風韻坊ブログ

アントロポゾフィーから子ども時代の原点へ。

アントロポゾフィー指導原理 (59)

2008-11-08 23:57:50 | アントロポゾフィー指導原理
59.
思考をあるがままに考察するなら、私たちの「通常の意識」における思考には、固有の実質がないことが分かる。思考は、ただ「鏡のように何かを映しだしている」(鏡像)にすぎない。しかし、人間は、思考のなかに自分自身が生きていると感じる。思考は生きていない。人間が思考のなかに生きているのである。この「生きていること」(生命)は、霊界のある領域に由来する。つまり、(私の著書『隠された科学』に書かれている)第三ヒエラルキアの霊性に由来するものなのである。(訳・入間カイ)

59. Eine unbefangene Betrachtung des Denkens zeigt, daß die Gedanken des gewöhnlichne Bewußtseins kein eigenes Dasein haben, daß sie nur wie Spiegelbilder von etwas auftreten. Aber der Mensch fühlt sich als lebendig in den Gedanken. Die Gedanken leben nicht; er aber lebt in den Gedanken. Dieses Leben urständet in Geist-Wesen, die man (im Sinne meiner «Geheimwissenschaft»)als die der dritten Hierarchie, als eines Geist-Reiches, ansprechen kann. (Rudolf Steiner)


この第59項でも、
きわめて身近な、日常的なところから発想しています。
思考というのは、
何かを思ったり、考えたりすることです。
「この人、何を言ってんだろう?」とか、
「これって、結局、男性(女性)特有の考え方じゃない?」とか、
「ここは黙っていたほうが利口だ」とか、
私たちは、いつも心のなかで何らかの考えを抱き、
何らかの判断を下しています。

ここでは、
そういう自分の内面の動きを、
まずはあるがままに見つめるように勧めているのです。
すると、
私たちの「考え」は、
その大部分が誰かからの受け売りであったり、
幼い頃から染みついた偏見や先入観であったり、
社会の「通念」であったりします。
私たちが「考え抜いた」ことでさえも、
すでにこれまでに誰かが考えたこと、
誰かがアドバイスしたこと、
本のなかに書かれていたことなどを組み合わせているだけです。

「これは木」で、「これはイヌ」で、
「これはネコ」であるといったことも、
眼のまえに木やイヌやネコの実物や画像が現れるから
私の内面にそうした判断が生じるのであって、
私の意識のなかの、何もないところから
急に「イヌ」とか「ネコ」という考えが発生するわけではありません。

だから、
私たちの「思い」や「考え」は、
必ず何かを写し出す「鏡像」のように現れてくるというわけです。
でも、そういう思いや考えを組み合わせ、
積み重ねていく作業、
つまり「考える」という作業は、
私自身の行為です。

誰かべつの人に、
私の代わりに「考えてもらう」わけにはいきません。
自分で徹底して考えたとき、
私はそこに自分自身の働きを実感します。
つまり、思考の「素材」は、
何かを写し出した「鏡像」もしくは「影」のようなものであっても、
その素材を使って考えているのは、私自身なのです。

そして、そのように自分が考えるということ、
自分自身の思考活動も、ひとつの「生命」であるといえます。
この思考という生命は、
地上の物質ではなく、霊界の特定の領域からやってくる、
とここでは述べているわけです。

その領域を
アントロポゾフィーでは「第三ヒエラルキア」と呼びます。
人間にもっとも近い霊性領域です。

ここでは、まさにこういう考え方を
ひとつの「考え方」として受けとめ、
どうしてこういう考え方が可能なのかを、
これから先の指導原理を通して見ていきたいと思います。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kenshin)
2008-11-09 14:20:23
思考の素材は一人一人違います。
そしてこれらが更なる思考をして行くとその人の意志となり行為になって行きます、その人の個性となるわけですが。ただ行為の選択をする時に自分の中の何かに動かされるときがあります。特に最近は無理強いをせず、後は流れに任せようと思うのです。ただ眼差しは変えないで。霊性の領域からの「生命」を意識しています。
返信する

コメントを投稿