urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

服部まゆみ『レオナルドのユダ』角川文庫

2006年03月25日 | reading
ネタバレ一応注意。

いかにもこの作家らしい、重厚で耽美な世界観、文体で綴られるダ・ヴィンチ伝。本格の要素もうまいこと馴染んでるように思われました。これからモナ・リザを見る目も変わりそうです…。
サライの人物像はもっと深みがあってもいいのでは、と思いましたが、ダ・ヴィンチのカリスマ性はよく描けていると思います。あとフィレンツェでガイドの人が言ったラファエロの人物像がそのまんまで面白かった。
あとヴァチカン宮殿の描写。

《馬鹿馬鹿しいほど広く、その宮殿内ときたら悪趣味の一言に尽きた。――旧館も新館も……床、柱、そして壁から天井まで、あらゆる空間を病的なまでに埋め尽くした幾何学模様、それに凡庸な絵画の連続に呆れ果て、辟易とした。せめて精神を休める真っ白な天井を、そして壁を、求める教皇はいなかったのか。》(134-135P)

稀代の毒舌家として描かれるジョーヴィオの視点からの描写であることは割り引くとしても、似たようなことを思わないでもなかったな、と(笑)。

作品の評価はB。

レオナルドのユダレオナルドのユダ
服部 まゆみ

角川書店 2006-02
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