女は手元のコンソールを少しおぼつかないように操作し始めた。
そんな彼女へと沖野誠二少佐が近づき方に手を置いて語りかけた。
「大丈夫だ。おれがついてる。」
その一言に彼女は気を持ち直したようだ。
「はいっ!!」
そういう二人に注意を奪われたメンバーは気付かなかった。早瀬司令と一条中佐がいつの間にか並んで手を握り合っていたことに。
「もう一丁あがり!!」
そういうと男は抱えていた人間を倉庫の中へ放り込んだ。放り込まれた男は縛り付けられており小さなうめき声を発したのみですぐに押し黙った。倉庫の中には同じ様に縛り付けられた男が4人いた。
「とりあえず片付いたな。ハンニバル。」
愛用のグロック19自動拳銃をホルスターへとしまいながらフェイスはハンニバルへと語りかけた。
「さてと、そろそろあいつを止めに行くとしようか。三人とも、そいつらから目を離すな。」
そう言うとハンニバルは愛用の葉巻に火をつけて倉庫から出て行った。
すると猿轡をした一味の一人にモンキーが話しかけていた。
「どう?ビリーってんだよ!!おれのかわいいペットさ!!おいおいそんなにこわがんなよ!!」
モンキーはまるで子犬をあやすかのような動作をしているが何もいない。
キョトンとしている男へとフェイスが話しかけた。
「ここには犬がいるのさ、かわいいやつがね。」
それを聞きながらコングがため息をついたのをモンキー以外のその場の全員が気付いた。
次回に続きます。いよいよ次回第三部終了です。
まだ冬本番ですので、皆様寒さなどには充分お気をつけてください。
ちなみに今回若干気分を害するような描写がございますのでご注意下さい。
鍔迫り合いを続けていた両者が一旦距離をとった。お互いに息を整えている。
周囲では久野一矢大尉をはじめとする面々が固唾を呑んで見守っていた。銃を構えた者、警棒を握った者、果てはフライパンを構えた者までいる。
「はあっ!!」
風見健吾が一気に敵へと警棒を構えて突きを繰り出す。狭い通路の為大振りな攻撃が制限されるのだ。
「むんっ。」
敵は小太刀で受け止めるが風見はそれを狙っていた。
「おらぁ!!」
右脚を繰り出す。剣と格闘を混合した戦いだ。
バシッ、という音が響き渡る。健吾の足技は敵の右腕にガードされた。敵はサウスポーであったために防がれてしまった。
「ちっ!!」
再び距離をとるが今度は敵が突っ込んできた。
キィン!!と高い音をたてて警棒と小太刀が交差する。
「きええい!!」
「やああ!!」
通路に雄たけびが響く。周囲の者達も手に汗握っている。
その最中、健吾は妙な感覚を覚えていた。相手の動きがどこかおかしい。まるで楽しんでいるかのようだ。
だが、ゆっくり考え続ける時間は無い。とにかく敵の攻撃を凌がなければならない。彼は警棒を握りなおした。
艦橋に響いた銃声に誰もが身を堅くした。輝は思わず目を瞑ってしまった。銃口を下げてしまっていたため反撃できなかった。
「ぐああっ!!」
叫びが艦橋に響いた。右腕を抱えてふらついたその男へと一人の影が飛び掛った。
「この野郎!!よくもやりやがったな!!」
飛び掛ったのはなんと柿崎幸雄伍長であった。そして彼が飛び掛ったのは右腕を抑えた偽グラントだったのだ。
その状況に誰もが唖然としていた。なぜ柿崎が動けるのか?誰もが視線を少しずらすとそこに移ったのはさらなる驚愕の状況であった。
「な、なぜだ…。なぜ…」
柿崎に抑えられた偽グラントが驚愕の目で見たのは自らへと構えたワルサーを向けている仲間の男の姿であった。
「残念だったな。お前達の計画はすでに暴露された。」
そう言いながら艦橋へと入ってきたのは情報部のポール・J・フォスター大佐であった。
「グラント大尉、君と同じことを我々もさせていただいたというわけさ。」
「な、なんだと…。」
そのやり取りを見ていた一同を代表するように未沙が問いかけた。
「フォスター大佐、あなたはこの事態を事前に察知していたのですか?」
未沙へと向き直ったフォスター大佐が答えた。
「その通りです。すいません。敵に察知されない為にあえてだまっていたのです。柿崎君には損な役回りを強制することになって申し訳ない。」
そういいながらフォスター大佐は頭を下げた。
