日本艦隊司令部

小説、アニメ、特撮、刑事ドラマ、映画などの語り

特別出演1

2011-09-23 22:14:22 | オリキャラ紹介
 今回のシンガポール戦において多くの新キャラが登場しておりますがそのキャラのほとんどは他作品、あるいはそれをモチーフとした人物です。そのキャラの出目について数名の軽い人物紹介をさせていただきます。

正木俊介大佐(戦艦ミズーリ司令官)
 この人物は1990年から3年にわたって放送された特撮作品「レスキューポリス・シリーズ」に登場する正木俊介警視官がモデルです。演じられたのは「仮面ライダーV3」の主人公風見志郎役等で知られる宮内洋さん。沈着冷静な指揮で解決してきた事件は数知れず。射撃のうでも超一流。

武中淳司中佐(第3戦隊指揮官)
 この人物は「ウルトラセブン」に登場する地球防衛軍極東支部タケナカ参謀がモデルです。演じられたのは日本特撮俳優として五指に入るといっても過言ではない佐原健二さん。ウルトラQで主演されゴジラシリーズ最多出演回数保持者でもあります。セブンでは時に隊長に代わって警備隊の指揮を執り、第4話では原子力戦艦マックス号を指揮するなどその手腕を見せ付けています。

エド・ストレイカー少将(秘密部隊SHADO司令官)
 この人物は1970年のイギリス製特撮ドラマ「謎の円盤UFO」に登場します。元アメリカ空軍大佐でUFOによる地球攻撃をいち早く予測し、イギリス政府を通じて国連に地球防衛軍の設立を唱えた人物。後にその防衛組織の司令官となります。演じる俳優エド・ビショップさんは「007は二度死ぬ」「2001宇宙の旅」「キャプテン・スカーレット」などSF作品に度々登場。OPの通り沈着冷静な頼りがいがあり、また時に厳しい一面も覗かせるキャラクターです。

ハンニバル、フェイス、コング、モンキー(秘密部隊A)
 言わずと知れた米国製ドラマの傑作のひとつ「特攻野郎Aチーム」の4人組。
 リーダーのハンニバルことスミス大佐、各種武器の取り扱いにゲリラ戦と変装のプロ。何よりもスリルと危険に目が無い。依頼を受ける際は大体彼が中国人の老人に変装して依頼人に接触する。
 フェイスことペック中尉、あらゆる物を調達する名人(詐欺師)で戦場でキャデラックを調達した経験もあるとか。映画監督からタクシーの運転手、牧師など多くの人物になりきる。
 コングことバラカス軍曹、凄腕のエンジニアで怪力の持ち主で大統領さえも殴ることをいとわない。弱点は飛行機でだいたいいつも麻酔や睡眠薬で眠らされて連行される。
 モンキーことマードック大尉、自称天才的パイロット。普段は退役軍人の精神病院に入院している。人を食ったような態度が多く奇行が目立つが根はとてもいい人物。
 今回は新作劇場版の設定から元々のベトナム戦帰りではなく湾岸戦帰りと設定しています。


