トヨタとパナソニック出資会社
派遣切りして期間工大募集
「腹が立つわよ。私たちを中途解雇しておいて」
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減産を口実に「派遣切り」をした製造企業で、増産が必要になったからとして労働者の募集を始めるところが出ています。人員削減から時間がたたないうちに人員増に転じるという身勝手さが浮かびあがっています。(酒井慎太郎)
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パナソニックEVエナジー(静岡県湖西市、従業員2200人)は13日に「100名大募集」とした期間工の選考会を開き、採用枠を大きく上回る160人が参加しました。
今春、専門学校を卒業した愛知県豊橋市の男性(21)は、ハローワークでは1社に1、2人の募集しかなく、「正社員になりたいが仕事を選んでいられない」と話しました。
同社はトヨタ自動車とパナソニックが出資し、自動車用電池を製造。トヨタが燃料電気両用車を増産するため、増員に動きました。
最長2年11カ月
期間工は時給1150円と、派遣会社の時給1300円より低く抑え、契約期間は最長2年11カ月しかありません。失業中の静岡県内の40代男性は、「この年齢になると働き口は限られる。雇用は安定しないが仕方がない」と言いました。
しかし、同社は1月末に「派遣切り」を行ったばかりでした。
「腹が立つわよ。辞めさせておいて、また募集するなんて」と憤るのは浜松市の女性(46)。減産を理由に4月半ばまで契約があったのに、中途解雇で人員削減されました。
労働契約法で、中途解雇は原則禁止されています。しかも、派遣先指針で定められた中途解雇者への再雇用あっせんなども行わず、放り出したのです。
「私のいたラインでは半数の9人が中途解雇されました。私は高校生と中学生の子ども2人を育てる母子家庭で、明日からどう生活するか途方にくれました」と語ります。
昨年12月末、解雇を告げられてから、「辞めろと言う職場で働きたくない。有給休暇を消化したい」と言っても、「生産が回らなくなる。有休を使うなら自主退社になる」と脅されたと言います。
ところが、同社は2月1日、派遣労働者を全員、期間工に採用する方針を発表しました。減産を口実に派遣切りをすすめる一方で、期間工に切り替えていく計画だったのです。その朝礼で製造課長は、「わが社は派遣切りなんてことはしない。期間工として雇うから、安心して働くように」とうそぶきました。
この女性ら5人は1月、「声を上げてたたかいたい」とJMIU(全日本金属情報機器労組)静岡西部地域支部に加入。派遣会社に解決金を支払わせましたが、いまだに仕事が見つかっていません。
法令にも抵触か
そんななかで持ち上がったのが、今回の100人採用でした。労働者派遣法では、派遣をやめて労働者を採用する場合、派遣労働者を優先して雇用しなければなりません。同社が派遣切りをやってすぐに期間工を採用したり、新たに期間工を増やすことは、こうした法令にも抵触しかねない問題です。
同社は、「派遣切りなど一人もしていない」といって自らの責任は棚上げし、派遣会社の問題だと開き直っています。中途解雇した派遣労働者を優先して雇う考えはないとしています。
解雇された労働者は再就職先のあっせんもないため、全員が今も仕事に就けず、今月で失業保険も切れます。
JMIU静岡西部地域支部の青木克之書記長は、「中途解雇して放り出したまま、新たに期間工を雇い入れる身勝手さは許されません。大企業の社会的責任を果たすよう求めたい」と話しています。
(出所:日本共産党HP 2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」)
「ルールある雇用」の経済効果とは?
