日本艦隊司令部

小説、アニメ、特撮、刑事ドラマ、映画などの語り

衝撃

2011-02-19 16:23:43 | マクロス 小説 第一部 運命の出航編
 ついに第1回戦は今回で終了ですが・・・

 「天龍」を狙ったのは1隻の潜水艦であった。真帝国製主力潜水艦「Uボート・11型」。彼らは「天龍」攻撃後に潜水して様子を伺っていた。
「艦長、どうやら魚雷はすべてかわされたようです。もう一度やってみますか?」
 艦橋にいた聴診器係(ソナーマン)が聴いた。
「やめておこう。まだ作戦は始まったばかりだ。それにすぐに哨戒ヘリが飛んでくるだろう。どうせ行き先はわかっている。このまま潜水継続。」
 艦は暗い海中をゆっくりと沈んでいく。

 その頃、被弾した軽巡洋艦「イエローアーク」を逃がす為「天龍」航空隊は奮戦中だが。
「やっほう!!かるいかるい!!」
 そんな声がヘルメットに内蔵されたヘッドフォンから漏れてきた。隊長機のやや左前方を飛ぶバルキリーからであった。
「第4小隊ロメル少尉、落ち着け。興奮するな。」
 航空隊長の輝は第4小隊長ロメル・ウォーカー少尉にそう伝えた。だが・・・
「一条隊長、さっさと片付けましょうや。のんびりしてっと流れ弾に当たっちまいますぜ。」
 そう言って彼は笑った。上官を小ばかにするような物言いをする彼に同僚が語りかけた。
「ロメル、言葉が過ぎるぜ。」
 そう言ってきたのは第3小隊長ギム・ケイリング少尉だ。
「ギム、おれは真実を言ったまでだ。周りに気をつけてねぇとすぐにおとされちまうぜ。そうですよねぇ一条隊長。」
 輝は彼の口調から挑発してるのがわかっていたが落ち着いてこれに対応する。
「ロメル少尉、君の言うとおりだ。」
 それを聴きいっそうロメルは気分を良くした。
「それみろ!!はははは!!」
「だが…。」
 輝がそう言った次の瞬間、ロメル機の右側で爆発が起こった。
「戦場で調子に乗るんじゃない。今君は敵に側面を突かれるところだったんだ。」
「……。」
 ロメルは言葉が出なかった。後ろを見やると一条機が別の敵を追うのが見えた。