 今後も多くのキャラが出てきますが批判などが寄せられた場合に変更する場合もありますのでご了承下さい。

決着戦

2011-09-21 22:37:54 | 第二部 東洋激突編
さてついに決着です。また一方シンガポール上空では

 シンガポール基地はバルキリー隊による爆撃によって地上施設が大損害を受けていた。コンクリートは砕かれ、鉄がこげる独特のにおいと硝煙のにおいがあたりに充満している。
「隊長!!沖合いに味方艦です。」
 第1小隊長エディ・ユーティライネン中尉の報告に隊長沖野誠二少佐が沖へと視線を向ける。巡洋艦「霧島」「榛名」の2隻が主砲、ロケット砲、対地ミサイルを次々と発射しながらこちらへと向かってきている。
「ようし、あとはあの2隻と地上部隊に任せて「天龍」に戻ろう。」
 その時だった。オープンにしていた通信回線に突然謎の歌声が響き渡った。
「イエエ~イ!!お~れはカモメ!!じ~ゆ~うなそ~らをどこま~でも~!!」
 誠二を含めバルキリー隊全員があっけに取られた。このようなことをする人物には全員おぼえがなかった。少なくともバルキリー隊ではない。
 誠二が辺りを見回すと遠方からジェットヘリの編隊が飛行してきた。数は7機、地上部隊の機体のようだ。
「え~、本日もクレイジー航空をご利用いただきましてまことにありがとうございます。左右両側にシンガポールの熱帯地域が広がり、間もなく燃え盛るシンガポール基地へと差し掛かります。どうぞ最後までごゆっくりと旅を楽しんでください。本日も機長は私クレイジー・モンキーが担当しております。」
 まるで機内アナウンスのような演説に誠二はピンと来た。
「マードックさん!!あなたH・M・マードックさんじゃないですか!?」
 その言葉に向こうも少々驚いたようだ。
「ありゃま~、誠二じゃないの。おひさしぶり~!!」
 やはりそうだ。マクロス航海時代に誠二が度々会っていた自称天才パイロットだ。
「なぜマードックさんが攻撃ヘリに!?」
「まぁ色々あんのよ。とりあえずその辺はあとにしてこちとら暴れさせてもらうぜぇ!!」
 言うや否やクレイジーモンキーのジェットヘリは急加速し機体下部に据えられたロケット砲が地上のまだ稼動している対空陣地へと火を噴いた。陣地に炸裂、黒煙と炎が吹き上がる。
「OK!!い~やっほう!!」
 他のヘリもそれに続くのを確認した誠二はマードックへと通信を送った。
「それではマードックさん、我々は母艦へ戻ります。あとはお願いします。」
「まっかせとけ~!!」
 部下を引き連れて誠二のバルキリーは翼を翻して南へと向かった。

「ほう、さすがモンキー。中々やるじゃねぇか。」
 そう言いながら08式主力戦車の上部ハッチから身を乗り出していたハンニバルことジョン・スミス大佐が葉巻を咥えながら上空を見上げていた。
「ハンニバル!!そろそろこっちもおっぱじめようや!!」
 運転席にいるコングも暴れたくてウズウズしているようだ。
 彼らは今シンガポール基地付近の密林地帯に身を潜めている。
「ようし、フェイス!!全地上部隊に連絡だ。全軍突撃!!我に続け!!同士討ちを避けるため榴弾砲部隊は一旦砲撃中止。」
「了解!!」
 通信席にいるフェイスの返事と共にコングがエンジンをふかし始めた。他の戦車と機動隊のデストロイドが同じく起動して突撃体制に入る。
「ようし!!突撃だ!!」

