未来を信じ、未来に生きる。

今に流されず、正論を認識し、社会貢献していく人生を切り拓くブログ道。

在日米軍再編 「最終報告」1年ー進む基地強化 広がる矛盾ー

2007-05-06 07:52:04 | 国内政治
在日米軍再編 「最終報告」1年
進む基地強化 広がる矛盾
選挙に反映 住民の怒り

--------------------------------------------------------------------------------

 「再編を着実に進めていく」―。昨年五月一日の在日米軍再編「最終報告」から一年を経て、日米両政府は四月二十七日の首脳会談や一日の日米安保協議委員会(2プラス2)で再編の推進を再確認しました。一方、基地強化を強いられる自治体・住民との矛盾も強まっています。(竹下 岳)

--------------------------------------------------------------------------------

 米軍再編「最終報告」は、人口密集地の米軍基地を別の地域に移すことで、「地元による負担を軽減しつつ(米軍の)抑止力を維持する」という方針を掲げています。しかし、この一年で“軽減”どころか、基地強化先にありきの実態が鮮明になってきました。

名護新基地
「環境アセス」今月にも狙う
 
 「最終報告」は、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)に代わる、V字形滑走路の新基地を米海兵隊キャンプ・シュワブ(同県名護市)沿岸部に建設する計画を明記。2プラス2の共同文書では、新基地建設が沖縄における再編の「鍵」だと位置づけました。

 日本政府は二〇一四年の完成を前提に、五月中にも建設予定区域の環境アセスメントを計画。すでに、事実上の事前調査といえる「シュワブ水域環境現況調査」を四月下旬に実施し、県民の抗議を呼びました。

 沖縄県には在日米軍基地の75%が集中していますが、いずれも米軍や旧日本軍が建設したもの。前例のない、日本政府による新基地建設に県民の大多数が反対しています。

 新基地計画を押しつけたい久間章生防衛相や沖縄県の仲井真弘多知事は、わずかな「修正」を画策してきました。しかし、ゲーツ米国防長官は四月三十日の日米防衛首脳会談で、「昨年五月の合意通り実現することが重要だ」と拒否し、計画通りの建設を迫る強硬姿勢を示しました。

嘉手納基地

F22猛訓練で爆音は減らず
 年間七万回の飛行回数で、国内最悪の爆音被害をもたらしている沖縄県の米空軍嘉手納基地。「最終報告」では、同基地に常駐するF15戦闘機の訓練の本土移転が盛り込まれ、三月に航空自衛隊築城基地(福岡県)で訓練が強行されました。

 しかし、爆音被害はまったく減らないばかりか、二月に配備された米空軍の最新鋭機・F22ステルス戦闘機十二機が、猛訓練で爆音をまき散らしています。同機を運用する米空軍第二七遠征戦闘中隊のトリバー中佐は四月二十七日の記者会見で、「五百八十回の飛行回数を達成した。短期間では特筆すべき飛行回数だ」と誇り、県民の強い反発をかっています。

グアム「移転」

「返還」計画も大幅に遅れ
 「最終報告」では、沖縄の米海兵隊八千人を米領グアムに「移転」し、「移転」費用のうち約六十一億ドル(約七千三百二十億円)を日本側が負担することで合意しました。歴史的にも国際的にも前例のない、米領土への基地建設費用の負担を可能にするための「米軍再編促進法案」が現在、参院で審議中です。

 四月二十四日の米上院軍事委員会で米太平洋軍のキーティング司令官は日米同盟の最重要課題の一つとして、「沖縄の米海兵隊八千人のグアム移転」を挙げました。すでに米政府は四月、グアム住民に、海兵隊「移転」に伴う環境アセスメントの第一段階となる「計画通知」を行っています。

 「最終報告」は、グアムや名護への海兵隊「移転」に伴い、嘉手納基地以南の六つの基地を、沖縄県内への移設条件付きで返還することを明記。今年三月までに、「詳細な(返還)計画を作成する」予定でした。

 しかし、米軍は内部の調整が遅れているとして、グアム増強計画をいまだに提示せず、「返還」計画の公表も大幅に遅れることになっています。

 そもそも、「八千人移転」とはいうものの、実際には二千―三千人しか移転しない見通しで、仮に計画通りに進んでも、実戦部隊は残り、「負担軽減」にはなりません。

日本政府
補助金エサに自治体に圧力
 
 政府は補助金などをちらつかせ、再編計画に反対する自治体に圧力をかけてきました。米原子力空母配備を容認した神奈川県横須賀市など、住民の声を裏切って屈服した自治体もありますが、政府の手法への批判も強まっています。

