未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

米原潜放射能漏れ-原子力艦船とは共存できない-

2008-08-09 06:06:09 | 国内政治
主張
米原潜放射能漏れ
原子力艦船とは共存できない

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 米海軍の原子力潜水艦ヒューストンが、放射能を含んだ水を垂れ流したまま、長崎県の佐世保港などに寄港していた可能性が高いことが明らかになり、佐世保をはじめ、横須賀(神奈川県)、沖縄など全国に衝撃が広がっています。

 米艦船は五十年間「一度たりとも」放射能を出したことはないといいはってきた米政府が、放射能漏れの可能性を認めたことは重大です。米政府の説明をうのみに、「安全」をいいはる日本政府の態度では、国民の生命、健康を守ることはできません。政府は事故原因の徹底調査を求め、米原子力艦船の入港を拒否すべきです。

吹き飛んだ「安全神話」
 今回の事故は、ヒューストンが七月十七日にハワイで定期点検を受けたさい、水兵がバルブのふたが外れて流れ出た水を浴び、二十四日になってその水から放射能が検出されたというものです。米海軍は、数カ月にわたって放射能を含む水を垂れ流していた可能性があると認めています。

 米政府からの連絡にもとづき日本の外務省は、「冷却水が一部しみだし(た)」事故と発表していますが、含まれていた放射能はどんな種類だったのかなど、肝心なことは米軍も説明を避けています。

 放射能は「ごく微量」といいますが、数カ月にわたって放射能をふくむ水を垂れ流していたということ自体、日本にとって重大です。ヒューストンは今年三月二十七日から四月二日の間と四月六日に佐世保に寄港しています。それ以前には沖縄県うるま市の米軍ホワイトビーチ沖にも停泊しています。日本の調査で放射能は検出されていませんが、米政府には寄港時や停泊時に放射能を垂れ流していたのか、データの提供を含めて、調査し報告する責任があります。

 今回の事故では通報の遅れも重大です。米政府が日本(外務省)に通報したのは一日午後です。異常が発覚してから二週間、放射能を検出してからでも一週間後です。外務省の発表も報道後です。ことは放射能漏れという重大問題なのに、あってはならないことです。

 米原潜はこれまでも佐世保、横須賀、沖縄などに寄港したさい、日本側の調査などで何度も放射能漏れが指摘されてきました。しかし米政府は「放射能は出したことはない」の一点張りで、科学的説明や資料提供要求も「軍事機密」をたてにすべて拒絶し、原子力艦船は核事故を起こさないという、勝手な「安全神話」をふりまいてきました。

 「ごく微量」であれ、放射能を垂れ流していたことを認めた今回の事故は、「安全神話」が成り立たないことを米政府自ら認めたことにほかなりません。それは、米原子力艦船の寄港を受け入れ続ける限り、絶えず重大な事故の危険にさらされるということであり、原子力艦船の寄港受け入れは根本から見直す必要があります。

寄港・配備を許さない
 今回、米政府も日本政府も放射能漏れを「ごく微量」といいはるのは、九月末に予定している原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀配備を考えてのことです。

 しかし原子力空母の配備は、一年の半分は港に停泊することを意味します。核事故の危険も比較にならぬほど大きくなります。原子力空母の横須賀配備を許さないたたかいが、いよいよ重要です。

(出所:日本共産党HP 2008年8月4日(月)「しんぶん赤旗」)

米原潜、放射能漏れ2年超
06年6月から今年7月まで
日本に寄港11回
佐世保・沖縄 各5回、横須賀にも

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 米海軍原子力潜水艦ヒューストンの放射能漏れ事故について、同艦から放射能を帯びた冷却水が漏れていた期間が二〇〇六年六月から今年七月までの二年以上に及んでいたことが七日、分かりました。またヒューストンは同期間中、日本に計十一回寄港していたことも明らかになりました。

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 米政府から同日、在日大使館を通じて外務省に通報があったとして、同省が発表しました。二年以上にも及ぶ放射能漏れは、米原子力艦船の「安全神話」のでたらめさ、安全管理体制のずさんさを如実に示すものです。

 ヒューストンの放射能漏れは、ハワイでの定期点検中の今年七月二十四日に確認され、今月一日に米政府から外務省に通報があったもの。同省がこの通報を隠し、首相官邸や外相への報告、関係自治体への通報が一日遅れたとして問題になってきました。

 この時、放射能漏れは数カ月に及ぶ可能性が指摘されていましたが、米側の通報では「いつから冷却水がしみ出るようになったかは分からない」としていました。

 外務省の七日の発表によると、米政府はその後も調査を継続。放射能漏れは〇六年六月から始まっていたことが新たに確認できたとして通報してきました。

 米政府の通報では、ヒューストンは〇六年六月以降、米海軍佐世保基地(長崎県)に五回、同横須賀基地(神奈川県)に一回、同ホワイトビーチ(沖縄県)に五回寄港。その際、ヒューストンから放射性物質が漏れていたと推定しています。

