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WaterMind PC Blog

PCとネットワークに関するニュースコラム.

混沌としてきた無償データベースソフトの勢力図

2005-11-26 03:20:24 | ネットワーク技術

 

久々の新規投稿は,無償のデータベースサーバソフトの話題だ.現在,有名な無償のデータベースサーバソフトと言えば,

 

 

の2大ソフトを上げられることができるだろう.特に,PostgreSQLが,最新バージョンにおいて,Windowsにネイティブに対応し,なおかつ,高速化も果たしたことから,この両者の戦いは熾烈になってきているのは,ご存じの方も多いと思う.それだけではなく,以前の記事で紹介したように,商用データベースの王者Oracleが,MySQLのデータベースエンジン開発会社InnoBaseを買収しており,様々な憶測が流れている.

 

 もちろん無償のデータベースサーバソフトは,これだけにとどまらない.例えばMSは,「SQL Server 2000 Desktop Engine(MSDE 2000)」という同社の「MS SQL Server」の無償版を提供している.但し,このデータベースサーバは非常に小規模な環境が想定されており,機能的に見ても,上記の2大無償データベースサーバと比べるべくもない.「おもちゃのようなデータベースソフト」といっても過言ではないMSDE2000ではあるが,MSDE2000にアドバンテージがないわけでもない.

 

 MSDE2000のアドバンテージの一つは,MS-Officeの一部であるデータベースソフトMS-Accessとの親和性が高いことだ.これにより,MS-Access内蔵の旧式データベースエンジン Jet から,データベースサーバであるMSDE2000への移行は,比較的容易に行えることだろう.もちろんMSDE2000へ移行した後は,本格的な高価な有償のデータベースソフト「MS SQL Server 2005」への移行が待ちかまえている.

 

 ちなみにMSは,このMSDE2000をさらに高機能化した後継ソフト「SQL Server 2005 Express Edition」の日本語ベータ2を,既に無償でリリースしている.

 

 このように無償データベースソフト間の勢力争いは,ますます激しさを増してきたが,もちろん,このような状況を,データベースソフト一筋のOracleが黙ってみているはずがない.

 

 11月25日,日本オラクルより,無償データベースソフト「Oracle Database 10g Express Edition(Oracle Database XE)」の日本語対応版が,来年にもリリースされることが報じられた.現在,このソフトの英語バージョンは,ベータ版が無償提供されているようだ.機能の詳細は不明であるが,現在私が把握している使用制限は「1プロセッサ,4GBのディスク容量,1GBのメモリ」のサーバマシンでのみ稼働可能という.

 

 しかも,11月21日に,あのIBMが,自社の有名な有償データベースソフトDB2の無償版を,来年提供するとの報道も入っている.

 

 混沌としてきた無償データベースソフトの激戦.勝者が決まった時に,データベースソフト界の勢力図は,大きく塗り替えられるのだろうか?


意外な展開!OracleがMySQLエンジン「InnoDB」開発会社を買収

2005-10-10 18:37:14 | ネットワーク技術

 本日も,手短に…

 各種ニュースサイトで報じられているとおり,商用データベースの大手Oracleが,高速処理で有名なフリーのデータベースソフト「MySQL」のエンジン開発会社「InnoBase」を買収した.

 Oracleでは,MySQLに対して今後も「InnoDB(データベースエンジン)」を提供していくとのこと.MySQL側はこの買収を歓迎しているようだが,この買収の真意が今ひとつわからない.表面上はMySQLつぶしではないようにみえるが,将来的にはMySQLユーザーを,Oracleに移行させるための布石なのかもしれない.

 詳細については,下記記事をご覧あれ.


最強のWeb版RSSリーダー「goo RSSリーダー ウェブ版」登場

2005-10-06 02:46:36 | ネットワーク技術

 本日は,手短に…

 

 アプリのインストール不要,Webブラウザさえあれば,どこでも使用出来るRSSリーダー「goo RSSリーダー ウェブ版」が10月4日よりスタートした.

 

 このサービスの主な特徴は…

 

  • ブラウザのJavaScriptによるアプリ版RSSリーダーに近い操作感
  • フォルダによるサイトのグループ化
  • OPML形式による登録サイトのインポート・エクスポート
  • 画面デザイン・文字大きさ変更可能(テンプレあり)
  • 記事既読・未読管理
  • 記事へのフラグ付け可能
  • ポップアップによる記事冒頭表示
  • gooブログへの記事引用サポート
  • gooブログ内キーワード検索機能
  • gooRSSリーダー ケイタイ版との連携
  • 自動更新機能

 

といったところ.Web版RSSリーダーを提供しているポータルサイトは多いが,現状では,どのリーダーもインストールが必要なアプリ版に対して見劣りしていた.しかし,「goo RSSリーダー ウェブ版」では,ほぼアプリ版と同等の機能が提供されているところが画期的だ.またMyYahoo!のRSSリーダーのように,登録できるサイトの数が制限(注:MyYahoo!の場合最大50件)されていることもあるが,「goo RSSリーダー ウェブ版」では現在のところ,登録制限はないようだ.

 

 特にOPML形式で登録サイトをインポートできるため,RSSバーのOPMLファイルをそのまま読み込ませることもでき,登録の手間も省ける.但し現在のところ,OPMLファイルのインポートに成功した後,ブラウザを閉じ,再び「goo RSSリーダー ウェブ版」を開くと,インポートしたサイトが消えているという現象が見られるので注意.OPMLインポート後,一端ログアウトすれば,登録は消えないようだ.

 

 なにはともあれ,現時点では最強のWeb版RSSリーダーと言えるだろう.

 

 お試しあれ!


リアルタイムEthernetが実現する「ガンダム」

2005-09-13 02:18:36 | ネットワーク技術

 既にTVニュース等で報道されているように,川田工業(ロボットハードウエア担当)産総研(ロボットソフトウエア担当)川崎重工(コックピット担当)は,ヒューマノイド「HRP-3P」を開発し,デモを公開した.

 ヒューマノイド「HRP-3P」の主な特徴は…

  • 自律・遠隔ハイブリッド型(遠隔操縦者が必要,ガンダムRX-78的)
  • 身長160cm、体重65kg(バッテリ含む)
  • メインCPU:Intel Pentium 4 2GHz
  • OS:ART-LINUXリアルタイムOS
  • カメラ:制御・距離認識用3台,遠隔操作用2台
  • 防塵・防滴レベル:IP 52(IEC規格,1時間100mmの雨の中を稼働可能)
  • 滑りやすい路面での歩行が可能(スリップ検出)
  • 片腕で体重を支えながら,もう片方の腕で作業可能

といったところだ.「ガンダム的」と書いたが,RX-78のような「教育型機体管制コンピュータ」は,今のところ搭載されていないようだ.ただし,コックピットからおおまかな指示を与えれば,細かな動作はヒューマノイド側が自律的に行うところは,ガンダム的と言えるだろう.画像を見てもらうとわかると思うが,胸の排気口といい,頭部中央のトサカ状のカメラといい,制作者側がガンダムRX-78を意識している可能性もある.ちなみにRX-78では,両目(デュアルセンサー)が射撃用で,トサカ・カメラがメインカメラ(操縦用?)となっているようだ.

 通常,ヒューマノイドには多数のセンサーが内蔵されている.ヒューマノイドの姿勢制御用などに用いられるのコントローラは,これらセンサーを常時監視し,アクチュエータを適切に素早くコントロールしなければならない.そのためには,生物の神経のように,素早く情報を伝達する信号線で,センサー・コントローラ・アクチュエータを結線する必要がある.

 この信号線による通信の速度は重要だ.通信速度が遅ければ,ヒューマノイドが,刻々と変化する現実世界の状況に対応することは,まず不可能だろう.ご存じの通り,生物ですら,この通信速度を気にしており,進化の過程において,神経をミエリン鞘で被い(有髄神経化),ランビエ絞輪による跳躍伝導によって,通信速度を向上させている.ヒューマノイドの信号線は,電線もしくは光ファイバーが一般的なので,ノイズや減衰がなければ,ほぼ光速に近い速度で情報を伝達できるはずだ.

 しかしながら,これはあくまでも物理層的速度の話.通常,信号線を流れる情報は,何らかのエンコード処理がなされて送信され,受信側ではデコード処理を行わなければならない.これらの処理のためには,ある程度の時間がかかる.従って,このエンコード・デコード処理(データリンク層)如何によっては,例え光ファイバーを信号線として使用していても,生物の神経より情報伝達速度が遅くなる可能性はある.

 またヒューマノイドの場合,この「神経」に,生物にはない特別な機能を持たせるべきかもしれない.ガンダムでいえば,地上戦闘中にビームライフルを投げ捨て,ハイパーバズーカに持ち替えた後,全弾打ち尽くしたハイパーバズーカを捨てて,地面に落ちているビームライフルを見つけて再び拾った場合,ガンダムは拾った武器がビームライフルであることを認識し,拾ったと同時に,火器管制システムをビームライフル用に切り替えなければならない(注:ガンダムの視覚認識能力は考慮していない).おそらく,これら火器の内部には,制御用コンピュータが内蔵され,ある程度の自律性や自己制御能力は持っているはずだ.ガンダムは,拾ったビームライフル内部のコンピュータと接続し,先ほど切断された通信を,瞬時に再開しなければならないわけだ.このような状況は,社内LANに現れたり消えたりする,営業社員のモバイルPCの状況に似ている.生物の場合,道具に神経を接続することはないが,ヒューマノイドの場合は,その方が都合がよいことが多いだろう.