 普天間基地を抱える宜野湾市の市長選(四月二十二日)では、同基地の即時閉鎖・撤去、県内移設反対を訴えた伊波洋一市長が、大差で再選を果たしました。

 また、同八日には、米海兵隊岩国基地を抱える山口県岩国市で、「米空母艦載機移転ノー」を掲げた日本共産党の久米慶典氏が県議選で返り咲く一方、移転推進派の二人の自民党候補が落選しました。

 「最終報告」では、米海軍厚木基地(神奈川県)に常駐する米空母艦載機部隊を岩国に移転すると明記。岩国は百三十機以上が常駐することになります。

 「移転反対」を掲げる岩国市に対して、政府は市庁舎建設の補助金をカットするなど、露骨な圧力を加えてきました。これらに対する住民の怒りが選挙結果にもつながりました。

 〇八年に米陸軍戦闘司令部の創設が計画されている米陸軍キャンプ座間。同基地を抱える神奈川県座間市議会で二月二十三日、「米軍再編促進法案」への意見書が可決されました。

 意見書は、同法案のうち、各自治体の米軍再編への協力度に応じて交付する「再編交付金」について、「米軍再編の影響を受ける地方自治体を『交付金』によって賛成へと誘導させようとするもの。こうした手法に大きな怒りと疑義を禁じ得ない」と批判しています。

 米軍再編計画の「個別の再編案は統一的なパッケージとなっている」(最終報告)ことから、政府内には、「一つが崩れれば全体が崩れる」との危機感があります。

 米軍再編の大本にあるブッシュ米政権の「対テロ」先制攻撃戦略もイラクに象徴されるように完全に破たんしました。

 「米軍再編へのモチベーションが政府内で低下している。このままでは何年たってもこう着状態が続く」(外務省筋)との“懸念”があります。2プラス2で米軍再編合意を全面的に検証し、「再編案を着実に実施する決意を再確認」したのもこのためです。しかし、自治体・住民との矛盾は深まらざるをえません。

--------------------------------------------------------------------------------

「在日米軍再編」とは
 
 ブッシュ米政権は地球規模での軍事行動を効率的に行うため、「米軍の機動性」「同盟国との軍事一体化」を二本柱とする米軍の変革・再編を進めています。在日米軍再編もその一つで、米軍の世界戦略に自衛隊を深く組み込むものです。

 日米両政府は昨年五月までに、(1)共通の戦略目標(2)役割・任務・能力(3)再編実施のためのロードマップ(工程表)―の三段階で合意。二〇一四年の完了を目指しています。また、再編実施での日本側負担は約三兆円とされています。

 具体的には、(1)沖縄・名護の新基地建設(2)グアムへの米海兵隊八千人「移転」(3)米空母艦載機部隊の岩国基地移転(4)キャンプ座間への陸軍戦闘司令部創設(5)「ミサイル防衛」部隊の配備―といった米軍基地・部隊再編があります。

 さらに、日米軍事一体化を強めるため、(1)陸自中央即応集団司令部のキャンプ座間移転、空自航空総隊司令部の横田基地移転など米軍・自衛隊の司令部レベルでの融合・一体化(2)軍事情報の共有(3)共同演習の拡大(4)民間空港・港湾の軍事利用の拡大―などの項目があります。

(出所:日本共産党HP 2007年5月5日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マスメディア時評-朝日新聞社は憲法9条は変えないと結論ー

2007-05-06 07:46:11 | 国内政治
マスメディア時評
安倍改憲の暴走に立ち向かう時

--------------------------------------------------------------------------------

 施行から六十年の節目を迎えた憲法記念日にあたって安倍首相は、「戦後レジーム(体制)」を見直し、改憲に取り組むことを強調した談話を発表しました。憲法擁護義務を負う首相としてはまったく異例な、文字通り安倍改憲政治の暴走です。

戦後体制の見直し批判
 
 憲法記念日を中心にした新聞などマスメディアの論調も、ことしは国会での改憲手続き法の審議が重大段階を迎えていることとあわせ、こうした安倍改憲政治の危険に警鐘を鳴らすものが目立ちました。

 全国紙の社説で見れば、「朝日」二日付の「戦後からの脱却より発展を」や、「毎日」三日付の「平和主義を進化させよう」などが目につきます。ブロック紙など地方紙には憲法六十年をテーマに社説を連打する新聞も少なくありませんが、そうしたなかでも北海道新聞一日付の「(上)国家主義への回帰危ぶむ」や東京新聞二日付の「(中)統治の道具ではなく」、信濃毎日新聞三日付の「(上)論議を国民の手に戻せ」、中国新聞三日付の「(上)価値高める道筋探ろう」などがそうです。