 一方で通報は、「漏えいした放射性物質の全体量は極めて少ない」などとしています。しかし、米側の一方的な通報で真偽は不明です。

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日本寄港年月日と寄港地
(2006年6月から現在まで)

(1)06年7月16日(佐世保)
(2)07年1月25―29日(横須賀)
(3)   2月2日(佐世保)
(4)   3月17日(ホワイトビーチ)
(5)   3月23日(同上)
(6)   4月13―18日(佐世保)
(7)   12月7―11日(ホワイトビーチ)
(8)   12月15日(同上)
(9)08年3月12日(同上)
(10)   3月27日―4月2日(佐世保)
(11)   4月6日(同上)

米側通報から作成

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解説
米原潜の放射能漏れ
米側に反省なし
「空母安全」説明とも矛盾
 日本への寄港を繰り返してきた米原潜ヒューストンの放射能漏れが二年以上続いていたことで、関係自治体や住民の不安がいっそう高まるのは必至です。

 米側は今回の放射能漏れについて、「日本へのすべての寄港の間に漏れた放射能の量をすべてあわせたとしても、一般家庭用煙検知器に含まれる放射性物質の量よりも少ない」などと正当化しています。反省の弁や管理体制の見直しについての言及はありません。

 つまり、この程度の放射能漏れは許容範囲であり、今後も原子力艦船を運用する限り不可避だと宣言しているようなものです。

 米側の通報によると、ヒューストンの乗組員がバルブから漏れた冷却水を浴びたことがきっかけで、放射能漏れが明らかにされました。逆に言えば、そのような事故がなければ放射能漏れはやみに隠れたままでした。

 日本には毎年、二十隻前後の米原子力艦船が数十回にわたって寄港しています。ヒューストンに限らず、放射能漏れが常態化している可能性もあります。

 今後、日本政府は少なくとも、日本に寄港するすべての原子力艦船に関して、冷却水漏れや放射性物質の漏えいがなかったかどうか情報提供を要求すべきです。

 米政府は二〇〇六年四月に発表した「合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシート」では、「日本国の港も含め、沖合12海里以内においては、一次冷却水を含む液体放射性物質を排出することを禁じている」などとしています。

 日米両政府は、この「ファクトシート」で、“原子力空母の安全性が証明された”として、九月下旬に原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀への配備を強行しようとしています。

 しかし、実際はヒューストンに限っても、放射能を含んだ冷却水が垂れ流されていたのです。日米両政府はファクトシートとの整合性をどう説明するのでしょうか。(竹下岳)

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放射能漏れ事件の経過
 米政府が日本政府に通知した米原潜ヒューストンの冷却水漏れ事件に関する経過は以下の通りです。

7・17 ハワイ・パールハーバーの乾ドック停泊中に放射能を含んでいる可能性のある約3.8リットルの水が漏れて乗組員の足にかかる。米海軍はハワイ州保健局に通報

  24 船体のバルブ点検を行ったところ、バルブ1カ所から水が漏れ、放射能漏れの可能性が判明。政府機関による検査を開始

  31 バルブから少量の放射能が漏れていたと断定。ヒューストンが最近停泊したパールハーバー、グアム、佐世保で放射能が漏れた可能性があると断定。

 同日、ハワイ州政府および日本政府に通報。(日本時間8月1日午前11時30分)

8・6 放射能漏れが2006年6月から続いていたことが判明。日本政府に通報(日本時間7日午後1時30分)

(出所:日本共産党HP 2008年8月8日(金)「しんぶん赤旗」)
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退学したら学費は戻らない?

2008-08-09 06:01:44 | 民事裁判
 退学したら学費は戻らない?

 Q 今年春、服飾デザインの専門学校に入学しました。入学金と1年分の授業料など初年度納付金を約100万円納めました。ところが、家庭の事情で通えなくなり、7月初めに退学を申し出たら、学校から「納付金はいっさい返せない」と言われました。(20歳、女性)

難しいが可能性も。ぜひ相談を
 A 大学や専門学校で入学を辞退しても、納付金を返還しないとする不返還特約をめぐる裁判で、2年前、最高裁(大学については最判平18・11・27、専門学校については最判平18・12・22)で判決が出されました。

 それによると、(1)入学金は学校に入学できる地位に対する対価であり、学生がその地位を取得した以上、入学を辞退しても、学校は返還義務を負わないとしました。

 一方、(2)授業料は学校で教育を受けたり施設を利用することの対価であり、年度開始の4月1日より前に在学契約を解除した場合には、学生は対価を受けていない以上、原則として授業料は返還すべきだとしています。

