私にとって、「どの子も普通学級へ」は、
「無条件に子どもの側につく」ことそのものでした。
私にとって、「どの子も普通学級へ」は、
「無条件に子どもの側につく」人に出会うことでした。
それは、親でなければなりません。
親以外に、そこに立つことはできません。
私が、そのことの意味に本当に気付いたのは、
Kさんと、YUに出会えたからでした。
□ □ □
Kさんは、私にとって初めての「通級児童」の母親でした。
普通学級から、情緒障害児学級への「通級」でした。
週に2日、一人でバスに乗ってきて、
その日は一日、そのクラスで過ごしました。
小学校4年生の一年間を、私はその子と過ごしました。
一年後、彼は「通級」ではなく、
その学級に「転校」することになります。
そのまた翌年、Kさんはもっと障害の重い弟を、
普通学級に入れたいと、私に話してくれました。
「お兄ちゃんのときは、だまされたから」と、
私に言いました。
私は、あのとき、
Kさんと長男を、だます側にいたのでした。
その年の暮、Kさんは脳梗塞で倒れ、亡くなりました。
「お兄ちゃんのときは間違ったから、
この子は、しゃべれなくてもいい、
勉強できなくてもいいから、
普通学級で、みんなの中にいさせてあげたい」
弟はみんなのなかで育てたいという、
Kさんの命がけの願いはかないませんでした。
弟は、お兄ちゃんと同じ、
情緒障害児学級に措置されました。
□ □ □
十数年後、私は児童相談所にいました。
夏休みのある日、
一人の中学生が一時保護所にきました。
林間学校に出かけているときに、
父親が急死したためでした。
父子二人暮らしで、他に身寄りはないようでした。
「知的障害」と言われる子で、しかももう中2。
養護施設には、受け入れてもらえない子でした。
そうなると行政は彼を知的障害の施設に措置します。
そこから、普通学級に通うということはないでしょう。
彼は、たった一人の家族である父親と、
「普通学級」という居場所を、
一日にして失ったのでした。
私は、Kさんを思い出していました。
Kさんの声を思い出していました。
そして、会ったことのないYuの父親が
どんな人だったろうと思いました。
あのときに、私は、
「無条件に子どもの側につく」ことができるのは、
障害児の場合には、親だけなのだと思い知りました。
この国では、障害のあるふつうの子どもの
当たり前の居場所、
当たり前の子ども時代を守れるのは、
「親」以外にはいないのだと。
親が死んだら、障害のある子どもが
普通学級にいることを守れる人はほとんどいません。
子どもを分けられることから、
差別から守ってくれる人はいません。
児童相談所も教育委員会も、
それまで、父と子が、どんな思いで、
その居場所を守り生きてきたのか、
そんなことは関係なく「仕事」をするのでした。
だから、私は、そのことを伝える
一度きりのチャンスである就学相談会で、
心の底から願うのです。
どうか、「無条件に子どもの側についてほしい」と、
それだけを、こころの底から願うのです。
「条件つき」なら、
子どもを保護する人、子どもを教育する人はいます。
でも、「無条件で子どもの側につける」のは、
とくに障害児の場合、親しかいないのです。
(つづく)
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