 ヒューマノイドでは,このようなシステム稼働中のパーツ交換・追加が想定される.また,各自律パーツ同士が直接通信を行う可能性をも考慮すると,ヒューマノイド体内通信を「パーツ集合によるLAN」として,形成するのが自然だろう.もちろん,この体内LANは,我々になじみのある一般的なLANではない.通信完了時間の限定される,リアルタイム性を持った「リアルタイムLAN」でなければならない.

 「リアルタイムLAN」という言葉は聞き慣れないが,FA(ファクトリー・オートメーション)の世界では一般的で,既に製品化されている.代表的なものとしては

  •  ARCNET(Attached Resource Computer NETwork):改良トークン・パッシング,最大10Mbps,バス or スター or バス&スター,最大255ノード(1ネットワーク),最大延長距離=6.4km(1ネットワーク)
  • DeviceNetCSMA/NBA,最大0.5Mbps(100m),バス(幹線・支線),最大64ノード(1ネットワーク),最大距離=500m

がある.これらリアルタイムLANは,高価なハードウエア(LANアダプタ等)によって実現されているが,メディアについては,安価なツイストペアが使用出来るようだ.ヒューマノイド「HRP-3P」の体内通信においても,リアルタイムLANは採用されているが,この2つのどちらの規格も採用されなかった.採用されたのは,驚くべき事にEthernetだ!

 ネットワークに関して知識のある者ならば,EthernetCSMA/CD)が,いかにリアルタイムLANに不向きか理解できるだろう.なぜならば,Ethernetの宿命としてフレームの「衝突」は避けられないからだ.これについては詳しく述べないが,Ethernet上の複数のPCが同時にデータ送信を開始した場合,その送信データが壊れてしまう場合がある.衝突が発生した場合,データ送信を行おうとしたPCは,それを検知し,それぞれのPCにランダムに設定された時間だけ待ち,その後,同じデータの再送信を行う.このため,この「衝突発生」→「検知」→「Jam送信」→「送信待機」→「再送信」のシーケンスが,かなりの短時間でない限り,リアルタイムLANをEthernetベースで実現することは難しい.しかもヒューマノイドが現実世界の状況に対応するため,この体内LANには,常時,データが流れていると仮定すべきであり,衝突の起きる頻度は,接続ノード数にもよるが,かなり高いと思われる.では,どのようにして産総研及びムービングアイはこの問題を解決したのか?

 その答えは,あまりにもあっけないものだった.すなわち,Ethernetのトポロジとしてバス型を用いず,すべてをピア・トウ・ピア(1対1)で全二重接続し,衝突が発生しないようにしたのだ.確かに,この方法ならば,衝突は発生しないだろうが,問題は残る.単純に,ヒューマノイドのパーツ同士をピア・トウ・ピアで結線するならば,通信の可能性のあるすべてのパーツ間をツイストペアで結ばなければならばない.つまり1つのパーツから,何本ものツイストペアが他のパーツへ伸びている状態だ.これではヒューマノイドの内部は,ツイストペアで埋め尽くされてしまう上に,各パーツが数多くのEthernetアダプタを装備しなくてはならない.先ほど述べた「パーツの交換・追加」などのイベントも考え合わせれば,この方法が全く実用的ではないのは明らかだ.では,どのようにして産総研及びムービングアイはこの問題を解決したのか?

 この疑問に対する回答は,産総研プレスリリースには明確には書かれていない.ただプレスリリースや提示されたスライド画像から想像するに,パーツをデイジーチェーンで結び,要所によってはスイッチングHUBを用いるといったところだろう.これならば一つのパーツに付き,2つのLANアダプタを装備したパーツを,隣り同士で1対1結線するだけだ.もちろん,各パーツはブリッジの機能を持ち,時には,情報伝達のトランスペアレントな中継器としても利用されることになる.デイジーチェーン接続されたパーツが,情報を目的地のパーツまで,バケツリレーの要領で伝達していくわけだ.ヒューマノイドの体内LANトポロジは,その外形によって制限されるため,おそらく人間の神経配線のごとく,「人型」となる.そうなると,スイッチングHUBは,人間でいう神経叢の部分に配置されることになるかもしれない.

 なるほど,これでほとんどの疑問は解けた…というわけにはいかない.なぜならば,ここまでの説明で,リアルタイムLANがEthernetで実現できるのであれば,我々が家庭で使用しているLANアダプタやスイッチングHUBで,リアルタイムLANが実現できてしまうことになる.もちろん上位層のTCP/IPは,リアルタイムLANには利用出来ないが…

 実は,EthernetでリアルタイムLANを実現するに当たって,まだ説明していないコア技術がある.それは,「同期通信」だ.これを実現するために,送信側はリアルタイムOSのシステムコールを用いて,周期的なフレーム送信を行い,受信側もこれに同期した周期的フレーム受信を行う.ちなみにこの周期的受信を行うためには,デバイスドライバの関係があり,残念ながらLinuxカーネルの改造を行わなければならなかったようだ.この同期通信をデータリンク層に採用することによって,初めて通信完了時間の保証されたリアルタイムLANがEthernetで実現されたわけだ.これでもう疑問はないだろうって?いやいやそうはいかない.

 まずデータリンク層から上のネットワーク層が気になる.上記のように,TCP/IPはリアルタイムLANには使用出来ない.プレスリリースでは,ネットワーク層として「中継・経路切替」という,なんとも取って付けたような名前の層がある.これは事実上,「リアルタイムTCP/IP(?)」を予感させるが,具体的な技術については,この資料からはうかがい知ることはできない.全く不明だ.また先ほど出てきた「リアルタイム・スイッチングHUB」や,パーツの持つブリッジ機能において,どのようなフローコントロールがなされているのかが,想像できない.余談だが,このリアルタイムにおいて,LANアダプタについては,一般的な安価なEthernetNICが使用出来るが,同期の問題があるので,市販のスイッチングHUBの流用できないはずだ.もっとも,「リアルタイム・スイッチングHUB」は,HRP-3Pに使用されていないかもしれないが…

 ということで,いくつかの謎は残ったが,一般的なEthernetNICとツイストペアを,ソフトウエア技術でリアルタイムLANとして使用出来るようにした今回の研究は,素晴らしいと思う.HRP-3Pのように本格的なヒューマノイドはムリだが,このリアルタイムEthernetを用いれば,近い将来,PCを遠隔操縦コックピットとした,アニメと同じように動くRX-78の「ガンプラ」が,安価で販売できるかもしれない.そして同じく遠隔操縦の赤いザクと現実世界で勝負ともなれば,「ROBOCON」並みにウケるかも?

 ただHRP-3Pコックピットを見た感じでは,その操縦は,ニュータイプに目覚めたアムロですらも,かなり手こずるのかもしれないが…


蘇る「はこ箱」? -無料1GBストレージ「ファイルバンク」登場-

2005-07-26 10:03:00 | ネットワーク技術

 

 かつて様々なPC雑誌等でも紹介されていた無料オンライン・ストレージ・サービス「はこ箱」が終了してから,かなりの時間が経過した.その後,海外の10GBクラスの無料ストレージサービスである「streamload」などは現れたが,日本では「はこ箱」クラスのストレージサービスはなかなか出てこなかった.ところが…


 7月22日付のPCWEBのニュース記事『グレテックジャパンが1GBの「ファイルバンク」を無料提供』によると,日本でも1GBではあるが,無料のオンライン・ストレージサービスが正式に始まったようだ.


 この新サービス「ファイルバンク」の「無料プラン」の特徴は…


  • 無料1GB(有料最大100GB)のディスクスペース(期間制限無し
  • 毎日500MBの高速ダウンロード権
  • シェアフォルダ機能:友達シェア,全体シェア,シェア検索
  • 会員外とのやりとりのための「ゲストフォルダ」(但し,速度制限あり)
  • 無料ファイル送信機能「センドファイル」:最大10名,10ファイル,100MB

 これらの特徴の中で,特に注目したいのが,「ファイルの保存期間に制限がない」という点だ.以前のこの手のサービスでは,ファイルの保存期間に制限があるため,一時的なファイル置き場としてしか,使用出来ない場合が多く,事実上,バックアップ用途には使用出来なかった.


 ファイルバンクの場合,「一週間に1回ログインしない場合しないと,ファイルが消去される」という制限はあるが,逆に言えば,ログインさえ忘れなければ,バックアップ用途にも使用出来るサービスでもある.ビジネスモデルとしては,かつての「はこ箱」よりムリが無く,無料ユーザにとっても「使える」サービスとなっている.


ユーザーとしては,「はこ箱」の時のような,突然のサービス中止が一番気になるところだが,ファイルバンクのQ&Aに次のような記述がある.


Q.オンラインストレージを提供する会社の中には、サービスを中止したり縮小するところがありますが、ファイルバンクは大丈夫ですか?