 一方海上では軽巡洋艦「霧島」「榛名」が砲撃をかけながら突入戦に入ろうとしていた。最上部の見張所では倍に増員された見張員が双眼鏡に張り付いている。レーダーが妨害されて使用が困難のためだ。
「右舷前方より不明艦1接近!!」
 見張からの報告に旗艦「霧島」艦橋のスタッフが一斉に左前方を見ると一隻の駆逐艦と思しき艦がこちらへと向かってきていた。どうやら基地のドックから出てきたらしい。
 すると突然その艦上に砲撃の発射炎が確認された。
「面舵一杯!!」
 航海長の命令の下艦が右に舵を切る。後方を進む「榛名」も続いて右に向かい回避に移る。だが敵は慌てているのか砲弾は2隻のはるか頭上を飛び越えた。
「本艦はこれより敵艦との砲撃戦に移行する。引き続き「榛名」は基地攻撃を続行。地上部隊を援護せよ。」
 第三戦隊司令官武中淳司中佐の命令が僚艦へと伝えられ、「霧島」は敵艦へと舵を切り「榛名」から距離を取り始めた。
 武中中佐は第三戦隊の金剛型軽巡洋艦4隻を率いて今回のシンガポール演習に参加していたのだが謎の潜水艦発見の報を受けて駆逐艦2隻と共に警戒任務の為シンガポールを出航、敵の奇襲から運良く逃れられたのだ。
 今作戦における突入艦隊の指揮官を選ぶにあたって彼は一番に志願したのだった。艦隊司令の未沙も同じ中佐で年齢と経験も上の武中中佐の意見を採用した。彼は敵地へ切り込み、仲間の仇討ちをと思っていたのだ。
「取り舵一杯!!目標、敵駆逐艦!!砲撃用意!!」
 武中中佐の号令のもと前甲板の15・5センチ単装速射砲が角度をあわせる。今「霧島」は前方から一直線に向かってくる敵艦と真正面から向かい合う形になっている。フェンシングの要領で一撃目で顔面を射抜くつもりのようだ。
「第一砲塔、射撃準備完了!!目標前方約1800メートル!!」
「砲撃開始!!」
 砲術長の報告にすぐさま艦長の声が返され、前甲板から射撃音と振動が伝わってきた。
 敵艦の前方に水柱が立つ。続いて主砲の後部に設置されたミサイルランチャーから対艦ミサイルが放たれる。
「ミサイル着弾まで5、4,3,2,1!!」
 水柱が収まると敵艦上に爆炎があがった。
「よしっ!!」「やった!!」と誰彼ともなく声が上がる。
「まだ終わって無いぞ!!全速航行で砲撃しつつ右へ向けろ!!魚雷戦用意!!」
 武中中佐の声に全員が引き締まる。
「艦橋へ報告!!地上部隊突撃戦へ移行!!」
 見張からの報告に全員が陸地を見やる。味方の戦車隊が突撃を掛け始めた。一方敵も地下壕から戦車隊を差し向ける。統合軍から奪った車両のようだ。
 それを確認した武中中佐が再び声を発した。
「急いで敵艦を沈めるぞ!!味方の援護を忘れるな!!」

「ほほう!!どうやらリモコン戦車隊らしいな!!」
 一号車の上部ハッチから身を乗り出してハンニバルは微笑していた。敵戦車の上部に取り付けられたアンテナを見てすぐに彼は敵を自動操縦戦車であると見抜いた。その数約40輌。
「ハンニバル!!お客さんにそろそろ一発お見舞いしてやろうや。」
「OKコング!!全車両砲撃開始だ!!」
 言うや否やハンニバルは車内に引っ込み時速70キロで突撃していた戦車隊一号車の125ミリ砲が火を噴いた。続いていた車両も次々と火を噴く。
 敵先頭車の2輌の下部に砲弾が命中、各坐させた。今度はお返しとばかりに向こうが撃ち返して来る。次々と地面に砲弾が炸裂する。どうやらこちらも1輌各坐させられたようだ。
「ひるむな!!こっちには海と空からの援護がある!!勝機は我にあり!!」
 指揮車両で通信用マイクに向かってハンニバルが怒鳴ると後方からデストロイド隊の砲撃が始まった。炸裂する砲弾やレーザー、そして上空のヘリからのミサイルによって敵戦車3輌が瞬く間にスクラップと化した。
「モンキーたちもやるな!!こっちも負けてられんぞ!!」
 その意気込みの下、一号車はさらに敵に肉薄し主砲を放った。敵戦車の中央に見事に命中。砲塔がひん曲がった。
「どうだぁ!!はっはっはっはっ!!」
 潜望鏡をのぞくハンニバルの笑い声が車内に響き渡る。
「ハンニバル!!どうやら海軍さんも加勢のようだぜ!!」
 通信席にいたフェイスからの報告にハンニバルはさらに気分をよくする。
 シンガポール戦は次第に統合軍陣営に戦況が傾きつつあった。