 一方その頃被弾した「イエローアーク」は「天龍」と接触しつつあった。
 未沙は右舷前方の明るくなった海面に視線を注いでいた。それは燃える巡洋艦によって海面が照らされている様だ。「天龍」から飛び立った第2小隊のバルキリーによって懸命な消火活動と救助作業が行われていた。
「司令、第1航空隊の一条少佐より通信です。敵機撃破、これより帰還します。各機損傷軽微、脱落機なしとのことです。」
 オペレーターのエマ大尉からそう報告されて全員が安堵した。
「では返信をお願いします。『無事帰還されたし』と。」
「了解。」
 とりあえず危機は脱したがまだ終わりではない。その時、艦橋へある人物が入ってきた。
「司令、失礼致します。」
 そう言って入ってきたのは風見健吾であった。今回オブザーバーとしてこの間に乗りこんでいる格闘教官だ。背は高く190近い。後ろには顔に外傷用ガーゼを貼った男性が続いていた。
「対象艦の司令官をお連れいたしました。」
 そういうと後ろの男性が未沙に敬礼し声を発した。
「新地球統合海軍太平洋第9艦隊所属軽巡洋艦「イエローアーク」指揮官スコット・S・リーチ少佐であります。我々に対する救助活動に感謝いたします。」
 彼はそう自己紹介した。
「新地球統合海軍日本支部所属空母「天龍」指揮官早瀬未沙中佐です。」
 そう言って握手を交わす。続いて
「艦隊参謀長のデビッド・E・スプルーアンス少佐です。」
 スプルーアンス参謀長とも握手を交わす。すると
「あなたがスプルーアンス少佐ですか。お爺様のご高名は伺っておりますよ。」
「いえいえあなたのお爺様も立派なかたです。」
 そう言って挨拶を交わした。未沙はこの時知らなかったが実はこの二人は太平洋戦争に関わった提督の孫達であったのだ。
「ところでリーチ少佐、たしか太平洋第9艦隊といえば輸送関係の海上護衛司令部に所属する艦隊であったはず。一体何があったんですか。」
 スプルーアンス参謀長がそう尋ねた。
「実は先日よりマリアナ諸島近辺からフィリピン方面にかけて船舶の遭難が起こっており調査に向かったのです。ところが謎の潜水艦に突如攻撃を受けてしまい艦隊の護衛駆逐艦が数隻やられました。そこで本日夕方にフィリピンへ向かったのですがなんとフィリピン基地が攻撃を受けていたのです。」
 それを聴き艦橋にいた全員が驚愕した。
「なんですって!?」
 司令である未沙も驚きを隠せない。
「本当です。我々が確認した敵は空母1隻に巡洋艦が3隻以上、それに無数の駆逐艦を従えておりました。」
「もしや先刻より各基地と連絡が取れないのは…。」
 そう言ったスプルーアンス参謀長に向けリーチ少佐はうなずいて見せた。
「残念ながらフィリピン基地は壊滅的打撃を受けたでしょう。我々は敵の攻撃により命からがら脱出しました。しかし、敵を前にして逃げるなど…」
 そう言ってリーチ少佐は目を伏せた。実に悔しかったのだろう。
「わかりました。よくこの事実を伝えてくださいました。とにかく日本支部に急ぎ連絡を取りあなた方をヘリで近くの基地へ送り届けましょう。」
 その時、オペレーターのエマ大尉が声を発した。
「司令!!やっと日本支部に繋がりました。」
 同時に少々画像が悪いが日本支部長の草鹿正則中将がメインパネルに映った。
「早瀬司令、無事だったか。」
 思わず草鹿長官の顔が安堵したように思えた。未沙が敬礼して報告を始める。
「草鹿長官、ご心配お掛け致しました。本艦はSOS信号を海上にてキャッチしマリアナ方面へ向かいました。」
「うむ、ようやくこちらでも情報が入り始めた。衛星から確認したよ。」
「長官、本艦は第9艦隊に所属する巡洋艦「イエローアーク」を救助。途中謎の敵に攻撃を受けました。」
 だが、草鹿長官は少し驚いただけですぐに返した。
「そうか、詳しい報告は後で受けるとしてこちらでも大変な事態となったので連絡を取ったんだ。」
「どうされたのですか?」
 未沙がそう聞くと草鹿長官は神妙な面持ちで返した。
「実はな、シンガポールに集結していた演習艦隊が謎の勢力による攻撃を受けて壊滅的打撃をこうむったのだ。」
 その瞬間、艦橋にいた誰もが息を呑んだ。ちょうど飛び立っていたバルキリー隊が帰還してきた頃であった。

 一方その頃、「天龍」の現在地からはるか南東にマリアナ諸島をも越えた先に新地球統合軍トラック拠点がある。小さな島だが海上交通の要所の一つである。ここに1隻の巨艦が来ていた。「天龍」よりも一回り大きいその艦は暗闇の中でも存在感が大きかった。
「各艦準備は?」
 艦橋では司令官が部下にそう尋ねた。
「補給完了、いつでも行けます。」
「よろしい。全艦錨を上げろ!!これより出撃だ!!目標はフィリピン方面。」

続く

以上です。第1回戦は直接対決とはならなかった「天龍」ですがこれからどうなるのか。
ご期待下さい。

急襲!!

2011-02-13 22:32:20 | マクロス 小説 第一部 運命の出航編
 なんとか初の週連投稿です。襲撃を受けた「天龍」は!?



 「天龍」の官製コンピューターに敵魚雷のデータが入力された。数は4本、速度換算によればあと約1半分後に到達すると予測。すぐさま航海班長の天野純大尉が機関部へと指示を送る。
「機関長!!緊急全速!!缶(『かま』・エンジンのこと)を限界値まで上げてください!!急速廻頭取り舵いっぱい!!」
 すると今度は司令の未沙がマイクを掴んだ。
「こちら艦隊司令の早瀬です。本艦に向け魚雷が接近中!!全艦非常戦闘配置!!」
 続いてスプルーアンス参謀長が指示を各部署へと出す。
「防御用デコイ爆雷緊急発射!!第二速射砲および左舷機銃群仰角下げ!!魚雷に即時対応せよ!!」

