日本艦隊司令部

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決戦の地へ

2014-07-06 20:40:00 | 第三部 戦慄の南太平洋編
 お待たせしました。ひさびさのSS投稿です。侵入者と風見健吾の戦いは今回で終わりです。


 いまだにその通路には物々しい雰囲気が満ち溢れていた。二人の男のすさまじい剣劇はさながら殺し合いというよりも舞踏とも言うべきか。
 片方が一撃を繰り出せば流れるがごとくかわし、反撃を繰り出したれば受け流される。二人の間にはただただ金属同士のぶつかり合う音しか存在しない。
 そして周りの者たちはその目の前の光景に見入るばかりであった。
「とぁっ!」
 侵入者の小太刀による突きが繰り出されるが風見健吾は下方へ避けて相手の足に足払いを狙うが敵は勢いそのままに飛び上がりこれをかわす。
 すかさず侵入者は振り返り小太刀を構え直す。やはり限られた空間のために刀を振るえる範囲が決められてしまうため突きと斬り下ろし、斬り上げが基本の様だ。
 対して風見健吾は受けに徹している。敵の刀の動きを見て警棒でガードし、すかさず打撃を狙うが相手はそれを警戒して一定の間を確保しているのだ。
「さすがに元自衛隊特殊部隊員、格闘の技は折り紙付きと言わねばならんな。」
 侵入者が刀を構え直しながらつぶやいた。ヘルメットでくぐもってはいるが冷静かつ喜びの思いが含まれている様にも感じられた。
「その余裕もいつまでもつかな?俺を倒してもここにいる全員を相手にはできまいに。」
 風見は警棒を相手に一直線に構えている。いわば正眼の構えだ。古来日本の武士が全方位からの攻撃を防御すべく用いた構えだ。
 なおこの場所には騒ぎを聞きつけて現在10数名の人間が集まってきている。その中にな航空隊員の久野一矢大尉やギム・ケイリング中尉の姿も見える。
(次の一撃で決めてやる。)
 健吾は敵のカウンターを狙って正眼の構えを選んだのだ。敵もそれを察知したのか小太刀を握り直す。確かに自分が敗れてもこれだけの人数を相手には勝ち目はない。だがそうなれば確実に死人が出てしまう。健吾はそう考えていた。とくに一矢やロメルは真っ先に飛び込む可能性がある。それだけは避けねばならない。
「はぁぁぁっ!」
 ついに刃の光が健吾の眼前に迫った。
「やぁっ!」
 健吾の警棒が向かってきた刃を弾いた。返しをねらうが彼は罠に落ちていた。
(しまった!)
 向かってきたのは刃だけであった。侵入者は小太刀を捨て隙を作り出したのだ。
「ああっ」
 周囲から声があがる。しかし健吾は驚くべき奇策に打って出た。

 ガキンッという金属同士が衝突する音が響いた。
「特訓用ブーツがこんなとこで役立つとはな。」
 健吾は片足立ちしながら言った。なんと彼は侵入者が出したナイフの一撃を靴で受け止めていた。実は彼のブーツには鍛錬と頑丈さを目的として鉄板が仕込まれていたのだ。
「まさか靴でこの一撃を防ぐとは。」
 侵入者は健吾の行動に驚くとともにとても興奮している様だった。
「聴きたいことがある。」
 一度間合いをとってから唐突に健吾は敵に語りかけた。
「お前は俺を殺すつもりだったのか?」
 その言葉は周囲の人間たちを困惑させた。あれだけの激闘をしながらなにを言っているのかと。
「お前には殺気が感じられない。どちらかというと闘気に近い。スポーツ感覚のな。」
 侵入者は答えない。だが健吾はこの男は敵ではないと確信していた。
「そこまでにしておけ!」
 突如その場にそんな声がかけられた。全員が目を向けるとそこにいたのはジョン・スミス大佐だった。
「もうよかろう。こちらは片付いた。キッドたちもな。」
 それを聞いた侵入者の男はヘルメットを脱いだ。ゆたかな青い髪をした精悍な顔が現れた。
「私はシュテッケン・ラドクリフ。スミス大佐と同じく特攻部隊のメンバーです。お騒がせして申し訳ない。」
 男の自己紹介にスミス大佐が続けた。
「実はスパイが潜り込んでいるとの情報があってね。炙り出すために彼がその一人と入れ替わって一芝居打ってもらったわけだ。」
 その説明にその場にいた面々は安堵した。
「失礼した。一度あなたと手合わせしてみたかったのもあったのだ。」
 言いながらシュテッケンは右手を差し出した。
「いい運動になりましたよ。」
 握手しながら健吾はそう皮肉ってその場を締めた。


 いよいよ次回第三部終幕です。

ちなみに鉄入りの靴は友人が自作したものをモチーフにしてます。


 梅雨時ですが皆様お体お気をつけてください。次回は今月なかごろを予定しております。
 

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