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〈問い〉派遣労働者を正規労働者にしたり、サービス残業をなくしたりするだけで内需拡大になると聞きましたが、どういうことですか。その効果は微々たるものと思えるのですが、違いますか?(東京・一読者)
〈答え〉「アメリカ発の金融危機」が“外需・輸出頼み”の日本経済を直撃し、景気が悪化しています。そのなかで、これまで、金融・住宅バブルにわくアメリカ市場に進出して大もうけをつづけてきたトヨタやキヤノンなどの大企業が、不況を口実にして「派遣切り」「非正規切り」をすすめています。
大企業の横暴を放置していては、日本経済は、雇用悪化と景気悪化という際限のない悪循環におちいることになります。
この状況を打開するためには、日本経済の体質を外需・輸出頼みから内需主導に抜本的に切りかえていくことが必要です。
非正規雇用の正社員化、サービス残業根絶、年休完全取得など雇用の安定と働くルールの厳守、つまり「ルールある雇用」を実現することは、日本経済を内需主導の方向に転換させていくうえで大きな役割を果たし、経済効果も抜群です。
そのことを具体的に明らかにしたのが昨年10月に発表された労働総研の試算です。この試算では、(1)ワーキングプアの解消のため非正規の正社員化363万人を実現する、(2)サービス残業を根絶すると118・8万人の雇用が生まれる、(3)完全週休2日制と年次有給休暇の完全取得を保障すると153・5万人の新たな雇用が必要になる――という三つのケースを明らかにし、それによってどのような経済効果が生まれるかを算出しています。
その結論は、労働者の賃金は21・3兆円増え、国内生産は24・3兆円増えるということです。その結果、日本のGDPは2・52%押し上げられます。日本の経済成長率は、景気拡大局面の時期で、04年度2・0%、05年度2・4%、06年度2・5%でしたから、それに匹敵する経済効果があることが明らかになりました。しかも、04~06年度のGDPを押し上げたのは大企業の設備投資が中心でしたが、今回は労働者の懐を直接あたためることになるので、大企業だけでなく、中小企業にも経済効果が波及することになります。
労働者の賃金支払いは21・3兆円増えることになりますが、大企業がため込んだ内部留保は、02年度の167兆円から07年度には228兆円に増えています。5年間で61兆円も積み増しているので、その3分の1をあてれば「ルールある雇用」を実現でき、経済効果も生まれます。(藤)
(出所:日本共産党HP 2009年1月29日(木)「しんぶん赤旗」)
社会保障関係費の「自然増」とは?
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〈問い〉 社会保障関係費の「自然増」はなぜ発生するのですか。政府はこの「自然増」の推移をどう予測しているのですか? 日本共産党はどのように考えていますか?(東京・一読者)
〈答え〉 日本の社会保障の財源は、多くが国民や企業から集めた社会保険料でまかなわれ、一部を国と地方の税金で負担しています。
このうちの国庫負担分が一般会計予算の「社会保障関係費」として計上されます。
06年度予算ではそれが20・5兆円で、主な内訳は、年金の国庫負担金(6・7兆円)、医療保険・老人医療関係(6・3兆円)、介護保険関係(1・7兆円)、生活保護費(2兆円)などです。
このうち、年金や医療、介護、は、いずれも国庫負担の割合が決まっていますから、高齢化によって年金受給者や介護サービスを受ける人が増えれば、国庫負担も当然増加します。(具体的にいうと、基礎年金の受給者は、毎年約100万人ずつ増え、受給額一人平均年60万円を掛けると6千億円、その3分の1が国庫負担なので毎年2千億円の国庫負担増となる。同様の計算で、介護保険関係で約1千200億円、医療関係で数千億円規模の「自然増」となる)
厚生労働省が04年5月に発表した「社会保障の給付と負担の見通し」では、社会保障の「公費負担」は04年度の26兆円から、2025年度には64兆円に増えるとしています。この予測自体は、将来の経済成長率などをどう仮定するかによって違ってきますが、これまで政府が出してきた試算は、いずれも現実の推移よりも過大なものになっています。
政府は、社会保障関係費の「自然増」が財政を圧迫する最大の要因であると描いて、「財政再建のためには社会保障を削らなくてはならない」とか「消費税を増税しなければならない」という方向に世論を誘導しようとしています。
しかし、高齢化が進行すれば社会保障関係費が増えるのは、わかっていたことであり、それに見合った政策を進めてこなかった政府の方に問題があるのです。発達した資本主義国のほとんどが、「国の予算の中心は社会保障」です。アメリカの連邦予算の約6割、イギリスは約4割、ドイツは約5割が社会保障関係予算です。日本の06年度予算に占める社会保障関係費は26%です。もともときわめて貧しい日本の社会保障なのに、さらに高齢化を理由にその予算を削り、低所得者層に重い負担となる消費税率をアップするのでは格差社会が広がるばかりです。
いまこそ予算の使い方にメスを入れ、大企業・大資産家優遇の税制を見直すことこそが求められています。(喜)
(出所:日本共産党HP 2006年5月13日(土)「しんぶん赤旗」)
7年間に13兆円もの負担増 年間なの? 累計なの?
