パールバック。『母よ嘆くなかれ』。
もう少し、この作品についてこだわってみようと思います。
私は30年前に読んだ「古い本」として紹介するつもりでした。
私が生まれる10年前に書かれた古い本。
だから、そこに書かれている「古い常識」を、
私も子ども時代に身につけてしまったのだと、
そう考えてみようと思いました。
ところが、ネットで検索してみると、
この本は「古い本」として読まれているのではないようです。
むしろ1997年に伊藤隆二訳の新訳が出版されて、
「言葉遣い」も「差別的」な表現が薄められて、
「読みやすく」なっているようなのです。
(私は読んでいません)
大学の教育学部の授業計画にこの本が載っていたり、
障害児の親のブログでもいくつも紹介されています。
神谷美恵子さんが薦めているから、という言葉もありました。
何より、ある市の『特別支援教育センターだより』で、
この本が写真付きで紹介されているのをみて驚きました。
今でも、就学前の親に向けて、
特別支援教育の勧めとして、この本が使われているのです。
□ □ □
平成20年10月発行「特別支援教育センターだより」
タイトルは
「一人一人の思いを大切にした就学の実現に向けて!」
「右の引用文は、アメリカの作家で、あの「大地」を執筆し、
ノーベル文学賞を受賞したパール・バック女史によるものです。
女史は輝かしい文学者であるとともに、
障がいのあるお子さん(1920年生まれ)の母親でもありました。
女史は、お子さんの養育について悩み続けましたが、
そのこともあってか、生涯にわたって「平和運動」へも
邁進された方としても有名です。
我が子に障がいがあるということを
受け入れることが難しいのは
誰にとっても当然のことで、今も昔も同じです。
ましてやLDやADHDのような気づきにくい発達障がいの場合は、
保護者の方がそれを受け入れることは、
さらに難しいことだと思います。
大切なのは、保護者だけの悩みにせず、
みんなで、「今できる具体的な支援の方法を考え、
その子を支えていくこと」かと思います。
パール女史も、子どもの
「あるがままをそのまま受け入れること」の大切さを
著書の中で伝えています。
これから、来年度の就学に向けての検診や
相談が始まります。
ぜひ、保護者の方や関係者が思いを同じにして、
その子にとっての最大限の支援を考えていければと思います。
【南会津特別支援教育センター】
□ □ □
また、次のようなブログの言葉もありました。
□ □ □
《……パールバックも知的障害をもつ娘をもち、
そのエピソードと内省が本書に描かれています。
わたしの兄も知的障害をもっていて、
本書を母とわたしで回し読みしました。
本書の、娘を施設に入れるに至るまでの話が、
兄の施設入所のきっかけにもなったのでした。
どちらも、もし機会がございましたら、
読んでみてくださいね。》
□ □ □
石川先生の言葉を思い出しました。
□ □ □
インフォームドコンセントの時代ですけれど、
脳死・臓器移植を受けるときのインフォームドコンセント
というのはどうなっているのかという問題があります。
誰がそこにかかわるかによって随分違うだろうと思います。
ダウン症の場合ですけれども、遺伝カウンセラーが
ダウン症の子どもの親である遺伝カウンセラーと、
それからそうでない遺伝カウンセラーが
カウンセリングした場合で、出生率に大きな差があります。
ダウン症の子どもの親の場合には、
ダウン症児を受胎した場合に5割以上が生みます。
通常の遺伝カウンセラーの場合は、
9割までが堕胎するという結果があります。
この差が命の問題を考える場合に
私には凄く大事なことではないかと思います。
『心の病はこうしてつくられる』
石川憲彦+高岡健 批評社 2006年
(…そんなわけで、パール・バックつづきます。)
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