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PCとネットワークに関するニュースコラム.

WOL対応の無線LANルーターとは?

2005-04-05 10:10:55 | ネットワーク技術
 既にパソコンも「一家に1台の時代」は終わりつつあり,「一人に一台」が当たり前に成りつつある.Personal Computer,すなわち,「個人専用コンピュータ」であるパソコンも,ようやく本来の姿に近づいてきたわけだ.もちろん「一人に1台」を達成しているお宅では,家のあちこちに配置されたPCが,すべてネットワークによって結ばれ,1つのホームLANを形成しているはずだ.

 家庭のネットワークにつながれている機器は,何もPCだけではない.ゲーム機,HDDレコーダといった家電や,さらにはプリントサーバ,NAS(ファイルサーバ),ネットワークカメラ等の機器群などが,このホームLANに参加している場合も珍しくなくなった.これらの機器に加えて,ネットワークを支えるADSLモデム,ルーター,HUB,無線LANアクセスポイントなどのことも考えると,すべてのPCやネットワーク機器を一括管理し,また何らかのトラブルが発生した時に対処してくれる「家庭内ネットワーク(機器)管理者」が必要になってくるだろう.そしてその役回りは,普通の家庭では,お父さんであったり,息子さんであったりする.

 このようなホームLANの環境下で家庭内の各PCのメンテを行う場合には,「家庭内ネットワーク(機器)管理者」が,管理対象のPCのある場所まで出向いて,そのPCを直接操作することが通常だろう.しかしやってみた方はわかるだろうが,この「出向メンテ」は,意外にも大変な作業だ.場合によっては,何度も自分のPCとメンテ対象のPCの間を,行ったり来たりする事態もあり得る.それが1階のPCと3階のPCの間だとしたら,ダイエットにはいいかもしれないが,お父さんの休日の仕事としてはお気の毒だ.

 もちろん,正しくLANが構築されており,なおかつ,ファイヤーウォール設定などのネットワーク関係の知識が管理者にあれば,このような肉体労働をする必要は,なくなりはしないが,大幅に少なくなる.ネットワーク経由のリモート・メンテナンス,すなわち自分のPCから,LAN内の他のPCをリモートコントロールし,メンテを行えばいいからだ.この手のリモート・メンテナンス機能では,WindowsXP Proの機能である「リモートデスクトップ」機能がよく知られている.リモートデスクトップを使えば,自分のPC(Win98やWindowsXP Homeからでも可)にメンテ対象のPCの画面を表示し,自分のPCのマウスやキーボードで,メンテ対象のPCをリモート操作できる.

 もちろん一般家庭のPCの場合,OSがWindowsXP Proではなく,WindowsXP Homeの場合が多いだろう.その場合でも,無料のVNCソフトを利用すれば,リモートデスクトップより機能は落ちるが,ほぼ同様に相手の画面を見ながら,自分のマウス・キーボードで,相手のマシンをコントロールできる.さらにルーターの設定を行えば,インターネット経由で遠隔地からでも,自宅のPCのリモート操作をすることも可能だ.

 ただこのリモート操作にも,ちょっとした問題がある.それは操作対象のPCに電源が入っていなければ(正確に言えば「Windowsが立ち上がっていなければ」),リモート操作ができないからだ.電源を入れるために,わざわざ操作対象PCのある場所まで出向くのは本末転倒と言える.もちろん家人に(内線)電話を入れて,電源を入れてもらうことも可能だろうが,それが不可能なケースも多々あるだろう.

 ところがこの問題を解決する機能が,かなり多くのパソコンにはある.それが「WOL(Wake Up On LAN)」機能だ.この機能が有効になっているパソコンならば,たとえそのパソコンの電源が切れていたり,スタンバイ(節電)状態に入っていたとしても,他のLAN上の機器から特殊なパケット(マジックパケット)を送り込めば,そのパソコンを起動させることができる.ちなみに最近のLANアダプタの中には,マジックパケット受信以外にも,リンクアップと同時に起動させる「Wake Up On Link」や,単なるユニキャストパケット受信で起動する「Wake Up On Directed Packet」など,様々なイベントによって,パソコンを起動させることのできる機種もある.

 現在発売されているパソコンの多くが,このWOL機能を持っているが,実際にこのWOL機能を有効にするためには,いくつかの条件がある.その条件とは…
  • LANアダプタがWOLに対応している
  • マザーボードがWOLに対応している(WOL端子を持つか,PCI Rev2.2以降で PMEに対応している)
  • マザーボードのPCIがRev2.2未満の場合,WOL端子がマザーボード上にある場合,LANアダプタとWOL端子がWOLケーブルで接続されている
  • 電源の5Vスタンバイ(待機電力)の容量は,0.6~0.75A以上必要
  • BIOS設定でWOLが有効になっている.マザーボードのPCIがRev2.2以降の場合,PMEも有効にする必要がある.
  • WindowsのLANアダプタのドライバ設定で,WOLが有効になっている
  • LANアダプタのPME信号のタイプ(High PulseやActive High)が,マザーボードに合致している


 ちなみに.DELLHPなどの企業向けのPCは,専門管理者により,リモートメンテを行う可能性が高いので,ほぼ間違いなくWOLに対応している.

 というわけで,ここまでがWOLについての概説だが,今回はWOLがらみのユニークなルーターを紹介する.

 BuffaloのVPN対応無線LANルータWZR-RS-G54がそれだ.VPNと聞くと企業向けのつまらないルーターのように思えるが,このルータは,他のアクセスポイント等からの電波干渉を防止する「Autoチャンネル機能」や,有害サイトの閲覧をブロックする「BUFFALOコンテンツフィルタ」など,さまざまなユニークな機能を持っている.その中の一つが,WOLパケット送信機能だ.つまりこのルーターからWOLマジックパケットを送信し,WOL対応の電源の切れたパソコンの,電源を入れると言う機能だ.この機能を使用すれば,家の中のすべてのPCの電源が切れていても,ルーターの電源が入っており,なおかつ,インターネット側からルーターのWebページ(ネットワークサービスメニュー)が表示できれば,このページを使って,家中のPCの電源を入れ,さらにリモートデスクトップやVNCソフトを使って,リモートメンテが可能となる.これを自宅のルーターとすれば,単身赴任先のお父さんでも,深夜,すやすや眠っている娘さんを起こすことなく,娘さんのパソコンに電源を入れ,メンテすることができるというわけだ.コンシュマー・SOHO向けのルーターで,このような機能を持っているものは,この機種だけではないだろうか?

 この機種は,スペック上のスループットも良いが,無線LANルーターとしては,これらの機能の分,価格がやや高めになる.また,最近はやりの無線LANの高速化機能が,buffaloオリジナルの「フレームバーストEX」と言う点がちょっと気にはなった.後は,ファームの熟成度だが,これは実機がないので判断できない.ちなみに2chでは,この機種から無線LAN機能を取り除いたとされるBHR-4RVが評判の良い機種と言うことで,「ブロードバンドルーターのおすすめを教えて 18」のテンプレに記載されていた.

 確かに,このお父さんのようなケースはまれだろうが,他にもいろいろな用途がこのルータには考えられる.特に,自宅サーバを24時間運用したくないものの,遠隔地から自宅PCにアクセスしたいユーザーや,サーバのない小規模なLANのリモート管理者にとって,この製品は食指を動かされることだろう… えっ!?それって,俺のこと?


 参考リンク:

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