urt's nest

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黒田研二『ふたり探偵 寝台特急「カシオペア」の二重密室』光文社カッパノベルス

2005年07月16日 | reading
ネタバレ注意。

ミス研読書会七月課題本。久しぶりにアマゾンを利用してしまいました。つか7&Yを使わないあたり社会人予備軍として自覚が足りない。
「知覚は他人と共有できない」というのがメインテーマで、それが恋人の魂が憑依してくるというプロットともつながってくるわけです。で、同一性が証明できない視覚の差異が密室の謎を形作っているのですが、この謎解きはなかなかシンプルにまとまって好ましいと思いました。しかし伏線の張り方が露骨で、その点は減点対象かと。視点人物の錯誤でしかなく矮小だという意見ももっともだとは思います。
もう一つの枠組みは覆面作家「星崎綺羅」をめぐる叙述トリック。《そもそも俺が友梨の身体に憑依した最大の理由は、そこにあったんだからな》(209p)という台詞に象徴される、プロットとの絡みのカタルシスはありましたが、導入部の書き方がうまくいってなくて、この作家をめぐってなにか仕掛けがされてるのがすぐ分かってしまう。というか最初から友梨が綺羅だと思って読んでたんですけどね。モノローグもすぐフィギュアのことだと分かるし…。
あとこれは単純な批判になってしまいますが、せっかく特殊な設定を持ち込んでるのに、リーダビリティが不足気味で、読んでて面白くない。もっと筆力があれば、哲学的なメインテーマも知的興奮と共に読めるんだろうな、とか実も蓋もないことを思ってしまいました。
全体通して、やりたいことは分かるけどちょっと完成度が低いかな、という印象でした。

作品の評価はC。

4334074715ふたり探偵―寝台特急「カシオペア」の二重密室
黒田 研二

光文社 2002-05
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