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クローズアップ2008:たばこ購入カード「タスポ」1日から全国で

2008-06-30 04:39:09 | 国内社会
 クローズアップ2008:たばこ購入カード「タスポ」1日から全国で

■ことば

 ◇taspo(タスポ)
 日本たばこ協会、全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会が主体となって導入した成人識別ICカード。自販機にタッチし成人と確認できなければたばこを購入できない。プリペイド方式の電子マネー「ピデル」としても使える。日本たばこ協会に郵送で申し込む。有効期限は10年。財務省が認定した成人識別機能は、タスポと運転免許証の2種のみ。

 ◇自販機頼みの小売店は悲鳴--申請面倒、普及まだ2割
 未成年者の喫煙防止を目的にした成人識別ICカード「taspo(タスポ)」の運用が7月1日から首都圏などでも始まり、タスポの全国網が完成する。カードがないと、自動販売機でたばこが買えなくなる。だが手続きが面倒なこともあり、たばこ業界の思惑に反しカードの普及率はまだ2割程度。今後、愛煙家の購入場所が自販機からコンビニエンスストアなどにシフトする可能性が高く、自販機収入に頼ってきたたばこ店からは「死活問題」と悲鳴が聞こえる。【大坪信剛、望月麻紀、小原擁】

 ●深夜解禁要望も

 社団法人・日本たばこ協会は、推定2600万人の成人喫煙者のうち常に自販機で購入している人は3~4割とみて、タスポ発行枚数の目標を1000万枚に設定している。しかし、14日現在の発行枚数は574万579枚にとどまり、普及率は22%。全国に先駆けて3月に稼働した宮崎、鹿児島県はようやく33%に達したが、7月に稼働する9都県ではまだ15%に過ぎない。

 普及が伸び悩む中、先行導入された地域では喫煙者の自販機離れが進む。客の多くはコンビニに流れる一方、経営難に陥る個人小売店が相次いでいる。

 福岡県では導入された5月、約1万1600店のたばこ小売店のうち69店が廃業した。07年5月の約2・4倍に上る。大野城市のたばこ店長、児島和則さん(42)は「対面販売の売り上げは2割増えたが、自販機は9割減。全体では8割減った」と嘆く。店頭での対面販売の営業時間を2時間延ばし、売り上げ回復を目指している。

 7月から導入される東京都。70代の販売店主は「売り上げ減を食い止められるだろうか。全国で安定稼働が確認されたら、業界全体で自粛している深夜の自販機稼働を解禁してほしい」と訴える。

 全国たばこ販売協同組合連合会は96年4月から、未成年者の購入防止のため午後11時~午前5時の自販機での販売を自粛している。タスポ導入で未成年者は自販機で購入できないため、連合会は、8月にも深夜販売の解禁に踏み切りたい考えで、自販機の大半を所有するたばこメーカー各社に協力を求めている。

 ◇コンビニで購入、増加も 未成年防止、年齢確認などカギ
 ●先行県で「効果」

 警察庁のまとめでは、07年に喫煙で補導された未成年者は全国で約60万人。93年の約30万人と比べて約2倍に増えている。タスポ導入で果たしてどの程度、未成年者の喫煙を防げるのか。

 3月に先行導入された宮崎県では導入後、未成年者の喫煙補導数が減少傾向となった。県警によると2月の補導数は266人。ところが3月は203人、4月は197人と減り、3~4月の補導数は07年同期比で123人減だった。県警は「導入効果もあったのではないか」と分析する。

 政府の04年度全国調査(複数回答)では、未成年者がたばこを購入する場合、78%が自販機を利用、34%がコンビニ、スーパーなどの販売店で買っていた。自販機で買えない未成年者が今後、コンビニなどで購入する動きが強まる可能性がある。

 マールボロやラークなどを製造販売するフィリップモリスジャパン(東京都千代田区)は06年、外見上未成年に見える成人調査員を500店舗に派遣して購入が可能か調べた。

 この結果、「何も聞かれずに購入できた」が99%以上の496店に上り、未成年に見えてもほぼノーチェックで購入できたという。

 このため同社は、タスポ導入を機に「証明書による年齢確認」を店の方針として確立することや、年齢確認を嫌がったり、気の短い客への接し方などを盛り込んだマニュアルのCDを製作し、販売店に配布し始めた。また、店のカウンターに「証明書の提示」を明記した表示板を置いたり、ステッカーを張るよう指導している。

 同社の福原ひとみマネジャーは「自販機に成人識別機能が付くことで、対面販売の重要性が一層増す。店頭でのトラブルがないよう未成年者が買いにくい店にしていくことが必要」と話している。

 ◇各国から批判受け導入 たばこメーカー、メリット少なく
 05年に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約」では、「自販機が未成年者に利用されないこと」「自販機で未成年者に対する製品の販売が促進されないこと」を求めており、日本も批准している。

 日本自動販売機工業会によると、たばこ自販機の普及台数は07年末で約52万台。世界的にも自販機での販売数が目立って多く、国際会議などで日本に対する批判が強かった。

 政府の働きかけを受け、日本たばこ協会などはタスポ導入を決定。3月に宮崎、鹿児島県で試験導入され、5月、6月も地域ごとに順次実施。7月1日からは9都県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨、沖縄)に導入され、全国を網羅する。

 タスポ機能付き自販機の開発・整備費用は総額800億~900億円で、自販機を貸与するたばこメーカーが大半を負担する。メーカーは費用捻出(ねんしゅつ)のため、06年に商品を値上げした。これも一因となり、販売量は年々減少。たばこの製造・販売サイドにとってメリットは大きくない。

 一方、こうした動きから新たなビジネスチャンスも生まれている。自販機を製造販売するフジタカ(京都府長岡京市)は、目や口の大きさや配置などで年代層を判別する独自の「顔認証システム」を搭載した成人識別自販機を開発した。顔認証について財務省は「機能を確認中」としているが、見切り発車ながら全国で約4800台が稼働し、予約待ちの人気ぶりだ。

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 ■ことば

 ◇taspo(タスポ)
 日本たばこ協会、全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会が主体となって導入した成人識別ICカード。自販機にタッチし成人と確認できなければたばこを購入できない。プリペイド方式の電子マネー「ピデル」としても使える。日本たばこ協会に郵送で申し込む。有効期限は10年。財務省が認定した成人識別機能は、タスポと運転免許証の2種のみ。

(出所:毎日新聞 2008年6月29日 東京朝刊)
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