 「天龍」は新たに設計された攻撃型航空母艦である。モデルは旧日本海軍の空母「翔鶴」だが攻撃力はその比ではない。全長は250メートル、基準排水量2万9000トン(船をプールに入れてあふれる水の量)、搭載機数はバルキリー型戦闘機最大38機、哨戒ジェットヘリ5機、速力は39ノット(時速約75キロ)武器は主砲15.5センチ単装速射砲両舷各一基、52ミリ対空バルカン砲六基、同じく対空25ミリ機関砲二十挺、対空ミサイル発射基四連装型両舷各二基装備されている。また飛行甲板後方には魚雷防御用のデコイ爆雷(魚雷防御用の広範囲型水中爆弾)発射装置が用意されている。
「命令だ!!爆雷発射!!左舷一杯にぶちまけろ!!」
 爆雷班長の命令が出されるや班員の手でタイミングを見計らい計9発の爆雷が発射された。

 艦橋で指揮を執る未沙は“バシュッ”と言う音に反応して左舷を向いた。遠方の暗い海面に向かって火を噴く物体が発射された。爆雷が着水すると間もなく爆発音と共に海面に水柱が出現した。その数を未沙は2本と思った。だが実際は3本であった。それを裏付ける連絡が艦橋に響いた。
「こちら水中聴音室。魚雷爆発音確認!!数は3!!」
 艦橋に緊張が走った。まだ1本こちらに魚雷が向かっている。誰もが息を呑んだ。
「大丈夫です!!間もなく廻頭完了します!!回避可能です。」
 そう言ったのは航海長の天野大尉だ。彼は舵輪を一杯に回して舵をとっている。
 だがその後約1分間、未沙は人生でその時間をもっとも長く感じた。握った手のひらに汗がにじむ。なぜなら水中から恐るべき物がこちらを狙っているのだから。
「こちら水中聴音室。魚雷は回避しました。」
 その言葉に艦橋の全員は緊張を解いた。しかし未沙は毅然として声を発した。
「まだ終わりではありません。前線にいるバルキリー隊に応援を!!第二航空隊の発進を急がせなさい!!」

 バルキリーのコックピットで輝は不思議に思っていた。敵は約20機前後、型は以前の主力戦闘機F-2に似ている。
 だがそれ以前に輝は敵機に不審に思っていることがあった。すでに彼は2機墜としたのだが敵機の動きにある程度のリズムがあるあること、操縦に違和感を感じたことだ。すると、輝のもとにオープンにした通信機から疑問を発して来た。
「一条隊長、戦闘中にすいません。自分は敵に違和感を覚えました。」
 それは第一小隊の隊長久野一矢中尉であった。
「久野中尉、君もそう思うか?」
「はい、敵の動きが妙に思えます。やはり隊長も。」
「ああ、だが今はまずい。帰還したらゆっくり話そう。今は目の前に集中するんだ。」
「はい!!」
 そう言って通信は切れた。
 再び敵機を輝が追う。すると輝は後ろから同じように僚機が追って来た。その時、なんと僚機は輝のバルキリーにかすめるほどの勢いでガンポッドを放った。
「!!」
 驚いた輝は右に旋回、敵機は火を噴いて墜落していった。オープンに
「よっしゃあ!!二つめ!!」
 そんな声が輝の耳に響いてきた。


 次回でこの海戦は終了です。
 まだ寒い日が続きますので皆様お気をつけて下さい


開戦

2011-02-06 18:08:49 | マクロス 小説 第一部 運命の出航編
 遅くなってすいません。やっとインフルも収まって感染した家族も復帰しました。約一ヶ月間皆様ご心配とご迷惑をお掛けしてすいませんでした。それではどうぞ



 2012年1月16日午後11時35分。新地球統合海軍日本支部通称瀬戸基地では第二種戦闘体制が取られていた。事態は星間大戦後初とも言える異常が発生していたのだ。司令官の草鹿正則中将は司令席に座り電話を掛けていた。
「はい、こちらはすでに準備完了です。いかなる事態にも対応出来ます。はい、自分もそう思います。では、了解しました提督。」
 そう言って草鹿長官は受話器を置いて傍に就いている通信参謀に訊ねた。
「状況はどうだ!?」
 通信参謀の顔は浮かない。
「だめです。フィリピン基地、ベトナム基地、香港基地のいずれも応答ありません。太平洋第6艦隊、第9艦隊も応答無し。天龍艦隊とも連絡が取れません。」
 草鹿長官は腕を組み考えていた。これは恐れていた事態が始まったにちがいない。そう思ったとき、並んでいた基地首脳の一人、海上部隊幕僚長鮫島欣也少将が意見を発した。
「長官、各基地に艦隊を派遣してはいかがでしょうか。情報を集めなければ今後に響きます。」
 草鹿長官はその意見には賛成すべきか迷った。確かにこれが何らかの事件だとすればこちらは情報に遅れることは良くない。調査は必要だが
「鮫島君、私もそれには賛成だがもしも奴らの仕業だとすればこの基地を狙うための陽動とも考えられる。その時に対抗する為の戦力を割くのは好ましくない。それよりも確かソロモン海域で正木俊介大佐の第20艦隊が演習航海に出ているはずだ。彼に頼もう。」
 そう言って彼は電文を通信参謀に書き上げて手渡した。
『現時刻を持って貴艦隊は演習を中断し即時補給の後にフィリピン海域に居ると思われる空母「天龍」に連絡を取りこれに合流されたし。なお艦隊司令は新地球統合軍中佐早瀬未沙司令である。彼女をよろしく頼む。』