 一方海上で行われた激しい砲撃戦も終焉を迎えつつあった。
「司令、敵魚雷によって舵機、スクリュー、後部発射管、主砲塔破損。各部に浸水が発生しております。」
 部下からの報告に潜水戦艦「グナイゼナウ」を指揮するヘルディ・マイヤーは苦虫を噛み潰したような思いでいた。
「排水装置はどうだ!?」
「残念ながら機能低下を抑えることは不可能だそうです。機関部も損傷し速力も大幅に低下しております。」
 もはや選択肢はなかった。浮上できなくなった潜水艦には沈むこと以外に何もできない。
「これまでか、まあいい。初期の目標は達成された。総員!!脱出用意!!」
 その指示が艦内の全スピーカーから流れ、乗組員達が移動を開始する。それを確認したヘルディは次の指示を出した。
「私は最後に向かう。今一度「天龍」へ通信を繋げ。」

「司令!!再度敵艦から通信です!!」
 エマ大尉の報告に全員の視線が未沙へと集まる。
 彼女は静かに答えた。
「バルキリー隊は引き続き警戒を。エマ大尉、メインスクリーンに繋げて下さい。」
「了解しました。メインスクリーンへ切り替えます。」
 中央のスクリーンが砂嵐を映し出し、次第に鮮明になっていく。やがてあのサングラスを掛けた敵司令官が映し出された。
『早瀬中佐、今回はしてやられた。あのような前世紀の戦艦に追い込まれるなど予想もしなかった。』
「ヘルディ司令官、もう勝負はつきました。降伏をお勧めします。あなたとその部下の安全は保障すると約束します。」
 未沙は誠意を持って伝えた。だがヘルディはその申し出を拒否した。
『何を言うか!!まだ我々は貴様らに屈しはせん!!降伏など考えたことも無いわ!!』
「貴艦はもう戦える状態ではありますまい。あなたはそこで艦と運命を共にされるつもりですか?」
 続いてスプルーアンス参謀長が言葉を掛けたが相手は聞く耳を持たなかった。
『我々の手駒はこの艦だけではない!!我々は貴様らが考えているものよりもさらに強大なる存在なのだ!!』
「なんですって!?」
 未沙をはじめ艦橋の全員が驚愕した。敵はまだ戦力を保持しているというのか。
『それにこの海戦には敗れたが、我々の本当の目的は達せられたのだ!!その意味をすぐに貴様らも知ることだろう!!ではさらばだ「天龍」よ!!』
 その言葉を最後に通信は切れた。しばし艦橋内を静寂が支配する。スタッフ達は皆消えたモニターをただ見つめていた。
 少しその間が続いた時、艦内電話が鳴り響いた。スプルーアンス参謀長が応対する。
「司令、ソナー室からです。敵潜から高速物体が北東へと射出された模様。あまりのスピードに追跡は不可能だそうです。」
 その報告を聞き、スタッフ全員がそれぞれの業務へと向き直った。
「了解しました。エマ大尉、バルキリー隊には艦隊上空警戒を継続。各艦は修理及び負傷者の治療にあたるよう伝えて。」
「はいっ!!了解しました!!」
 明るいその返事が艦橋に響いた時、一機のバルキリーが艦橋の右側を駆け抜けた。それを見た未沙は反射的に艦長席で敬礼をした。
 それは尾翼に骸骨が描かれた黒いバルキリーだった。


 長くかかりましたがシンガポール編は次回で終わります。第3部のタイトルは「戦慄の南太平洋編」(仮)を予定しております。あと次回は正木俊介大佐の素性も明かしていくつもりです。

 不安定な気候が続く今日この頃ですが皆様お気をつけてください。

逆転

2011-09-05 22:25:12 | 第二部 東洋激突編
 遅れてしまいすいません。只今試験期間中休み。お待たせいたしました。あと本日ゴミをくずかごに捨てようとしゃがんだ折に目測を誤って隣においてあった小さいロッカーに顔面を強打。右目少し腫れてます。