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〈問い〉日本共産党の総選挙政策(「赤旗」9月26日付)で、「自公政権は、この7年間に13兆円もの負担増を押しつけました」とありますが、13兆円というのは1年間あたりの数字でしょうか? それとも7年間の負担の累計額ですか?負担の内訳も教えてください。(東京・一読者)
〈答え〉小泉内閣の2002年以来、庶民への増税や社会保険料の引き上げなど直接の負担増に加えて、社会保障給付の切り下げなどの形で、国民に負担増が押しつけられてきました。増税や社会保障改悪が重なることによって、負担増の額は毎年増え、いまでは年間13兆円の規模に達しています。02年度から08年度までの7年間に国民に押しつけられた負担増を累計すれば、50兆円近くにもなります。
金額が一番大きいのは増税です。06年・07年に実施された所得税・住民税の定率減税の廃止(約3・4兆円)、04年・05年に実施された配偶者特別控除の廃止(0・7兆円)、05~08年に実施された高齢者への増税(0・4兆円)、消費税の免税点の引き下げ(0・6兆円)など、増税額の合計は年間5兆円以上になります。
この間、02年と06年の2回にわたって、医療制度の改悪法が強行され、保険料の引き上げにくわえて、サラリーマンの窓口負担が2割から3割に引き上げられ、高齢者の患者負担も増えました。さらに後期高齢者医療制度が実施されました。これらの医療改悪による負担増は、年間2兆円近い額になっています。
04年に強行された年金法改悪によって、毎年、年金保険料が引き上げられています。一方、03・04・06年度には、「物価が下がった」という理由で年金の給付額が引き下げられました。これによる負担増は、08年度分までで年間4兆円近い額に達しています。保険料は今後も0・7兆円くらいずつ増え続けます。
その他、介護保険料の引き上げとホテルコストの導入、障害者への自己負担押しつけ、生活保護の削減、失業手当の削減、国立大学授業料値上げなどを含め、負担増の全体では年間13兆円近い金額になっています。このほかに、国保料の引き上げなど地域ごとの負担増もありますが、集計が難しいため、この計算には入っていません。
このように、7年間で累計50兆円近い負担を国民に押しつけたことが、家計を痛めつけ、内需を冷え込ませる原因の一つとなってきたのです。1回限り、数兆円の定額減税をばらまいたくらいでは、くらしの不安は解消しません。国民負担増を続けてきた政策の抜本的な転換が求められています。(垣)
(出所:日本共産党HP 2008年10月4日(土)「しんぶん赤旗」)
所得再分配って?