『全艦第二種警戒体制!!乗務員は各部署へ速やかに着いてください。これは演習ではありません。繰り返します。これは演習ではありません。』
 空母「天龍」に警戒を示すアナウンスが流れており艦内は騒然となっている。砲術班、機関班、航海班、整備班と各々目が廻るような忙しさである。
 格納庫では次々に整備されたバルキリーがアイドリングされてパイロットを待っていた。その中で一人の初老の男性が声を荒げて若い整備員を叱咤している。
「おら急がんかい!!もたもたするな!!いいか!!ちゃんと機体を渡せなかった奴は甲板から叩き落してやる!!」
 そう言ってまくし立てているのは整備班長の小滝勇太郎だ。齢59歳だが現役のバリバリで航空自衛隊の整備上がりだ。手がけたマシンは「セイバー」「F-1ファントム」「T-7」「F-2」「F-14トムキャット」「F-15J」と数々の実績を持っている。
 そこへ航空隊のメンバーがやってきた。彼らの中からトップに走ってきた隊長が小滝班長に近寄り敬礼をし、小滝班長もそれに応えた。
「小滝班長!!ご苦労様です。当直の第一中隊これより発進準備に入ります。」
「一条少佐、全機整備は万全です。お気をつけて。」
「ありがとうございます。」
 そういうと輝は自分の愛機“スカルリーダー”へと向かった。コックピットの整備員が降りて機体の下で敬礼をする。輝はそれに応えるとすぐさま自分の席へと着いた。
「スカルリーダーよりブリッジへ。各機発進準備完了。指示を待つ。」
 すぐさまブリッジのオペレーターエマ・グレンジャー大尉から返事が来た。
「ブリッジ了解。出動許可します。」
 すぐさま輝のスカルリーダーがエレベーターへと引かれていき甲板へ上げられる。
 甲板では配置員が赤色灯で誘導してカタパルトに載せる。その時艦橋から通信が入った。
「こちらブリッジ。スカルリーダー、どうか気を付けて。」
 未沙の声だった。輝は今一度気を引き締めて応答した。
「こちらスカルリーダー。只今より発進します。」
 やがてゴーサインと共にスカルリーダーは猛スピードで走り出して甲板から飛び立った。
 その様子を甲板脇から見ていた風見健吾は愛銃を手に持ってこうつぶやいていた。
「あんたの弟分、しっかり見せてもらいますよ。」
 その少し型の古いリボルバーのグリップには持ち主のイニシャルが刻まれていた。“R・F”と。

 総数17機の「天龍」第一航空隊が指定された方角へ向かって編隊を組んで飛行すること約15分。レーダーが一隻の艦影を捉えた。おそらくSOSを発信しているのはこの艦だろう。
 だが輝はいぶかしく思っていた。「天龍」でも遠距離のレーダーが不調らしい。対象まで約90キロ。見えるまでもう数分だ。
 そして数分後、海上に輝は突如明かりを見たように思えた。実はそれこそ輝が探しているものであった。

