ついに第1回戦は今回で終了ですが・・・
「天龍」を狙ったのは1隻の潜水艦であった。真帝国製主力潜水艦「Uボート・11型」。彼らは「天龍」攻撃後に潜水して様子を伺っていた。
「艦長、どうやら魚雷はすべてかわされたようです。もう一度やってみますか?」
艦橋にいた聴診器係(ソナーマン)が聴いた。
「やめておこう。まだ作戦は始まったばかりだ。それにすぐに哨戒ヘリが飛んでくるだろう。どうせ行き先はわかっている。このまま潜水継続。」
艦は暗い海中をゆっくりと沈んでいく。
その頃、被弾した軽巡洋艦「イエローアーク」を逃がす為「天龍」航空隊は奮戦中だが。
「やっほう!!かるいかるい!!」
そんな声がヘルメットに内蔵されたヘッドフォンから漏れてきた。隊長機のやや左前方を飛ぶバルキリーからであった。
「第4小隊ロメル少尉、落ち着け。興奮するな。」
航空隊長の輝は第4小隊長ロメル・ウォーカー少尉にそう伝えた。だが・・・
「一条隊長、さっさと片付けましょうや。のんびりしてっと流れ弾に当たっちまいますぜ。」
そう言って彼は笑った。上官を小ばかにするような物言いをする彼に同僚が語りかけた。
「ロメル、言葉が過ぎるぜ。」
そう言ってきたのは第3小隊長ギム・ケイリング少尉だ。
「ギム、おれは真実を言ったまでだ。周りに気をつけてねぇとすぐにおとされちまうぜ。そうですよねぇ一条隊長。」
輝は彼の口調から挑発してるのがわかっていたが落ち着いてこれに対応する。
「ロメル少尉、君の言うとおりだ。」
それを聴きいっそうロメルは気分を良くした。
「それみろ!!はははは!!」
「だが…。」
輝がそう言った次の瞬間、ロメル機の右側で爆発が起こった。
「戦場で調子に乗るんじゃない。今君は敵に側面を突かれるところだったんだ。」
「……。」
ロメルは言葉が出なかった。後ろを見やると一条機が別の敵を追うのが見えた。
一方その頃被弾した「イエローアーク」は「天龍」と接触しつつあった。
未沙は右舷前方の明るくなった海面に視線を注いでいた。それは燃える巡洋艦によって海面が照らされている様だ。「天龍」から飛び立った第2小隊のバルキリーによって懸命な消火活動と救助作業が行われていた。
「司令、第1航空隊の一条少佐より通信です。敵機撃破、これより帰還します。各機損傷軽微、脱落機なしとのことです。」
オペレーターのエマ大尉からそう報告されて全員が安堵した。
「では返信をお願いします。『無事帰還されたし』と。」
「了解。」
とりあえず危機は脱したがまだ終わりではない。その時、艦橋へある人物が入ってきた。
「司令、失礼致します。」
そう言って入ってきたのは風見健吾であった。今回オブザーバーとしてこの間に乗りこんでいる格闘教官だ。背は高く190近い。後ろには顔に外傷用ガーゼを貼った男性が続いていた。
「対象艦の司令官をお連れいたしました。」
そういうと後ろの男性が未沙に敬礼し声を発した。
「新地球統合海軍太平洋第9艦隊所属軽巡洋艦「イエローアーク」指揮官スコット・S・リーチ少佐であります。我々に対する救助活動に感謝いたします。」
彼はそう自己紹介した。
「新地球統合海軍日本支部所属空母「天龍」指揮官早瀬未沙中佐です。」
そう言って握手を交わす。続いて
「艦隊参謀長のデビッド・E・スプルーアンス少佐です。」
スプルーアンス参謀長とも握手を交わす。すると
「あなたがスプルーアンス少佐ですか。お爺様のご高名は伺っておりますよ。」
「いえいえあなたのお爺様も立派なかたです。」
そう言って挨拶を交わした。未沙はこの時知らなかったが実はこの二人は太平洋戦争に関わった提督の孫達であったのだ。
「ところでリーチ少佐、たしか太平洋第9艦隊といえば輸送関係の海上護衛司令部に所属する艦隊であったはず。一体何があったんですか。」
スプルーアンス参謀長がそう尋ねた。
「実は先日よりマリアナ諸島近辺からフィリピン方面にかけて船舶の遭難が起こっており調査に向かったのです。ところが謎の潜水艦に突如攻撃を受けてしまい艦隊の護衛駆逐艦が数隻やられました。そこで本日夕方にフィリピンへ向かったのですがなんとフィリピン基地が攻撃を受けていたのです。」
それを聴き艦橋にいた全員が驚愕した。
「なんですって!?」
司令である未沙も驚きを隠せない。
「本当です。我々が確認した敵は空母1隻に巡洋艦が3隻以上、それに無数の駆逐艦を従えておりました。」
「もしや先刻より各基地と連絡が取れないのは…。」