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〈問い〉 貧富の差を広げる小泉「構造改革」を批判する中によく「所得再分配」という言葉がでてきますが、よくわかりません。どんな意味ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 「所得再分配」とは、ごく簡単に言えば、大企業や高額所得者など所得の大きいところにはより多く税負担してもらい、それを社会保障給付などの形で渡すことで、所得の低い人も生活できるようにすることです。
資本主義では、放っておけば貧富の格差が広がる一方ですから、これを是正しなければなりません。この仕組みは、長年の民衆のたたかいの結果、つくりあげられてきて、現代国家の財政政策では当たり前になっています。ところが、小泉内閣の新自由主義路線のもとでそれがこわされてきているのです。
資本主義の市場経済では、働く者が働いてつくり出す価値(商品)が富の源泉となり、それが企業の利潤や賃金などのかたちで分配されています。その利潤や賃金にたいして、国家が税をとり、それを再分配する仕組みがあります。
資本主義社会の初期には、利潤追求のための競争がなんの規制もなく「自由」におこなわれたため、労働者は非人間的な長時間労働と低賃金を強いられ、過酷に搾取されていました。それに加えて、徴収された税金の多くは軍事費や、国家権力を握る人たちに都合よく使われていました。その結果、不平等が広がり、一部の金持ちと多くの貧乏人ができるという対立が広がりました。
しかし、20世紀前半にはこの矛盾が恐慌や社会革命となって爆発し、その修正を余儀なくされます。1929年の大恐慌後の米国のニューディール政策などがそれで、国家が市場経済に介入し、矛盾をやわらげる仕組みをとっていきます。(当時、アメリカの正統派の財政学者とされるマスグレイブは、市場機構を通じて実現される所得分配は社会的に最適なものではないとして、財政政策の目標として所得の適正な分配、経済の安定、資源の効率的配分の三つをあげている)
こうして、かつては一部の金持ち階級のためにだけ使われていた税金が、いまでも軍事費や財界奉仕の予算部分は残していますが、しだいに、国民一般に、教育、保健、医療、保育、福祉、住宅、交通の便などのかたちで分配される部分が大きくなっていきます。
戦後の日本国憲法が第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記したのもその流れです。
小泉「改革」の結果、所得や雇用の不平等、地域間や産業構造のアンバランス化、「勝ち組」と「負け組」という極端な分解、亀裂が広がっています。憲法体制で守られてきた「所得再分配」構造を崩させない社会的反撃が求められています。(喜)
(出所:日本共産党HP 2006年4月6日(木)「しんぶん赤旗」)
派遣切りして期間工大募集
「腹が立つわよ。私たちを中途解雇しておいて」
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減産を口実に「派遣切り」をした製造企業で、増産が必要になったからとして労働者の募集を始めるところが出ています。人員削減から時間がたたないうちに人員増に転じるという身勝手さが浮かびあがっています。(酒井慎太郎)
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パナソニックEVエナジー(静岡県湖西市、従業員2200人)は13日に「100名大募集」とした期間工の選考会を開き、採用枠を大きく上回る160人が参加しました。
今春、専門学校を卒業した愛知県豊橋市の男性(21)は、ハローワークでは1社に1、2人の募集しかなく、「正社員になりたいが仕事を選んでいられない」と話しました。
同社はトヨタ自動車とパナソニックが出資し、自動車用電池を製造。トヨタが燃料電気両用車を増産するため、増員に動きました。
最長2年11カ月
期間工は時給1150円と、派遣会社の時給1300円より低く抑え、契約期間は最長2年11カ月しかありません。失業中の静岡県内の40代男性は、「この年齢になると働き口は限られる。雇用は安定しないが仕方がない」と言いました。
しかし、同社は1月末に「派遣切り」を行ったばかりでした。
「腹が立つわよ。辞めさせておいて、また募集するなんて」と憤るのは浜松市の女性(46)。減産を理由に4月半ばまで契約があったのに、中途解雇で人員削減されました。
労働契約法で、中途解雇は原則禁止されています。しかも、派遣先指針で定められた中途解雇者への再雇用あっせんなども行わず、放り出したのです。