 燃え盛る軽巡洋艦「イエローアーク」の艦橋で指揮を執るスコット・S・リーチ少佐はレーダー係の隊員から死刑宣告に近い言葉を受けていた。
「後方より飛行編隊をキャッチ!!高速にて接近中!!数はおよそ20!!」
「各員対空戦闘用意!!全火力防空体制!!」
 しかしそれは無意味だろうと思っていた。もう艦速も17ノット(時速30キロ)にまで落ちてしまった。相手に攻撃されればいちころだ。対空ミサイルもすでに切れた。頼みは主砲の14センチ速射砲と対空25ミリ機関砲だが度重なる攻撃と火災で半数がやられた。
 もうだめだ。そう思った時であった。再びレーダー係が報告を発した。
「前方より飛行編隊をキャッチ。機数約10数機。」
 この先も敵に封鎖されたか。だが通信員が意外な報告をもたらした。
「通信をキャッチ!!前方の編隊は友軍です!!」
 すぐさまスピーカーに通信がつなげられた。
『こちら新地球統合海軍日本支部所属空母「天龍」第一航空部隊。只今より貴艦を援護する。』
 艦橋に居た全員が安堵の吐息を漏らした。艦を指揮するリーチ少佐もそうだったがすぐに考えを切り替えた。後部に敵のミサイルが命中したのだ。
「安心するのはまだ早い!!各部の補修を急げ!!当海域より全速で退避!!」
 そして頭上で激しい空中戦が始まった。

 すでに日付が変わった。時に西暦2012年1月17日。「天龍」に通信が入った。オペレーターのエマ・グレンジャー大尉が報告をした。
「早瀬司令、第一航空隊長の一条少佐から通信です。『対象艦を確認。対象は新地球統合海軍の巡洋艦。大破炎上中の模様。なお、別方向より飛行編隊襲来。通信不能と対象艦への攻撃により敵機と判断。戦闘を開始せり。』」
 艦橋の全員が驚いた。本格的な航空戦など星間戦争以来のことである。
「新たな反抗勢力でしょうか?」
 スプルーアンス参謀長が未沙にたずねた。
「かも知れませんね。もしかするとまたあの統合戦争のような人類紛争が起こるのかもしれません。エマ大尉、今回の仔細を統合軍本部と日本支部へ伝えてください。」
 通信席のエマ大尉は振り返って首を横に振りながら答えた。
「司令、だめです。航空隊と艦隊内の近距離通信以外の交信不能です。」
 スプルーアンス参謀長が自説を述べた。
「まさか、何者かの妨害では…。」
 その時だった。さらに驚愕すべき通信がブリッジに届いた。
「左舷哨戒任務中のジェットヘリ“白神”3番機より緊急通信!!『左舷より本艦隊に向け魚雷失踪中!!進路から「天龍」向かう模様、至急回避されたし!!』」

 続く

 以下次回ご期待下さい。

2012年1月16日

2010-12-31 22:15:07 | マクロス 小説 第一部 運命の出航編
 ついに現れる謎の敵。はたして「天龍」はどうなるのか


 2012年1月16日夕刻。すでに「天龍」が瀬戸基地を出航して2日目になる。今日は発艦及び模擬戦、編隊飛行、着艦などの訓練をこなした。また甲板を利用したランニングや格闘訓練も行った。その結果今日は失敗者も無かった為甲板に人影はほとんど無かった。
その甲板の上で一人の男がラジオを聴きながらラムネを飲んでいた。1月ではあるが南下するにつれて気温も上がり格闘訓練の後に全員にラムネが支給された。汗だらけの若者達はビンを片手にそれぞれに艦内へと入っていった。男はいつもこの時間に始まるラジオ番組が好きで携帯ラジオを肌身離さず持っていた。
 彼の名は風見健吾。この天龍の航海にオブザーバーとして参加している瀬戸基地の格闘戦講師である。彼は現在26歳にして元陸上自衛隊の特殊部隊出身であり、ある人物に招待されマクロスに乗った。彼はマクロス艦内で格闘技の講師をしながらテレビ関係のスタントなどで生計を立てていた。そんな彼の趣味は音楽でいつも雑誌や携帯プレーヤー、ラジオなどを携帯している。

「みなさん、こんにちわ。夕刻音楽展の時間がやってまいりました。日本地区から遠く離れたあなたへ懐かしいあの曲をお届けします。私はパーソナリティをつとめます長谷川義治でございます。どうぞよろしくお付き合いくださいませ。」
 やさしいワルツ風の音楽が流れ、少し世間話のような前口上が続き、司会者の饒舌な語りが始まった。
「さて、本日はなつかしの昭和特集ということで数々のリクエストが入っております。昭和の名曲は今聞いても実にいい物です。では早速最初のリクエストです。ラジオネーム「レクイエム」さんからのリクエストです。『今は遠くへ行ってしまったあの人の好きだった曲です。今ももしどこかでこの曲を聴いていることを願っています。一番の思い出の曲』だそうです。それでは聴いていただきましょう。1981年寺尾あきらさんの「ルビーの指輪」です。」
 それを聞き風見は驚いた。それは自分にとっても思い出深い歌だった。その曲は自分の父親が自分に教えてくれたお気に入りの歌であり、かつて別れてしまったある女性に初めて歌って聴かせた曲でもある。今その女性がどうなっているのか彼は知らない。だがこのリクエストをした人物と同じようにこの曲を思い出にしてどこかで聴いているような気が彼にはしていた。
 そして彼は沈み行く夕陽に向かってポツリとつぶやいていた。
「晴海・・・。」

