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「ジーグフェルド・フォーリーズは映画で見られるんだね」 62へえ!

2006年11月03日 | レヴューのトリビア


「ジーグフェルド・フォーリーズは映画で見られるんだね」
 
62へえ!

「巨星ジーグフェルド」(映画)
 amazon→ココ
 ※いま手に入るのは特別版なのかな?
  わたしが買ったのは、もうすこし昔に出たフツーのDVDで、特別版じゃなかったです。(中古だからね)
 ※9/8の記事もどうぞ→ココ (白井はジーグフェルド・フォーリーズを参考にしたのかもねーみたいな寝惚けたこと書いてあります。参考も何も・・・超有名レビューだっつの!)


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 レビューというのは・・・ええ、わたしが語るのはおこがましいんだけども・・・いくらか本や資料を見てきて、けっきょく源流をたどれば一本なんだとわたしは思ったんですね。

 少女歌劇のレビューも、夜の街にかかるレビューも、もとをたどればおんなじなんでしょう。おおもとはアレです。フランスの「フォーリー・ベルジェール」が嚆矢で、アメリカの「ジーグフェルド・フォーリーズ」が決定版なんですよ、たぶん。

 ジーグフェルド・フォーリーズはアメリカのレビューですが、「アメリカでフランスっぽいのをやってみよう!」というコンセプトで作られて大当たりをとったものです。
 白井先生はさいしょにアメリカでジーグフェルド・フォーリーズを見て、その後フランスでフォーリー・ベルジェールを見たときには、アメリカのにくらべて地味なので、ちょっと拍子抜け(ガッカリ)したらしいですよ。しかしフランスにとどまってフランス文化を吸収するうちに、「ジーグフェルド・フォーリーズ」はフランスのものを、「金にあかして」派手にしただけのものだ、もともとレビューの本流はフランスなのだ!ということに気づいて、フランスのセンスのよさを次第に理解した、と「宝塚と私」に書いておられました。

 ・・・ジーグフェルド・フォーリーズって、すっごい有名なんですね?(知らんかった)
 「巨星ジーグフェルド」っていうハリウッド映画が作られて、アカデミー賞までもらってるんですってねえ。(1936年)
 その「巨星ジーグフェルド」、サブカルチャーにつよい、映画資料の多い某古書店で、DVDを安く売ってたので、買ってきて見てみました。

 感想。
 映画だからワザと派手にしたのかもしれんけど・・・

 た、たしかに派手だ!!セットがいちいち派手だ!!!

 でも、アメリカっぽい俗っぽさがすくなくて、なるほど「フランスのレビュー」を倣ったのだなぁ、というカンジ。男女のダンスとか、わたしの脳内では「男役&娘役」に変換されまくりましたもん。宝塚でアレやっても、違和感ないよ、たぶん。

 レビューっていうのは西洋の寄席だ、と白井先生はおっしゃっていて、「寄席・・・なるほど」とわたしは思ったんですよ。

 レビューってのはreview(フランス語だとrevue)、再び見るという意味で、もともとは一年の出来事をダンスや音楽で振り返って「風刺」してみせる文化だったってのは有名な話ですね。年末になると、TVで「今年を振り返る!」なんて番組をどこでもやりますが、アレの音楽・ダンスのある舞台版だよ、とは高木先生の説明。(byレヴューの王様)

 モン・パリは岸田の洋行をreviewして(ふりかえって)見せたもの。
 白井先生は、レビューにロマンチックな架空の物語をのせてみせました。

 ここに、レビューの本来もつ「振り返る」「風刺」の機能は完全に失われたワケですね。レビューという形式だけが、日本に残ったんだね。
 その後、宝塚では・・・ていうか、白井レビューによって宝塚レビューは、筋があるミュージカルに近い形式のモノとして発展しました。「宝塚レビュー」だね。白井先生なくして、宝塚レビューなしだよホントに・・・。つくづく思った。