 しかし、(3)年度開始日以後に解除した場合は、学校は教育の提供を開始しているので返還する義務はないとしました。

 ですから、中途で退学したあなたの場合、納付金の返還を求めるのは難しいと考えられます。

 ただし、最高裁は不返還特約が有効となる根拠として、年度開始日以後に欠員を生じても学生の補充が難しいこと、学校が1年単位で教育給付を準備していることなど、解除で1年分の授業料相当分の損害が生じることを指摘しています。

 あなたの通っていた学校が年度途中でも随時学生を募集しているとか、授業内容が1年単位ではないなどの事情がある場合は結論が変わる場合もあり得ます。

 ぜひ、弁護士に相談してください。

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弁護士 岸 松江さん
 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。

(出所:日本共産党HP 2008年8月4日(月)「しんぶん赤旗」)
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原水爆禁止世界大会-秋田の高校生と東京の大学生の取り組み-

2008-08-09 05:59:28 | 国内政治
ゆうPress
原水爆禁止世界大会
被爆地へ行く

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 原水爆禁止2008年世界大会が9日まで、広島と長崎で開かれます。「核兵器のない世界をつくろう」という大会には、全国各地でさまざまな取り組みをしてきた青年たちが参加します。そのなかから、秋田の高校生と東京の大学生の取り組みを紹介します。(伊藤悠希、行沢寛史)

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17歳を変えた“折り鶴”
戦争が教科書を飛び出した
秋田

 「こうやって折るんだよ」―。秋田駅の連絡通路に並べた机の上で会話をしながら鶴を折る高校生たち。「21万羽おりづるプロジェクト」の呼びかけに応じ、折り鶴を集めています。

 日本民主青年同盟(民青同盟)秋田県委員会・原水爆禁止世界大会青年ツアー実行委員会は7月13、26、27の3日間、「折り鶴宣伝」をしました。

 これまでに集めた折り鶴は2万羽。1月に決めた5千羽の目標を大きく上回っています。

 「ここまで集まると思ってなかった」と話すのは、秋田で折り鶴を集めるきっかけをつくった高校生の愛さん(17)。昨年の世界大会に兄の和君(17)と参加しました。被爆者の話を聞き、資料館では原爆の熱線で溶けたビンに触れました。「教科書の中だけで知っていた戦争が本当にあったんだって実感できました」

 全国高校生平和集会にも参加し、「秋田からも何かやりたい」と思った愛さん。爆心地や資料館に置いてあった折り鶴を思い出し、帰りの飛行機の中で和君に折り鶴を集めようと提案しました。

 和君も同じ気持ちでした。帰ってきた二人は平和のことを学び、行動したいと民青同盟に入りました。民青同盟県委員会は二人の思いを受け止め、折り鶴宣伝に協力するとともに、さまざまな団体に折り鶴集めを要請。各団体からも続々と集まりはじめました。

 部活の友達の智子さん(17)も折り鶴宣伝を手伝いました。

 「なぜ21万羽なの?」との疑問に答える学習会も開催。参加した智子さんは「原爆で21万人も亡くなったと知って衝撃だった。世界中どこにも落とされない世界になってほしいな」と参加を決めました。

 広島へは18時間かけて車で向かいます。

 愛さんは「世界青年のつどい」で発言します。和君も参加します。

 「去年は何も知らずに参加したけど、今回は学習し、折り鶴を集めての参加です。ドキドキしてます」と愛さん。

 和君は言います。

 「折り鶴をきっかけに友達の輪が広がった。折り鶴はおれを変えてくれました。おれたちのやってきたことを聞いて、何かやり始めてくれたらちょっとうれしい」(名前は仮名です)

平和が学問の自由守る
世界の流れの一翼 私の誇り
東京

 東京では、東京都学生自治会連合がよびかけて東京学生ツアー実行委員会が結成され、事前に合宿を開いて学ぶなどして参加します。

 合宿は、東京学生九条の会「Peace Night 9」実行委員会との共催。東京原水協の石村和弘事務局長を講師に学習し、広島で被爆した方の話を聞きました。

 ツアー実行委員会の男性は「参加者が成長して各大学での平和の取り組み、核兵器廃絶の運動を広げたい」と意気込みます。

 事前に学習会を開くなどしてきた早稲田大学学生九条の会「article 9」代表で広島県出身の男子学生(2年生)は、初めて世界大会に参加します。小中学生の頃から被爆者の話を聞いてきた男子学生は「広島の地から核兵器をなくす声をあげたい」といいます。

 東京大学では、教養学部自治会にある平和擁護委員会がクラス入りし、署名を集めてきました。取り組みの中心となったメンバーが「被爆者の思いを学んでこよう」と、世界大会に参加します。

 平和擁護委員長の男子学生(1年生)は「平和が学問の自由を守ると聞きました。唯一の被爆国の国民として、広島であったようなことが絶対に起こらないよう、みんなの力で運動を広げたい」と語ります。