 ちょうどその頃のことである。インド洋への入り口付近マレー沖の海底に巨大な艦がゆっくりと航行していた。それは一隻の巨大な潜水艦であった。
 そのブリッジで指揮を執る人物は司令席に背中を預けイヤホンを耳に入れながら笑っていた。
(自分のリクエストがこんな大事な時に選ばれるなんてね。)
 そう思いながら彼女はその相手のことを思い出していた。今生きているのかも分からない一人の男性を。
(でも、もう私は昔の自分ではない。自分は今は真帝国太平洋艦隊司令長官ヘルディ・マイヤーだ。)
 彼女は自分にそう言い聞かせていた。その時部下から声が掛かった。
「司令、各部隊より連絡。準備完了、指示を待つ。」
 ちょうど曲が終わった頃合、時間どうりだ。彼女はそう思い歴史に残るであろう言葉を発した。
「よろしい!!本日を持って作戦開始!!我らこそがすべてを導く先導者であり世界を統べる者なり!!統合政府の時代は終わったのだ。全員奮起して今こそ立ち上がるのだ!!」

 その夜、南下を続ける天龍艦隊は沖縄諸島と台湾の中間を少し南に下った辺りにいた。艦隊速度は12ノット(時速約23キロ)である。
 時間は1月16日午後11時前。
 このとき司令である早瀬未沙中佐は当直をすでに終えて自室に戻っていた。彼女は部屋で紅茶を用意してまもなく同じく当直を終える人物がやってくるのを待っていた。
「さてと、あとは来るのを待つばかり。」
 今の彼女を見て厳しい艦隊司令などと思うものはいないであろう。だが、
 ピィーッ、ピィーッ
 その甲高い音は部屋にあるテレビ電話の音だ。彼女が受話器をとると画面にデビッド・E・スプルーアンス参謀長が現れた。
「司令、お休みのところ申し訳ありません。艦橋までお越し願いたいのです。」
「分かりました。すぐに参ります。」
 幾分がっかりしたが自分を呼ぶということは何か司令の判断を必要とする状況ということである可能性が高い。そう思い彼女は急いで艦橋へと向かった。

 未沙が艦橋に姿を現すと全員が一斉に敬礼した。その中には当直の航空隊長である輝の姿もあった。敬礼を返しながら艦橋中央のスプルーアンス参謀長に未沙がたずねた。
「一体何事ですか?」
「司令、実は数分前に通信長のエマ大尉が友軍のSOSシグナルを受信しました。」
「何ですって!?」
 未沙は驚いた。そして通信長のエマ・グレンジャー大尉に意見を求めた。
「エマ大尉、説明してください。」
「はい、これをご覧下さい。」
 そう言ってエマは自分のコンソールから一枚の記録用紙を手にとって未沙に見せた。
「これは統合海軍で使用されている無線通信用のSOS信号です。しかしかなり微弱でノイズにまぎれていました。もしかすると無線もろくに機能していないのかもしれません。」
「この通信は一体どこから?」
 未沙がそう質問すると航海長の天野純大尉が海図を指し示して説明した。
「距離は分かりませんが、方角は本艦の進路から左舷へ約70度方向。マリアナ方面です。」
「早瀬中佐、すぐに偵察隊を発艦すべきです。」
 そう進言したのは輝だった。
「もし何かが起こっているのなら見過ごすわけには行きません。本艦の当直バルキリー隊を発進させて警戒すべきです。」
 これにスプルーアンス参謀長が同調した。
「私も同意見です。ここは一刻も早く状況を解明すべきです。」
 未沙もそれには賛成であった。一日分ぐらいなら時間もあまるように計算された航海でもあるので演習に遅れる心配も無い。未沙は冷静に命令を出した。
「分かりました。では一条少佐、すぐに準備に取り掛かってください。エマ大尉は重巡「白神」で指揮を執る日向少佐に警戒するように連絡を、天野大尉は航路変更の作業をしてください。これより本艦は第2種警戒態勢に入ります。」
 それを聞き各員はそれぞれの部署へと向かった。時計はもうすぐ日付が変わることを知らせていた。