A.ファイルバンクでは、綿密な市場の検証をベースに、独自技術によるコスト低減を図りつつ、十分な運営予算を持ち、ファイルバンクサービスを提供しております。 オンラインストレージにおいてのリーディングカンパニーを目指し、日々努力しております

 ということで,安定的な無料オンラインサービスを期待したい.


新SoftEtherとスパイウエア

2005-07-07 00:33:00 | ネットワーク技術

 以前も「大発明」としてこのBlogで紹介したフリーのVPNソフト SoftEther の最新版「SoftEther VPN 2.0 ベータ 3.2」が,7月4日にリリースされた.


 主な変更点は…


  • 『SoftEther VPN Bridge 2.0』の追加
  • クラスタリング環境で集中統合管理が可能に
  • 仮想 HUB 間のカスケード接続時にクライアント証明書認証が使用可能に
  • ATOK16 との組み合わせによるメモリリークの解消
  • 複数 TCP コネクション接続時の安定性の向上
  • config ファイルの瞬時の動的なインポート / エクスポートに対応
  • 仮想 HUB の管理オプションの設定が可能に
  • VPN Server の不具合の修正
  • 社外開発の信頼できないプログラムコードの除去

といったところだが,最後の項目は気になるところだろう.また今まで「ベータ1」「ベータ2」「ベータ3」とバージョンアップしてきたにもかかわらず,なぜ今回,「ベータ3.」という細かいバージョンが付けられているのが疑問に思った読者もいると思う.


 実は,あるシェアウエア(「Vocal Cancel」)の中にトロイが発見されたのだが,その作者がSoftEtherの一部のコードを作成していたのだ!シェアウエア内に発見されたトロイ名は,TROJ_HIROFU.A.シェアウエア作者が意図的に埋め込んだもので,不正シリアル使用者を追跡するためのようだ.「不正シリアル使用者である」とソフトが認識すると,インストールしたパソコン内のメールアドレスやシリアル関係の情報を収集し,メールで報告するようになっている模様.この件に関しては,非常に良くまとめられたサイトがあり,その中にはこのシェアウエアの作者吉田氏と,このサイト管理者とのメール往復書簡も公開されている.興味のある方はご一読願いたい.


 この「Vocal Cancelトロイ混入問題」の発端は,上記サイトによると2004年8月の2chへの書き込みからのようだ.トレンドマイクロがトロイと認定したのが本年2月.そして本年6月24日に,この問題に関するスレが2chソフトウエア板に立てられ,その後,6月30日にニュース速報板にもスレが立てられたことで,一気に問題が明るみに出た.同日,SoftEtherのメイン作者に匿名メールにより知らせが入り,夜を徹しての疑惑部分のコードチェックが開始される.そしてついに7月1日,「Vocal Cancel」を公開していたVectorが,同ソフトの公開停止に踏み切ることになる.


 SoftEther内のコードチェックの結果,前バージョンのSoftEtherに,トロイ等の不正コード混入はなかったようだ.その後,念のためにトロイ作者に外注したコード(自己展開型の圧縮パッケージ ユーティリティ)は除去されて,今回の中途半端な(?)開発状態での緊急リリースとなったわけだ.


 というわけで,今回はSoftEtherについては,どうやら事なきを得たようだ.VPNは当然の事ながら,企業での利用が多いため,VPNソフトにおいてセキュリティ確保は最優先事項となるはずだ.SoftEtherのように,オープンソースによらない開発の場合,外注先から納品されたコード監査の徹底は,必要不可欠とも思えるが,今回のSoftEther側の動きからすると,監査は行っていなかったのかもしれない.


 スパイウエアの話題が絶えない今日,今回の事件は,クローズドソース開発やシェアウエアの信頼性確保に,新たな問題を突きつけている.


参考リンク:


ネット直付スピーカー 登場

2005-07-04 08:13:01 | ネットワーク技術

 7月になり,ようやく睡眠時間を確保できた.本日は,爆睡後のため,比較的体調は快調.このBlogも更新するエネルギーが出てきたといったところだ.このBlog用の記事ネタはいろいろとあるのだが,とりあえず小ネタから始めようと思う.しかもかなりの変わり種だ.


 ということで今回は,ITMediaの報じた「ネットにつながるスピーカー、NICTが開発」を取り上げてみようと思う.以前にも述べたとおり,GbEネットワークが普及するにつれ,パソコン内のPCIバスは相対的に低速とみなされるようになった.もちろん,より高速なPCI-Expressが,今後は主流となっていくわけだが,GbEネットワークの普及が,パソコンの内部バスやとネットワークの区別を曖昧にしたのは事実だろう.しかも,家庭内に複数台のPCが存在し,LANでつながっているのであれば,周辺機器についてはできるだけ共有(サーバ化)したり,クライアント化したいところだ.ましてや,LANがGbEネットワークならば,いままでネックとなっていた,「ネットワーク機器とパソコンの通信速度の問題」も克服しやすい.


 このように,現在のパソコン直付けの周辺機器は,HUB直付けのネットワーク機器に変化していく可能性がある.既に,小型プリントサーバネットワークカメラNASなどは,家庭内LAN環境においても,それほど珍しいものではなくなった.また,ネットワークメディアプレイヤの登場は,通常の大型TVを,「ネットワークモニタ」へと一歩近づけたと言える.このような状況下,「ネット直付けスピーカー」の登場は,どのような意義を持つのだろうか?


 まず,製品仕様から見てみよう.このスピーカーは,いわゆる共有機能を持ち,さまざまなパソコン(WindowsXP/2000のみ)からの音声出力(仮想デバイス)を,ネットワーク経由で受信し,それを再生する.それだけではなく,マイク端子も備えており,マイク入力を別のパソコンや別のネットワークスピーカーに,送信することも可能なようだ.ただし,

  • マイク入力を,複数のクライアントに同時配信できるか?
  • 複数のソースからの音声を混ぜて(?),スピーカ出力できるか?

といった点については,不明だ.


 ちなみに背面の写真からは,

  • 電源スイッチ(シーソー)
  • LAN端子
  • Muteボタン
  • Mic端子
  • SP端子(サブスピーカー?)

の存在が確認できる.


 ステレオや5.1chと言ったマルチチャンネルについては,「任意のペアを連携させてステレオ再生する」こともできるようなので,技術的には簡単に可能なのだろう.制御ソフトの画面を見てみると,すでに,ネットワークスピーカーのグループ化と,ステレオチャンネルの指定はできているようだ.


 気になるのは,各ネットワークスピーカーの同期の問題だ.一つのIPアドレスにステレオ音楽を送信するインターネットラジオならば,左右の音の同期が取れているのも納得できるが,左右で異なるIPアドレスを持つと思われるこのネットワークスピーカの場合,LAN内以外での同期は難しいように思える.仮にも「インターネットスピーカー」と呼称しているのであれば,この問題は技術的に解決済みと思われるが,何らかの同期のための信号を,ネットワーク経由でスピーカー同士がやりとりするのだろうか?「動画再生時でも映像と同期を保った音声再生が可能」と言う点も,具体的な技術説明がないようだが,もし実現できているとすれば,素晴らしい.


 ということで,ちょっと謎めいたネットワークスピーカーの登場だが,リアルタイム系の周辺機器であるスピーカーのネットワーク機器化は,地味ながらもチャレンジ魂を感じる.仮にリアルタイム系特有の問題が解決されているとすれば,後は使用用途,すなわち存在意義だが,どんなものだろう?


 「独立行政法人 情報通信研究機構」という政府の研究機関だけに,実用性や製品化については,二の次なのだろうが,いいアイディアある?


参考リンク:


ネットワーク機器の自動インストールを実現する新規格 PnP-Xの技術的側面

2005-04-30 09:59:34 | ネットワーク技術
 高速LANを実現するGbEの普及により,パソコン周辺機器や内蔵ボードに関する考え方は,大きく変わりつつある.今までパソコン本体との高速な通信を必要とするために,PCIやCardBusあるいはUSB2.0で接続するしかなかった周辺機器類を,ネットワークに直接接続すると言う動き,すなわち「パソコン周辺機器のネットワーク機器化」だ.

 ネットワーク機器ならば,LAN内のすべてのパソコンでその機器を共有できるため,個々のパソコンに周辺機器を購入しなくても済む場合も多い.また,パソコンのプリンタ共有やファイル共有の場合とは違い,共有機器の接続されたパソコンが起動しているかどうかを,使用時に気にする必要もないのもネットワーク機器の特徴だ.

 現在,そのような「パソコン周辺機器的なネットワーク機器」というと,プリンタ(プリントサーバ)やNAS(HDD),あるいはカメラ(ネットワークカメラ)といったデバイスが,読者の方々にもなじみ深いと思う.これらのネットワーク機器は,Webページによる設定用ユーザーインターフェースと,イベント通知やコマンド送信を実現するためのメール送受信機能を持つのが一般的だ(即,理解できると思うが,これらのインターフェース等は,OS依存ではない事に注意したい).

 一般的に,これらネットワーク機器をパソコンで使用するための設定は,USB接続等のパソコン周辺機器よりも面倒だ.その理由の一つは,ネットワーク機器のIPアドレスにある.ネットワーク機器にもよるが,工場出荷時にIPアドレスが「決め打ち」されている場合があり,それが接続予定のLANのネットワークアドレスと異なる場合がある.このような場合,パソコンとネットワーク機器をLANケーブルで1対1接続し,パソコン側のLANアダプタのネットワークアドレスを,ネットワーク機器のデフォルトのネットワークアドレスに合わせて設定し直し,なおかつ,ネットワーク機器のWebページを表示して,IPアドレスの設定を行わなければならない.