そう言ったスプルーアンス参謀長に向けリーチ少佐はうなずいて見せた。
「残念ながらフィリピン基地は壊滅的打撃を受けたでしょう。我々は敵の攻撃により命からがら脱出しました。しかし、敵を前にして逃げるなど…」
そう言ってリーチ少佐は目を伏せた。実に悔しかったのだろう。
「わかりました。よくこの事実を伝えてくださいました。とにかく日本支部に急ぎ連絡を取りあなた方をヘリで近くの基地へ送り届けましょう。」
その時、オペレーターのエマ大尉が声を発した。
「司令!!やっと日本支部に繋がりました。」
同時に少々画像が悪いが日本支部長の草鹿正則中将がメインパネルに映った。
「早瀬司令、無事だったか。」
思わず草鹿長官の顔が安堵したように思えた。未沙が敬礼して報告を始める。
「草鹿長官、ご心配お掛け致しました。本艦はSOS信号を海上にてキャッチしマリアナ方面へ向かいました。」
「うむ、ようやくこちらでも情報が入り始めた。衛星から確認したよ。」
「長官、本艦は第9艦隊に所属する巡洋艦「イエローアーク」を救助。途中謎の敵に攻撃を受けました。」
だが、草鹿長官は少し驚いただけですぐに返した。
「そうか、詳しい報告は後で受けるとしてこちらでも大変な事態となったので連絡を取ったんだ。」
「どうされたのですか?」
未沙がそう聞くと草鹿長官は神妙な面持ちで返した。
「実はな、シンガポールに集結していた演習艦隊が謎の勢力による攻撃を受けて壊滅的打撃をこうむったのだ。」
その瞬間、艦橋にいた誰もが息を呑んだ。ちょうど飛び立っていたバルキリー隊が帰還してきた頃であった。
一方その頃、「天龍」の現在地からはるか南東にマリアナ諸島をも越えた先に新地球統合軍トラック拠点がある。小さな島だが海上交通の要所の一つである。ここに1隻の巨艦が来ていた。「天龍」よりも一回り大きいその艦は暗闇の中でも存在感が大きかった。
「各艦準備は?」
艦橋では司令官が部下にそう尋ねた。
「補給完了、いつでも行けます。」
「よろしい。全艦錨を上げろ!!これより出撃だ!!目標はフィリピン方面。」
続く
以上です。第1回戦は直接対決とはならなかった「天龍」ですがこれからどうなるのか。
ご期待下さい。
「天龍」を狙ったのは1隻の潜水艦であった。真帝国製主力潜水艦「Uボート・11型」。彼らは「天龍」攻撃後に潜水して様子を伺っていた。
「艦長、どうやら魚雷はすべてかわされたようです。もう一度やってみますか?」
艦橋にいた聴診器係(ソナーマン)が聴いた。
「やめておこう。まだ作戦は始まったばかりだ。それにすぐに哨戒ヘリが飛んでくるだろう。どうせ行き先はわかっている。このまま潜水継続。」
艦は暗い海中をゆっくりと沈んでいく。
その頃、被弾した軽巡洋艦「イエローアーク」を逃がす為「天龍」航空隊は奮戦中だが。
「やっほう!!かるいかるい!!」
そんな声がヘルメットに内蔵されたヘッドフォンから漏れてきた。隊長機のやや左前方を飛ぶバルキリーからであった。
「第4小隊ロメル少尉、落ち着け。興奮するな。」
航空隊長の輝は第4小隊長ロメル・ウォーカー少尉にそう伝えた。だが・・・
「一条隊長、さっさと片付けましょうや。のんびりしてっと流れ弾に当たっちまいますぜ。」
そう言って彼は笑った。上官を小ばかにするような物言いをする彼に同僚が語りかけた。
「ロメル、言葉が過ぎるぜ。」
そう言ってきたのは第3小隊長ギム・ケイリング少尉だ。
「ギム、おれは真実を言ったまでだ。周りに気をつけてねぇとすぐにおとされちまうぜ。そうですよねぇ一条隊長。」
輝は彼の口調から挑発してるのがわかっていたが落ち着いてこれに対応する。
「ロメル少尉、君の言うとおりだ。」
それを聴きいっそうロメルは気分を良くした。
「それみろ!!はははは!!」
「だが…。」
輝がそう言った次の瞬間、ロメル機の右側で爆発が起こった。
「戦場で調子に乗るんじゃない。今君は敵に側面を突かれるところだったんだ。」
「……。」
ロメルは言葉が出なかった。後ろを見やると一条機が別の敵を追うのが見えた。
一方その頃被弾した「イエローアーク」は「天龍」と接触しつつあった。
未沙は右舷前方の明るくなった海面に視線を注いでいた。それは燃える巡洋艦によって海面が照らされている様だ。「天龍」から飛び立った第2小隊のバルキリーによって懸命な消火活動と救助作業が行われていた。
