八柏龍紀の「歴史と哲学」茶論~歴史は思考する!  

歴史や哲学、世の中のささやかな風景をすくい上げ、暖かい眼差しで眺める。そんなトポス(場)の「茶論」でありたい。

◇◇〝デスリ〟政治の季節は終わったのか? 講座のお知らせも兼ねて!◇◇

2021-12-30 18:18:46 | 〝哲学〟茶論
 あと一日で、2021年も過ぎていきます。
 あなたにとっていい一年でしたか? と聞くことじたいが悪い冗談のような2021年だったのかもしれません。 
 たしかに2021年とはここ数年来の、そこここに穴ぼこを作ったように世の中の停滞が見えだし、それとともに、一人一人の寛容さや深い思考性といった人間の質そのものが、陥没してきた印象の年でした。自己愛と自己欲求、それがかなわぬなら嫉妬を爆発させるだけの、極端な「反知性」的閉域とでも言ったらいいのか。しかも、自分と合わないとなったら、コミュニケーションカットが簡単にできるコロナ禍での「net社会」の現在というわけです。
 とは言うものの、この一年を振り返ってみると、安倍晋三、菅義偉と続いた政治の季節も、なんかここに来て終わってしまったような、奇妙な気分であることも事実でした。
 べつに岸田政権がどうこうというのではなく、「安倍政治を許さない!」とゼッケンをつけた高齢者が街頭に立っていた時代。「モリ・カケ・サクラ」それに「カジノ疑惑」と通信事業をめぐっての「接待疑惑」と、そんなスキャンダルがつぎつぎに飛びだし、「学術会議任用拒否」騒動・・・そのたびにお互いにデスリあって、ときの首相自らが「こんな人たちには負けられない!」と絶叫したり、官邸がマスメディアを脅し、あるいは忖度させ懐柔したり、これが〝政治〟といえるか否かはべつにおいて、政権側の有無を言わせぬ誹謗、中傷、恫喝。それに抗して、安倍は辞めろ、菅も辞めろ、と呼応する。
 たしかに、オミクロン株の感染が、ひたひたと音を立てて近づいてきているものの、いまの感染者は少しばかり小康状態ということもあり、なにか空しいながら、政治の季節は終わったかなと思える現在。そんな気がしています。
 それはちょうど、1960年の安保騒動の際、岸信介が退陣して、池田勇人が「寛容と忍耐」「所得倍増」をひっさげてチェンジオブペースをはかった、あの時代と似てなくもない印象です。ずいぶんとスケールは小さいし、もちろん、さほどのチェンジオブペースになってはないけど・・・。

 そんな一年の終わりに、2022年の新人会講座のご連絡です。
すでにお伝えしていますが、1月16日を初講日として、
 「日本〝近代・現代〟のプロフィール」【第2部】ー関東大震災~対英米戦敗戦-を2022年1月16日から全5講開講します。
 今回もzoomとGIGAファイル便(アーカイブ)での開講です。
 詳細は、下記に要項とフライヤーを掲載いたしますが、
2022年1月12日(火)ころまで、お申し込みいただければ、幸いです。
   <以下見学予定の慶應義塾大日吉キャンパス内
    海軍連合艦隊地下壕跡の見取図と写真一部>
                            
 ところで、上記写真にもありますが、【第2部】の講座では「講外講」として慶應義塾大日吉にある連合艦隊司令地下壕の見学を予定していましたが、保存する会の方とは連絡をお取りしているものの、大学側の許可が下りず、2022年2月の見学は難しい状況となりました。
 そこで、【第2部】の講座とはべつに、日程が決まりしだいに実行するということで、予定には3月下旬の日程を入れておきました。
 講座そのものの変更は、ございません。
 お申し込みの件、よろしくお願いいたします。

 以下、予定とフライヤーを掲載しておきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*NPO新人会・宏究学舎*
 2022年「近代・現代史」講座
 ◆現代日本を問う!◆
 
日本〝近代・現代〟のプロフィール!
 〝戦争とテロ、そして国民〟(第2部)
  War/Terrorism 
           and The Ordinary People
◇期間:<第2部・全5講>
  2022年1月16日~3月6日
◇日時:毎回日曜日<午前11時~12時>
*全講zoom(質疑応答可)orGIGAファイル便(アーカイブ受講)で受講可能です。
◇受講料:全講受講6000円<5回分>
*学生3000円、1講毎受講は1講1500円
◇附記:各講毎、事前にPDFでレジュメを送付。それに沿って講座は展開されます。