 自民党内きっての「靖国」派である安倍首相の改憲論は、「戦後レジームからの脱却」ということばが示すように、侵略戦争を肯定し戦後政治の枠組みを全面的に否定するところから出発しているのが特徴です。「改憲を言うなら、まず『戦後』をきちんと語るのが先だろう」(「朝日」)、「(『戦後レジームの脱却』とは)危なっかしい言葉だ」「あまりに観念過剰」(「毎日」)という各新聞社説の懸念は当然でしょう。

 北海道新聞は前出の社説で、「首相の物言いは、民主主義国家として再出発した戦後日本の否定でもある」と批判します。東京新聞社説は、「安倍晋三首相らの改憲論には、憲法を統治の道具に変える発想があります」と警鐘を鳴らします。信濃毎日新聞は「今の政治は憲法の問題を任せるには危なっかし過ぎる」と書きます。「靖国」派が進める改憲の危険を指摘するこうした論調は、安倍改憲政治と立ち向かうことの重要性をいよいよ痛感させるものです。

改憲反対の世論を反映

 ことしの論調には、こうした安倍改憲政治への批判とともに、改憲そのものに批判的なものが目立ちます。

 なかでも、近年、憲法問題で揺らぎを見せていた「朝日」は三日付に「提言・日本の新戦略」と題して異例の二十一本の社説を載せ、そのなかで一年余の議論の結果として、「戦争放棄」の九条を持つ憲法は「変えない」という結論に達したことを明らかにしました。日米同盟を前提にし、準憲法的な「平和安全保障基本法」を設けて自衛隊を位置づけるという「朝日」の主張は解釈改憲とのかかわりで議論の余地がありますが、いずれにせよ九条を焦点にした改憲の策動が強まる中で、「朝日」がこの時期、こうした態度を打ち出したことの意味は決して小さくありません。

 地方紙では以前から改憲に批判的な論調がほとんどでしたが、ことしも前出の各紙や河北新報、徳島新聞、西日本新聞などの連続社説、沖縄の地方紙・沖縄タイムスの「平和の理念揺るがすな」(三日付)や琉球新報の「九条を手放していいのか」(同)といったように、憲法の意義を浮き彫りにし、改憲に反対する骨太の議論が健在です。数少ない改憲支持の地方紙でも、「あまり前のめりにならずに、冷静で現実的な協議を」(北国新聞)などと、慎重さを求めているのが特徴です。

 こうした背景には、「九条の会」が全国で六千を超えて広がるなど、改憲に反対する国民の世論と運動の広がりがあります。各メディアの世論調査でも、「読売」、共同通信、「日経」などの調査で、相次いで改憲支持が減り、九条を中心に憲法を守るという傾向が顕著に現れています。改憲支持の「日経」社説(三日付)も「憲法改正が具体的な政治日程に乗り始めたことの影響だろうか、慎重な意見がやや増えた」と書かざるを得ません。改憲反対の世論をさらに広げていけば、国民世論でもマスメディアの論調でも、改憲反対が多数派になるのは間違いないとの確信を深めさせます。

一部の論調改憲に固執
 
 国民世論の変化の中で、全国紙のなかで、あくまで改憲に固執する「読売」と「産経」の論調は、異常です。「読売」三日付社説は「歴史に刻まれる節目の年だ」と、改憲手続き法の成立を受けて設置される憲法審査会での検討を急げと督促します。「産経」同日付主張は「新しい国造りへ宿題果たせ」と、安倍首相の改憲政治を後押ししています。

 いったいこの二つの全国紙は憲法をどう考えているのか。国の基本法規である憲法を決めるのは主権者である国民です。「読売」は自らのおこなった調査で改憲支持が減り、半数を切ったことが明らかになった際にも社説で「『改正』へ小休止は許されない」(四月六日付)と書きました。主権者である国民が望んでいようがいまいが、改憲を進めるというのは、文字通り国民主権を踏みにじるものでしかありません。 (宮坂一男)

(出所:日本共産党HP 2007年5月5日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自民党と公明党が妨害し、事務所費疑惑 解明進まずー1円から領収書添付して当然。疑惑議員は辞職せよー

2007-05-06 07:39:54 | 国内政治
事務所費疑惑 解明進まず
後半国会の重要課題

--------------------------------------------------------------------------------

 安倍晋三首相は、国会議員の事務所費に領収書添付を義務づける政治資金規正法改正に向け、「必要であれば総裁として判断したい」と述べ、ようやく重い腰をあげようとしています。しかし、肝心の閣僚などの事務所費疑惑の解明は宙に浮いたまま。後半国会の残された課題です。

