新一年生の教室の世界(M-⑧)
《新世界の相互性によってうまれることばの意味》
「ことばの遅れ」という言い方がある。
それは、言葉を道具として使いこなせるか、についての評価だ。
たとえば5才の子が、3才平均の言葉数、使用法であるとき、「この子の言葉の発達は3才です」とかいう。
それは「平均」の数字世界の話であって、その子との「相互性・応答性の生活世界」で測られた何かではない。
その上、「ことばの遅れ」があると、「コミュニケーション」する気持ちも遅れているように誤解されるのはどうしてだろう?
ふつうに考えて、5才の子と3才の子はみんな、ふつうにコミュニケーションしている。
ことばの使い方が下手でも、ことばがないとしても、人と話したい、応答し合いたいという気持ちのない子はいない。
赤ちゃんはこの星のどこに生まれてもいいように、世界中すべての言語の音素を携えて生まれてくる。
この星の誰に出会っても、応答しあえるように、準備して私たちは生まれてくるのだ。
母親は生まれるまえの赤ちゃんとも話ができる。
だから、この星の誰に出会っても、応答してくれると信じて、赤ちゃんは生まれてくる。
障害のある子のことばを、「ただの一人言」とか「ただのオウム返し」とみなす専門家もいる。
でも、この世界に完全な「ただのひとり言」はない。
完全な「ただのおうむ返し」もない。
それはいつも、必ずまた応答される、可能性のあることばだ。
私が出会ったすべての子どもはそうだった。
◇
自分のこえを 聞いてくれる人がいる
自分のことばを 聞いてくれる人がいる
受けとめて、応えてくれる人がいる
私のこえは ちゃんと聞こえている
私のことばは ちゃんと応えてもらえる
そうして、子どもは、自分が話すことが
自分にとってどんな意味をもつのかを理解していく
少しずつ
少しずつは限りなくつづく
相互性と応答性は限りなくつづく
出会いの数だけ
つきあいの長さによって
より多くのこえが重なれば重なるほど
ことばの意味も、お互いの理解も
ますます豊かになってつづいていく
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