ワニなつノート

「ルポ消えた子どもたち」

「ルポ消えた子どもたち」
という「大切な本」
であり「残念な本」



2014年2月に放送されたNHKスペシャル「消えた子どもたち」の書籍化。
私は、放送時に見た女の子にもう一度会いたい気持ちで手に取った。


2005年、あるコンビニで一人の女の子が保護された。
身長は120センチ余り。体重は22キロ。
小学校低学年の子どもかと思われたが、彼女は18歳だった。

当時の新聞の見出し。
「母が娘を18年“軟禁”義務教育、受けないまま」
「市教委、『軟禁』放置 小学校側、面会できず」
「未就学18歳 縦割りの悲劇 学校、市教委、児相、区役所たらい回し」

放送では、その「元少女」ナミさん(仮名)が取材に答えている。

「大切な本」だと思うのは、ナミさんをはじめ、「子ども」の声を伝えていること。

「残念な本」だと思うのは、子どもたちに会って、「自分たちのような思いをする子どもがなくなるように」という願いを託されながら、問題意識があまりに低すぎること。

         □


① 《大切な本》

【ナミさんも、小学校入学を前に、母方の祖母に赤いランドセルを買ってもらい、学校に通うのを心待ちにしていた。
しかし、…母親は「学校に行かせるつもりはないのに、お金がもったいない」と祖母を非難した。
ランドセルはそのまま一度も使われることなく、湿気の多い物置に入れられ、カビが生えて捨てられた。

「ランドセル背負って、普通に小学校に行けるのかなって思っていたんですけど、母親に『こいつが学校に行けるわけがない』って決めつけられて、ランドセルは取り上げられました。
兄や姉は普通に背負って学校へ行っていたのに、何で私だけって、そのときは本当に思いました」

学校に通えない日々が続くなか、ナミさんは閉じ込められるだけでなく、普通の生活さえできないような環境に置かれていった。
…物置のように使われていた一室が彼女の居場所になった。…

…ナミさんは仕方なくごみをあさったり、塩や油をなめたりして飢えをしのいだという。
ほとんど家にいなかった父親は、たまに帰っても見て見ぬふりで…
兄や姉も事態をわかっていながら、それを外に伝えることはしなかった。

…正座をさせられたまま、一日中、漢字一文字を大学ノートに書かされ、少しでも間違えれば殴られたり髪をひっぱられたりした。…


「母が言っていた話を思い出すと、もともと予定外の妊娠で……。望んでない子どもだったようです。
私が仮死状態で生まれたこともあって、発達が遅かったようで。
それで障害があると思い込んで、『この子は外に出したらいけない』と思っていたのかもしれないです。…」

「やっぱり今でもわからないのは、家族って何なんだろうって……。家族と言えたらいいのにな、っていうような人たちと一八年間過ごしてきて、人として心から幸せだったこととか、思い出は何一つなくて、母親に抱かれた記憶もないんです。

家族というより、一人ひとりが他人のような感覚で、私は本当にそれこそ、その人たちのモノ扱いと言うか、人形みたいに、ロボットみたいに、いいように扱われてきて。
ほんとうに動物を飼ってるような感覚かな……。
もう人間って思ってくれていなかったので……」


「ばあちゃんは、母親が外出しているときに、公園とか行きたいよねって言ってくれて、一緒にいってくれて。今のうちに遊んどき、ってブランコを押してくれました。
滑り台や砂場でも遊んで。

膝の上に乗せてもらった記憶もあります。
ばあちゃんの家に連れていってもらったときには一緒にキッチンで卵焼きを作って、それが甘くておいしくて。
ばあちゃんといるときだけは、怖がらなくていいし、本当に自然体でいられたんです。」


祖母は学校に行かせるよう、母親に何度も進言してくれたが、母親がそれを受け容れることはなかった。
むしろいつも怒鳴りあいの大喧嘩になり、母親は祖母を追い返すようになった。やがて、その祖母も病気で亡くなってしまった。
…ナミさんは全く外に出られなくなっていった。


『ルポ 消えた子どもたち 虐待・監禁の深層に迫る』
(NHKスペシャル「消えた子どもたち」取材班) NHK出版新書より 


(つづく)
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