 などとイマイチ分からない生活をしている今日この頃です。
 さていよいよ第二部終盤。「天龍」の危機を救ったのは…



 突然の水柱は上空のバルキリーからでも確認できた。
「何だ!?一体どこから!?」
 輝がそう言った次の瞬間再び轟音と共に水柱が立ち上った。
「隊長!!南方に発射炎が見えます!!」
 僚機からの報告にその方向に機を向ける。たしかに海面に小さな黒い点と武器を発射した為と思しき黒煙が確認できた。
「なんて奴だ。ここまで30キロはあるぞ。」
 普通の軍艦ではないことが予想された。輝の鍛えられた目が何とか肉眼で捉えられるほどの小さなものである。

「司令!!どうやら味方の援軍のようですな。」
 敵からの通信の途絶えた艦橋にスプルーアンス参謀長の声が響いた。
「ええ、でもどうやってあのような攻撃を。ミサイルの類で無いのなら一体?」
 その問いに航海長の天野純大尉が答えた。
「司令、あれはおそらく砲撃です。」
 そう言う間に再び水柱が上がる。敵艦はこちらへの攻撃の手を止めている。
「砲撃?そんなバカな。」
 通信オペレーターのエマ・グレンジャー大尉がそう伝えてきたが天野大尉は自分の説に確信を持って述べた。
「一つだけ可能性があります。戦艦ですよ。統合軍には4隻の旧アメリカ海軍所属戦艦が統合戦争と星間戦争を生き残っています。現在北米支部にいる「ニュージャージー」イギリス支部にいる「アラバマ」航空戦艦に改造され現在オーストラリア支部で訓練艦になっている「ノースカロライナ」そして日本支部に所属する戦艦「ミズーリ」。」
 天野大尉がそう結論付けた時に通信が入った。
「司令!!別回線から通信が入電。友軍のものです。メインモニターに切り替えます。」
 メインモニターに映っていた敵は狼狽しているらしくすでに通信を切っていた。砂嵐が少しずつ鮮明になってゆき一人の男性が映し出された。
『「天龍」、こちらは新地球統合海軍日本支部第20艦隊、現在貴艦南方32キロ地点に駆逐艦1隻と共に展開中。』 
 その報告を送る男性を確認して未沙は驚いた。
「正木さん!!正木俊介大佐ですね!!」
 それを聞いて正木と呼ばれた男は微笑んだ。
『お嬢さん、お久しぶりですな。お元気そうで何より。ゆっくりお話しする前にまずあの敵潜水艦から片付けるとしましょう。』
「しかし、敵には追尾式ミサイルが通用しません。」
 未沙が心配げに伝えたが相手は笑って返してきた。
「心配ご無用。本艦の主兵装は大砲です。先ほどからの敵への攻撃はそれです。次こそは命中させます。この戦艦「ミズーリ」自慢の40センチ砲の威力をとくとご覧あれ。」
 再び遠雷のような音が海上に響いた。すると今度は青い海に五本の水柱と敵艦上に火の手が上がった。

「おのれ!!あのような骨董品に!!」
 「グナイゼナウ」のブリッジでヘルディ・マイヤーはそう毒づいた。先ほどまで「天龍」に対して優位に立ち勝利を確信していたというのにたった一隻の戦艦に不意打ちを喰らったのだ。
「司令!!だめです。このままでは敵の命中精度は上がるばかりです。」
 一人の士官がそう告げた。戦艦などの砲撃は撃てば撃つほどその情報は艦内のコンピューターで計算されその精度を増すのだ。
「ここは誘導ミサイルで反撃を…」
「いかん!!それでは「天龍」の護衛艦の集中打を浴びる!!ここは一時撤退だ!!急速潜航!!」
 一旦退いて体制をたて直すべきと判断したヘルディは潜航を命じた。こうしている間に再び砲撃が命中。致命傷には至っていないが大きく艦が揺れて誰もが必死に持ち場から振り落とされまいとしていた。
「急速潜航開始!!」
 航海士からの報告に全員が安堵した。