「『敵を欺くにはまず味方から』か。柿崎、偶然とはいえ大変な役回りを演じる羽目になったな。」
そう言いながら輝が銃をホルスターへと戻した。沖野誠二中佐もそれにならった。
「しかし、お前もとんだピエロにされたもんだな。」
その誠二の一言に偽グラントは悔しげに唇をかんだ。
「ま、演じていて中々楽しいショーだったよ。」
そう言うとワルサーを構えた男とリモコンを握った女がヘルメットを外した。二人とも20代半ばの日本人に近い面立ちであった。
「おれは木戸丈太郎。愛称はキッド、特技は射撃だ。よろしく。」
「私はエンジェル・お町。お町って呼んでね。爆弾はニセモノばかりだから心配ないわ。」
そう言うとお町はリモコンのスイッチを押して見せた。
「そろそろハンニバル大佐たちも他の連中を抑えている頃だ。」
キッドのその言葉に対してグラントはうめいた。
「くそぅ!!よくも、よくも!!」
その時だった。グラントが口から血を吐き始めた。
「きゃあああ!!」
エマ少佐の叫び声が響き、思わずグラントを抑えていた柿崎伍長が彼を放した。艦橋にいた全員が緊張の度合いを高めた。
グラントの顔色が見る見る蒼白となっていく。
「ぐっ…、い、今に…逆らった…お前達も、地獄行きだ…ハ…ハイル…ブ…」
そう言うと自らの喉を掴みながらグラントは倒れこんだ。
全員が言葉を失った。少し間をおいて誠二が片手に銃を構えたまま傍にしゃがみこんで首筋に手を当てた。
首を振りながら彼は口を開いた。
「絶命しています。どうやら毒物を隠し持っていたようです。」
それを聞いて銃を構えていた全員がホルスターへとしまい始めた。
フォスター大佐が保安員へと指示を出す。
「遺体安置室へ頼む。」
その一言に直ちに二人の保安員が担架を使って艦橋から運び出していった。
「早瀬司令、自分は所持品の調査と検死に立ち会いますので、失礼致します。」
フォスター大佐はそう言うと敬礼して艦橋から出て行った。キッドとお町も「お騒がせしました。」と言いながらそれに続いて出て行った。
「エマ少佐、各艦へ通達、戦闘態勢解除、警戒続行。」
場が落ち着くようにと未沙が軍帽を被りなおしながら指示を出した。
が、艦橋内は静まり返っている。
全員の視線がエマ少佐へと注がれる。彼女はそれにも気付かず、ただ大きなショックを受けたようにたたずんでいた。
「エマ少佐!!」
未沙の言葉が響いてエマは驚いた。
「は、はい!?」
「しっかりしなさい。各艦へ通達、戦闘態勢解除、警戒続行。」
「イ、イエッサー!!」
そういうと彼女は手元のコンソールを少しおぼつかないように操作し始めた。
そんな彼女へと沖野誠二少佐が近づき方に手を置いて語りかけた。
「大丈夫だ。おれがついてる。」
その一言に彼女は気を持ち直したようだ。
「はいっ!!」
そういう二人に注意を奪われたメンバーは気付かなかった。早瀬司令と一条中佐がいつの間にか並んで手を握り合っていたことに。
「もう一丁あがり!!」
そういうと男は抱えていた人間を倉庫の中へ放り込んだ。放り込まれた男は縛り付けられており小さなうめき声を発したのみですぐに押し黙った。倉庫の中には同じ様に縛り付けられた男が4人いた。
「とりあえず片付いたな。ハンニバル。」
愛用のグロック19自動拳銃をホルスターへとしまいながらフェイスはハンニバルへと語りかけた。
「さてと、そろそろあいつを止めに行くとしようか。三人とも、そいつらから目を離すな。」
そう言うとハンニバルは愛用の葉巻に火をつけて倉庫から出て行った。
すると猿轡をした一味の一人にモンキーが話しかけていた。
「どう?ビリーってんだよ!!おれのかわいいペットさ!!おいおいそんなにこわがんなよ!!」
モンキーはまるで子犬をあやすかのような動作をしているが何もいない。
キョトンとしている男へとフェイスが話しかけた。
「ここには犬がいるのさ、かわいいやつがね。」
それを聞きながらコングがため息をついたのをモンキー以外のその場の全員が気付いた。
次回に続きます。いよいよ次回第三部終了です。
まだ冬本番ですので、皆様寒さなどには充分お気をつけてください。
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