ワニなつノート

映画:「みんなの学校」

※ 新聞記事等は、自分のためのスクラップとして「ワニなつノート2」に載せていますが、2はあまり見られていないので、この記事はここに置きます。

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映画:「みんなの学校」

一人ひとりの自分らしさを引き出す
“エデュケーション”


クリスチャン新聞 2015年2月13日


 大阪市住吉区の公立・大空小学校では、“すべての子どもに居場所がある学校”をめざす。
また、発達障害や身体障害がある子などを対象にした特別養護支援学級と通常級を分けず、みんなが同じ教室で学ぶ。学校の教職員と子どもたちだけでなく、地域の人たちも、その学校づくりを理解しサポートしているユニークな学校だ。

関西テレビが、2012年4月から1年間取材したそのドキュメンタリーは、2013年第68回文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞ほか数々受賞。
1時間に満たないテレビドキュメンタリーを、映画館や公民館などでも活用できるようにと106分版に再編集し映画化された。



みんながつくる
みんなの学校 大空小学校


 朝の登校シーン。
本校舎玄関の上部の壁に「みんながつくる みんなの学校 大空小学校」という言葉が貼ってある。本作のタイトルもこの標語からとられた。

 取材当時、大空小の全校生徒は約220人。そのうち特別養護学級対象の生徒は30人を超えていた。
学校選択制の導入が進んでいる自治体ということもあってか、他の学校よりも多い割合だ。

 木村泰子校長は、2006年の開校当初から“すべての子どもに居場所を作り”、「みんながつくる みんなの学校」をつくりたいというヴィジョンを抱き続けている。

だが、その夢を開校式の日に試されるような出来事があったというエピソードは印象的だ。

開校式の最中に、突然一人の子が何かわめきながら体育館内を走り回ったのだ。

木村校長は、つい「この子さえいなければ…」と考えてしまったいう。

新学期が始まり、その子はしょっちゅう教室から逃げ出そうとする日々が続いた。

梅雨のある日。
教室から逃げ出そうとするその子を追った先生が、雨に濡れた廊下に滑りしりもちをついた。その音に気付いたその子は、転んだ先生の所に戻ってきて打ったところをさすっていたのを教師も生徒もみんなが見ていたという。

その日から、その子は教室から逃亡しなくなった。

木村校長は「その子が変わったんじゃないんです。その子を見る周りの子どもたちが変わったからです」という。


 これは、大空小の一つの原点になっているようだ。
全校生徒と職員たちが参加する「道徳の時間」など折あるたびに、木村校長は
「大空小学校は、誰がつくりますか? 一人ひとりって誰ですか? 自分って誰ですか? 自分だという人手を挙げてください!」と問い掛ける。

体育館にいる生徒たち全員が手を挙げた。

手を挙げただけではなく、教室の授業でも、勉強の分からない子に分かる子が教えて、助け合っている。
そうした学校の雰囲気がありのままの姿で紡がれていく。


(ときには生徒同士のケンカも起こる。
その原因は放っておかず、きちん生徒自身の理解を確かめ、「やり直し」を求める。)



子どもが“やり直し”に
納得するまで反省させる



 子どもたちのなかには、自分の気持ちがうまくコントロールできずに、大人にイライラをぶつけたり、子ども同士のケンカになることもある。

それは「自分がされていやなことは人にしない、言わない」という、大空小のたった一つの約束に違反することで、自主的に“やり直し”が求められる。

やり直し室(校長室)に行って、木村校長と向き合って話し、子ども自身が納得したらその内容を反省文に書いて退室する。

 4年生のなかには、イラつくと暴力を振るってしまう子がひとりいる。
その子は、名指しはされなかったが、暴力を振るって、「まだ“やり直し”に来ていない子がいます」と木村校長に集会で促された。

その子は、反省文に「僕は、これからは絶対人に暴力を振るったり、暴言を吐いたりしません」と書いた。

木村校長は「また、やってしまうかもしれないけど、“やり直し”を決意した一瞬は真実なんです。この一瞬一瞬の決意がどうつながっていくかが、子どもの可能性」という。

だが、3日後に同じクラスの男の子を殴ってしまった。

木村校長は、自分で殴った男の子に謝りに行くことと、これからは暴力を振るわないことを約束させた。

だが、教室に入ると、殴られて怒りが収まらない子に殴られた。
突然のケンカに養護支援チームの先生が止めに入る。

だが、殴られても殴り返さず、暴言も吐かずにその子は我慢して木村校長との約束を守った。


 “みんながつくる みんなの学校”づくりは、担任教師や子どもたち全体を見る養護支援教育チームの先生たちにも大変な教育だと観ていて十分に伝わってくる。

それでも、大空小の学力調査の結果は全国区平均よりも上だという。

どんな子にも居場所があり、その子の内面や持てる学力を引き出そうとする大空小。

教育の語源は、エデュケーション(引き出す)。

これは、学校だけに限らず、自分一人ひとりが暮らしている地域づくりにもつながるアイディアを豊かに刺激してくれる実践でもあるのだろう。 

【遠山清一】


監督:真鍋俊永 2014年/日本/106分/ドキュメンタリー/ 配給:東風 
2015年2月21日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開。

公式サイト:http://www.minna-movie.com

Facebook:https://www.facebook.com/minnamovie


2013年第68回文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞、
2013年度日 本民間放送連盟賞報道番組部門優秀賞受賞、
第9回日本放送文化大賞テレビ・準 グランプリ受賞、
第21回坂田記念ジャーナリズム賞受賞、
第51回ギャラクシー賞 テレビ部門選奨受賞、
第67回日本映画テレビ技術協会映像技術賞受賞、
第33回地 方の時代映像祭放送局部門優秀賞受賞、
2014年モンテカルロ・テレビ祭ドキュメ ンタリー部門入選、
文部科学省特別選定作品。