 最近は,ルータ等のDHCPサーバが家庭内LAN内に存在するケースも多いためか,IPアドレスが決め打ちされておらず,DHCPによる自動割当がデフォルトとなっているネットワーク機器も増えてきた.しかし,DHCPによる自動割当の場合,ユーザーによるネットワーク機器のIPアドレスが把握が難しく,設定のためには,専用のクライアントソフトをインストールし,そのソフトでLAN内を検索しなければならないこともあるだろう.

 このようなIPアドレスの問題に加えて,通信プロトコルがらみの設定もネットワーク機器にはつきものだ.例えばプリントサーバでは,パソコン側に「TCP/IPポートモニタ」を手動セッティングするケースが多い.これもパソコンに直接プリンタを接続する場合には,不要な作業だ.

 このように,現在の「パソコン周辺機器的なネットワーク機器」は,パソコンに直接接続する周辺機器とは違い,ある程度のネットワークに関する知識と,作業ための時間を必要とする.しかし,我々はこのような努力をしなくても,簡単にネットワーク機器をパソコンにインストールできるはずではなかったか?そう,あのUPnP(Universal Plug and Play)にさえ,ネットワーク機器が対応していれば…

 UPnPは,パソコン直結の周辺機器と同様に,いわゆる「Plug&Play」をネットワーク機器でも可能とする規格だったはずだ.ところが実際には,UPnPの技術ページに書かれている様々な「シナリオ」は,今でも夢物語のままになっている.もっぱら,「MSNメッセンジャーのビデオ・音声チャットのためのルータ規格」としては有名になったUPnPだが,もはやほとんどのルータがUPnPに対応している現在,ユーザはUPnPという規格の存在すら,忘れ去りつつある.

 本来のUPnPはもちろん,ルータ(Internet Gateway Device)のみに関する規格ではない.実際,UPnPの標準規格書には,下記のネットワーク機器が規格化されている.
  • ルータ:Internet Gateway Device
  • メディアサーバとクライアント:MediaServer, MediaRenderer
  • プリンタ,プリントサーバ:Printer Device, Print Basic Service
  • スキャナ:Scanner (External Activity, Feeder, Scan, Scanner)
  • 空調コントロールHVAC
  • 無線LANアクセスポイント:WLAN Access Point Device
  • 照明コントロール:Lighting Controls
  • ネットワークカメラ:Digital Security Camera
 残念ながら自分は,ルータやIP電話アダプタ以外に,これらのUPnP規格に基づいたネットワーク機器を見かけたことがない.UPnPが提唱されてから,かなりの時間が経っているにもかかわらず,UPnP規格が未だに生かされていないのは,なぜだろうか?

 実は,UPnPを利用したネットワーク機器には,いくつかの問題があったのだ.「PNP-X Implementer’s Guide」によると,次の点がパソコン直結の周辺機器とは異なる.
  • デバイス検出とドライバ・インストール
  • 設定操作用ユーザーインタフェース
  • ドライバ更新の方法
 たしかにUPnPでパソコンに発見されたネットワーク機器は,発見時,通知領域にアイコン表示されるが,その後は「マイ・ネットワーク」内の「ネットワーク プレース」として表示されるのが普通だ.ネットワーク「機器」といっても,「デバイスマネジャ」に表示されるわけではないのだ.

 おそらくこの他にも「セキュリティ問題」をあげる方もいるかもしれない.このような理由により,ポート1900と5000がファイヤーウォールによってデフォルトでブロックされたり,UPnP無効化Tipsなどが出てくるのだろう.このような逆風の中では,UPnP対応ネットワーク機器の販売は難しい.

 そんな状況下,MS主催のハードウェア開発者会議「WinHEC 2005」のレポートの中におもしろい記事を見つけた.次期Windowsの「Longhorn」で採用されるかもしれない,ネットワーク機器のインストールに関する規格だ.

 「PnP-X(Plug&Play Extensions for Network Connected Device)」は,従来のUPnPを改良したネットワーク機器をインストールするしくみだ.詳しくは,アーキテクチャーを示したスライド画像を見て欲しいが,PnP-Xは,ネットワークをPCIやUSBなどと同等に扱えるようにする上層レイヤーと,従来UPnPで「ネットワーク機器発見と機能の把握」のため使用されていたSSDP(Simple Service Discover Protocol),そしてUPnPとは異なる新たな発見技術「WS-Discovery(Web Service Discoverly)」を下層レイヤーとして持つ.このPnP-Xにより,IPネットワークはUSBやPCIバスと同等と見なされ,結果的にネットワーク機器はパソコン直結周辺機器と同様に扱うことが可能となる.先ほどのUPnPの持つ問題点が克服されるというわけだ.

 図の点線からして,「Webサービスを行うネットワーク機器」の発見技術WS-Discoveryがメインのネットワーク機器発見手法であり,UPnPSSDPは,補助的,もしくは下位互換性のためにあるようだ.PnP-Xのバージョンが上がっていけば,最終的にはUPnPのサポートも終わるのかもしれない.もっとも,次期Windows「Longhorn」までの道のりは長く,また普及にも時間がかかりそうで,あと数年はUPnPの時代(?)が続くことだろう.はたしてその間,「UPnPって,便利だな!」とユーザたちを唸らせるようなUPnP対応ネットワーク機器は発売されるのだろうか?


参考リンク:

ネット電話ソフトSkype用周辺機器 日本で発売開始

2005-04-13 00:52:12 | ネットワーク技術
 フリーのネット電話ソフトSkypeが,いわゆるMSNメッセンジャーや,Yahoo!メッセンジャーといった,インスタント・メッセンジャーとは違い,ネット電話機能に注力したソフトであることは,以前記事にしたとおりだ.その記事の中で,いわゆるメッセンジャーソフトとは違い,Skypeにはハードウエアの展開が目立つことを書いた.本日,ウェルトーンという会社から,音質を重視したSkype用周辺機器が発売されるとのニュースが入ったので,今回はこれをご紹介する.

 ニュースソースによると,まず第1弾として,音声チャット用の「マイク/スピーカジャックタイプ ハンディフォン (WB-1001)」が発売される.このWB-1001は,汎用のハンドセットで,通常,音声チャットに用いられるヘッドセットと同様に,PCのマイク端子とヘッドフォン端子に接続して使用する.そのため,ボリュームとミュート機能以外,特別な機能は持っていないものの,音質は良いとのこと.店頭予想価格は5,200円とかなり高め.この汎用ハンドセットWB-1001自体は,いままでのヘッドセットの変形であり,機能的になんら変わりはないが,その後発売される予定の関連製品の中には,Skypeに特化した製品がある.

 まず関連製品として注目されるのが,このWB-1001用のスピーカー内蔵台座だ.このスピーカー内蔵台座はUSB接続でPCと接続され,Skypeの着信音が,この内蔵スピーカーから出力されるようになっている.また,WB-1001用(注:一般的なヘッドセットでも利用可能)のマイク端子とヘッドフォン端子もあり,通常,WB-1001はこの台座につなげておく.受話の手順は次にようになる.
  1. Skype着信音が内蔵スピーカーから鳴る
  2. 台座からWB-1001を取り上げる
  3. 台座の本体スイッチを押して,音声出力をスピーカーからWB-1001に切り替える
  4. 通話をする
 この一連の受話手順は,確かに一般の固定電話に近い.ただ詳細はわからないのだが,この説明手順だと,固定電話とは違い,WB-1001を台座から取り上げた後,2つの操作が必要になるのかもしれない.1つは,本体のボタンを押し,音声出力をスピーカーからWB-1001に切り替える操作.もう一つは,マウスでSkypeの受話ボタンをクリックする操作だ.固定電話のようにWB-1001取り上げただけで,この2つの操作はしてくれないのだろうか?いずれにしても,WB-1001と台座をセットで購入すると,1万円近くなるが,セットで購入した方が便利には違いない.

 次に発売予定の製品は,上記の製品よりも,ずっと固定電話に近いものだ.「Skype対応USBハンディフォン (WB-2001)」は,一見すると「ディスプレイのない有線携帯電話」といった感じの製品だ.様々なキーを持ち,PCを一切操作せず,WB-2001単体でSkype電話をかけたり,受けたりすることができる.WB-2001には,携帯電話のような液晶画面はないが,その代わりにPC画面を使用する.十字キーを使用して,PC画面に表示されたSkypeのコンタクトリストから,かけたい相手を選択し,電話をかけることもできるようだ.店頭予想価格は8,400円とのこと.値段からすると,先ほどの,「WB-1001と台座セット」よりも安くて高機能なので,こちらがお薦めになるだろう.

 WB-2001の上位機種である「Skype対応USBハンディフォン(64MBフラッシュ内蔵) (WB-2501)」は,WB-2001にフラッシュメモリを内蔵させた機種だ,このフラッシュメモリにはSkype本体とその関係ソフトが入っており,WB-2501をPCに刺すだけで,Skypeがインストールされ,使用出来るようになるようだ.本体は小型で,バッテリー駆動ではないため,常に持ち歩き,一種の携帯電話のように使用出来るのがポイントなのだろう.