 「自分たちの運動が核兵器をなくそうという世界の流れの一翼を担っていることが誇らしい」と話すのは、中央大学2年生の高山亜美さん(仮名)。昨年に続き2回目の参加です。中央大学では、映画「夕凪の街 桜の国」の鑑賞会などを開いてきました。

 高山さんは「世界大会で多くの人たちと交流して、大学で仲間と運動を広げたい」と意欲的です。

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 21万羽おりづるプロジェクト 広島、長崎で原爆投下の年の1945年末までに亡くなった原爆死没者21万人分の折り鶴を街頭や学校などで集めて、被害の大きさを実感しようという高校生や青年たちの取り組みです。

(出所:日本共産党HP )
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労働者派遣法は違法労働行為の温床ー日弁連が抜本的見直しを要求ー

2008-08-09 05:56:47 | 国内労働
派遣法
日弁連「抜本改正を」
違法労働行為の温床

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 日本弁護士連合会(日弁連)は一日、派遣業界大手グッドウィルの廃業を受け、労働者派遣法の抜本的見直しを求める宮崎誠会長の声明を発表しました。

 国に対し、グッドウィルの派遣労働者の雇用と生活の安定のため措置をとるとともに、「日雇い派遣の禁止や均等処遇にとどまらない派遣法の抜本改正を早急に行うことを求める」としています。

 声明では、禁止された港湾業務に二重派遣した違法性は極めて大きく、厚労省が許可取り消しに踏み切る方針を固め、廃業の道筋をつけたことは当然だと指摘。そのうえで、職業安定法では、労働者供給を禁止して直接雇用を原則とし、職業紹介は営利を前提としない公共的な制度にゆだねていると指摘。現行の派遣労働はこの例外として許容されたものの、雇用責任があいまい・不明確になりやすい構造的な問題があり、グッドウィルが違法行為を行う温床となったと強調し、抜本改正を求めています。

 日弁連は、二〇〇三年に製造業への派遣が解禁されたときにも反対の意見書を出しています。

(出所:日本共産党HP 2008年8月2日(土)「しんぶん赤旗」)

 労働者派遣法の抜本的見直し等を求める会長声明

昨日、派遣業界最大手である株式会社グッドウィル(以下「グッドウィル」という。)は有料職業紹介事業及び一般労働者派遣事業を廃止した。

グッドウィルは、本年6月24日に職業安定法違反幇助により略式起訴され、すでに有罪判決が確定している。昨日のグッドウィルの廃業表明は、有罪が確定した場合には会社が廃業しない限り労働者派遣事業許可を取り消すとの方針を厚生労働省が固めていたことを受けてのものである。

報道によると、グッドウィルは、労働者派遣が許されていない港湾作業に従事させる目的で港湾関連会社を通じて別の港湾荷役会社に二重派遣するという職業安定法違反の労働者供給事業を行った行為に対し有罪判決を受けたものである。派遣業の業界最大手であるグッドウィルが、労働者派遣を明確に禁じている港湾荷役業務に労働者を派遣し、そればかりか雇用責任が一層曖昧となることから厳しく禁じられている労働者供給(二重派遣)形態で、港湾荷役という危険作業に従事させたことの違法性はきわめて大きく、厚生労働省が、グッドウィルの許可取消しという厳しい処分に踏み切る方針を固め、昨日のグッドウィル廃業への道筋を付けたことは当然である。

そもそも、職業安定法は、事業主が雇用する労働者を他人の指揮命令下で就労させる労働者供給形態を禁止して直接雇用形態こそが原則であることを示し、あわせて、職業紹介は営利を前提としない公共職業安定所による公共的な制度の下に委ねたものである。

現行の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)は、このような直接雇用原則に対する例外として派遣労働を許容したものであるが、雇用責任が曖昧・不明確になりやすいという構造的な問題があり、業界最大手のグッドウィルが危険度の高い港湾作業に労働者供給を行うといった違法行為を組織的に行う温床となった。 

当連合会は、国に対し、一日平均7000人にも及んでいたグッドウィルの派遣労働者の雇用と生活の安定のため必要な措置をとるとともに、日雇い派遣の禁止や均衡処遇にとどまらない労働者派遣法の抜本的な改正を早急に行うことを求める。

2008年(平成20年)8月1日

日本弁護士連合会
会長 宮 誠

(出所:日本弁護士連合会HP)

「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案」に対する意見書

2003年3月14日
日本弁護士連合会

本意見書について厚生労働省労働政策審議会建議(2002年12月26日)及び同審議会答申(2003年2月21日)に基づき策定され、3月7日の閣議を経て、今通常国会に上程された標記法律案(以下「法案」という。)に対し、当連合会は、以下のとおり意見を述べる。

