歌会たかまがはら

毎回お題に沿った短歌を募集してゲストの方とおしゃべりする短歌の番組です。
YouTubeで配信しています。

歌会たかまがはら2022年3月号 嶋稟太郎さんへの質問

2022年04月05日 | 歌会告知
ここでは、2022年3月26日配信の歌会たかまがはら2022年3月号で皆様からいただきました嶋稟太郎さんへの質問をご紹介いたします。

回答につきましては嶋稟太郎さんからいただいたものをそのまま掲載しております。

なお、ご不満等は一切受け付けません。あらかじめ、ご了承ください。

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<番組中にお聞きした質問>
Q1,連作を編むとき、どんなふうに編んでいるか教えてください。たとえば、最初からテーマを定めてそれに沿ったものをいちから作りますか?それとも、いくつか作り溜めてあったものを膨らませていく感じですか?(石川県 塩本抄さん)

A1,予めテーマを意識せずに連作を作っています。10首くらいの歌のまとまりを作ってからテーマの方向性や全体の構成を考えて、あとは作りながら何度も変えていくので終盤までどんな連作になるか自分でも予想できないです・・・!
一本の大きな丸太を削って彫刻を作るのではなく、ときどき海から流木を拾って来て組み上げならが何をしようか考えるような感じです。


Q2,嶋稟太郎さんは、本名ですか?それとも筆名ですか?
本名(又は筆名)で、作品を発表することの長所短所があれば、教えてください。(神ヤ飛ビ魚さん)

A2,筆名です。名前をつけると愛着が湧きます。好きなものが増えるのは良いこと。短所は特にないかなぁ。


<短歌についての質問>
Q1,羽と風鈴、愛読しています。写実に自身の伝えたいことや感情を載せるときに、何か工夫していることはありますか?(東京都世田谷区 長井めもさん)

A1,ご愛読ありがとうございます!歌集を出せてよかったです。

工夫していること、なんだろうなぁ。一度には語り尽くせないテーマです。
感情には、喜怒哀楽のようなシンプルな分類に収まるほど言語化できている感情と、まだ言語化できていない手探りの感情があります。
後者が難しくて、抑えきれない気持ちの動きがあるのに適当な言葉が見つからない。自分でもわからない。誰にも伝わらないかもしれない。そんな感情へのアプローチの一つとして、写実と言うルートがあります。感情を取り巻くものを慎重に言葉にすることで予感させる。マインスイーパの序盤のように、見える人には見えると信じて、今ここの在りようを詠む、定型に夢中になる、自分だけの言葉を探すことをいつも心がけています。できるだけ意図しない喩(示唆や暗示、ダブルミーニング)を引き寄せないように推敲して、あとは「理屈と説明を避ける」も地道にやってますね。「平凡を恐れない」もか。

なんだ当たり前のことばかりか、と思われたかもしれませんが、筋トレだと思って時間をかけてやっています。制約ばかりにも思えますが、写実によって描写をエクストリームして自分でもわからないものをなんとか形にしていくと、ときどき新しくて小さな発見がある。自分の周囲の世界のユニークさに気づけるわけです。31音全部を使い倒して磨きまくると、掘り尽くされた洞窟の一番奥の壁を壊せる。その後かなぁ、感情がどんな風に伝わるか考えるのは。

なんでこんな短歌観になっているかというと、2つあって。一つは東日本大震災と自分の関係の不安定さ。定型がないと自分がどうあるべきかを考えてしまってそこから創作ができない。もう一つは短歌を作る環境。短歌を始めた当時、未来の選者だった桜井登世子さんと古くからいる会員の皆さんに歌を読んでもらっていたことが大きいです。とにかく彼ら歌を伝えたかった。生きてきた人生が違いすぎてお互い分かり合えないけどわかり合おうとするなかで、文体が更新されていった感覚があります。断片的ですけど、近藤芳美、玉城徹、佐藤佐太郎、この辺りの思想を教わったあとは、写実でもいろいろできるかもと思いました。

工夫ではなく信条になってしまいましたが、「伝わる人には伝わると信じて言葉を磨き続ける」と言ったところでしょうか。長井さんの工夫もお伺いしたいです!

