urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

森福都『吃逆』講談社文庫

2005年07月24日 | reading
ネタバレ(つってもほとんどないけど)注意。

宋代中国を舞台にした、連作エンタテインメント・ミステリ。
一応殺人事件が起きて、なかなか魅力的な不可能状況も設定される。しかし本格の造りはされていないので、まあなんとなく読み進める形になってしまうのね。
「吃逆」というのはしゃっくりのことで、主人公はこれによってさまざまな幻視を体験する。分かりやすく言うと不定期の榎木津ですな。でその幻視が事件を解き明かす手がかりになるってあたりがミソなんだけど、ちょっと工夫が足りない。あまりにも単純に「見える」だけで、上手いことプロットの妙味に繋がっていないと思う。
で、まあそれなりに魅力的な設定、事件を楽しく読みたいのだが、もうちょっとライトな書き方かと思ったけど見慣れない固有名詞が頻出して、スイスイ読み進むにはちょっと苦しいかんじだった。
キャラクタは、好きな人は好きだろうけど僕はあまり魅力的に感じなかった。よって彼らのドラマにもあまり心を動かされず。でもこの設定、特殊能力のある陸が視点人物で、「新聞記者」といういかにもな役割を持つ周のワトソンをやるって、オーソドックスを外している点は新鮮だった。まあ効果的かどうかは別問題だが…。
なんか辛口ですが、楽しめる作品ではあると思います。ちょっと期待が大きすぎた。

作品の評価はBマイナス。

4062735075吃逆
森福 都

講談社 2002-08
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