先日京都の三千院の円融蔵にて鈴木松年作の 『松竜騰空図』(1905年)を観た。
『松竜騰空図』とは襖12面から成り立っており、全面に力強く豪快且つ勢いよく描かれた淡色墨絵。
鈴木松年は1848-1918、鈴木百年の長男として生まれ,京都府画学校出仕。
筆力雄健とたたえられた。
絵は襖12面全体でみて、右から1/3くらいの位置に行者。
真ん中から左にかけては松。
左部分松の枝別れした部分からは力強い見事な竜が描かれている。
行者は面力によって松を竜に変えるといった内容。
これは行者、松、竜の姿を借りて、人生そのものを表現しているということらしい。
竜は各地方の民話などにも多く残されているが、行者は何を考えて松を竜に変えたのかと考えているうちに、襖の前で時はどんどんとたっていく。
竜の話といえばカブキでもいくつか取り上げられてはいるが、中でも荒事の『ナルカミ』は女が綱を切って竜を逃がすといった内容だ。
『ナルカミ』や民話などから考えても 竜は昔から天気や五穀豊穣と密接な関係を持っていたに違いないと考えられる。
とすれば、確信なできませんが、この襖絵は願い、すなわち繁栄を願ってのめでたい絵として描かれ、収められたのではないでしょうか……
行者の念力は煙の姿を借りて、空高く中央上に伸びきる。
この煙が先日みた信貴山の山伏問答の末に 組み松明?に火が付けられて煙となり、一筋の煙となって空高く舞い上がった煙に通じる感覚を覚えた。
やはり空には異世界といった意味合いがあるのだと、この絵を観て再ためて感じた。
竜が待つとなってその勢いは竜の前位置までも風となって吹き返す。
構図は襖12面をくるくると視線が回るように描かれ、計算しつくされていた。セザンヌと共通する空間や空気の流れが 絵画的な理数的感覚を感じさせ、魅力的で素晴らしい作品であった。
『松竜騰空図』は個性的で紳士的な男性と紅茶を飲みながら 趣味の話が弾んだといった具合の心地よさを感じる芸術作品でした。
最後になりましたが、この絵を丁寧にお教えくださいました三千院にお勤めの方に御礼を申し上げます。女性でとても親切、丁寧な方でした。名前を聞きそびれてしまいましたことがとても残念です。
本当にありがとうございました。
三千院って好きだ~~!
下は秋華洞というネットギャラリーのHPです。
2006’12’04現在『鈴木松年』の絵が一枚ありました。 ↓
http://www.syukado.jp/jp/search/item/artist/jp_b/SUZUKI_SHONEN.html