 ニュースソースを見ると,この他に「無線ハンディフォン」や,「USBスピーカフォン(インターフォンタイプ)」なども予定されているようだ.それらの中でちょっと気になるのが,「一般の電話機をIP電話端末として利用するためのUSBコンバータ」だ.これについては,詳細はわからないが,おそらく固定電話機と接続するためのモジュラージャックと,パソコンに接続するためのUSB端子を持ち,Skypeが着信すると,固定電話機を鳴らすようになっているのだろう.もちろん固定電話機の受話器を取れば,通常の電話と同様にすぐに会話が始められるはずだ.ただ電話をかけるときの操作はどのようにやるのだろう?相手が電話番号を持っているのであれば,通常の電話と同様に,電話番号をプッシュすればいいのだろうが…それともコンタクトリストのメンバに割り当てることができる,「短縮番号」をプッシュするのだろうか?

 いずれにしても,Skypeとこれらの機器を組み合わせれば,通常の電話感覚で,ネット電話が使用出来るに違いない.特にWB-2001には期待したいところだが,8,400円という値段はちょっと高価に感じる.デザインからしてビジネス用なのかもしれないが,単なるヘッドセットならば500円ぐらいからあるのだから.

ネット電話ソフト Skype 1.2.0.41 登場

2005-04-09 07:23:03 | ネットワーク技術
 このブログで時々取り上げているネット電話ソフトの「Skype日本語版」が,バージョン「1.2.0.41」にバージョンアップした.9日6:00AM現在,旧バージョンのSkypeが立ち上がっていて,なおかつ「アップデートを自動的に確認する」に設定されていても,自動更新はされない.また「ヘルプ」メニューの「アップデートの確認」をクリックしても,「新バージョンは存在しない」と書かれたWebページが表示されてしまう.このため新バージョンに更新するためには,手動で新バージョンをダウンロードし,インストールする必要がある.ダウンロードはこちら

 変更点は…
  1. 各言語版の翻訳を改善
  2. プロキシ経由の(文字)チャットと通話の接続性を向上
  3. プロキシ経由でのログインを改善
  4. 「セントラル・コンタクトリスト」を改善
  5. SkypeIn(通常の電話機からの着信)でかかってきた電話がボイスメールサービスに転送されるときに,慣例上の応答メッセージが再生される
  6. エコー・キャンセレーション機能により,DTMFトーンが阻害されないように,DTMFトーンが鳴る時には,200ミリ秒の間マイクをミュートする
  7. セットアップ中,登録先のディレクトリへ,アバタ(コンタクトリスト内のメンバの顔写真)を書き込むのに失敗する場合があったが,これを修正
  8. バージョン1.1,あるいはそれよりより古いバージョンと,バージョンと1.2の間での通話(calls,あるいは呼出音)ができないことがまれにあったが,その場合,双方で音がしない,あるいはノイズが流れるだけだったが,その不具合を修正
  9. いくつかのケースでは,チャット全体が再シンクロ(resynced)されていたが,その不具合を修正(ちょっと意味不明)
 ちなみに私と同様に,本バージョンの変更点を,英語から日本語訳した「ライブドア版の更新履歴」では,5番目を「スカイプインでボイスメールを再生したときに流れるウェルカムメッセージをカスタマイズ可能に変更」としているが,原文は

"if a SkypeIn call is sent to voicemail, custom(慣例の) greeting is played"

であり,"customized greeting"ではないし,また「ボイスメールが再生される」とは,どこにも書かれていない.どちらが正しいかは,皆さんでご判断下さい.以上,連絡終わりッ!


参考リンク

新登場!MSNメッセンジャー7.0正式版 - 「ビデオ会話」の技術的側面

2005-04-08 05:44:51 | ネットワーク技術
 多くのメジャーなPCニュース系サイトで取り上げられたように,本日7日,コンシュマー向けインスタントメッセージングソフトの代表格「MSNメッセンジャー7.0正式版(Build7.0.0777)」がリリースされた.既に先行公開されていた「MSNメッセンジャー7.0お試し版(ベータ版)」よりも,様々な機能が追加されている.

 ベータ版からの主な変更点は…
  • メンバーを300人まで追加できる
  • ビデオ会話」機能の追加(「ビデオチャット」ではない.詳細は後述)
  • サーバー経由での音声チャット
  • 写真共有機能の無料化
  • メンバーの今聞いている音楽のタイトル表示及びMSNミュージックとの連携
  • 表示メッセージ機能の追加
  • MSNスペースのマイスペースへの移動ボタン追加
  • メンバリストの各メンバ状態アイコンの代わりに,メンバ画像を表示
  • 「ウインク」のアニメ変更,及び有償提供
  • 「シェイク」の時間を短くした
  • 文字や背景,表示アイコンをD&Dで設定可能
  • コンテンツパックの提供:カスタマイズされた絵文字,背景,表示アイコン,ウインクのセット(現在は提供されていない)
  • サインインする前の状態のデフォルト化
  • Passport にサインインするときに一覧に表示される名前の編集
 この他に現在,日本でサポートされていない新機能としては
  • 有料のビデオコールを申し込んで高品質のビデオ機能と音声機能を利用する
  • ダイナミック表示アイコン(アバター機能)の有償提供
  • musicmix: 特定のメンバの間で音楽をリストに投稿したり,他のメンバが投稿した音楽を聴く
  • 携帯端末等のSMS(ショートメッセージ・サービス)へのIM送受信
  • SPOT対応腕時計「MSN Direct Watch」へのIM送信
 これらの新機能の中で,特に私が気に入ったものは「表示メッセージ」機能だ.自分としては今まで,MSNメッセンジャーの「状態」の詳細をメンバに知らせるため,「WaterMind@修理中」と言った風に表示名を変えて対処してきた.今回の新機能「表示メッセージ」を使えば,表示名は変えずに表示メッセージだけ打ち直せば,「状態」の詳細をメンバに知らせることができる.但し,Yahoo!メッセンジャーのように,以前に入力した表示メッセージの履歴から,表示メッセージを選択することはできない.この点は早く改善して欲しいと思う.

 さて新機能の使い方や紹介は,他のサイトやオンラインヘルプに任せるとして,我々は新機能の技術的側面,特に「ビデオ会話」についてを見ていこう.

 新機能「ビデオ会話」は,従来の「ビデオチャット」とは全く似て非なるもので,ロジクールが新たに開発したアーキテクチャーを採用した,より高品位な「TV電話」を実現した機能だ.

 「ビデオ会話」機能の特徴としては…
  • ブロードバンドに対応
  • 接続性の改善:サーバー経由通信であるため,従来,ファイヤーウォールのためにビデオチャットできなかった環境でも,できる可能性が大きくなった.
  • 解像度の拡張による画像の不鮮明さ排除
  • ビデオ画像の全画面表示
  • 音声とビデオのずれを補正したスムーズな映像
  • 他のオペレーティング システムを使用しているメンバとの接続をサポート
 従来採用されてきた,UPnP対応ルーター経由のナローバンドでP2Pで通信する「ビデオチャット」の場合,音声と映像はそれぞれ独立した機能であったため,音声と映像がシンクロしない場合があった(注:私の推測).今回の「ビデオ会話」では,音声と映像はミックスして,同時に1つのストリームにビデオ・エンコードされるため,このような問題は発生しない(注:具体的な技術の詳細は,公開されていないので推測)

 ただし,本バージョンでも「ビデオチャット」機能は残されている.今後,「ビデオチャット」の用途は
  1. 自分または相手が,ナローバンド(ダイヤルアップ接続)の場合
  2. 相手が MSN Messenger 7.0 をインストールしていない場合
  3. 相手がビデオ会話を受信できない地域にいる場合
と行ったケースで,「ビデオ会話」が十分に,あるいは全く機能しない場合に用いられることになる.ちなみに,3番目のケースは,おそらく,ビデオ会話中継サーバが設置されていない地域だと思われる.ではなぜ「受信できない」ではないのか?

 おそらく,この3番目のケースで「相手は受信できないのに,送信だけはできる」と想定されているのは,「ビデオ会話」において,「受信がサーバー経由,送信がP2P」で行われるためと想像される.通常,ファイヤーウォールが遮るのは,インターネット側からの接続(インバウンド)であり,インターネット側への接続(アウトバウンド)は遮断されない.つまり「ビデオ会話中継サーバ」の役割は,この受信に関するファイヤーウォール問題を解決することであり,「ビデオ会話」の送信部には何ら携わっていないと推測される.ちなみに従来の「ビデオチャット」は,ルーターのUPnP機能によって,ファイヤーウォール越しであってもP2P接続のみでも送受信していた(ファイヤーウォールに自動的に穴を開けていた).「「ビデオ会話」機能は,MSNメッセンジャーの音声・ビデオチャットに必須とされていた,「双方のルーターがUPnPに対応していなければならない」という条件を消滅させる事に成功したのだ.なお,音声チャットに関しても,本バージョンからP2Pで通信できない場合は,サーバ経由になるとのことだ.