意見

現行の原則1年の派遣期間制限を見直すべきではない。
派遣先に対して、継続して1年以上同一業務に従事させた場合、派遣労働者が希望すれば直接雇用することを義務付けるべきである。
「物の製造」業務を派遣対象業務にすべきではない。
紹介予定派遣における派遣就業開始前の事前面接、履歴書の送付は認めるべきではない。

理由

1 派遣労働の実態
厚生労働省が発表した「労働者派遣事業の平成12年度事業報告の集計結果について」によれば、2000年度の派遣労働者数は約139万人であり、対前年度比29.8%増となっている。1996年度の集計結果によれば、派遣労働者数は約72万人であったので、4年でほぼ倍増している。

この集計結果を派遣事業所数で見てみると、主として登録型の労働者を派遣する事業である一般労働者派遣事業の場合、1996年度に2354事業所であったのが、2000年度には4023事業所に増加しており、派遣労働者が常用雇用労働者のみである特定労働者派遣事業の場合、1996年度に7165事業所であったのが、2000年度には6307事業所に逆に減少している。

さらに派遣先の件数で見てみると、特定労働者派遣事業は4年間で2万3688件から2万3896件へと横ばいであるのに、一般労働者派遣事業は19万8197件から26万9321件と約36%の増加になっている。派遣労働者のなかでも、常用でない雇用の不安定な登録型の派遣労働者が増加しているのである。登録型派遣労働者の女性の割合は1997年の労働省調査で88.6%、1998年の東京都調査で85.9%と圧倒的多数は女性で占められている。

2 派遣による常用雇用代替と女性差別の拡大
建議は、このような派遣労働の増加につき、「派遣労働は、労働者自身のライフスタイルに合わせた働き方を可能にするものとして一定の評価も定着しつつある」、「仕事と生活のバランスのとれたライフスタイルを選択する傾向が若年層を中心に見られ、このような働き方に対応していく必要性が高まっている」と述べ、派遣労働に関する規制をさらに緩和する方向を打ち出し、法案もこれを踏襲している。 

しかし、現在の派遣労働者の急増は労働者側の希望ではなく、高い失業率の下、正社員になれず、やむなく派遣労働やパートタイム、契約社員などいわゆる非正規雇用に流れているといわざるを得ない。

そもそも、パート労働者の増加の根本的な理由は、建議のいうような労働者の意識によるものよりも、常用労働者を削減し、パート・派遣等の非正規・不安定雇用労働者に置き換えていくという経済界の労働政策に基づくものである。実際に、企業再編やリストラの名の下に正規労働者を減らす一方で、他方で特に不安定な登録型派遣に切り替える常用雇用の代替が行われてきた結果というべきである。

しかもこの動きは、女性労働者に顕著であり、特に上記のとおり登録型派遣労働者の圧倒的多数は女性である。例えば、従来女性中心に配置してきた事務職部門を閉鎖して派遣労働に切り替え、一気に常用代替を促進した企業も少なくない。旧均等法が制定され、約10年を経てようやく募集・採用、配置・昇進を含めて差別禁止が規定され、法制上は男女平等に向けて前進したが、派遣労働者は、雇用形態が異なることを理由に格差は容認されてきた。パート・派遣等の女性労働者の不安定労働の増大は、男女の賃金格差をますます拡大させるものである。

一般労働者派遣事業の急増の下で、違法派遣も後を絶たず、突然の雇い止めによる雇用不安などの派遣労働者の権利侵害も増えている。また、事業所間の競争が激しくなり、派遣元が派遣先の要求を飲まざるを得ず、派遣労働者の賃金が下落し続け、正規労働者との賃金をはじめとする労働条件の格差は拡大している。派遣労働者の労働条件の向上と正規雇用の代替を許さないための法的規制の強化こそ必要といわなければならない。このような状況下で、労働者派遣の規制をさらに緩和することは、労働者保護を犠牲にして、企業の安くて使い勝手のよい派遣に切り替えるというニーズに応えるものといわざるを得ない。

ILO181号条約(民間職業仲介事業所条約)においても、後述するように派遣事業の運営については、労働者の権利を保護するために国家の適正な規制におかれることを前提としている。不況下でますます急増する派遣労働者に対して、低賃金や雇用不安を解消し、正規労働者との均等待遇確保のための規制など、差別是正のための法整備こそ必要であるのに、逆に緩和しようとする法案の内容は、大きな問題を含むものである。

3 派遣期間制限の変更
建議は、派遣期間を原則1年とする限定を見直し、3年までの期間で臨時的・一時的と判断できる期間については、派遣を受け入れることができることとするのが適当とし、法案もこれを受けて上限を3年としている。ただし、1年を越える期間を定める場合は、労働者の過半数代表の意見を聴くことを条件としている。