「司令、第1航空隊の一条少佐より通信です。敵機撃破、これより帰還します。各機損傷軽微、脱落機なしとのことです。」
オペレーターのエマ大尉からそう報告されて全員が安堵した。
「では返信をお願いします。『無事帰還されたし』と。」
「了解。」
とりあえず危機は脱したがまだ終わりではない。その時、艦橋へある人物が入ってきた。
「司令、失礼致します。」
そう言って入ってきたのは風見健吾であった。今回オブザーバーとしてこの間に乗りこんでいる格闘教官だ。背は高く190近い。後ろには顔に外傷用ガーゼを貼った男性が続いていた。
「対象艦の司令官をお連れいたしました。」
そういうと後ろの男性が未沙に敬礼し声を発した。
「新地球統合海軍太平洋第9艦隊所属軽巡洋艦「イエローアーク」指揮官スコット・S・リーチ少佐であります。我々に対する救助活動に感謝いたします。」
彼はそう自己紹介した。
「新地球統合海軍日本支部所属空母「天龍」指揮官早瀬未沙中佐です。」
そう言って握手を交わす。続いて
「艦隊参謀長のデビッド・E・スプルーアンス少佐です。」
スプルーアンス参謀長とも握手を交わす。すると
「あなたがスプルーアンス少佐ですか。お爺様のご高名は伺っておりますよ。」
「いえいえあなたのお爺様も立派なかたです。」
そう言って挨拶を交わした。未沙はこの時知らなかったが実はこの二人は太平洋戦争に関わった提督の孫達であったのだ。
「ところでリーチ少佐、たしか太平洋第9艦隊といえば輸送関係の海上護衛司令部に所属する艦隊であったはず。一体何があったんですか。」
スプルーアンス参謀長がそう尋ねた。
「実は先日よりマリアナ諸島近辺からフィリピン方面にかけて船舶の遭難が起こっており調査に向かったのです。ところが謎の潜水艦に突如攻撃を受けてしまい艦隊の護衛駆逐艦が数隻やられました。そこで本日夕方にフィリピンへ向かったのですがなんとフィリピン基地が攻撃を受けていたのです。」
それを聴き艦橋にいた全員が驚愕した。
「なんですって!?」
司令である未沙も驚きを隠せない。
「本当です。我々が確認した敵は空母1隻に巡洋艦が3隻以上、それに無数の駆逐艦を従えておりました。」
「もしや先刻より各基地と連絡が取れないのは…。」
そう言ったスプルーアンス参謀長に向けリーチ少佐はうなずいて見せた。
「残念ながらフィリピン基地は壊滅的打撃を受けたでしょう。我々は敵の攻撃により命からがら脱出しました。しかし、敵を前にして逃げるなど…」
そう言ってリーチ少佐は目を伏せた。実に悔しかったのだろう。
「わかりました。よくこの事実を伝えてくださいました。とにかく日本支部に急ぎ連絡を取りあなた方をヘリで近くの基地へ送り届けましょう。」
その時、オペレーターのエマ大尉が声を発した。
「司令!!やっと日本支部に繋がりました。」
同時に少々画像が悪いが日本支部長の草鹿正則中将がメインパネルに映った。
「早瀬司令、無事だったか。」
思わず草鹿長官の顔が安堵したように思えた。未沙が敬礼して報告を始める。
「草鹿長官、ご心配お掛け致しました。本艦はSOS信号を海上にてキャッチしマリアナ方面へ向かいました。」
「うむ、ようやくこちらでも情報が入り始めた。衛星から確認したよ。」
「長官、本艦は第9艦隊に所属する巡洋艦「イエローアーク」を救助。途中謎の敵に攻撃を受けました。」
だが、草鹿長官は少し驚いただけですぐに返した。
「そうか、詳しい報告は後で受けるとしてこちらでも大変な事態となったので連絡を取ったんだ。」
「どうされたのですか?」
未沙がそう聞くと草鹿長官は神妙な面持ちで返した。
「実はな、シンガポールに集結していた演習艦隊が謎の勢力による攻撃を受けて壊滅的打撃をこうむったのだ。」
その瞬間、艦橋にいた誰もが息を呑んだ。ちょうど飛び立っていたバルキリー隊が帰還してきた頃であった。
一方その頃、「天龍」の現在地からはるか南東にマリアナ諸島をも越えた先に新地球統合軍トラック拠点がある。小さな島だが海上交通の要所の一つである。ここに1隻の巨艦が来ていた。「天龍」よりも一回り大きいその艦は暗闇の中でも存在感が大きかった。
「各艦準備は?」
艦橋では司令官が部下にそう尋ねた。
「補給完了、いつでも行けます。」
「よろしい。全艦錨を上げろ!!これより出撃だ!!目標はフィリピン方面。」
続く
以上です。第1回戦は直接対決とはならなかった「天龍」ですがこれからどうなるのか。
ご期待下さい。