「私のいたラインでは半数の9人が中途解雇されました。私は高校生と中学生の子ども2人を育てる母子家庭で、明日からどう生活するか途方にくれました」と語ります。
昨年12月末、解雇を告げられてから、「辞めろと言う職場で働きたくない。有給休暇を消化したい」と言っても、「生産が回らなくなる。有休を使うなら自主退社になる」と脅されたと言います。
ところが、同社は2月1日、派遣労働者を全員、期間工に採用する方針を発表しました。減産を口実に派遣切りをすすめる一方で、期間工に切り替えていく計画だったのです。その朝礼で製造課長は、「わが社は派遣切りなんてことはしない。期間工として雇うから、安心して働くように」とうそぶきました。
この女性ら5人は1月、「声を上げてたたかいたい」とJMIU(全日本金属情報機器労組)静岡西部地域支部に加入。派遣会社に解決金を支払わせましたが、いまだに仕事が見つかっていません。
法令にも抵触か
そんななかで持ち上がったのが、今回の100人採用でした。労働者派遣法では、派遣をやめて労働者を採用する場合、派遣労働者を優先して雇用しなければなりません。同社が派遣切りをやってすぐに期間工を採用したり、新たに期間工を増やすことは、こうした法令にも抵触しかねない問題です。
同社は、「派遣切りなど一人もしていない」といって自らの責任は棚上げし、派遣会社の問題だと開き直っています。中途解雇した派遣労働者を優先して雇う考えはないとしています。
解雇された労働者は再就職先のあっせんもないため、全員が今も仕事に就けず、今月で失業保険も切れます。
JMIU静岡西部地域支部の青木克之書記長は、「中途解雇して放り出したまま、新たに期間工を雇い入れる身勝手さは許されません。大企業の社会的責任を果たすよう求めたい」と話しています。
(出所:日本共産党HP 2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」)
「ルールある雇用」の経済効果とは?
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〈問い〉派遣労働者を正規労働者にしたり、サービス残業をなくしたりするだけで内需拡大になると聞きましたが、どういうことですか。その効果は微々たるものと思えるのですが、違いますか?(東京・一読者)
〈答え〉「アメリカ発の金融危機」が“外需・輸出頼み”の日本経済を直撃し、景気が悪化しています。そのなかで、これまで、金融・住宅バブルにわくアメリカ市場に進出して大もうけをつづけてきたトヨタやキヤノンなどの大企業が、不況を口実にして「派遣切り」「非正規切り」をすすめています。
大企業の横暴を放置していては、日本経済は、雇用悪化と景気悪化という際限のない悪循環におちいることになります。
この状況を打開するためには、日本経済の体質を外需・輸出頼みから内需主導に抜本的に切りかえていくことが必要です。
非正規雇用の正社員化、サービス残業根絶、年休完全取得など雇用の安定と働くルールの厳守、つまり「ルールある雇用」を実現することは、日本経済を内需主導の方向に転換させていくうえで大きな役割を果たし、経済効果も抜群です。
そのことを具体的に明らかにしたのが昨年10月に発表された労働総研の試算です。この試算では、(1)ワーキングプアの解消のため非正規の正社員化363万人を実現する、(2)サービス残業を根絶すると118・8万人の雇用が生まれる、(3)完全週休2日制と年次有給休暇の完全取得を保障すると153・5万人の新たな雇用が必要になる――という三つのケースを明らかにし、それによってどのような経済効果が生まれるかを算出しています。
その結論は、労働者の賃金は21・3兆円増え、国内生産は24・3兆円増えるということです。その結果、日本のGDPは2・52%押し上げられます。日本の経済成長率は、景気拡大局面の時期で、04年度2・0%、05年度2・4%、06年度2・5%でしたから、それに匹敵する経済効果があることが明らかになりました。しかも、04~06年度のGDPを押し上げたのは大企業の設備投資が中心でしたが、今回は労働者の懐を直接あたためることになるので、大企業だけでなく、中小企業にも経済効果が波及することになります。
労働者の賃金支払いは21・3兆円増えることになりますが、大企業がため込んだ内部留保は、02年度の167兆円から07年度には228兆円に増えています。5年間で61兆円も積み増しているので、その3分の1をあてれば「ルールある雇用」を実現でき、経済効果も生まれます。(藤)
(出所:日本共産党HP 2009年1月29日(木)「しんぶん赤旗」)
社会保障関係費の「自然増」とは?
