日本艦隊司令部

小説、アニメ、特撮、刑事ドラマ、映画などの語り

対決の時

2011-07-28 23:34:30 | 第二部 東洋激突編
 少し時間をさかのぼります。


 輝たちを送り出した後、シンガポール南西300キロ海上、「天龍」を中心に前方に重巡「白神」、後方に途中から合流した重巡「ホーネット」、左右に軽巡「金剛」「比叡」が配置され、各巡洋艦の外側にに五隻の駆逐艦「涼月」「磯風」「ウォード」「コロラド」「リットリオ」が取り囲み輪形陣を組んだ。また各艦の対潜哨戒ジェットヘリを四方八方に配置して警戒、上空は第一、第二航空隊第二小隊、第四小隊の8機のバルキリーが護衛に付いている。この小隊が護衛にまわったのは女性ばかりの部隊であった為だ。彼女達も攻撃に志願したが輝と誠二は護衛にまわるように配慮していたのだ。
「頼もしいお嬢さん方じゃのう。」
 齢59歳の重巡「白神」艦長小田切武市少佐は昼戦艦橋から空を見上げて満足げにつぶやいた。
「戦争もあんなに女性が活躍する時代が来たのか。嬉しいやら悲しいやら。」
「小田切さん、ここは戦場ですよ。感慨にふけっている場合ですか。」
 隣で双眼鏡を構えていた第八戦隊指揮官日向浅海少佐が答えた。
「まぁわしらの様なもんは時代遅れになりつつあるのかもしれんのう。」
「何を言いますか、あなたは現場40年のベテランですよ。」
 二人は日本海上自衛隊出身であり、「天龍」に乗っている風見健吾とも面識がある。
「しかし、わしゃ解せんことがある。少し敵の行動が気になるのう。敵はインド洋側に空母戦力を集中しとる。こっち側が手薄すぎやせんかの?」
 小田切艦長は顎に手を当ててそう問いかけてきた。
「もしかしたら潜水艦隊が潜んでいるかもしれません。しかしヘリが随時警戒してますから易々と近づけないはずです。」
「考えすぎでなければいいんじゃがのう。」
 そう言って再び二人は空を見ていた。

 一方「天龍」の艦橋では
「司令、そろそろバルキリー隊がシンガポール爆撃にかかる頃です。」
 デビッド・E・スプルーアンス参謀長が時計を確認して報告してきた。現在艦隊は逆探を警戒して通信の類を控えている。
「成功すれば通信開放のシグナルが来るはずです。」
 通信長のエマ・グレンジャー大尉がそう答えた。
「今はとにかく成功を信じましょう。」
 彼は無事任務を完了して帰ってくる。未沙は信じていた。今まで彼はそうであったし、約束もしていた。そのときだった。
「近距離レーダー!!未確認飛行編隊をキャッチ!!数20以上!!」
 一瞬室内が凍りついた。
「もう一度識別しなさい!!全艦対空戦闘用意!!エマ大尉、攻撃に向かったバルキリー隊をすぐに呼び戻して!!」
 未沙の命令に全員がわれに帰った。
「急ぎなさい!!敵はすぐそこまで迫っているわ!!」
 すぐに各自が動き出した。しかし
「早瀬司令!!だめです!!ジャミングの為か航空隊と連絡が取れません。」
 エマ大尉の報告に全員が息を呑んだ。だが未沙はこう答えた。
「大丈夫です、一条少佐なら通信の異変に気が付いてくれるはずです。」
 その言葉と彼女の瞳には信頼が満ちていた。
「司令、各砲座準備完了、対空ミサイルも用意完了しました。」
 スプルーアンス参謀長も冷静だった。二人を目の当たりにして他のスタッフも落ち着きを取り戻しつつあった。
「機関全速!!対空戦航行準備よし!!」
 舵輪を握った航海長天野純大尉が報告する。
「敵機接近!!護衛バルキリー隊、迎撃に向かいます!!」
 レーダースタッフと監視所からの報告が戦闘開始のカウントダウンを思わせた。
「対空戦闘!!各自射撃用意!!」
 突撃してくる敵機の前に立ちはだかるバルキリー隊。敵は編隊を拡げてミサイルを放つ。ミサイルをバルキリー隊が次々と撃ち落すが、敵機が隙を突いて突撃してくる。
 未沙の号令が響いた。
「全艦対空戦闘開始!!ファイヤー!!」
 各艦のすさまじい砲火が上空に炸裂した。