しかし、この労働者代表からの意見聴取は、単なる実情把握のための参考意見でしかなく、これでは、何の歯止めにもならず、事実上これまでの派遣期間1年を無条件に3年に延長するにすぎない。

そもそも労働者派遣事業は、臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策として位置付けられており、現行法が期間を1年に限定した理由は、派遣労働による常用雇用の代替を防止することにあった。従って、期間の限定は厳格にすべきであり、安易に1年を3年に延ばすのは本来の趣旨に反する。

建議においては、「原則1年に制限されていることにより、結果的に派遣労働者の雇用が不安定となる面がある」としていた。しかし、現実には雇用期間はますます短期化しており、3カ月未満が71.8%、6カ月未満が90.5%(厚労省「労働者派遣事業報告」)に達している。にもかかわらず、期間を延長するということは、派遣先は都合がよければ臨時的・一時的でなく長く働いてもらい、不要な派遣はいつでも打ち切ることができるようにするということである。つまり派遣期間延長は、派遣労働者の雇用安定に結びつくものではなく、逆に派遣先にとって派遣労働者がますます使い勝手のよい労働力ということになり、常用雇用の代替を促進することにつながるものである。

1年では短いという派遣先の事情があれば、それはすでに臨時的・一時的ではないのであるから、派遣労働者が希望すれば派遣先が常用労働者として雇用すればよいはずである。

以上により、当連合会が従来から述べているように、期間は厳格に1年とし、派遣先に対して、継続して1年以上同一業務に従事させた場合、派遣労働者が希望すれば直接雇用することを義務付けるべきである。

また、1年の派遣期間制限の対象外になっているいわゆる26業務のうち、専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務については、継続して3年を超えて行うことのないよう取り扱われているが、建議は、この取扱いを廃止すべきとしている。しかし、従来から当連合会が意見を述べてきたとおり、これらも臨時的・一時的需給調整という位置付けは同様なのであるから、規制を緩める方向の改正はすべきではない。

4  「物の製造」業務への拡大
これまで派遣対象から除かれていた「物の製造」につき、製造業における臨時的・一時的な労働力需給を迅速に調整し、円滑な事業運営が可能になるよう、適用対象業務とすることが適当であるとする建議を受け、法案は、物の製造業務について派遣事業を行うことができるとしている。但し、施行後3年を経過するまでは派遣期間を1年としている。

当連合会は、派遣事業が原則自由化になって以降、派遣労働者は急増したもののその保護は十分ではなく、劣悪な労働条件や身分の不安にさらされており、さらに常用雇用の代替の問題からも派遣事業の原則自由化に反対してきた。今後、派遣労働の飛躍的な増加につながる製造業務への派遣労働を解禁するというのであれば、例えば労働監督の強化や労働安全衛生法規の適用の見直し等、その弊害を除去するための施策が十分になされることが不可欠である。現に製造業においては、生産ライン全体の下請けの形を取った違法派遣が横行していることを見れば、派遣労働者の劣悪な労働条件の解消なしに解禁することは、違法状態を合法化するものである。建議・法案は、こうした労働者保護の視点が欠けており、企業の競争力強調ばかりが目につくといわざるを得ない。現状のままでの「物の製造」業務への拡大は反対である。

5  紹介予定派遣における派遣労働者の事前面接等
建議が、「紹介予定派遣については、派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等」を可能にするとし、法案は、紹介予定派遣については、「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」とする規定を適用しないものとしている。

しかし、就業開始前の派遣先における面接や派遣先への履歴書送付は、そもそも労働者派遣が、派遣先が労働者を選定するものではないという大前提を崩すものである。現行法は、派遣先が事前面接や履歴書の送付によって、派遣労働者を選別・特定し、年齢や容姿などを理由とする受け入れ拒否を許さないため、それらを禁止したものである。

実際には、派遣事業所の増加にともない、各社の競争も激しい中で、派遣先が事前面接を実施する例は後を絶たず、派遣元に対して「容姿優先」、「若い人優先」などの違法な発注が行われている。従って、法案のような緩和をすればますます、派遣先の差別的派遣決定を助長するおそれがある。このことは、将来、正規雇用者として雇用される可能性があるとされる紹介予定派遣においても、何ら変わりがないといわざるを得ない。

以上により、紹介予定派遣においても事前面接等、派遣労働者を特定することを目的とする行為を制限するべきである。

6  派遣労働者の保護のための措置の必要性
当連合会は、労働者派遣法が制定される過程から今日まで、一貫して、派遣労働者の人権保護の見地から法規制に関する数々の具体的な提言を行ってきたが、前述のとおり、派遣労働者がおかれている不安定な地位や差別的で劣悪な労働条件の実態を改善するには至っていない。さらに、本意見書においても、今回の法案に対する上記意見に加えて、下記のとおり1998年11月20日付同法改正に対する当連合会意見書と同趣旨の提言をする。

