元町商店街の中に元町映画館なる小さなシアターが出来ていたのは知っていたのだが、今日、初めて訪問することにした。
っていうか、園子温監督さんの「冷たい熱帯魚」が観たかったので、重い腰をあげた。
この映画館、小さな映画館である。
以前は100円均一の店だったのでは、と連れのカメラマン仲間が言う。
かなり手作り感いっぱいで、その感じに好感が持てる。
その昔、8ミリ映画を作っていた知人が、「ムーンライト映画館」なる作品を作っていたのだが、「元町ムーンライト映画館」と名付けたいくらいだった。
毎月1日は映画の日で1000円だし、水曜日にはメンズデーということで、男性は1000円。
そして何よりも5回鑑賞すれば、1回招待してくれるという。
それならば、毎週水曜日とかに行けば、5000円で6回鑑賞できるから、800円少々で映画を鑑賞できる計算になる。まことにせこい計算であるが、これは重要。
私は50歳を超えているので、もし女性とペアなら毎日、いつでも1000円で行ける。
でも、小さな劇場なので、行くたびに相手が変わっていたら、そのうちバレルだろうななどと、要らぬ心配などをしてしまった。バカである。
で、この映画館で私の鑑賞デビューは「冷たい熱帯魚」
怖い映画である。実際の事件がベースになっている。
でんでんという元々、コメディアンの個性派俳優が、どのように怖い演技をするのかに大いに興味を持っていた。
(最近では「湯けむりスナイパー」の番頭さんの役に注目していた。)
そしてその期待は期待以上に叶えられた。
当分、でんでんの登場するドラマは見たくないほどである。
ストーリーはここでは書かない。映画の予告編でもだいたいの片りんを覗うことができるだろうから。
ただ、ビートたけしさんの映画でもそうなのであるが、暴力とお笑い、恐怖とお笑いの表裏一体ぶりというか、その不条理な、なんとも表現しにくい心地悪さを、巧みにじわじわ迫らせてくるところは、監督と出演者の才能と力量なのだろう。
実際、これ以上は残虐で目を背けるシーンであるのに、でんでんのセリフに観客から、漏れた笑い声があちらこちらから静かに聞こえてくる。
それはもちろん、笑いを取ることを前提のセリフではない。
むしろ、すべての審判が下ったときの、自己の業深い罪を客観的に悟った、懺悔の、必死の、絞り出すような声であるから、そこは本来、笑うシーンではないはずだ。
でんでんからすれば、断末魔の苦痛の中で、どうにか正常な救済を求めた、真の魂の囁きであったはずだ。
だからこそ、少し冷静に考えれば、私自身、笑っていいのかどうか、悩んでしまう。
と言いながらも、私自身、笑っていたのだが。
吹越さんの、いじめられっ子のスタンスの殻を破り、豹変するプロセスの演技は秀逸。
そして何よりも美しい女優陣に拍手を送りたい。
黒沢あすかさんは若い頃から、悪女を演じたら、本当に憎たらしい役をしてしまう。でも美しいから、ついつい油断してしまう男の愚かさをそっくり呑みこむ計算高さを演じさせたら、その可憐さは天下一品である。
まだ20歳そこそこの頃、某、カメラ雑誌のヌード特集で、綺麗なヌードを披露されていたのが、とても印象的で、今でも鮮明に思いだすことができる。
肉感的なボディと幼い顔のアンバランスぶりが、とてもまぶしかった。
そしてなんと言っても、神楽坂恵さん、最高!
来秋に園監督の新作、「愛の罪」にも出演されるみたいです。