【講座内容】
 わたしたち日本人は、はたして「歴史」への〝敬意respect〟をもっているのでしょうか。
 根拠のない情報で過去を断定し、だからダメだと批判する。あるいは歴史上の〝オモシロ話〟を持ち出して歴史を貶める。でなければ、皇国史観、マルクス史観、実証主義、民衆史観などなど自らの都合のいいほうに歴史を動員し引き寄せる。
 歴史には、その時代に暮らした人びと、おそらくはわたしたちの現代と連なる人びとの暮らしがあり、辛苦、悲哀、困難、怒り、歓喜が存在しています。それぞれの時代精神がそこには流れています。この講座では、戦争やテロの時代に生きた、そうした人びとの〝歴史〟を考える、思いやってみるという講座として開講されています。前回【第1部】に続くこの【第2部】は、<「関東大震災」と民衆のテロリズム~「対米戦争」と〝玉砕〟の構図>までの五つの歴史のお話しです。
【日程とテーマ】
・第1講(1月16日)
 「関東大震災」と民衆のテロリズム
  ~吉野作造は何を見たのか?
・第2講(1月23日)
 『柳条湖事件』と「満洲事変」
  ~〝軍刀と謀略〟の現場を歩く!
・第3講(2月6日)
 「5・15事件」「2・26事件」の暗黒
  ~〝鬱屈した情念〟の奔流!
・第4講(2月20日)
 「日中戦争」と〝南京虐殺〟
  ~〝殺す〟論理と〝殺される〟心理
・第5講(3月6日)
 「対米戦争」と〝玉砕〟の構図
  ~いま、〝死の意味〟とは何か?
*お問い合わせ・お申し込み
 E-mail:npo.shinjinkai1989@gmail.comまで*
 お申し込みは、メールいただければ、
 講座受講の手順と講座料の振込等について、
 講座担当者から、すぐに連絡させていただきます。

*2月に予定していた
 講外講:「連合艦隊司令部日吉地下壕」を歩く!☆
   につきましては、現在交渉中で、
  3月26日(土)を予定として組んでいます。
  かならず実施できるかと思いますので、
  しばらく連絡をお待ちください。





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☆「日本〝近代・現代〟のプロフィール」【第2部】のお知らせ!☆

2021-12-06 18:47:05 | 〝哲学〟茶論
    あっというまに12月!
 コロナコロナで明けて、コロナコロナでお開きの一年でした。
 じつに騒がしい一年だったと思います。
 そんななか、親しい知人友人と酒を酌み交わすことも少なくなり、マスク越しにごにょごにょ話すのは、なんとも面はゆいことではありました。

 講座や講演会も、あまり開かれず、とはいっても2021年秋学季には、ジョージ・オーウェルを読もうということで、「精読『1984』」の講座を行いましたが、これはデストピィア小説だとか「近未来」作品だとかといった、従来の捉え方を一枚一枚剥がすように、講座を進めていきました。言い換えれば、『1984』とは「戦争文学」と捉えるべきであり、戦争がいかなる状況でも〝全体主義〟を生み出すものであるのと同時に、現代社会にもそうした〝全体主義〟が体制化されていることを突きとめ、その意味できわめて現代文学であるという「読み」を求めて、オーウェルの思想を論考してみました。
 もうひとつの「日本〝近代・現代〟のプロフィール」【第1部】は、日本の近代の開幕から、ちょうど米騒動まで、さまざまな最新の学説などを勘案しながら、これまで囚われてきた歴史観を崩す作業、あるいは新たな歴史像についてお話しを進めました。

 そこで、今回のblogのテーマは2022年1月16日初講の「日本〝近代・現代〟のプロフィール」【第2部】のお知らせというわけですが、近ごろ、ふと唐の詩人・王維の「送 元二」の漢詩が思い起こされて、まずは、そのことを書きます。
 この詩は、王維が友人である元二とともに別離の酒を酌み交わしている情景を詠ったものです。
 元二は王の命で、匈奴と対峙するため長安から数千キロ離れた砂漠地帯の安西という地に赴任するのですが、西域に行く人との最後の別れは、長安の北西にある渭城とされていて、そこで作詩されたものです。

  渭城朝雨 浥輕塵 
 客舍青青 柳色新 
 勸君更盡 一杯酒 
 西出陽關 無故人

 この漢詩自体は、高校生のときの漢文の教科書にあったもので、何か忘れがたくて、いつも覚えていた漢詩でした。ちょうど中学時代の友人が、秋田の工業高校を卒業して、神奈川の工場に就職するとなって、彼の家で別れの酒を飲んだのですが、その記憶と重なって思い出される漢詩です。
 もっとも高校生が、酒を酌み交わすなどとはもってのほかだったのでしょうが、あの時代は、秋田という土地柄もあるでしょうが、寛容でした。

 内容というか、訳は、

 渭城の朝雨 軽塵を浥す 客舎青青 柳色新たなり
 君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒
 西のかた 陽関を出ずれば 故人無からん

 ここで言う「故人」とは友人ということで、渭城は雨で潤い、塵や埃も流され、家々も青々として、柳の色もみずみずしい。どうだ別れの酒を飲もうじゃないか。ここから西方、陽関を出れば、青青とした風景ともさらばだし、酒を勧める友人もいないだろうから・・・。まずは一献・・・。そんな感じの漢詩です。たわいもない別れの歌と言えば、それまでなのですが、なぜか浸みる漢詩です。

