○五感俳句502・温感17・男波弘志03・2020-10-26(月)
○「藁塚やこのあたたかき海と空」(『阿字』2009)(→男波弘志03)
○季語(藁塚・晩秋)【→五感俳句-索引1・索引2・索引3・索引4 →俳人一覧(あ・い・うえ・お・かき・くけこ・さ・しすせそ・た・ちつてと・な・にぬねの・はひ・ふへほ・ま・みむめも・や~)】
【鑑賞】:「藁塚」の芯の温かさ。それはそのまま「藁塚の海」の温かさ、「藁塚の空」の温かさと繋がっている。
香川県の俳人・男波弘志氏より昨年1月句集『阿字』を贈っていただきました。ここに35句を抜粋掲載させていただきます(有難う御座いましたm(__)m)。
■句集『阿字』男波弘志(おなみひろし)著・田工房 (2009/12/12)
01列車いま大緑蔭の駅に入る(「処女作 昭和五十八年」の前書き)
02緑蔭の石ひやひやと尻にあり
03墓石の光る雨なり竹の秋
「北澤瑞史 門下時代 昭和五十八年~平成九年」
04橋脚の盤石に夏来たりけり
05夾竹桃海の汚るる日なりけり
06下闇の深さとなりて鹿眠る
07夏蝶の水を離れて高きかな
08行く夏の人となるまで浪を聴く
09曼珠沙華みちといふみち帰路となり
10初凪や布団の端の土不踏(「北澤瑞史先生 病臥す」の前書き)
「岡井省二 門下時代 平成九年~平成十三年」
11天の鷹一切経をゆく如し
12虚空蔵よりこんこんと花吹雪
13日盛りや鳶の風切羽拾ふ
14ぐらぐらと西瓜の模様ありにけり
15大佛の背へ落ちし雲雀かな
16春暁の糸引く雨となりにけり
17六尺の螢火となり逝きにけり(「恩師 北澤瑞史 寂」の前書き)
18櫂の先はみ出してをる焚火かな
19蛇泳ぎわたりし水のひと平ら
20空蟬を掌にしてからの背後かな
21雷鳴のそこは海牛溜りかな
22瑠璃蜥蜴海は鋼の匂ひする
23だんだんに梵字が読めて瓜を揉む
24はんざきを楔としたる山河かな
「平成十三年~平成十九年」
25遠浅に鮫の来てをる祭かな
26眼帯の真新しくて夕牡丹
27産土や筵一枚くらがりに
28腸の中にも真砂冬銀河
29坐りゐて緑雨の顎となりにけり
30海峡を春行く巨き椅子のごと
31大旱の梵字のどこか動きをり
32一穴をくまなく廻る揚羽蝶
33はつきりと樟脳舟を押しにけり
34喉仏に溜る人ごゑ緑雨の中
35何にもない方がよい柿一つ