ワニなつノート

普通高校に絶対に入れない子を作り出すための計画(その6)


普通高校に絶対に入れない子を作り出すための計画(その6)


1904年、
コンゴのバトワ族(しばしば「ピグミー」と呼ばれる)の
オタ・ベンガという名の青年が、
宣教師によってアメリカに連れてこられ、
万国博覧会で公開された。

ベンガがコンゴを離れている間に、
彼の部族が全滅したという知らせがアフリカから届いたので
博覧会が終わると、ベンガは孤児院に引き取られた。

その後、彼はニューヨークに移され、
ブロンクス動物園でサルの檻に入れられ、見世物にされた。

彼はチンパンジーと共に檻で暮らし、弓矢の練習をし、
ハンモックで眠り、そんな彼を、毎日4万人もの人が見物した。


その後、アフリカ系アメリカ人聖職者の抗議運動によって、
ベンガは檻から出され、動物園の敷地内を
自由に歩き回れるようになった。
体験型展示のようなものだ。

異文化に放り込まれたために
以前から苦しんでいたというベンガは、
あっけにとられた来園者たちの嘲りにも耐えなくてはならなかった。

驚くまでもないが、
彼はいくぶん異常な行動をとるようになった。

そして、とうとう別の孤児院に移され、
さらにリンチバーグに移され、
タバコ工場で働くようになった。

教会の組織が彼を教育しようと試みた。
歯医者に頼んで、ベンガの部族の伝統である、
やすりで鋭く尖らせた歯に覆いを被せてもらいさえした。

………

1916年、無理やり連れてこられた異郷で
12年にわたって屈辱の生活を強いられた後、
オタ・ベンガは拳銃を持ち出し、
歯から被せ物を取り去り、
儀式用の火を焚いて、
自身の心臓を打ち抜いた。


「人はなんらかの部族に属していなければならない」

「人は自分自身より大きな目的を持ちたいと願っている」


社会的な孤立は、私たちから部族とのつながりの感覚も
目的意識も奪ってしまう。



『孤独の科学』 ジョン・T・カシオポ 河出書房新社

     □    □    □



私たちは、100年過ぎても、
人間を動物園に入れて見物していた人たちと、
たいして変わらない場所にいます。

装いと言い訳が少し上手になって、
「動物園の檻」に入れるような野蛮なことはしません。

公平で、公正な、「選抜試験」をして、
公平、公正な、校長先生様が、
「この子は、高校生にふさわしいかどうか」を、
「判定」します。

公平・公正な、選抜試験の結果、
仲間の子どもの中から、
1000人に1人だけを、
仲間から、
社会から「孤立」させる計画が、
教育委員会の仕事です。

特別支援学校高等部の進学が、「希望者全入」であり、
全体の進学率が98~99%を超えていて、
10年前より200万人も高校生の生徒数が減っていて、
授業料を無料にして、
それでもなお、
1000人に1人の椅子取りゲームをさせて、
高みの見物をする教育委員会の人たちと、
その仕事を支持する社会。

それは、はるかアフリカからたった一人の青年を連れてきて、
動物園に入れた100年前の人たちと、
同じ感性と人権意識しか持たない人たちだと、私は思う。
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