「間に合ってくれ!!」
 輝の目に未沙が浮かんだ。なんとしても彼女を守らなければならない。
 だが間もなく輝の目に異常な光景が飛び込んできた。
 晴れ渡った空の下、海上に三つの黒煙を確認した。それは明らかに自分たちの来た方向であった。つまり艦隊に異変が起こったと言う事であった。
「隊長!!あれは!!」
 久野一矢中尉が青い顔で輝に問いかけた。彼だけではない。同じくモニターに映るギム・ケイリング少尉とロメル・ウォーカー少尉も同様だ。最悪の状況が想像できた。しかし、まだやられたとは限らない。
「大丈夫だ!!そう簡単にやられるような「天龍」じゃない。急ぐぞ!!」
 出来ることなら輝は彼女の名前を叫びたかった。ジャミングの為か通信が取れない事がより不安にさせた。
(必ず守ると約束したんだ!!)
 そう思い全速で「天龍」へと向かう。

「みんな!!頑張って!!もうすぐ一条隊長たちが来てくれるわ!!」
 護衛隊の指揮を執るジル・シャリン少尉が仲間を励ます。彼女も限界に近づいていた。何せ三倍以上の敵機である。いくら高性能のバルキリーといえども数で押されていては分が悪い。
 だが、彼女達は必死に迎撃戦を展開していた。
(隊長や久野中尉たちのためにも守らなきゃ!!)
 そういう思いが彼女達を支えていた。皆が輝たちが来てくれることを信じていた。そしてジルが視界の隅からこっちへ向かってくる何かに気付いた時、それは現実となった。


「軽巡「金剛」被弾!!駆逐艦「リットリオ」第二砲塔損傷!!」
 オペレーターのエマ大尉が次々と各艦の被害を報告する。
「急速廻頭取り舵いっぱい!!」
 航海長の天野大尉は必死に舵輪を回して敵の攻撃をかわす。その甲斐あって「天龍」は艦尾に機銃弾を受けただけで負傷者3名に被害はとどまっていた。だが、護衛艦には大きな被害が出ていた。軽巡「金剛」ミサイルによって左舷を被弾。25ミリ対空機関砲二挺がやられた。駆逐艦「磯風」「コロラド」「リットリオ」も一発ずつミサイルによって被弾。特に「磯風」は艦の右舷中央に命中、浸水により速力が29ノット(時速約55キロ)まで落ちてしまった。
「新たな飛行編隊確認!!味方です。」
 その報告に全員が安堵した。時計によれば対空戦闘開始からまだ15分足らず。
「司令、どうやら間に合ったようですな。」
 スプルーアンス参謀長が声を掛けた。だがまだ安心はできない。未沙は再度声を張り上げた。
「気を抜いてはいけません!!まだ終わったわけでは・・・。」
 その時、ソナー室から緊急連絡が艦長席へと廻ってきた。
「こちらソナー探知室!!緊急連絡!!敵潜と思しき反応キャッチ!!方位1時方向!!」
 さらに通信席のエマ大尉からも報告が来た。
「右舷前方哨戒中のジェットヘリ、ホーネット二番機より報告!!海中に敵潜反応!!敵は超巨大!!」
 そのときだった。右舷一時方向の海面が突如割れたかのように飛沫を上げた。そして姿を現したのは一隻の巨大な鉄の船であった。「天龍」と同等以上の巨体に、多数の重火器を備えたまさに「潜水戦艦」とでも形容すべきものであった。
 さらにその艦の拡大映像を見た瞬間、全員が驚愕した。彼らはその艦の側面に大きな卍のマークを確認したのである。


 続く

 まさかの敵の出現にどうなる「天龍」!?
 ところで今日気付いたことなのですがいつの間にかこのブログが開設からちょうど一年目を迎えておりました。このようにやってこれたのも読んでくださる皆さま方のおかげです。
 どうもありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。暑い日々体調などには充分お気をつけてください。




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2 コメント

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Unknown (理沙)
2011-08-02 18:46:08
一周年、おめでとうございます~!
また良いところで切られてヤキモキします(笑)が、これからもマイペースで楽しんでいきましょうね!
ヽ(´▽`)/
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こんばんわ (yamato)
2011-08-06 00:32:08
遅れ気味でご迷惑お掛けしてどうもすいません。
お祝いの言葉ありがとうございます。これからもお言葉を励みに頑張りたいと思います。
いよいよ次回第二部が終わります。どうぞご期待下さい。
地震や夏ばて、熱中症などに充分お気をつけ下さいませ。
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