 海面下約300メーターでその艦は息を殺して潜んでいた。今まさに頭上で激しい戦闘が行われている。
「敵艦、潜航を開始した模様です。」
 ソナーマンの妹鳴海愛から報告を受けた潜水艦「センチュリオン」艦長鳴海恵介少佐が命令を下す。
「よしっ!!敵との距離は?」
 今度はその双子の姉鳴海優が答えた。
「距離約4500メーター!!なおも潜航中!!」
「ようし!!通常魚雷装填、前部発射管4本使用。注水。」
 すぐさま魚雷室長の剛田中尉から完了との報告が届いた。
「通信長、僚艦に攻撃暗号発信。」
「了解、宛て「エクセリオン」「スカイダイバー2号」、攻撃暗号“2027”発信します。」
 「エクセリオン」から僚艦二隻へと暗号が飛んだ。敵潜に一気に三隻三方向から魚雷を発射する手はずになっている。
「艦長!!暗号入電!!内容「2027X」」
 発射準備完了の暗号だ。発信後30秒が発射の手はずになっている。
「20秒前、10秒前、5病前、4,3,2,1、発射!!」
 魚雷が発射される低い音を全員が聴いた。ほぼ同時に「センチュリオン」から等間隔に離れて三方向から取り囲むように海底に配置された「エクセリオン」「スカイダイバー2号」からも魚雷が発射された。「センチュリオン」の姉妹艦「エクセリオン」は同じく前部発射管から四本、「スカイダイバー2号」からは艦底部前方発射管から六本発射された。

「魚雷前方海底より接近!!」
 その報告を受けたヘルディは青ざめた。まさか敵潜がこちらを狙っているとは予想外であった。先ほど敵の潜水艦とやや南方で遭遇したがその敵を撃沈したと思い込んでいたために油断したのだ。ちなみにそれは「センチュリオン」であったのだが
同艦は急速潜航装置と加速リニア、試作品の偽装爆破機雷によって沈没を偽装していたのだ。それに先ほどからの海上からの砲撃や爆撃で全員の注意が上に向いていた。
「急速廻頭!!取り舵いっぱい!!」
 回避命令を出したがそれは意味を成さなかった。
「両舷後方からも接近中です!!回避不能!!」
 間もなく「グナイゼナウ」の艦全体がすさまじい爆裂音と激震に包まれた。

「こちらソナー室!!敵巨大潜水艦に魚雷命中!!大破した模様!!」
 艦橋に上がってきた報告に誰もが笑みを見せた。
『見事成功しました。』
 メインスクリーンの映像に映る正木大佐も微笑んでいた。
「正木大佐、これが狙いだったのですね。」
 未沙が問いかけた。
『その通り。数時間前に味方潜水艦が敵巨大潜水艦と遭遇しましてね。もしもに備えて味方潜水艦を付近の海底に待機させていました。うまく敵がこちらの網に引っかかった形になりました。』
その発言にスプルーアンス参謀長が言葉を繋いだ。
「敵を包囲する形で味方潜水艦を配置、海上から砲撃を行い潜航に追い込む、そこをすかさず魚雷で狙い撃ち。いや、完璧な構想ですね。」
 しかし正木大佐は意外な答えを出した。
『いや、実はこの戦法は旧日本海軍でも使用されたのだ。』
 それを聴いた天野大尉が興奮した様子で声を出した。
「もしや、小沢提督のマレー沖海戦ですか!?」
『ほう、君よく分かったな。しかし今はまだ戦闘中だ。諸君らとはまた後ほど話をしよう。』
 その一言に全員が再び敵艦の沈んだ海面に視線を走らせた。また、バルキリー隊もその上空をガウォーク形態で敵の浮上に備えて隊形を組んでいる。

 次回に続く。
「天龍」の危機を救ったのは「ミズーリ」でした。「沈黙の戦艦」などで知られるアメリカ海軍の戦艦です。なぜ星間戦争を生き残ったのかは後々明かします。次回は敵潜水戦艦の最後と誠二たちの第2中隊にAチームの活躍を描く予定です。
 不規則な更新でいつもすいません。季節の変わり目ですのでみなさまお体や気候にお気をつけくださいませ。こちらは台風はあまり酷くありませんでした。