urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

森博嗣『封印再度 WHO INSIDE』講談社文庫

2006年01月09日 | reading
ネタバレ注意。

ミス研1月読書会課題本…これが俺のミス研ラストの課題本かな。なんで今更コレになったか忘れたけど、まあ森博嗣が好きで来た名古屋のシメにふさわしいとは言えます。
初めて読んだのは中三ぐらいの時ですが…読み返してみて最も感じたこと。

萌絵、ムカつく!

大学生なんて当時はお姉さんだった(実際好きだった)けど、いつの間にか年下になってるこの女、ムカつくよ。中盤の「血液の病気」の展開は初読の時から見破ってたけど、行動、言葉の端々がカンに触ること多数。429pの睦子の感慨は笑えたけど。『今はもうない』の伏線か(ネタバレ)。《「ミス研も、漫研も、なんていうのか……、お友達に誘われて入っただけなんです、嫌いじゃないから。あまり熱心なクラブ員じゃありません」》(22p)だってさ。ふーん…いや別に、ここはカンに触ったわけじゃないけどね。…まあ、俺も彼女も大人になったということなのでしょう(キモいよ)。

ミステリの話をしましょうか。

メインとなるのは「天地の瓢」「無我の匣」という魅力的な謎。しっかり憶えてた。こんなの分かる訳ないけど、真相はとてもキレイに収まるので好きです。《「お湯を入れたら、鍵が軟らかくならない?」》(20p(!))とか、《そうだね、やっぱり溶かして出すんだと僕は思うけど……。》(104p)とか、《「でも、君は知らないかもしれない。たとえ知らなかった場合も、怒っちゃ駄目だよ」》(521p)とか、森の後ろめたさが感じられて笑った。あと子供の証言を絡めた部分もうまいと思う。あと瀬戸千衣、笑えるな。
最近の森ミステリィに慣れた身からして、密室トリックも割とマトモだと思え、贅沢なミステリだな…とか満足感をおぼえもしましたがどうも釈然としない。ホワイダニットの部分が不満だけど、これは森のキャラだし、美質と評価する向きさえあるでしょうね。

さて、トーマの元気な姿もそうだけど、なんだかんだで一番感慨深かったのは、かつて異空間だった名駅やキャンパスの光景が完全に日常空間として自分に馴染んでいることでした。月日って流れるものですね(笑)。名古屋に来て良かったです。

作品の評価はAマイナス(再読)。

封印再度―WHO INSIDE封印再度―WHO INSIDE
森 博嗣

講談社 2000-03
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