八柏龍紀の「歴史と哲学」茶論~歴史は思考する!  

歴史や哲学、世の中のささやかな風景をすくい上げ、暖かい眼差しで眺める。そんなトポス(場)の「茶論」でありたい。

☆2020年!思えば遠くに来たものです!☆☆☆

2020-01-14 11:33:40 | 思うこと、考えること!
 新年あけましておめでとうございます。

 いつも毎年、年をまたいで大晦日から元旦には、「新年の手紙」をみなさまに書いていたのですが、今年はサボってしまいました。2020年は「オリンピック・イヤー」といった華やかなお年賀をいくつかいただいたのですが、わたし自身、どうもこうした同調気運に乗っていけない気分で、たとえばここ10年以上続く、世界規模の、あるいは日本の気候変動、天変地異。そしてそれにともなって起きているさまざまな厄災に危機感を持ってしまう。こうした厄災の背景には、ハイパー資本主義をとる人類の醜悪な〝欲望〟〝身勝手〟が透けて見えてならない。           
 そんなわけで、新年早々、暗い話からはじまるのは、どーかな、と思って、〝松〟が取れた時期になってしまったというわけです。

 さて、そんなことはどうでもいいのですが、最近、ある美術評論家の「言葉」に、茶道の道具類には、「氏(うじ)より素性(すじょう)」という言葉があるんだと教えられました。
 つまりたとえば茶碗とは、どんな名陶工が造ったとか、由緒あるどの窯で焼かれたかに意味はない。そうではなしに、どこに、そしてだれに〝美〟を見いだされたのか。どの人たち、あるいはさまざまな人の手を経て、気に入られ、愛されてきたか。その来歴というか、careerに価値が宿るということなんだそうです。
 翻って考えてみると、21世紀になって、ますます激しく醸成されている世界的な「格差」の現実のなかで、多くの人びとは、「どこの家」に生まれてきたかで、一生涯の価値が決まるかのような雰囲気になっています。それは、わたしたちが暮らす日本でも、政治家も芸能人も、やたらに〝二世〟が多い。それは、〝二世〟という、それだけしか持ち合わせていない〝ニセ〟者が闊歩している現実と言ってもいいでしょう。
 どんな名門家に生まれても、嘘つきで下品で、口から出任せの、ペーラペラ、ペーラペラ、耳障りの言い言葉をまき散らして、自身のスキャンダルはもみ消し、取り巻きと仲間だけで利益を貪っている政治家、経済人が不遜にも、いかに闊歩して歩いているか。
 〝氏〟に対した場合、〝素性〟とは、これまでどんな風に時間を過ごしてきたのか、あるいは生きてきたのかの意味となります。

 ちなみに江戸時代の商人などは、自身の子どもに「学問」を身につけさせることを大切にしました。一見、商売に「学問」は無関係のようですが、人間を磨くには、しっかりと「学問」をして、先人の思想や思考のありようを学ぶことである。そのためなによりも「教養」を大切にし、そこから培われる〝人格の陶冶〟こそ、もっとも身に備えるべきものと考えられていました。
 いまの時代、哲学や歴史、思想など、もっとも〝人格の陶冶〟にかかわる「学問」が等閑視され、やれ「英語ができる」だの「役に立つ理系」だの、それ自体、「学問」の空洞化が進んでいる状況なんだと思います。大学でも、やたらに「国際教養学科」だの「グローバル専攻科」、「先端技術学部」とか「戦略的イノベーション学科」「キャリアデザイン」なんとかとか、いったいそこで何を学ぶのか、意味不明な「横文字」の羅列という状況です。
 口溶け感がある、耳通りのいい言葉がもたらす〝空洞感〟〝非現実性〟そしてふわふわとした〝欺瞞性〟・・・。そんななかで若者は〝陶冶〟されうべくもない。

 いわば、「氏」のまま、「素性」が形成されない。江戸時代の商人たちが、なぜ「学問」を子どもたちにさせたか。その意味は、「家」に寄りかかるのではなく、自身の「人格」で、つまり「氏より素性」を大切にしたからに他なりません。

 現在、オーストラリアで猛威をふるっている莫大な森林火災の被害など世界的な気候変動による厄災と同じように、現代における人びとの内面の〝空洞化〟は、もはや手の施しようがないのか。
 といっても、そんな風に「絶望」の振りをしても仕方がないこともわかっています。そんなわけで、今年も講座をバンバンやるしかないなと思ったしだいです。

 とりあえず、1月18日(土)は、あざみ野で開催されている講座の第四講(14時30分開始)があります。今回のテーマは、
 〝欲望列島〟だった戦後の日本
  ~国鉄崩壊からバブルの崩壊。功利と利殖、

          消費に走った戦後ニッポン~
というお話をします。主催は「放課後バンド」。
連絡先はnnn@yokohama.email.ne.jpか090-7638-5093です。前日までにご一報ください。レジュメ印刷の都合がありますので・・・。

 それと今年ももちろん、4月以降も講座を予定していて、こちらの方は、まだ「池ビス(としま産業振興プラザ)」の会場が確定していませんが、日本人の抒情感について論考する『哀しみの系譜』(全五講、毎月1回)と、これまで継続している『時代に杭を打つ!partⅢ~現代の思想家』(全六講、毎月2回)を、ともに土曜日曜の午前・午後に開講する予定です。そのうち『哀しみの系譜』のフライヤーを貼っておきます。『時代に杭を打つ!partⅢ』のフライヤーは、次回にお知らせします(もう出来てはいます)。

 というわけで、今年もなんだかんだ、できる限りのことをしようかと思っています。
この一年、みなさまにもいい一年でありますように!

 
 
 
 


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