 ところで、すこし遅れてできた「日劇」は、ほら例の・・・秦さんがアメリカのラジオ・シティ・ミュージックホールを目指して作ったから、レビューというより「ショー」だったんじゃないですかね。アメリカ的というか。

 宝塚レビューは「アメリカのショー文化よりはフランスのレビュー文化」に重きを置いているのがミソで、その指針を決定付けたのが「白井レビュー」なんでしょうな・・・。(推測) ただ、完全フランス流「エスプリ」でやると、見る人を選ぶから、演出の華やかさ、派手さってのは、ジーグフェルド・フォーリーズで学んだものなんだろうねえ。(あくまで推測)

 で、日本でレビューといえば、忘れちゃいけないのが「浅草」のレビュー。
 少女歌劇以外の男女混合レビューなら、やっぱり浅草でしょう!
 浅草には「大衆的」なものから、「夜のお楽しみ」なものまで、いろいろ雑多にあったっぽいじゃん。 

 タカラヅカを浅草のレビューといっしょに語ると、阪急サマから「こらっ!!いっしょにすんな!」って怒られそうだけど。
 ポルノ小説も少女小説も純文学も、おなじ「小説」にはちがいないように、やっぱ浅草だろーが少女歌劇だろうが、「レビュー」は「レビュー」なんですよ、きっと。

 宝塚歌劇団だって、そこんとこを痛感してるからこそ「清く正しく美しく」「タカラヅカはちがう!」「世界で唯一(=よそとはちがう!)」とか強弁してきたんでせう。

 結果的に、その強弁が奏効して、宝塚少女歌劇は「タカラヅカ」(というシステム)になったわけです。タカラヅカだから!の一言で、観客を思考停止にしてしまう、おそるべきブランドになったんですね。

 ・・・わたしは思うんだが、タカラヅカに関して、いちばん冷静な視線をもっているのは、当の宝塚歌劇団自身じゃないんですかね。演出家インタビューとかみていると、つくづくそう思う。

 内部には、われわれファン(学者、研究者も含めて)が絶対手にできないような資料や言い伝えがいろいろ残っているだろうし。「タカラヅカのシステム」形成にかかわった資料や、レビュー文化のなかでの「タカラヅカの歩み」のような考え方も、劇団には残っているという気がする。
 劇団としては、「タカラヅカはタカラヅカ!夢の世界!」というのがウリだから、「歴史という名の現実」は、ファンに知らせる必要がない部分なんじゃないかな。(ブランド形成のための、一部「歴史という名の伝説」はのぞく。)

 宝塚歌劇団がメディアや自社出版物を通して伝えてくる「宝塚とは(宝塚像)」の回答は、模範解答なんですね。われわれファンが、メディアにマイクを向けられた時、とっさに出てくる「宝塚は夢の世界です」ってことばは、宝塚歌劇団に「仕込まれた」模範解答なんですよ。

 ・・・それが悪いってわけじゃないし、タカラヅカってのはそーゆーもんです。
 でも、「タカラヅカ」を調べるなら、どーせなら劇団広報のウラをかく(?)ような、一劇団、一レビューとしての、歴史的な位置付けをね・・・知る作業が面白いとわたしは思っているんです。だって現実、タカラヅカは何も特殊なこたぁない、ちょっと人気のある一劇団ですよ。

 宝塚がブランド化したのは、

・浅草の過激なレビュー取締りに対抗するための、「タカラヅカはちがう!(浅草とは違うから取り締られるいわれはない)」という強弁

・後進の興行者としての、松竹への対抗戦略。(老舗に対抗するためのイメージ戦略。なんか、いまのauとdocomoを見てると、東宝松竹の争いはこんなカンジだったのかなーと思う)

 それから・・・「あたらしさ」をウリにしておきながら、東宝にとって松竹の「歴史」「伝統」「格式」は、ずっと羨望の的だったと思うんです。そーゆースピリッツが、阪急にはずーーーっと受け継がれて、だからいまの「歴史ある宝塚」の称号は、阪急にとっては何よりの誉れなんじゃないですか。