 いまの時代はFaceBookやTwitterにSNSなど、どこかで知人や友人の消息をとらえることはできます。だから別離という情感は、きわめてリアリティのない薄いものになってしまっているのかもしれません。
 わたしたちの時代は、そんなものはなく、別れはさまざまな想いや感情、相手との記憶が交差するものでした。
 その意味で、利便性が、人びとの情感や他者への想いや記憶を疎外してきているという危惧は、それほど外れていないものでしょう。
 そんなふうに思うと、別れの一献の肺腑にしみわたる感覚が蘇ってきて、王維の漢詩の抒情がことさら浸みてくるように思います。

 そんなことを思いながら、「日本〝近代・現代〟のプロフィール」【第2部】のお知らせです。
 できればこの講座も、どこかの会場を押さえて話し合いながら行いたいと思ったのですが、zoomでの質疑応答をできるだけ可能にするということで、今回もzoomとアーカイブで開講します。
 ただし、2022年2月26日(土)は、歴史学的フィールドワーク(遠足)を企画していまして、後ほどあげるフライヤーにその予定を記しています。やはり、いっしょに歩き学ぶということを大事にしなければ、面白くないし、ただ通りすぎていくだけでは残念だと思い企画しました。ぜひ、ご参加ください。

 でも、やはりそれでは物足りないと思い、2022年5月下旬からは、ソクラテスの言う〝場topos〟に習って、池袋のとしま区民センターか池ビズの会場をおさえ、講座を開講するつもりでいます。
 テーマは、これまで受講された方に、ぜひ「司馬遼太郎」の歴史観について講座を開いてほしいというお話しがあり、それはわたし自身も以前から考えてきたことなので、いわゆる「司馬史観」といったものを4回に分けてしっかりと論考していきたいと思っています。
 たしかに、司馬遼太郎の作品とその思想は、知識人層含め多くの方々に好まれていると言えますが、なぜそうなのか。司馬遼太郎の抒情と論理といったものをしっかり見据えながら、お話しを進めていきたいと思っています。
 詳細についてはもう少し先になりますが、もちろん、この講座もzoomとアーカイブでも受講できるようにいたします。

 というわけで、「日本〝近代・現代〟のプロフィール」【第2部】のお知らせをいたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*NPO新人会・宏究学舎*
 2022年「近代・現代史」講座
 ◆現代日本を問う!◆
 
日本〝近代・現代〟のプロフィール!
 〝戦争とテロ、そして国民〟(第2部)
  War/Terrorism 
           and The Ordinary People
◇期間:<第2部・全5講>
  2022年1月16日~3月6日
◇日時:毎回日曜日<午前11時~12時>
*全講zoom(質疑応答可)orGIGAファイル便(アーカイブ受講)で受講可能です。
◇受講料:全講受講6000円<5回分>
*学生3000円、1講毎受講は1講1500円
◇附記:各講毎、事前にPDFでレジュメを送付。それに沿って講座は展開されます。

【講座内容】
 わたしたち日本人は、はたして「歴史」への〝敬意respect〟をもっているのでしょうか。
 根拠のない情報で過去を断定し、だからダメだと批判する。あるいは歴史上の〝オモシロ話〟を持ち出して歴史を貶める。でなければ、皇国史観、マルクス史観、実証主義、民衆史観などなど自らの都合のいいほうに歴史を動員し引き寄せる。
 歴史には、その時代に暮らした人びと、おそらくはわたしたちの現代と連なる人びとの暮らしがあり、辛苦、悲哀、困難、怒り、歓喜が存在しています。それぞれの時代精神がそこには流れています。この講座では、戦争やテロの時代に生きた、そうした人びとの〝歴史〟を考える、思いやってみるという講座として開講されています。前回【第1部】に続くこの【第2部】は、<「関東大震災」と民衆のテロリズム~「対米戦争」と〝玉砕〟の構図>までの五つの歴史のお話しです。
【日程とテーマ】
・第1講(1月16日)
 「関東大震災」と民衆のテロリズム
  ~吉野作造は何を見たのか?
・第2講(1月23日)
 『柳条湖事件』と「満洲事変」
  ~〝軍刀と謀略〟の現場を歩く!
・第3講(2月6日)
 「5・15事件」「2・26事件」の暗黒
  ~〝鬱屈した情念〟の奔流!
・第4講(2月20日)
 「日中戦争」と〝南京虐殺〟
  ~〝殺す〟論理と〝殺される〟心理
☆講外講:2月26日(土)*予定*
 「連合艦隊司令部日吉地下壕」を歩く!
・第5講(3月6日)
 「対米戦争」と〝玉砕〟の構図
  ~いま、〝死の意味〟とは何か?
*お問い合わせ・お申し込み
 E-mail:npo.shinjinkai1989@gmail.comまで*




  
 

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