石井隆氏の傑作映画、「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」を夜中に見る。
この方は元々、成人向きコミックを描いていた人であるが、独特の世界観を持ったすごいアーティストだ。
どう例えればいいのか、曖昧さや妥協、偽善を許さない、厳しい世界の中での、
狂気と正常、
愚かさと優しさ、
悪意と救い、
と言えばいいだろうか。
って、少し調べれば、
この映画の英語のタイトルは「Salvation」(救済)だった。
なるほどね。
1993年の作品「ヌードの夜」の続編になる本作であるが、前回の根津甚八氏の役どころは今回は女性刑事の東風万智子さんを立てている。この女優さん、とても気になっていたのだが、旧名は真中瞳なのだ。素晴らしい女優さんになられたと思う。
で、この東風さんの役どころは、まさに「Salvation」、
救済以外のなにものではない。
石井作品にしては例外的なほど、女性的な優しいエンディングが意外。
石井氏の作品に出てくる人物は、
追い詰められた人が多い。
表の世界でも裏の世界でも、
明るい、エリート街道から堕ちた、
または静かに降る雪が積もるように、
心の傷を堆積したボロボロの人が出てくる。
そういう人たちに対して、
石井氏はそれとはわからない形で救済を用意する。
石井氏の関わっている映画を観ていると
世の中の基準がわからなくなってくる。
しぶとく地を這うようにいきる虫けらが馬鹿にされる時代だけども、
そういうしぶとい虫けらの世界には、
偽善は何の救済にもならないことを悟っている不文律がある。
石井氏の哲学というか、その根底には
すごい愛が溢れている、
っていうか、一切の偽善に対する激しい悲憤が潜んでいるような気がする。
また
石井氏の世界観を忠実に表現する鬼才の俳優、女優陣の演技がこれまた秀逸。
特に
大竹しのぶさんの演技には
いつも身震いさせられる。
(石井氏が関与していたGONIN2をおすすめします。)
で、
石井氏の映画には雨が良く出てくる。
撮影も大変だろうなあ。
カメラ班の苦労に同情する。
で、さらに
関係のない話ですが、
今日は元町映画館まで悪友と「冷たい熱帯魚」を観てきます。