urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

有栖川有栖『ロシア紅茶の謎』講談社文庫

2005年10月28日 | reading
ネタバレ一応注意。

冷静になって振り返ってみると、『海のある奈良に死す』にDランクは多少厳しかった気がします。『ら抜き言葉殺人事件』とか『ガラス張りの誘拐』あたりがCマイナスに止まったことを考えると…でもまあ、引っ込みつかなかったし、間違いなく気に入らなかったのでまあ良しとしましょう。あと書き忘れてたのでここで書いてしまいますが、我孫子武丸の解説が感心しませんでしたね。作者と同名の登場人物を出すことの如何についてのものでしたが、整理されてなくて説得力がなかったです。大好きな法月が貶されてて、有栖川と二階堂が褒められてる、という印象度の問題も大きいでしょうが。

で、フォローの意味も込めて割りと評判の良い作品集を読みました。国名シリーズの第一短編集ですが、実は未読だったのです。
基本的には読み易くまとまった短編集ですね。有栖川はやはり短編の方がうまいと思います。もってくるネタが短編向きの作家なんですよね…。近藤史恵が解説でも触れているような、「ゲーム」としての小説のあり方が(もちろん本格ファンである僕はその魅力を否定しませんが)、短編の方が臭みが出ないのでしょうね(それも含めて筆力次第なんですけどね、結局)。中でも非常にシンプルで小気味良い謎解きモノの「赤い稲妻」がベスト。これはいい作品だと思いました。
あと、この人は暗号が好きですねー。『孤島パズル』とか「英国庭園の謎」とか、ネタを覚えてる有栖川作品は暗号モノが多いですし、この作品集でも大きな比重を占めてますが、実際感心しないんですよね(ああ、『孤島パズル』は割と良かったか)。個人的な趣味の問題かもしれませんが。「動物園の暗号」のラストとか、「うわぁー…」って言っちゃいました。
あと、有栖川の手クセと言えば下ネタ。「鍵」の話はミス研諸氏はもう飽きたでしょうが、この本でも「屋根裏の散歩者」、最悪でしたね。有栖川ファンは実際どう思ってるのでしょう。周辺の有栖川ファンの方、返答を下さい。特に女性読者が多いので、反省していただきたい。
舞城が犯行現場のウンコの跡を元に推理させるのとかは大好きなんですけどね…。

作品の評価はBマイナス。

4062635488ロシア紅茶の謎
有栖川 有栖

講談社 1997-07
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