ほんとうのこと

ひとりで歩けるようになる
ひとりで食べられるようになる
ひとつひとつ「できる」が増えることで
子どもは自信をつけていく

ひとりでトイレにいける
ひとりで着替えができる
ひとつひとつ「できる」を積み重ねて
子どもは成長していく

ことばが話せるように
文字が読めるように
数が数えられるように
「できる」を積みあげて、子どもは幸せに近づく

そうやって、私たちは大人になった

…それはほんとうかな


大人は子どもに「できる」を求める
もっと子どもに自信を
もっと子どもに幸せを
もっと子どもにできるを

「愛される価値」
「褒められる価値」
「大事にされる価値」
ひとつひとつの「できる」を増やし
認められるための価値をつくった

そのおかげで、私たちは大事にされた

…それはほんとうかな


「できる」を増やせたから安心で
「わかる」を増やせたから愛されて
「できる」自分に自信をもってきた
その積み重ねの上に
「いまの幸せ」はある

そうやって、私たちは大人になった

…それはほんとうかな



ひとはだれも、いつかそれをなくすことを
わたしたちはしっている

「できる」は、いつかなくなるときがある
「わかる」も、いつかなくなるときがある
そのとき、わたしはわたしでなくなるだろうか

そのとき、わたしの手に残るものはなんだろう
わたしのなかで、なくならないものはなんだろう



わたしを　わたしにしてくれたもの
わたしが　わたしでいられた理由

「できる」わたし
「わかる」わたしのその前から
わたしをささえてくれたもの
わたしをささえてくれたなにか

そのなにかを、わたしはさがしてる
ほんとうのことを、ずっとさがしてる

「できる」わたし
「わかる」わたしがいなくなっても
わたしがわたしでいるために

わたしのほんとうをさがしてる