Q2,短歌をつくるときのモチベーションなどあれば教えていただきたいです。(東京都 岡部颯馬さん)

A2,「いい歌を詠みたい」が基本的なモチベーションです。
自分にとっての「いい歌」は変化して来た感覚がありますね。歌を始めたばかりの頃は、選者に歌を選んでもらうことや上達を感じられることがモチベーションでした。1人の選者の一貫した価値観がどんなものか理解を深めて、受け入れられる部分とそうでない部分が見えて来たあたりから、自分で整理できるようになって来ました。
歌を始めて三ヶ月くらいの時ですが、月詠10首送った後に選者の桜井さんから「今月ちょっとつまらないので全部作り直してください」とハガキが届いて凹んだりしましたが、逆にこの一貫性は信用できると思いました。しくしく。


Q3,歌集についてですが、どのように考えて、歌をあの並びにしましたか。
また、連作を作るときの歌の並べ方があれば教えてください。(神ヤ飛ビ魚さん)

A3,歌集を通して読んだときにうっすらと時間の流れが感じられるように、その上で一首それぞれが最も良く見えるように並べています。長めの連作を統べるのに適した形式が分からなくてかなり試行錯誤しました。
歌集を作る前に「大きな窓のある部屋に」と「羽と風鈴」という二つの連作が手元にあって歌集のメインにしようと思ったのですが、元の「羽と風鈴」が100首近くあったので、分解して歌集の全体に配置しています。なので、全体の雰囲気は「羽と風鈴」で、テーマは「大きな窓のある部屋に」で冒頭に提示、というのが並びを決める大きな構造になってます。
連作の中の歌の並べ方も難しいですよね。「歌を並べる→歌がどう並びたがっているかを考える」を繰り返してベストを決めています。セオリーはあるんでしょうけど、気にしなくて良いと思います。

あとそうだ、歌集は先にコンセプトを決めていました。作品以外に装丁も考える必要があったので。下に装丁家の成原さんに送った最初メールの一部を載せますね。

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あとひとつだけ、"作品と装丁の調和"について補足です。
これは成原さんの表現の幅を狭めるのではなく、最終的に選択肢からひとつを選ぶときの判断基準のようなものですが、

「地続きの二面性」が歌集の底にあって、それは
古さー新しさ
都心ー地方
日常ー震災
のような対に見えるもののどちらに振り切るのではなく、何度も行き来しているところに現れていると思います。

抽象的で恐れ入りますが、心のすみに置いて頂けると幸いです!
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ここで書いたことが、歌の並びや装丁にも現れています。


Q4,連作の地の歌について質問です。嶋さんはどう考えて地の歌を入れていますか?
私は地の歌をつくるのも入れるのも苦手で、始めと終わりにはなんとかイントロやアウトロ的な歌を入れるのですが、中盤は完全にフィーリングで入れています。
他の方はどうやっているのか参考にさせていただきたいです。(第二灯台守さん)

A4,地の歌は平凡を恐れずにたくさん作るのがおすすめです。玉城徹が、歌の題材は平凡なものが良いけど一首のすみずみまで意識を透徹するべき、と言っていて影響を受けました。
地の歌の入れ方ですが、連作が一通りできた段階でしたら、連作にあった構成が見えてくるのでそこに合わせて選ぶのが良いと思います。ただ間を埋めるだけだと調和しないので、難しいですよね〜


<その他についての質問>
Q1,モーニングルーティーンがありましたら教えてください。(鹿児島県 西淳子さん)

A1,川を眺める。通勤で多摩川を渡るのでその日の川や河川敷の様子を見ています。雨が降った翌日は水位が上がって水の色も変わるのでおすすめです。釣りをされてる方をよく見かけますが、あれ、何が釣れるんだろう。

Q2,好きな寿司ネタはなんですか。(福岡 稲穂みのりさん)

A2,コハダが好きです。うっすら光る皮に青い点が並んでいて綺麗。コハダは子供の頃は食べたことがなくて東京ではじめて食べました。あと寿司じゃないんですけど寿司屋のあら汁と茶碗蒸しが好きです。好きな回転寿司チェーンは「銚子丸」。ぜひ「あら汁(大)189円」をご賞味ください。

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以上となります。皆様からのたくさんのご質問ありがとうございました。

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