遅れに遅れた今年最後の更新です。どうもすいません。では皆様良いお年をどうぞ。今年一年ありがとうございました。

出航

2010-12-06 15:56:21 | マクロス 小説 第一部 運命の出航編
 お待たせしました。やっと出航です。


 瀬戸基地の沖合いに投錨している空母「天龍」の出航の日が来た。右舷前寄りに配置された第一艦橋(ブリッジ)から司令の早瀬未沙中佐は双眼鏡で基地内の滑走路を見ていた。滑走路では現在搭載される予定のバルキリー隊が集まってきていた。
「参謀長、着艦訓練開始まであとどれくらいですか?」
 そう言って未沙は後ろに控える艦隊参謀長のデビッド・E・スプルーアンス少佐に双眼鏡をはずして向き直った。
 スプルーアンス参謀長は腕時計を見て答えた。
「あと20分後です。まもなく出航ですから。すでに護衛艦隊の第8戦隊重巡「雲仙」「白神」の二隻が合流すべく紀伊水道を北上しております。」
「ありがとう。時間通りですね。とにかく最初の訓練だからといって失敗は許されません。事故も然りです。」
 そういうと未沙はブリッジ中央の海図へと向かい、ある一箇所を見ながら言った。
「今回の演習は統合軍東洋艦隊に大西洋艦隊、それに太平洋艦隊による戦後最大の一大演習です。とくに我々は日本艦隊の代表として行くのですから。」
 すると通信席のエマ・グレンジャー大尉がインカムを抑えながら報告を寄越した。
「早瀬司令、瀬戸基地の天龍第一航空隊長一条少佐から通信です。『準備完了、これより発進す。最終確認の為命令を願いたい。』以上です。」
「では了解しましたと返信を。文面は任せるわ。」
「はい、先輩!!」
 その返答に対して未沙が一瞬鋭い視線を見せた。
 それに気付いたエマ大尉はあわてて訂正した。
「し、失礼しました、司令。」
 それを聞き未沙は再び基地へと向き直った。
 エマ大尉は未沙の士官学校時代の後輩にあたる。マクロス航海時代にもシャミー少尉と同じく未沙の次席オペレーターとして働いていた。その頃の癖が抜けていないのだ。
 続けて未沙は舵輪を握り出航命令を待つ航海長の天野純大尉へと命令を発した。
「天野大尉、出航用意。」
「了解。出航用意。」
 すると天野はインカムで機関室への通信チャンネルを開いた。
「機関長、出航用意。機関始動、缶圧上げ、巡航速度は20ノットをキープする。錨も上げてくれ。」
 すぐに了解の返事が来た。艦がエンジン音を響かせ始めた。
 未沙の最初の号令が艦橋に響き渡った。
「「天龍」出航。」

 一方瀬戸基地では各滑走路に総数34機のバルキリーが並び脇では航空隊長の一条輝少佐と沖野誠二少佐による点呼および最終確認が行われていた。32名の男女がその言葉に耳を傾けている。
「いいか、空母とは洋上の滑走路だ。したがって少しでもはみ出せばそこは海。落下でもすれば命に関わり、着艦方向を誤れば艦橋やマストへの激突の危険性もある。その為諸君らにはあらかじめ着艦訓練は受けてもらった。今日はそのテストの仕上げでもある。よって失敗した者には厳罰を下す。各自気を引き締めて掛かってくれ。」
 それを聞き部下がざわめき始めた。すると誠二が声を発した。
「何か質問はあるか?」
 すると1人の部下が手を上げて。
「厳罰とは何ですか?」
 と質問してきた。
「失敗したものは、夕方まで甲板掃除任務を命じる。」
 するとざわめきがいっそう高まった。
「隊長、新造空母の甲板を掃除して意味あるんですか?」
 その質問に数名が笑った。だが輝は表情を崩さずに答えた。
「この厳罰は今後の訓練の失敗でも行う。つまり予行演習ということだ。」
 それを聞くと全員が静まり返った。
「では各自は自機へと乗り込んで待機。発進準備を整えておくように。」
 解散すると輝と誠二は自らの機体へと向かった。
「きにいらねぇな。」
 そう言ったのは輝の隊の第4小隊長ロメル・ウォーカー少尉だった。彼は5日前の「天龍」進水式での模擬戦以来少々気が立っていた。
「変な気起こすなよ。着任早々からな。」
 そう言ったのは第1小隊長の久野一矢中尉だった。
「ロメル、一条少佐にかなわないことはこないだ分かっただろ。」
 そう言われロメルは一矢に食いついた。
「かなわないと分かればその上司にしっぽを振れってんですか?」
 一矢は落ち着いて返した。
「そうじゃない。相手をよく見ろといいたいんだ。戦う相手を見極めろ。」
「戦う相手ね、おれはあの上司がそう思えるんだがね。」
 そう言うとロメルは自分のバルキリーへと小走りに向かっていった。
 一矢は振り返り、隣の滑走路の尾翼に骸骨の描かれたバルキリーへと視線を向けた。
「戦う相手か…。」
 一矢はそう言い残し自分の機へと向かった。