ILO181号条約は、主に(1)結社の自由・団体交渉権の確保(4条)、(2)労働者からの手数料・経費徴収の禁止(7条)、(3)苦情処理体制の確保(10条)、(4)派遣労働者について、最低賃金、労働時間などの労働条件、社会保障給付、訓練の機会、職業上の安全衛生、職業上の災害、疾病の補償などの保護に関する保護措置(11条)などのきめ細かい手厚い保護を要求している。

前述のような実態を改善し、派遣労働者が労働条件や待遇において、不合理な差別を受けないためには、ILO181号条約の基準を踏まえ、次のような法的措置を定めることが検討されるべきである。

派遣労働者と正規労働者との均等待遇を確立すること。
派遣先は、正当な事由がなければ派遣契約を解除できないものとし、正当な事由がある場合でも、労働者の責に帰すべき事由がなければ、派遣契約期間の賃金補償について、派遣元に義務付けること。
派遣労働者の福祉増進のため、派遣元に各種社会保険の適用を促進する努力義務を課すとともに、各種社会保険法等関連法規の整備・拡充を図ること。
派遣労働者の福祉増進のため、派遣元に各種社会保険の適用を促進する努力義務を課すとともに、各種社会保険法等関連法規の整備・拡充を図ること。

(出所:日本弁護士連合会HP)
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裁判員制度は実施延期をー日本共産党の見解/市田書記局長が記者会見(要旨)ー

2008-08-09 05:45:10 | 憲法裁判
裁判員制度 実施延期を
国民の合意、条件整備不十分
市田氏が会見

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 来年五月に実施予定の裁判員制度について、日本共産党の市田忠義書記局長は七日、国会内で記者会見し、「制度への国民の合意がなく、冤罪(えんざい)を生まないための制度保障も進んでいない」として、実施を延期することを強く求めました。今後、政府への申し入れやほかの野党への働きかけを検討します。(会見要旨)

 市田氏は裁判員法の成立(二〇〇四年)について「民主的な司法を実現する第一歩としてわが党も賛成した。ただし無条件の支持ではなく、実現のためにはさまざまな環境整備が必要だと主張してきた」と説明しました。

 その上で、同制度をめぐる現状について▽日本世論調査会の調査(三月)で、裁判員を「務めたくない」と答えた人が72%で、「務めてもよい」(26%)の三倍に達するなど、国民多数の合意が得られていない▽国民が安心して参加できる条件が整備されていない。例えば選ばれれば「原則として拒否できない」とされながら、職場で公休扱いされる保障がない。また、守秘義務違反などに罰則が設けられている▽殺人や放火などの重大事件が対象になるのに、短期間で結審することを見込んでいる。検察側証拠の全面開示や取り調べ過程の全面可視化が実現しないままでは「冤罪(えんざい)を生む新たな舞台」になりかねない―などの問題点を列挙しました。

 法曹関係者からも延期を求める声があがっていることも指摘。「こうした主張を無視し、国民的合意のないまま実施すれば、重大な禍根を残す」と強調しました。

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 裁判員制度 国民から無作為に選ばれた裁判員が裁判官と同じ権限で刑事裁判に関与する制度。司法にたいする国民の理解をすすめ、その信頼の向上を図ることを目的に、二〇〇四年五月の国会で、裁判員法が成立しました。対象となる事件は殺人、強盗致死など死刑または無期懲役・禁固にあたる重要事件で、〇七年の場合二千六百四十三件(全事件の2・7%)。裁判では原則として裁判官三人、裁判員六人の合議で、有罪か無罪か、有罪の場合の量刑をどうするかを決めます。

裁判員制度の延期求める
市田書記局長の記者会見(要旨)

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 日本共産党の市田忠義書記局長が七日、裁判員制度の延期を求めて国会内でおこなった記者会見の要旨を紹介します。

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 一、今日会見を開いたのは、裁判員制度についての日本共産党の態度について明らかにするためです。裁判員制度が、来年五月から実施されます。年内にも裁判員候補が決定され、約三十万人にその通知がなされる予定になっています。

 一、日本共産党は以前から司法制度の民主的改革を主張し、民主的で公正な司法を実現する第一歩であり、国民への司法参加の出発点になるものとして、裁判員法に賛成しました。この法律は、二〇〇四年に成立したものです。

 一、同時に、わが党は、裁判員制度の実施と導入にあたっては、「さまざまな環境整備」が必要であることを賛成したおりにも強調し、実施までの間に、政府や裁判所が必要な環境整備をおこなう必要があることを一貫して主張し、関係する委員会の場でもさまざまな問題点を指摘し、改善を求めてきました。