 阪急は90年かかって、やっと松竹においついた気持ちなんですよ、きっと。
 宝塚歌劇団が「○周年」「式典」「○○イベント」「(ウリになる部分だけ)歴史の啓蒙」にやたら熱心なのは、創立時の松竹に対するコンプレックスの裏返しなんでしょうね。

 結果としましては、それがなんか吉と出て、宝塚は「レビュー」でもなく「劇団」でもなく、「タカラヅカというもの(ブランド)」として、かつての存在意義とはすこしズレたカタチで、現代に生き残りました。

 宝塚紹介モノの文章って、「なんかちがう!中身とズレている気がする!」ってずっとわたしは思っていて、その疑問が変形して遊びでやってんのがこのブログ記事なんですけども。
 さいきん、ようやくすこしだけ、その「ズレ」の意味と内容がわかってきた気がする・・・。

 休みの日でヒマだからって、だらだらと長く書きすぎだね(反省)

 何がいいたかったかっていうとね、もう一歩先へ進むためには・・・「レビューをめぐる芸能史」を知るためには・・・浅草のレビューや芸能関係の資料を、もうすこし見る必要があるかなってこと。

 いま、古書店で物色してるんだけど、これがなかなか難しくてねえー。
 少女歌劇ほどカチッとジャンル化してないし、第一、わたしは浅草の文化なんかひとつも知らんので、どーゆーのを見るのがいいのか、手探りです。とりあえず「エノケン」から進んでいこうかな、とは思ってるんですけどね。


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2 コメント

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Unknown (入谷)
2006-11-06 17:25:04
はじめまして。いつも「レビューのトリビア」楽しく興味深く読ませていただいてます。「ジーグフェルド・フォーリーズ」ってDVDで見られるんですね! すごく興味はあったんですがすっかり諦めていたのですが、おかげで見ることができそうです。ご紹介どうもありがとうございました。

>「レビューをめぐる芸能史」を知るためには・・・浅草のレビューや芸能関係の資料を、もうすこし見る必要があるかなってこと。

ところで私はOSK側から昔の少女歌劇のことを調べていたんですが、やっぱり同じこと思いました! どんどんたどっていくと、色々な文化が絡み合っていてすごく面白いですね。西洋音楽、映画、ダンス等どの歴史においても、ぺらぺら見ただけで何かしら少女歌劇と関連ある出来事や人物が出てきて驚きます。
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入谷さまへ♪ (なまいきむすめK)
2006-11-06 22:21:11
 はじめまして、こんにちは!
 長ーーーい文章ばっかりなのに、いつも読んでいただいてほんとうにありがとうございます。

 ジーグフェルド・フォーリーズ、いまハヤリの版権切れ廉価版で出てるみたいですね。廉価版で売るぐらいだから、有名で人気のあった映画なのでしょうねえ。(アカデミー賞だし)
 わたしもまだ、一回さらっと見ただけなんですけど、映画にうつるレビュー、どっちかというと、OSKレビューより宝塚レビューに近い感じでした、わたしには。スピード感よりウットリ感というか。(←えーと、NewOSKで2~3作見ただけのOSKレビューの印象でモノ言ってます・・・)安いですから、ぜひご覧になってくださいませ。

>どんどんたどっていくと、色々な文化が絡み合っていてすごく面白いですね

 そうそう。
 けっきょく、宝塚(OSKも)って、「芸能」「興行」の一形態なんだーって、実感してます。
 調べていくと、芋づる式にいろんなことがわかっておもしろいですよね!芸能周辺の資料は、何を見ても「参考」になりますよねー!古書店で「うーん!この数行のためだけに買うか否か・・・」で悩むことしばしばです(笑)片っ端から集めたくなっちゃって困っちゃいます(笑)
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