 さて,ここらでまとめてみよう.MSNメッセンジャーの音声・ビデオ機能には次のものがある.
  • 旧バージョン音声チャット:音声のみ,P2P接続,UPnP対応ルータ必須,Win9x系も使用可
  • 新バージョン音声チャット:音声のみ,P2P接続またはサーバ接続,UPnP対応ルータ不要,Win9x系も使用可
  • WebCam:映像のみ,サーバ経由,UPnP対応ルータ不要,Win9x系でも使用可
  • ビデオチャット:音声&映像,P2P接続,UPnP対応ルータ必須,WinXP同士のみ
  • ビデオ会話:音声&映像,送信:P2P接続,受信:サーバ経由,Win9x系でも使用可


 比較のため,Yahoo!メッセンジャー6.0の音声・ビデオ機能についてもあげておこう.
  • ボイス機能:音声のみ,サーバ経由,UPnP対応ルータ不要,Win9x系も使用可
  • ビデオ機能(通常モード):映像のみ,サーバ経由,UPnP対応ルータ不要,Win9x系でも使用可
  • ビデオ機能(拡張ビデオモード):映像のみ,P2P接続,ファイヤーウォール設定必要,Win9x系でも使用可
 見て頂ければわかるが,Yahoo!メッセンジャーは,音声チャットやビデオチャットの品質よりも,接続性を重視している.これに対して,ライバルのMSNメッセンジャーは,接続性よりも音声チャットやビデオチャットの品質を重視してきた.

 MSNメッセンジャー7.0正式版の新機能「ビデオ会話」「新音声チャット」の登場により,Yahoo!メッセンジャーに比べて劣っていた,MSNメッセンジャーの音声・ビデオ機能の接続性の問題は,ほぼ解決された.その上,音声と映像のシンクロ問題も解決したこのMSNメッセンジャー7.0正式版の「ビデオ会話」は,PCによるインターネット経由「TV電話」の中で,最も優れたものになるかもしれない.ただし,その他の多くの機能や操作性については,まだまだYahoo!メッセンジャーに勝っているとは思えない(特に音声・ビデオ・カンファレンス機能は欲しい).しかもちょいと気になるのはYahoo!メッセンジャーの映像機能も,ロジクールの技術を採用している点だ.今後Yahoo!メッセンジャーが,「ビデオ会話」機能と同等の機能を採用する可能性がないわけではない.そして,接続性の良さや高品質音声チャットで知られるネット電話ソフトSkypeも,今後はビデオ機能を持つようになるのかもしれない.これからも,これらのソフトが良い競争を繰り広げて,消費者にメリットをもたらしてもらいたいものだ.

 …とは言うものの,3つもIM系ソフトを常時立ち上げておくのは,メモリ的画面的にちょいとつらいなァ.


参考リンク

WOL対応の無線LANルーターとは?

2005-04-05 10:10:55 | ネットワーク技術
 既にパソコンも「一家に1台の時代」は終わりつつあり,「一人に一台」が当たり前に成りつつある.Personal Computer,すなわち,「個人専用コンピュータ」であるパソコンも,ようやく本来の姿に近づいてきたわけだ.もちろん「一人に1台」を達成しているお宅では,家のあちこちに配置されたPCが,すべてネットワークによって結ばれ,1つのホームLANを形成しているはずだ.

 家庭のネットワークにつながれている機器は,何もPCだけではない.ゲーム機,HDDレコーダといった家電や,さらにはプリントサーバ,NAS(ファイルサーバ),ネットワークカメラ等の機器群などが,このホームLANに参加している場合も珍しくなくなった.これらの機器に加えて,ネットワークを支えるADSLモデム,ルーター,HUB,無線LANアクセスポイントなどのことも考えると,すべてのPCやネットワーク機器を一括管理し,また何らかのトラブルが発生した時に対処してくれる「家庭内ネットワーク(機器)管理者」が必要になってくるだろう.そしてその役回りは,普通の家庭では,お父さんであったり,息子さんであったりする.

 このようなホームLANの環境下で家庭内の各PCのメンテを行う場合には,「家庭内ネットワーク(機器)管理者」が,管理対象のPCのある場所まで出向いて,そのPCを直接操作することが通常だろう.しかしやってみた方はわかるだろうが,この「出向メンテ」は,意外にも大変な作業だ.場合によっては,何度も自分のPCとメンテ対象のPCの間を,行ったり来たりする事態もあり得る.それが1階のPCと3階のPCの間だとしたら,ダイエットにはいいかもしれないが,お父さんの休日の仕事としてはお気の毒だ.

 もちろん,正しくLANが構築されており,なおかつ,ファイヤーウォール設定などのネットワーク関係の知識が管理者にあれば,このような肉体労働をする必要は,なくなりはしないが,大幅に少なくなる.ネットワーク経由のリモート・メンテナンス,すなわち自分のPCから,LAN内の他のPCをリモートコントロールし,メンテを行えばいいからだ.この手のリモート・メンテナンス機能では,WindowsXP Proの機能である「リモートデスクトップ」機能がよく知られている.リモートデスクトップを使えば,自分のPC(Win98やWindowsXP Homeからでも可)にメンテ対象のPCの画面を表示し,自分のPCのマウスやキーボードで,メンテ対象のPCをリモート操作できる.

 もちろん一般家庭のPCの場合,OSがWindowsXP Proではなく,WindowsXP Homeの場合が多いだろう.その場合でも,無料のVNCソフトを利用すれば,リモートデスクトップより機能は落ちるが,ほぼ同様に相手の画面を見ながら,自分のマウス・キーボードで,相手のマシンをコントロールできる.さらにルーターの設定を行えば,インターネット経由で遠隔地からでも,自宅のPCのリモート操作をすることも可能だ.

 ただこのリモート操作にも,ちょっとした問題がある.それは操作対象のPCに電源が入っていなければ(正確に言えば「Windowsが立ち上がっていなければ」),リモート操作ができないからだ.電源を入れるために,わざわざ操作対象PCのある場所まで出向くのは本末転倒と言える.もちろん家人に(内線)電話を入れて,電源を入れてもらうことも可能だろうが,それが不可能なケースも多々あるだろう.

 ところがこの問題を解決する機能が,かなり多くのパソコンにはある.それが「WOL(Wake Up On LAN)」機能だ.この機能が有効になっているパソコンならば,たとえそのパソコンの電源が切れていたり,スタンバイ(節電)状態に入っていたとしても,他のLAN上の機器から特殊なパケット(マジックパケット)を送り込めば,そのパソコンを起動させることができる.ちなみに最近のLANアダプタの中には,マジックパケット受信以外にも,リンクアップと同時に起動させる「Wake Up On Link」や,単なるユニキャストパケット受信で起動する「Wake Up On Directed Packet」など,様々なイベントによって,パソコンを起動させることのできる機種もある.

 現在発売されているパソコンの多くが,このWOL機能を持っているが,実際にこのWOL機能を有効にするためには,いくつかの条件がある.その条件とは…
  • LANアダプタがWOLに対応している
  • マザーボードがWOLに対応している(WOL端子を持つか,PCI Rev2.2以降で PMEに対応している)
  • マザーボードのPCIがRev2.2未満の場合,WOL端子がマザーボード上にある場合,LANアダプタとWOL端子がWOLケーブルで接続されている
  • 電源の5Vスタンバイ(待機電力)の容量は,0.6~0.75A以上必要
  • BIOS設定でWOLが有効になっている.マザーボードのPCIがRev2.2以降の場合,PMEも有効にする必要がある.
  • WindowsのLANアダプタのドライバ設定で,WOLが有効になっている
  • LANアダプタのPME信号のタイプ(High PulseやActive High)が,マザーボードに合致している


 ちなみに.DELLHPなどの企業向けのPCは,専門管理者により,リモートメンテを行う可能性が高いので,ほぼ間違いなくWOLに対応している.

 というわけで,ここまでがWOLについての概説だが,今回はWOLがらみのユニークなルーターを紹介する.

 BuffaloのVPN対応無線LANルータWZR-RS-G54がそれだ.VPNと聞くと企業向けのつまらないルーターのように思えるが,このルータは,他のアクセスポイント等からの電波干渉を防止する「Autoチャンネル機能」や,有害サイトの閲覧をブロックする「BUFFALOコンテンツフィルタ」など,さまざまなユニークな機能を持っている.その中の一つが,WOLパケット送信機能だ.つまりこのルーターからWOLマジックパケットを送信し,WOL対応の電源の切れたパソコンの,電源を入れると言う機能だ.この機能を使用すれば,家の中のすべてのPCの電源が切れていても,ルーターの電源が入っており,なおかつ,インターネット側からルーターのWebページ(ネットワークサービスメニュー)が表示できれば,このページを使って,家中のPCの電源を入れ,さらにリモートデスクトップやVNCソフトを使って,リモートメンテが可能となる.これを自宅のルーターとすれば,単身赴任先のお父さんでも,深夜,すやすや眠っている娘さんを起こすことなく,娘さんのパソコンに電源を入れ,メンテすることができるというわけだ.コンシュマー・SOHO向けのルーターで,このような機能を持っているものは,この機種だけではないだろうか?