 一、制度の実施まで一年を切ったにもかかわらず、この制度にたいする国民の合意がなく、このまま実施することには国民の納得をえられないこと、また国民が参加しやすい制度という点でも、この間の条件整備はけっして十分ではなかったこと、さらに、冤罪(えんざい)を生まない司法を実現するという点でも、現状のままでは重大な問題点をはらんでいるといわなければなりません。また、この問題を直接担当する法曹関係者からも、深刻な懸念が表明されています。したがって、来年からの制度の実施については再検討し、実施を延期することを強く求めます。

国民の合意・理解が得られていない
 一、制度実施の延期を求める第一の理由は、裁判員になることにたいして、国民の多数が消極的、否定的な意見をもっていることです。日本世論調査会による調査(三月)によれば、裁判員を務めたくないという立場を表明した人は72%、務めてもよいと表明した人は26%で三倍に達しています。この制度を管轄する最高裁の調査でも、「参加したくない」とする意見(38%)は、「参加してもよい」(11%)の三倍以上となっています。

 裁判員制度に対する国民の合意がないまま制度を実施するなら、司法制度の民主化と国民の裁判参加という制度の前向きの方向に逆行する重大な矛盾に直面することは明白です。

 国民からの理解を得られていないということです。制度に賛成の人も反対の人も、世論の状況を見ると、圧倒的な国民が裁判員にはなりたくないと考えている。国民的合意が得られていないもとで、すでに決まっているからといって来年五月から実施するというのはよくない、というのが、第一の理由です。

安心して裁判員になる条件が整っていない
 一、第二の理由は、国民が安心して裁判員になるための条件整備が、依然として整っていないことです。

 その一つは、仕事や日常生活との関係で、裁判員になることが過大な負担となりかねないことです。裁判員になれば、最低でも三日間から五日間、場合によっては一週間や十日以上にもわたって、連続的に裁判員として裁判に参加しなければなりません。この間、どのような地域に住もうと、どんな職種であろうと「原則として裁判員を辞退できない」とされています。しかも、会社員の場合、それが「公休」扱いされるかどうかは、個々の企業の判断に委ねられることになっています。中小零細企業や自営業者の場合も、辞退できるかどうかの明確な基準はなく、それぞれの裁判所の判断に任せられています。

 二つ目は、裁判員になることにともなうさまざまな罰則が設けられている問題です。その代表的な例が、裁判員の「守秘義務」です。これは、判決にいたる評議などについて、家族であれ友人であれ、その内容を明らかにすることを禁じたものですが、それに違反した場合、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が科せられることになっています。わが党は、裁判員法の採決にあたって、こうした罰則を取り除く修正案を提起しましたが、改めてこうした罰則のあり方を検討することが求められています。

 三つ目は、裁判員になることの心理的な負担・重圧や、思想・信条にかかわる問題です。裁判員制度の対象となる裁判は、死刑や無期懲役・禁固刑につながる「殺人」や「強盗致死傷」、「放火」などのいわゆる「重大犯罪」です。こうした裁判では、ふだん接することのない犯罪被害者や現場の写真、証拠などに直接触れることになります。

 これが心理的負担になることは、当の裁判所自身が「裁判員の心のケアが必要」というほどのものです。一方、国民の間には、死刑制度をはじめとして「人を裁くこと」にたいして、否定的な見方も含めさまざまな考え方があります。各種の世論調査でも、裁判員になりたくないとする最大の理由は、「有罪、無罪の判断が難しい」「人を裁くことをしたくない」などが挙げられます。

「冤罪」を生まない制度的保障がない
 一、第三の理由は、「冤罪」を生まないための制度的な保障がないことです。この点で、最も懸念されることは、裁判の対象が重大犯罪であるにもかかわらず、最初から三日ないし五日間程度で結審すると見込んでいることです。裁判を短期間で終わらせるために、裁判員制度の導入の際に「公判前整理手続」を行うことになっていますが、これは、裁判員を除く職業裁判官と検察、弁護士の三者が、非公開で裁判の進め方と証拠、論点を事前に話し合うというものです。しかし、証拠の開示が捜査当局の一方的な意思の下に置かれ、警察や検察による被疑者の取り調べが密室で行われている現状で、こうした制度が導入されれば、裁判員裁判が「冤罪を生む新たな舞台」にさえなりかねないということです。

 一、裁判員制度については、それを直接担うことになる法曹関係者からも延期を求める声があがっていることは、真摯(しんし)に受け止めなければなりません。いくつかの弁護士会もそういう意見表明をしています。

 国民の間に合意がなく、法曹関係者の中にもさまざまな意見があります。

 こういう主張や現状を無視したまま制度を実施するなら、重大な禍根を残す結果にならざるを得ません。したがって、再検討をして実施の延期を求めるというのが、わが党の立場です。

(出所:日本共産党HP  2008年8月8日(金)「しんぶん赤旗」)
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