 またその頃、太平洋東シナ海九州沖の深海底に巨大な鉄の塊がいた。それは巨大な潜水艦であった。
 その司令室では1人の女性が中心となって数人が海図を囲んでいた。全員の眼が据わり、異様に白い顔をした者もいる。
「司令、紀伊水道に配置した58潜水艦報告によりますと二隻の巡洋艦が瀬戸内海へと入ったそうです。」
 そばの部下の報告を聞き司令と呼ばれた女性は冷静に返した。
「おそらく空母の護衛艦でしょう。豊後水道と足摺岬沖に配置した第3潜水戦隊からは?」
「まだ何もありません。」
「そうですか。」
 そう言ってその女性は窓へと歩み寄った。
「まさか67年後に同じようなことが起こるとは彼らは思いもしなかったでしょうね。」
 その視線の先には照明で薄く照らし出された鉄の船が横たわっていた。
 その船は1945年に沖縄へと山口県の徳山から出撃し、豊後水道で敵潜水艦の追跡を受けここで果てた古い軍艦であった。
 そうして感慨にふけっていた時通信員が声を発した。
「司令、大西洋の本部より通信が入っております。」
 それを聞き彼女はすぐに振り返った。
「すぐにつなぎなさい。」
「了解!!」
 すぐさま通信用スクリーンに映像が映し出された。
「全員そろっているようだな。」
 落ち着いた声が司令室に響き渡った。相手の顔は暗くて見えないがその人物の着ている軍服には卍のマークが刻まれていた。
 そして司令室の全員が踵を合わせ、片手を上げて敬礼した。
「ハイル!!」
 それを確認すると映像の人物も敬礼を返した。
「ハイル。早速本題に入ろう。あの空母の行き先が諜報部の調査で判明した。インド洋、おそらくは統合軍シンガポール基地だろう。」
「シンガポール?何故ですか?」
 女性は聞き返した。
 映像の人物は静かにそれに答えた。
「どうやら統合軍の海上戦力による演習が予定されているらしい。」
 司令室の1人が声を発した。
「では、あの空母はその演習に参加する為に。」
「そのとおりだ。そこで我々の東洋艦隊も動くことになった。諸君らは当初の予定通りに進めてくれたまえ。よい報告を期待しているぞ。」
「ハイル!!」
 再び敬礼が響いたのを確認すると映像の人物は消えた。
「全艦に発令。我らが真帝国の名の下に作戦を開始せよ。」
 司令室のメンバーはそれぞれの部署へと戻っていった。

 その日の夕方、太平洋へと入った空母「天龍」の甲板に二人の人物がいた。第4小隊長のロメル少尉と第1小隊の柿崎幸雄伍長だった。彼らはモップで必死に甲板を磨いていた。彼らは訓練でそれぞれ失敗を犯したのだった。
 ロメル少尉はイライラの為か着艦用のフックを掛けられずに甲板を素通りしてしまいあわててガウォーク形態で着艦し、柿崎伍長は自分の着艦する順番を間違えた為だった。
(いつか見返してやるからな。今に見てろ。)
 そう思いながら夕焼けの色に染まる甲板でロメルはモップを絞っていた。

 その夜各地で謎の船舶の目撃や事故が発生した。だが、それが人為的に行われたものであると判明したのは3日後のことであった。時に西暦2012年1月17日のことである。


 冬期休暇取り今日やっと出航です。みなさんにいつも見ていただいているのに遅れてしまってすいません。次回はいよいよ敵の登場です。