西沢利明の俳優ノート

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嘆きの谷

2009-06-12 22:53:15 | Weblog
僕の好きな、河合隼雄さんは、

ウソつきクラブの会長、元文化庁長官、そして心理療法の第一人者だ。

この心理療法の仕事のことを

「宗教と同じようなことですね」と言われることがあるとかー。

どう答えたらいいかわからない、とおっしゃる。

非科学的でもインチキでもないし、それほど有り難いことをしているとも思わないーと。

「私は悟りなどとは無縁の人間だ」とー。

しかし、著作の中で、“嘆きの谷”のことに触れられている。

旧約聖書の詩篇八十四だ。

氏は聖書についてお詳しい。

精神とたましいの違いを、

山の頂上と、谷の比喩を用いて説明して下さる。

高く明るく、遠くを見渡せる頂上は、精神。

低く暗く見通しの悪い谷は‥‥嘆きの谷‥‥涙の谷、たましい、と。

太宰治も、「桜桃」の冒頭で、

「われ、山にむかいて、目を挙ぐ」と書いている。

これも詩篇だ。

主人公に妻が答える。

「1番汗をかくのは、この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷……です。」

太宰も河合さんも、聖書を読みながら、

たましいと嘆きの谷のことを考えていたのだろうか‥‥。