〝戦後〟であり続けることとは?
第二次世界大戦がなぜ起こったのか? もちろん、それにはさまざまな要因が考えられますが、もっとも大きかったのは、やはり1930年の世界大恐慌から、それぞれの国が、その困窮からいかに脱出をはかるかにありました。
たとえば日本は、蔵相高橋是清によって、社会に有効需要を創出するというリフレ政策(reflation)によって経済回復をはかります。それは、ケインズ経済学より先んじて実践化され、ローズヴェルト米大統領による「ニューディール」政策より、きめの細かい経済財政政策だったのですが、有効需要を産む主なものが中国大陸進出の軍需に偏り、その結果、戦争を引き込むことになっていきます。
アメリカは、ワグナー法やNIRAなどによって労働者の権利や賃金を保障拡大し、金融政策でも緊急銀行救済法のほかグラス=スティーガル法(銀証分離の徹底)などさまざまな民主化政策によって、「忘れられた人びと」の復権をはかります。
ドイツは、第一次世界大戦後の多額の賠償金償還による経済不振に加えて、怒濤のように世界恐慌が押し寄せ、独裁化をひた走りに走ったヒトラーは、再軍備とアウトバーンの建設などを柱とする統制経済強化によって雇用と社会需要の拡大化をはかりドイツ民衆の支持を高めていきます。
しかし、こうした積極的な財政は、けっきょくは自国経済のみを優先させ、新たな市場(=植民地支配)を拡大していくことになっていきます。
そして、いわゆる「ブロック経済圏」という排他的な世界経済を現出させて、お互いにパイを争うごときの〝戦争〟を産む結末に至ります。
そんなまだ100年ほどもたたない、こうした世界の〝瑕疵(=過ち)〟が、ふたたびくり返されようとしている危惧を、トランプ米大統領の「高関税政策」に読み取ることは、そんなに難しくはないように思います。MAGA(Make America Great Again)のノスタルジーは、ヒトラーの「ゲルマン人(支配民族であるアーリア人)の優位を叫ぶありさまの二重写しでしかありません。
わたしたちが、いま考えるべきは〝歴史〟です。
戦後の世界で、なぜ自由貿易が重んじられてきたのか。それは、いくつもの弊害があるとしても、世界のそれぞれの国や民族が、孤立化せず、引きこもらず、他者と開かれた関係を持ち、それぞれの物品や文化、人材の往来を通して、敵対しないようにと考えられてきたことなのです。
幕末期に坂本龍馬は、日本は島国ゆえに海岸線が長い。侵略者はどこからでも攻めやすい。だから軍事力では防ぎようがない。したがって、大いに船舶を作って、世界のいろいろな国々と物品を取り交わし、人びとも交わることで、互いの友好関係を結び、国を守ることを考えなくてはならない・・・、と語ったといわれています。
あの惨劇と惨状しかなく、近隣諸国にも過大な迷惑を及ぼした戦争を経て、「この国」は〝戦後〟という歴史空間を生きることになりました。
そのとき「この国」の人びとはなにを思い、なにから決別しようとしたのか。あるいは、なにに目をつむり、あるいは目を背け、なにを見逃してきたのか。
2025年の夏学季講座は、そうした日本の基点とはなにか、〝瑕疵〟はどこに存在したのかを考え探る講座です。
初講日は2025年4月27日午後13時から、品川区民センター・キュリアン第3講習室でおこないます。
たくさんのいろいろな人びとが集まれる講座を!
と考えています。
いろいろな方々が集まり、対話を重ねていくことは、一方的で激しい主義主張や痼り、偏見や差別といった感情を柔らかなものに変えていくことにつながります。世界が保護貿易主義でいがみ合い、対立の構造ばかりが先鋭化させているなかで、この講座が、ひとつの〝アジールasyl(聖域、自由領域)〟になってくれればと考えています。
お申し込みについては、下記のとおりです。
ぜひご参加ください!
2025年夏学季講座
◆◆〝敗戦〟とこの国の
〝瑕疵〟を考える!◆◆
◇期間:<全5講>2025年4月27日~7月13日
◇日時:各日曜日:午後14~16時
◇日時:各日曜日:午後14~16時
*全講zoom・アーカイブでも受講可能
◇会場:品川区民センター・きゅりあん
◇会場:品川区民センター・きゅりあん
(JR大井町駅下車1分・ヤマダ電気の上階)
◇受講料:講受講6000円<全5講>
◇受講料:講受講6000円<全5講>
*各講の事前にPDFでレジュメを送付します!
【日程とテーマ】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・第1講(4月27日)
【日程とテーマ】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・第1講(4月27日)
日中戦争と対英米戦前夜
~なぜ「この国」は戦争をしたのか?
・第2講(5月25日)
・第2講(5月25日)
真珠湾奇襲から山本五十六の戦死まで
~〝熱狂〟と〝焦燥〟
・第3講(6月8日)
・第3講(6月8日)
〝特攻〟の悲劇と「原爆」の惨劇
~〝抒情〟と〝合理〟の暴走!
・第4講(6月29日)
・第4講(6月29日)
「東京裁判」とは何か?
~戦勝国の裁きと敗戦国からの遁走!
・第5講・最終講(7月13日)
・第5講・最終講(7月13日)
憲法と民主主義
~〝敗戦〟からこの国は何を学んだか?
*講座のお問い合わせ・お申し込みについては、
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