urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

石田衣良『電子の星 池袋ウエストゲートパークⅣ』文春文庫

2005年09月12日 | reading
ネタバレ注意。

うん、まあ面白いことは面白いんだけど、前作よりプロットの妙に欠ける気がした。「骨音」も「西口ミッドサマー狂乱」も実に見事な骨格を持っていたので。普通にセンチメンタルなハードボイルドになってしまっているような。「ワルツ・フォー・ベビー」が典型的だけど、ラーメンの話ももっと面白く書けると思うな(勝手)。題材としてはとても魅力的なだけに。その点「黒いフードの夜」のあまりにも残酷な懲罰は良かったっす。怖い怖い。
不満としては、マコトってもっとクールなキャラだと思ってたんだけど、なんか過度にセンチメンタルでアツく、タカシによって揶揄されてるように多少行動原理が不明確で共感できなかった。長瀬キャラにちょっとかぶってきてるんじゃなかろうか。ラーメン、骨音とドラマの脚色具合が見えてきてその点でも興味深いけど、あっちに合わせなくても良さそうなもんだが。まあいいドラマだけどね…。
まあしかしそんななかにあっても、元コピーライタの面目躍如たる輝きを見せる文章も時折見られ(各編ともにやはりラストは良いよ)、石田の手腕は発揮されてると思います。

《そのとき、あの声がした。すべての真実を告げる女神の呼び声。/おれはあんなやわらかな声には二度と耐えられそうにない。》(125p)

あと表題作に関して。山形の悲惨さが印象深かったです。そうか…そんなことになってたのか俺の故郷は。

作品の評価はB。

416717409X電子の星 池袋ウエストゲートパークIV
石田 衣良

文藝春秋 2005-09-02
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