          ◇


映画「みんなの学校」


真鍋俊永監督に聞く


--学校が変われば地域が変わる

クリスチャン新聞2015年2月16日


 大阪市住吉区立・大空小学校の玄関上部の壁には、「みんながつくる、みんなの学校」という言葉が貼ってある。

“すべての子どもに居場所がある学校”をめ ざす大空小は、発達障害や身体障害がある子などを対象にした特別養護支援学級と通常級を分けず、みんなが同じ教室で学ぶ。

不登校児はゼロだ。
学校、児童を サポートする地域の人たち。
「“みんな”のなかには真鍋さんも入ってますよ」と木村泰子校長に言われたという真鍋俊永監督に話しを聞いた。

【遠山清一】


 「みんながつくる、みんなの学校」づくりは、大空小学校が2006年に開校された当初から木村校長が抱き続けている目標だ。

真鍋監督が取材・撮影したの は2012年4月からの1年間。

当時の全校生徒は約220人で、そのうち特別養護支援の対象児童が30人を超える。とくに6年生は、10人以上と多い。

 各学年は、2学級で編成。
担任教諭は置かれているが、授業中に逃亡する子や目の離せない子どもも多いので木村校長や養護支援チームの先生たち、アシスタ ントティーチャーやボランティアらが学校全体を見ている。

ドキュメントは、まさに席の温まる暇もない大空小の日常、先生と生徒との関係や地域の人たちとの かかわりが気取らない目線でつづられていく。


 子どもの心に育つ
 “やり直し”の決意


 「みんながつくる、みんなの学校」づくりは、大空小学校が2006年に開校された当初から木村校長が抱き続けている目標。

特別養護教育チームの先生、ア シスタントティーチャーらは、木村校長とともに校内の児童全体に気を配り、小まめにシェアリングをしている。

木村校長は、“みんな”とは誰のことかと折り あるごとに子どもたちにも問い掛ける。
その問い掛けに子どもたちも応える。
勉強が分からなくて困っている子に気づけば、教えたり助け合うシーンがいくつも 描かれていく。

 「大空小には、PTAはなくて、“大空小学校SEA”という生徒の保護者に限らずに地域の大人たちが参加できる“サポート”システムがあって、代表も “会長”ではなく“キャプテン”と呼ばれています。

教師や職員の子どもたちとの関わり方だけでなく、何のためにあるのか、よく分からない制度的なことは、 一度解体して、納得できるように新しく作り上げていく学校なんですよね」と真鍋さんはいう。

 「自分がされていやなことは人にしない、言わない」ことが、大空小のたった一つの約束だ。

悪戯が過ぎたり、ケンカなどでこの約束を破ると、子どもは自主 的にやり直し室(校長室)へ行き、木村校長と向き合って話し、子ども自身が納得したらその内容を反省文に書いて退室する。

木村校長は「また、やってしまう かもしれないけど、“やり直し”を決意した一瞬は真実なんです。この一瞬一瞬の決意がどうつながっていくかが、子どもの可能性なんです」という。


 “やるんだ”という気持ちが
 どこかたどり着く場所へ導く


 大空小には基本的に参観日がない。いつ学校に来て授業や校内を見て回ってもかまわない。
子どもたちの自主的な考えや思いやりを育て、学力を引き出す教育。

地域ぐるみの理解とサポートを受けて大空小のような“みんなの学校”づくりは大阪だから出来ていることなのだろうか。


「出来ない理由を探したら、出来ないでしょうね。
やるか、やらないかでしょう。
もちろん簡単なことではないと思いますが、“やるんだ”という気持ちを持ち続ければ、やれることを1つでも考えてやってみるでしょう。
そうやって試していけば、いつかたどり着ける所があると思います。

大空小は、地域の子がだれ でも通える普通の公立小学校ですよ。
きっと出来た理由は、あるんですよね。

出来ない理由は、やりたくない人が考えることで、やりたい人は出来ることを考 えればいいと思います」


「僕たちが大空小を取材撮影したのは、開校7年目でした。
学校、生徒、地域の人たちが6年間掛けてたどり着いた所を、僕たちはおもしろい学校だと思ったり、学ばされたりしたことを垣間見たのがこのドキュメンタリーです。

大空小が今後どうなっていくのか僕にはわかりませんが、大空小がこういう学校でいてほしいという思いは込めてこの映画を作りました」。



 成長を引き出すのが教育


 大空小は、学力調査の結果は全国の平均値より上にあるという。

だが、木村校長は、「100できる子が100のままの結果でいたら、その子は成長できなかったといえる。でも、10しかできない子が11になっていたら“1”だけであってもその子の成長を助ける教育ができたということでしょう」と取材に応え ている。

それは勉強だけに限らない。運動会や合奏のシーンなどでも、分からなところや出来ないことをそのままにしておかない生徒たちや先生が、出来ない子の内側から引きだす姿に教えられる。

 本作のオフシャルサイトに掲載されている予告編は、“映画館で「学校参観」してみませんか”のキャッチコピーで終わる。

学校教育の在り方という枠を超えて、自分が住んでいる地域と自分ということにも気づきを与えられる“学校参観”になるだろう。



監督プロフィール:
関西テレビ報道部ディレクター。
長く報道カメラマンとしてニュース取材やドキュメンタリー撮影を担当。
文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー賞大賞を受賞した番組も、映画としても本作は初演出作品。
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