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〈問い〉 社会保障関係費の「自然増」はなぜ発生するのですか。政府はこの「自然増」の推移をどう予測しているのですか? 日本共産党はどのように考えていますか?(東京・一読者)
〈答え〉 日本の社会保障の財源は、多くが国民や企業から集めた社会保険料でまかなわれ、一部を国と地方の税金で負担しています。
このうちの国庫負担分が一般会計予算の「社会保障関係費」として計上されます。
06年度予算ではそれが20・5兆円で、主な内訳は、年金の国庫負担金(6・7兆円)、医療保険・老人医療関係(6・3兆円)、介護保険関係(1・7兆円)、生活保護費(2兆円)などです。
このうち、年金や医療、介護、は、いずれも国庫負担の割合が決まっていますから、高齢化によって年金受給者や介護サービスを受ける人が増えれば、国庫負担も当然増加します。(具体的にいうと、基礎年金の受給者は、毎年約100万人ずつ増え、受給額一人平均年60万円を掛けると6千億円、その3分の1が国庫負担なので毎年2千億円の国庫負担増となる。同様の計算で、介護保険関係で約1千200億円、医療関係で数千億円規模の「自然増」となる)
厚生労働省が04年5月に発表した「社会保障の給付と負担の見通し」では、社会保障の「公費負担」は04年度の26兆円から、2025年度には64兆円に増えるとしています。この予測自体は、将来の経済成長率などをどう仮定するかによって違ってきますが、これまで政府が出してきた試算は、いずれも現実の推移よりも過大なものになっています。
政府は、社会保障関係費の「自然増」が財政を圧迫する最大の要因であると描いて、「財政再建のためには社会保障を削らなくてはならない」とか「消費税を増税しなければならない」という方向に世論を誘導しようとしています。
しかし、高齢化が進行すれば社会保障関係費が増えるのは、わかっていたことであり、それに見合った政策を進めてこなかった政府の方に問題があるのです。発達した資本主義国のほとんどが、「国の予算の中心は社会保障」です。アメリカの連邦予算の約6割、イギリスは約4割、ドイツは約5割が社会保障関係予算です。日本の06年度予算に占める社会保障関係費は26%です。もともときわめて貧しい日本の社会保障なのに、さらに高齢化を理由にその予算を削り、低所得者層に重い負担となる消費税率をアップするのでは格差社会が広がるばかりです。
いまこそ予算の使い方にメスを入れ、大企業・大資産家優遇の税制を見直すことこそが求められています。(喜)
(出所:日本共産党HP 2006年5月13日(土)「しんぶん赤旗」)
7年間に13兆円もの負担増 年間なの? 累計なの?
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〈問い〉日本共産党の総選挙政策(「赤旗」9月26日付)で、「自公政権は、この7年間に13兆円もの負担増を押しつけました」とありますが、13兆円というのは1年間あたりの数字でしょうか? それとも7年間の負担の累計額ですか?負担の内訳も教えてください。(東京・一読者)
〈答え〉小泉内閣の2002年以来、庶民への増税や社会保険料の引き上げなど直接の負担増に加えて、社会保障給付の切り下げなどの形で、国民に負担増が押しつけられてきました。増税や社会保障改悪が重なることによって、負担増の額は毎年増え、いまでは年間13兆円の規模に達しています。02年度から08年度までの7年間に国民に押しつけられた負担増を累計すれば、50兆円近くにもなります。
金額が一番大きいのは増税です。06年・07年に実施された所得税・住民税の定率減税の廃止(約3・4兆円)、04年・05年に実施された配偶者特別控除の廃止(0・7兆円)、05~08年に実施された高齢者への増税(0・4兆円)、消費税の免税点の引き下げ(0・6兆円)など、増税額の合計は年間5兆円以上になります。
