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ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

喜国雅彦『本棚探偵の冒険』双葉文庫

2005年07月19日 | reading
足を踏み入れてはいけない。
足を踏み入れてはいけない。

薄闇の思考の奥から、低い声が聞こえる。
私は理解する。理性と本能の狭間で軋む、それは私の悲鳴なのだと。

しかし、私の五感は既に絡め取られてしまっている。
発せられる昏い瘴気が、ざらりとした肌触りで私を包む。
時の堆積。その甘いロマンティシズムの中で、私はただ独り呟く。

足を踏み入れてはいけない。

…というわけで、古本だけには足を踏み入れてはいけないと思っていながら、あまりにも面白そうだったので買ってしまいました、この本。
ビブリオマニアのエッセイ集。
函や豆本の話も面白いんだけど、なんと言っても本棚の話が身につまされるのです。俺も市販の本棚の使い勝手の悪さにほとほと困っておりますが、「本棚を作るために本を買う」レベルまでいったらオシマイだと思います。なので立てた本の上のスペースは横積み。
ちなみに俺の蔵書は多分3000冊ぐらいでほとんど文庫。でもワンルームの部屋壁一面本棚にしても溢れています。そして綾辻式の著者順。なので新刊を並べる度にすべてがズレていく。愛川晶とか厄介なのよ。でもやはり、それが楽しい。我孫子家の本棚整理を任された話はすげー良く分かるなー。めちゃくちゃ楽しそう。誰か俺に本棚の整理を任せてみませんか?
ちなみにこんな機会なので本の並びのこだわりに関して言うと、基本著者五十音順で、代表シリーズ、あるいはデヴュー作を先頭に、あとは刊行点数が多い順に並べます。つまり有栖川なら創元が並んだ後に講談社、角川と続くわけです。この下克上が起きるのが楽しいんだよね、「お、『タイムスリップ森鴎外』が出てるやん。つーことはハルキより先に講談社を持ってこねばな。ふっふっふ」とかね。分かってくれる人が何人いるんだ?
まあこんな風に、読者一人一人が自分の本棚を思い浮かべながら楽しめる本だと思います。

他には「T蔵書」の話がすごく怖かった。オチはまあアレでしたが。
古本の項に関しては、意識してあまり楽しまないようにしていたのですが、HPの写真とか見るとめちゃくちゃかっこいい。つかこの本の擬古典探偵小説の表紙が既にすごい好きだもの…いや、いかん。ブックオフで佐々木丸美の文庫見つけて狂喜乱舞するぐらいにしておこう、うん。

作品の評価はAマイナス。

4575712906本棚探偵の冒険
喜国 雅彦

双葉社 2005-01
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