 この機種は,スペック上のスループットも良いが,無線LANルーターとしては,これらの機能の分,価格がやや高めになる.また,最近はやりの無線LANの高速化機能が,buffaloオリジナルの「フレームバーストEX」と言う点がちょっと気にはなった.後は,ファームの熟成度だが,これは実機がないので判断できない.ちなみに2chでは,この機種から無線LAN機能を取り除いたとされるBHR-4RVが評判の良い機種と言うことで,「ブロードバンドルーターのおすすめを教えて 18」のテンプレに記載されていた.

 確かに,このお父さんのようなケースはまれだろうが,他にもいろいろな用途がこのルータには考えられる.特に,自宅サーバを24時間運用したくないものの,遠隔地から自宅PCにアクセスしたいユーザーや,サーバのない小規模なLANのリモート管理者にとって,この製品は食指を動かされることだろう… えっ!?それって,俺のこと?


 参考リンク:

フリーのネット電話ソフト Skype 1.2 登場

2005-03-25 12:40:29 | ネットワーク技術
 IM(インスタントメッセージング)は,今や重要なコミュニケーションの道具となった.WindowsメッセンジャーMSNメッセンジャーYahoo!メッセンジャー等を使用すれば,相手の距離に関係なく,ほとんど通信コストをかけずに,単数あるいは複数の相手と,文字チャットはもちろんのこと,音声チャットやビデオチャットでリアルタイムのコミュニケーションが取れる.このような特徴を持つインスタントメッセンジャーは,一般消費者のみならず,企業においても,仕事をスムースに運ぶための重要なコミュニケーション手段と見なされつつあり,セキュリティの確保されたIM用のサーバ(Microsoft Office Live Communication Server)も販売されている.このように便利なIMではあるが,現在のところ残念ながら,それぞれのメッセンジャーには一長一短がある.

 例えば,企業向けに特化された内部構造を持つWindowsメッセンジャーでは,Microsoft Office Live Communication Server経由でYahoo!メッセンジャーのユーザーとメッセージを交換したり,秘匿性の高い社内メッセージングが可能だ.その一方で,Windowsメッセンジャーには,コンシュマー向けのMSNメッセンジャーの持つ「ウインク(相手にアニメーションを送る)」のようなお楽しみ機能はない(詳しい差異はこちら).またMSNメッセンジャーの音声チャットを行うためには,基本的には双方のルーターがUPnPに対応している必要がある.これに対し,Yahoo!メッセンジャーの音声チャットはサーバ経由のため,音声チャットに関し,このような要件はない.インスタントメッセンジャーの音声チャット機能を,通話料無料のIP電話の代わりとして,使用しているユーザーも多いと思うが,このような要件が存在するため,通話相手に合わせて音声チャットに使用するメッセンジャーを選択しているユーザーもいることだろう.

 このような状況下,フリーのネット電話ソフトSkypeはルクセンブルグより日本に上陸した.Skypeの概要については,こちらを参照のこと.現在のところSkypeは,ほぼ最小限のインスタントメッセンジャー機能しか持ち合わせていない.音声チャットはできるものの,ビデオチャットもできない.またコンシュマーに喜ばれるような,ゲームや「ウインク」などのお楽しみ機能も一切無い.どちらかと言えば,無骨な「事務用品」あるいは地味な「黒電話」のイメージに近いソフトだ.このようにコンシュマー向けのインスタントメッセンジャーとしては完敗と言ってもよいSkypeなのだが,実は,他の音声チャット可能なメッセンジャーのユーザーに対しても,強力にアピールできるアドバンテージを秘めている.

 しばしば誤解されることなのだが,Skypeは,純粋なメッセンジャーソフトではなく,インスタントメッセンジャーの機能をオマケとして持つ「ネット電話」に特化したソフトだ.つまり開発コンセプトが,インスタントメッセンジャーとは根本から異なっている.では,具体的に音声チャット機能を持つメッセンジャーと「ネット電話」に特化したSkypeの違いは,どこにあるのだろうか?

 Skypeを使用してすぐにわかるその違いは,音声チャットの「着信」だろう.Skypeにおいては,相手に対し音声チャットを開始すると,相手のSkypeは着信音を発する.通常のメッセンジャーソフトでは,このようなことは起こらない.つまり着信という概念が,そもそもインスタントメッセンジャーにはないからだ.最近は,この着信音の代わりに「シェイク」や「緊急メッセージ」を手動で相手に送り,着信音代わりにすることができるようになったが,それも連続で送ることはできない.Skypeの着信音は電話と同様に鳴り続けるため,離席中のユーザーでもPCの近くにいれば着信を気がつきやすい.さらに,Skypeでは通常の携帯電話と同様に,着信と通話時間の履歴が残るようになっている.しかしこれらは,Skypeの決定的なアドバンテージではない.

 Skypeの最も重要なアドバンテージは,高音質の音声チャットを,いかなるネットワーク環境下でも可能とする点だ.つまり,相手もしくは双方がプライベートアドレスであろうと,相手との間にファイヤーウォールが存在しようとも,ルーターがUPnPに対応していなくても,ほとんどの場合,無設定で音声チャットができるのだ.これはSkypeの採用しているP2P通信技術によって可能となった.とはいえ正直に言えば,セキュリティが恐ろしく固いファイヤーウォールを経由する場合は,設定が必要となる.しかしこのようなケースはほとんど無いはずだ.

 この他にも,フリーの留守電機能アドインソフトSkypeから通常の電話に電話をかける「SkypeOut」サービス(ただし現在は問題ありか?),さらにはUSBハンドセットコードレス・ハンドセット(USBも使用)による発着信といったハードウエア展開,そして究極的とも言える「携帯電話へのSkype組み込み」「無線LAN携帯電話へのSkype組み込み」といった携帯端末へのアプローチなどなど,Skypeは,ネット電話ソフトとして他のメッセンジャーソフトには見られない動きを見せており,今後も世の耳目をひくこととなるだろう.

 前置きが長くなったが,そのSkypeの最新バージョン1.2が23日にリリースされた.ダウンロードはこちら

 主な変更点は…
  • SkypeIn(有料): Skypeに着信するための電話番号を付与する.これにより,一般の電話からPCのSkypeへの着信が可能となる.
  • Voicemail(有料):留守電機能をSkypeに提供する.
  • セントラル・コンタクトリスト:パソコンではなく,インターネット側にコンタクトリストを保存する.
  • Getting Started Wizard:初心者向けに起動時に表示されるウイザード.
  • 多重ファイル転送
  • サウンド品質の向上
 今回のバージョンアップは,「セントラル・コンタクトリスト」の採用によりインスタントメッセンジャーとしての基礎を固め,「SkypeIn」により通常電話としての双方向性を有料ながら実現した形となった.相変わらず,しゃれっ気のない実用志向的バージョンアップではあるが,一段と黒電話としてのすごみを増したような気がする.某社長の言うように,はたして今後Skypeが「既存の通信業界を粉々に破壊してしまう」ほど,大化けするのだろうか?

参考リンク:

無線LANのチャンネル設定はどうしてる?

2005-03-18 10:32:29 | ネットワーク技術
 無線LANのアクセスポイントやルーターを設定する時に,使用する電波のチャンネル(周波数)番号を指定しなければならないことは,ご存じかと思う.ただし,「なぜ無線LANにこのようなチャンネルと言う概念が存在し,ユーザーはそれを選択する必要があるのか?」と言うことについては,深く考えたことのないユーザーも多くいるのではないだろうか?そのようなユーザーは,おそらく無線LAN設定時に,適当にチャンネル番号を選択しているかもしれない.

 無線LANにおいてチャンネルが選択できるようになっているのは,他の無線LANアクセスポイントからの電波的干渉を避けるためだ.同じチャンネル(周波数)を使用している他のアクセスポイントが存在すると,通信エラーが起こり,結果的に通信速度が落ちてしまう.それぞれのアクセスポイントのチャンネル番号を,重ならないように設定すればこのような通信速度低下は起こりにくいというわけだ.

 「俺の家にはアクセスポイントが1台だけだから,関係ないよ.」と言う声が聞こえてきそうだが,たとえ自宅のアクセスポイントが1台だけだとしても,チャンネル選びは重要だ.なぜなら,これだけ無線LANが一般化されてくると,隣家で無線LANを使用しており,なおかつその電波が自宅まで届いている可能性があるからだ.実際,私の家には,隣家からの無線LAN電波が届いている部屋がある.しかも,偶然にも同じ11b規格で同じチャンネルを使用していたことがあった.

 隣家からの電波に気がついたのは,我が家の無線LAN接続速度が低かったため,無線LANのユーティリティでアクセスポイントの探索を行った時だ.探索の結果,見事に隣家のアクセスポイントを発見し,ESSIDやチャンネル番号が確認できた.そこで急遽,自宅の無線LANのアクセスポイントのチャンネルを変更した結果,通信速度は正常値に戻すことができた.このようなトラブルを避けるためには,
  • 日頃,無線LANの通信速度を意識し,平均的な通信速度については把握しておく
  • 定期的に自宅で無線LANアクセスポイントの探索を行い,隣家に新たなアクセスポイントができていないかどうかチェックする
などの対策が必要かもしれない.もちろん家庭で無線LANアクセスポイントの設置時は,周囲のアクセスポイント探索を行い,その結果からチャンネル番号を決定することは必須だろう.また自宅の無線LANのアクセスポイントから,隣家に電波が漏れている可能性があることを考慮し,面倒でも必ずセキュリティ設定を行うべきだ.現在の無線LANセキュリティ設定としてはがある.