この間、02年と06年の2回にわたって、医療制度の改悪法が強行され、保険料の引き上げにくわえて、サラリーマンの窓口負担が2割から3割に引き上げられ、高齢者の患者負担も増えました。さらに後期高齢者医療制度が実施されました。これらの医療改悪による負担増は、年間2兆円近い額になっています。
04年に強行された年金法改悪によって、毎年、年金保険料が引き上げられています。一方、03・04・06年度には、「物価が下がった」という理由で年金の給付額が引き下げられました。これによる負担増は、08年度分までで年間4兆円近い額に達しています。保険料は今後も0・7兆円くらいずつ増え続けます。
その他、介護保険料の引き上げとホテルコストの導入、障害者への自己負担押しつけ、生活保護の削減、失業手当の削減、国立大学授業料値上げなどを含め、負担増の全体では年間13兆円近い金額になっています。このほかに、国保料の引き上げなど地域ごとの負担増もありますが、集計が難しいため、この計算には入っていません。
このように、7年間で累計50兆円近い負担を国民に押しつけたことが、家計を痛めつけ、内需を冷え込ませる原因の一つとなってきたのです。1回限り、数兆円の定額減税をばらまいたくらいでは、くらしの不安は解消しません。国民負担増を続けてきた政策の抜本的な転換が求められています。(垣)
(出所:日本共産党HP 2008年10月4日(土)「しんぶん赤旗」)
所得再分配って?
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〈問い〉 貧富の差を広げる小泉「構造改革」を批判する中によく「所得再分配」という言葉がでてきますが、よくわかりません。どんな意味ですか?(東京・一読者)
〈答え〉 「所得再分配」とは、ごく簡単に言えば、大企業や高額所得者など所得の大きいところにはより多く税負担してもらい、それを社会保障給付などの形で渡すことで、所得の低い人も生活できるようにすることです。
資本主義では、放っておけば貧富の格差が広がる一方ですから、これを是正しなければなりません。この仕組みは、長年の民衆のたたかいの結果、つくりあげられてきて、現代国家の財政政策では当たり前になっています。ところが、小泉内閣の新自由主義路線のもとでそれがこわされてきているのです。
資本主義の市場経済では、働く者が働いてつくり出す価値(商品)が富の源泉となり、それが企業の利潤や賃金などのかたちで分配されています。その利潤や賃金にたいして、国家が税をとり、それを再分配する仕組みがあります。
資本主義社会の初期には、利潤追求のための競争がなんの規制もなく「自由」におこなわれたため、労働者は非人間的な長時間労働と低賃金を強いられ、過酷に搾取されていました。それに加えて、徴収された税金の多くは軍事費や、国家権力を握る人たちに都合よく使われていました。その結果、不平等が広がり、一部の金持ちと多くの貧乏人ができるという対立が広がりました。
しかし、20世紀前半にはこの矛盾が恐慌や社会革命となって爆発し、その修正を余儀なくされます。1929年の大恐慌後の米国のニューディール政策などがそれで、国家が市場経済に介入し、矛盾をやわらげる仕組みをとっていきます。(当時、アメリカの正統派の財政学者とされるマスグレイブは、市場機構を通じて実現される所得分配は社会的に最適なものではないとして、財政政策の目標として所得の適正な分配、経済の安定、資源の効率的配分の三つをあげている)
こうして、かつては一部の金持ち階級のためにだけ使われていた税金が、いまでも軍事費や財界奉仕の予算部分は残していますが、しだいに、国民一般に、教育、保健、医療、保育、福祉、住宅、交通の便などのかたちで分配される部分が大きくなっていきます。
戦後の日本国憲法が第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と明記したのもその流れです。
小泉「改革」の結果、所得や雇用の不平等、地域間や産業構造のアンバランス化、「勝ち組」と「負け組」という極端な分解、亀裂が広がっています。憲法体制で守られてきた「所得再分配」構造を崩させない社会的反撃が求められています。(喜)
(出所:日本共産党HP 2006年4月6日(木)「しんぶん赤旗」)