今からおよそ680年ほど昔、北イタリアはピエモンテ地方の山中にある修道院に、遍歴の修道僧とその弟子が訪れた。おりしも、この修道院では、僧たちの不審死が相次いでいた。遍歴の僧は、修道院長から連続怪死事件の調査を依頼される。ところが、アヴィニョンとローマとのちょうど中程にあるこの僧院は、教皇と皇帝、異端派などの勢力争いの焦点になっていた。事件は政治的な(権力闘争の)色合いを帯び始めた。 . . . 本文を読む
知り合いのお勧めで、惣領冬実「チェーザレ 破壊の創造者」(マンガ単行本、1~4巻)を読んだ。なんとまあ、難しいというかどえらいテーマを選び、描いたものだ。マキァヴェッリの「君主というもの」(以下、「君主」)のテーゼを地で行くような権力闘争を描いていくことになりそうだ。 . . . 本文を読む
1972年9月5日、西ドイツのミュンヘン。パレスティナ・ゲリラが選手村のイスラエル選手団居住区を襲撃するテロ事件が発生した。事件後も、パレスティナ過激派とアラブ人によるイスラエルへの攻撃が続発。イスラエル政府は、報復のために暗殺ティームを組織して、このテロ事件の首謀者や関係者への殺戮作戦を展開した。国家の意思を、〈カウンターテロリズム〉という名の暴力で表明するためだった。パレスティナ=アラブ・ゲリラとイスラエルとは、暴力の応酬の泥沼にいっそう深くはまり込んでいった。 . . . 本文を読む
1960年代のドイツ連邦共和国。まだ多くのナチス党の残党が生き残っていた。東西冷戦のもとで、東西双方の側がレジームの強化のために、ナチスの息のかかった科学者や専門家、残党を利用していた。ゆえに、ナチズムの亡霊が甦る危険性を育む素地・温床がいたるところに残っていた。秘密結社「オデッサ」は、西ドイツの政財官界で旧ナチス党メンバーの影響力を拡大することを狙う団体だった。オデッサは、過去の責任を追及されようとしているメンバーの逃亡を支援していた。 . . . 本文を読む
北イタリアエミリア地方、ポー河の流域にある美しい田園風景を背景に、この地方の20世紀の歴史が描かれる。地主の御曹司と1人の農民との奇妙な友情を縦糸にしながら、地主と農民との階級闘争、ファシズムの席巻と狂気、反ファシズム解放闘争が横糸として織り込まれる壮大な歴史叙事詩。 . . . 本文を読む
1960年頃、植民地アルジェリアの独立をめぐってフランス世論は深刻な分裂に陥った。ドゴール大統領は独立を承認し、軍の撤収を決定した。これを「国民」に対する裏切りだとして、大統領の暗殺を企てる軍人グループがあった。彼ら自身の手による暗殺計画はことごとく失敗した。63年、ついに超一流のプロを雇って、ドゴールを狙撃することにした。そして、この暗殺者と捜査当局との息づまる心理戦が始まった。 . . . 本文を読む