 ちょっと脱線したが,無線LANのチャンネル設定を正しく行う為には,ちょっとした事前の電波環境調査が必要なことは,ご理解頂けたかと思う.今回はこのチャンネル設定のために必要な事前調査を,より簡単に行ってくれるソフトのニュースだ.

 今月14日,BUFFALOが無線LANユーティリティ「AirStation Monitor」の無償提供を開始するというニュースが入った.このソフトは,電波環境のチェックやアクセスポイントの設定を行うためのソフトで,特定の無線LANカードを挿入したノートパソコンで使用される.基本的には企業のオフィスなど,たくさんのアクセスポイントが混在する環境において,設定・メンテの効率化を目的としたソフトだ.このソフト最大の機能は,「チャンネルスキャン」と呼ばれるもので,チャンネルごとにアクセスポイントの台数と,電波強度をグラフで表示することができる.さらに自動的に,その測定位置で使用が推奨されるチャンネル番号をも表示してくれる.この他にもアクセスポイントが対応していれば,このソフトからアクセスポイントの設定や通信状態のモニタリングも可能だ.これがあれば,アクセスポイント設置時のチャンネル選びに迷うことはないだろう.

 但し,残念なことに,このAirStation Monitorを使用出来る無線LANカードは,BUFFALOWLI-CB-AG54など,たったの3機種に限られている.またアクセスポイントに対する機能も,BUFFALO企業向けのアクセスポイントだけしか対応していない.便利なユーティリティなので,BUFFALO製のすべての無線LANカードがこのユーティリティに対応し,なおかつ,一般家庭で使用されるアクセスポイントにも同時に対応してもらいたい.

参考リンク:

屋外にCat.5eケーブルを敷設するための新製品

2005-03-14 13:59:37 | ネットワーク技術
 LANケーブルを屋外配線しなければならないケースは,以前よりかなり減ってきた.これは無線LANが一般的になってきたからだ.無線LANの場合,同じ距離ならば,障害物の多い屋内よりも,障害物の少ない屋外の方が電波状況がよい場合が多い.そのため,2つの建物間がそれほどの距離がなく,なおかつ障害物も少なければ,アクセスポイント間のブリッジ接続が可能な無線LANアクセスポイントのみで,2つの建物のLANをブリッジ接続できる.また2つの建物間がかなり離れている場合でも,屋外用指向性アンテナを使用すれば,1.5km~3kmほどの遠距離まで電波を飛ばし,LAN間を接続することも可能だ.また2つ以上の建物のLANを無線LANで接続することも屋外アンテナあればできる

 このように建物間のLAN間接続については,コストの問題はあるものの,無線LANでほとんどの場合解決できると思われる.しかしながら,セキュリティ・帯域幅・安定性では,無線より有線の方が断然有利であることは,否めない.また企業ではない一般家庭における建物間通信は,コストが重視されるため,無線LANの導入がコスト的に無理な場合もあるかと思う.そうなると,建物間にLANケーブルを敷設することになるが,これがわりと面倒だ.

 一般的にLANケーブルの本格的な屋外敷設の場合,空中を行くか,地中を行くかと言うことになると思う.地中ならば,VE電線管などを地中に埋設し,そこに屋外用のLANケーブル通線工具を使って,引っ張り込むと言うことになるだろう.屋外用のLANケーブルは,通常のLANケーブルとは異なり,シース(被覆)が二重になっており,外部シースは耐水・耐紫外線・耐寒性を持っている.ちなみに,通常のLANケーブルを屋外に敷設すると,最終的にはシースが硬化し,バリバリにひび割れてしまうそうだ.

 このため,LANケーブルを仮に空中架設する場合でも,屋外用のLANケーブルならば,裸のままで架設しても,それほど問題はないはずだ.ただこの空中架線の場合,雷対策が必要になると思われるが,屋外用のLANケーブルには,ドレインワイヤーがLANケーブル内に入っているものもあり,仮にLANケーブルに雷が落ちても,このドレインワイヤーが接地(アース)されていれば,雷を地面に逃がすことができるようになっている.

 さてこの建物間の有線LAN間接続に置いて,もう一つの難関がある.それは,屋外から屋内へのLANケーブルの引き込みだ.何らかの穴が建物の外壁に空いていれば,そこにLANケーブルを通すことも可能な場合もあるだろう.だが,そのような適当な穴がない場合は,建物に穴を開けなければならない.日曜大工が得意な方なら,腕の見せ所だろうが,穴あけはできたら避けたい人がほとんどだろう.このような問題を解決する,ちょっとおもしろいLANケーブルがエレコムから新発売されたというニュースが入ってきた.

 エレコムのLANケーブルLD-VAPF/BKは,屋外仕様のCat.5eケーブルだ.芯線は単芯のため,やや曲げにくいケーブルかと思われる.いままでのCat.5eの屋外用LANケーブルの場合,ケーブルのみが販売されるの通常で,コネクタがついていないものが多かった.本製品は,ケーブルのみでも発売されるが,両端にコネクタを付けたものも発売される.ケーブルのみの場合は,別途コネクタを購入し,ケーブルストリッパーや,圧着(かしめ)工具を用いて,シースをむいてコネクタを付けなければならない.なお詳しいLANケーブルの自作方法は,こちら.一般家庭のユーザーにとって,両端コネクタ付きのケーブルは,ケーブルの長さが余ったり,逆に足りなくなったりする可能性はあるものの,便利ではあるだろう.ただこの手の製品については,今までも別メーカより購入できた.おもしろいのは次の2つの製品だ.

 高耐久すきま用アルミ強化フラットLANケーブルLD-VAPF/SV05は,サッシ窓のすきまを使って,屋外から屋内にLANケーブルを引き込むためのCat.5eケーブルだ.非常に薄く,アルミテープで強化してあるため,サッシ窓を閉じてもケーブルにダメージを与えないようだ.これは先日発売された,NTT-ATの「LAN用すき間ケーブル」とほぼ同じ仕様だが,「LAN用すき間ケーブル」はCat.5ケーブルで,ケーブル先端の片方がモジュラージャック(メス)になっていた.LD-VAPF/SV05は,ケーブルの両端にコネクタがついているが,これはもう一つ新製品の仕様が前提となっているためだ.

 もう一つの新製品とは,屋外対応RJ-45中継コネクタLD-VAPF/RJ45WPのことだ.これは上記の2製品(屋外用LANケーブルとサッシ用LANケーブル)を屋外で接続するコネクタ(メス-メス)で,2個入りだ.一つは,屋外用,もう一つが屋内用と言うことだろう.基本的には通常売っている中継コネクタと同等のようだが,もしかしたらコネクタ自身が防水や耐候などの屋外仕様なのかもしれない.コネクタ部の防水処理のために自己融着テープが2本ついている.これで接続した2本のLANケーブルと中継コネクタ全体を,ぐるぐる巻きにして,防水処理を行うことになる.

 以上,これらの新製品を組み合わせれば,屋外にLANケーブルを(簡易)敷設し,さらに建物に穴を開けずに,そのケーブルを屋外から屋内に引き込むことができる.特に1000BASE-T(ギガビットイーサネット)に対応した製品群であるため,無線LANによるソリューションに対するアドバンテージもあるかと思う.ただ気になる点がいくつかある.

 まず,最初に屋外用LANケーブルの雷対策だ.富士電線の屋外用LANケーブルなどは,先ほど述べたように,ドレインワイヤーによって,落雷を地面に逃がすことができるようになっている.ただ,この製品のユーザーは一般家庭が前提となっており,高度な敷設技術を必要とする空中架線などに,この製品が使用されることはないと思われる.いずれにしてもこの製品については,埋設か,地面にそのまま置いたほうが無難だろう.

 第2に気になるのは,すきま用ケーブルの屋外にさらされる部分の強度だ.見たところ屋外仕様にはなっていないように見える.中継コネクタに付属している自己融着テープで,その部分全体を巻いてしまえば問題ないのかもしれないが…

 第3に気になるのは,2つの中継コネクタを用いる点だ.この中継コネクタ部分は,外部の電気的ノイズを拾いやすいとされている.従って環境によっては,この中継コネクタのために,通信速度が落ちてしまう可能性もあるだろう.

 気になる最後の点は,屋外における中継コネクタの耐性だ.自己融着テープで巻いてしまえば,防水については問題ないと思われるが,夏の暑さや直射日光,さらには寒さといった耐候性はあるのだろうか?

 これらの疑問に関しては,使用環境にもよると思われるので,実際に長期間これらの製品を使ってみなければ,答えは出ないのかもしれない.ただ,雷については十分な注意が必要だと思われるため,少なくともこの屋外用LANケーブルを空中架線に使用するのは避けた方がよいと思う.基本的にこれらの製品は,一般家庭において,ユーザーが簡単にLANケーブルを屋外敷設する為の簡易製品と考えるべきだ.企業などにおける本格的なLANケーブル屋外敷設については,やはり工事としてプロに頼み,それなりの資金をかけるのは当然のことだろう.