urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』中央公論新社

2005年08月10日 | reading
ネタバレ注意。

chemさんに貸していただきました。いつもどうも。

抑制された美しい文章が魅力のシリーズ、第三作。この作品でも相変わらず、リリカルでロマンチックな飛行機乗りの物語が読める。
「キルドレ」という設定名からしてそうなのだが、「子供/大人」というテーマ軸が見える。だがしかし、ドラマとしては大した感興がないというのが正直なところ。《平熱のままに冴え渡る筆致。その美しさにただ平伏、感嘆》という山形県の高校生の感想が、かつてダ・ヴィンチの『スカイ・クロラ』の百人書評に載っていたけれども(周辺の方々、もう飽きたでしょうが言わせといてください)、これって結局文章にしか見所がない、ということを体よく褒め言葉にしただけで、シリーズに共通する読後感になってしまっているなあ、というのが現在名古屋の大学生の感想。だってさあ、《自分が生きていていいことを知った》とは到底思えないよこのシリーズで。

表紙は相変わらず最高な鈴木成一。誰か情熱大陸のビデオ貸してくれませんか。

《「生まれたときから、たぶん、知っているんだと思う」/僕はそう答えたとき、空を見るかわりに、自分の靴を眺めていた。ずっと昔に堕ちてきたなにかが、今でもそこに落ちているような気がした。どことなく懐かしい一瞬の錯覚だった。》(49p)

しかし文章は素晴らしい。表紙のはちょっとベタだけど。

作品の評価はCプラス。

4120036448ダウン・ツ・ヘヴン
森 博嗣

中央公論新社 2005-06
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