Naoちゃん (4)
ワニなつノートが選ぶ、『2008年に読んだもの一等賞』の
『水着とゴーグル』の続編をお届けします。
「おかえり~!」
10月のある日の夕方、
けたたましく玄関のチャイムが鳴り響きました。
ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!
…こんな鳴らし方をするのは、私が思い付く中でただ1人、
Naoしかいません。
…えっ?
でも何でNaoが?
玄関を開けると、「お母さん、ただいま!」
そこには笑顔のNaoが。
…そう! Naoは1人で学童から帰ってきてしまったのです。
毎日決まった時間に迎えに行って一緒に帰ってくることを、
1年生から毎日繰り返していたのに。
朝は3年生の頃から1人で登校しています。
でも学童はお迎えが原則。
たとえ高学年でも原則はお迎えです。
私だって、Naoが1人で帰ってきてくれれば
ラクでいいなぁ…と思っていました。
でも、最近は日が暮れるのも早くなり、
夕方5時ともなると辺りは真っ暗です。
年明けあたりから練習させようかなぁ…
と何となく考えてはいたものの、まさか今日~??
慌てて学童に電話すると、
「えっ?『お母さん迎えに来た~。さようなら~!』って
Nao帰っていったんですよ~」
…なんと!Naoは学童の指導員に嘘をついて
1人で帰ってきてしまったのです。
いつだって、子どもは親の想像を越えていきます。
その日を境にNaoは1人で帰ってくるようになりました。
もう嘘をつく必要はありません。
「暗いのNaoはダメですよね? 大丈夫ですかね?」と
心配する学童の指導員には
「本人の意思を尊重したい」と伝えて、理解してもらいました。
でも、そんな心配をよそに、信
号の無い道路は慎重に左右を確認して渡り、
朝の登校時と違い、人通りがほとんどない真っ暗な道も、
1度強行突破して自信がついたのでしょう、
へっちゃらなようです。
(…女の子だから本当は心配…でも覚悟を決めました)。
これまで学童に迎えに行っていた時は、
「もう少し遊びたい!」とか
「この本読み終わるまで待ってて!」などと、
なかなか帰りたがらずイライラしたものですが、
いざ自分1人で帰るとなると、常に時計を気にして、
指導員に言われなくても帰る支度を始めるそうです。
一応、担任にも連絡帳で伝えたら、
「やりたい!と思った時が絶好のチャンス。
ぐんと成長する時なのですね」と返事がきました。
来春、中学生になれば、今の倍以上の道のりを歩くのです。
今回のNaoの決断は、きっと本人の自信に繋がるでしょう。
でも、本音を言えば、送り迎えが一切無くなって
ラクになったことが何よりウレシイ~。
「おかえり~!」 この瞬間が好き。
朝、慌ただしく家族を送り出して、電車に乗って通勤して、
仕事で疲れて帰ってきて、夕飯の支度をして更にグッタリ…。
でも、1人でがんばって帰ってきたNaoの顔を見た瞬間、
疲れが吹っ飛んで、
そこで不思議と気持ちがリセットされるんです。
Naoが1人で帰ってくるということは、
普段の友だちとの関わりが何も見られないという
寂しさはありますが、帰ってきた時のNaoの笑顔
…それだけで十分です。
☆ ☆ ☆ ☆
6年生になったある日、
「うち1人でお風呂入る!
お母さん、今まで手伝ってくれてありがとね。
でも、自分で出来るから大丈夫だよ」と堂々宣言をして、
それ以来Naoは1人でお風呂に入るようになりました。
担任の言うとおり、
「やりたい!と思った時が絶好のチャンス」
なんだと思います。
先日、同じクラスの男の子のお母さんが
しみじみ話していたことを思い出しました。
「中学生になったら、もう一緒に出かけることもないと思う。
だから6年生の今のうちに、いっぱい遊びに行っておくの」と。
6年生の子どもを持つ親は、
みなそれぞれ複雑な思いがあります。
前回のワニのなつやすみで破天荒ぶりを見せつけてくれた
バリバリマイペースなNaoも、
着実に大人への階段を一歩一歩上がっています。
担任の言葉を借りて表現するならば、
「ぐんと成長する」ことは、その分「ぐんと親との距離ができる」
ということなんだと思います。
「障害があるから心配」と、
つまづきそうな石は先回りして全部拾い、
跳べそうなハードルも、
越えないように…越えないように…と
邪魔をしているのは私なのかもしれない…。
覚悟を決められず、なかなか踏ん切りがつかない私を、
Naoが少しずつ突き放してくれています。
年が明ければ、Naoも12歳。年女です。
小学生でいられるのも、あとわずか。
春には私が卒業した中学に入学します。
コメント一覧

やすハハ
最新の画像もっと見る
最近の「やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(521)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(29)
- 0点でも高校へ(405)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(165)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(94)
- ホームN通信(105)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(69)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(134)
- この子がさびしくないように(87)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(99)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(351)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事