 与党内で浮上している改正案は、五万円以上の経常経費(人件費を除く)に領収書添付を義務づける内容です。現行法は、政治活動費には、五万円以上の支出に領収書の添付を義務付けていますが、経常経費には添付まで求めていません。

 しかし、この程度の改正案でも、自民党内の抵抗は根強く、同党の党改革実行本部では「政治活動の自由が阻害される」などと的外れな反対論が出て、調整が難航しました。世論の厳しい批判に押される形で、安倍首相も法改正に向けた「意欲」を表明せざるをえなくなったものです。

 しかし、これで一件落着ではありません。

 事の発端は、昨年末の佐田玄一郎・前行革担当相の関連政治団体の事務所費をめぐる不正経理疑惑です。その後、家賃のかからない議員会館を主たる事務所にしながら一千万円以上もの事務所費を計上していたことが、伊吹文明文部科学相、松岡利勝農水相など閣僚や、中川昭一自民党政調会長などの団体で発覚し、大問題となりました。

 さらに、松岡農水相の資金管理団体は、事務所が光熱水費無料の議員会館だけなのに、「光熱水費」に五百万円以上も計上していることが判明。松岡氏は「なんとか還元水」に使ったと述べるだけで、不自然な支出の真相について、国民にも国会にもまったく説明していません。

 政治資金規正法違反である報告書の虚偽記載ではないのかとの疑惑は消えていません。若干の法改正で、真相解明をうやむやにすることは許されません。現行法でも、一件五万円以上の領収書は三年間保管することになっており、疑惑をかけられた伊吹文科相や松岡農水相は、領収書をすすんで公開すべきです。

 安倍首相は「松岡氏は法律の要求にしたがって報告していると答弁している」(三月十三日、参院予算委員会)と閣僚をかばうだけで、真相解明に向けた指導力はなんら発揮していません。

 衆院予算委員会での集中審議などでの真相解明は、後半国会の急務となっています。

 「政治とカネ」をめぐっては、民主党も、多額の寄付を報告書に記載していなかった角田義一前参院副議長の疑惑や、花代やタクシー代を光熱水費に計上していた中井洽元法相の疑惑が未解明のままです。同党の自浄能力も問われています。

(出所:日本共産党HP 2007年5月5日(土)「しんぶん赤旗」)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

9条改正の是非-9条、平和ブランドを 捨て去る理由はない-

2007-05-06 07:31:26 | 国内政治
9条、平和ブランドを 捨て去る理由はない

 18.9条改正の是非
■変えることのマイナスが大き過ぎる・改正すると、戦後日本の基本軸があいまいになる

・米国の単独行動主義への、大きな歯止めを失う

・9条は、「国際公益の世話役」としての日本への信頼の基盤になる

 憲法9条を改正し、集団的自衛権の行使などに制約のない普通の軍隊を持つ。改憲論もさまざまだが、最大のポイントはここにあるだろう。さて、日本の戦略として、この改憲はプラスなのかマイナスなのか。損得を吟味してみたい。

 改憲論者が主張する第一のプラスは、憲法と現実との「ねじれ」の解消である。9条で戦力の不保持をうたっているのに、現実には自衛隊が存在する。憲法の条文のままに現実が読めるようにすれば、自衛隊違憲論争に終止符を打てるし、防衛政策をめぐるさまざまな解釈をすっきりできる、というものだ。

 第二に、集団的自衛権の不行使とか、海外での武力不行使といった、9条から導き出された日本の防衛政策の原則をなくせば、米国との同盟をより確かなものにできる、という主張がある。

 第三に、軍を持つことは主権国家として当然の権利なのに、占領軍から9条を「押しつけられた」のだから、それをただす。そんな意見も聞かれる。

 護憲論からすると、こうしたプラスの多くはそのままマイナスに転じる。社説17であげたように、戦後日本がつくりあげてきた「資産」を失うからだ。

 日本が米国の同盟国として、踏み込んで軍事的な役割を担うようになれば、米国がかかわる戦争に直接、関与せざるを得ない事態がでてこよう。それを受け入れる合意が国民の間にあるとはとても思えない。

 自衛隊が普通の軍隊と違うのは、集団的自衛権を行使せず、海外で武力行使しないといった原則を持つからだ。あの戦争への反省に立って打ち出した「不戦の誓い」を具体的に支えるものなのに、それを撤廃すれば、戦後日本の基本軸があいまいになる。周辺国の不安を招き、地域の緊張要因になる恐れがある。

 さらに、社説14で述べたように、9条は強大な同盟国・米国からの過大な要請をかわす盾の役割を果たしてきた。それがなくなった時、米国の政策に際限なく振り回される恐れはないか。

 歯止めや盾の役割は、政治が果たす。民主的に選ばれた国会、内閣がそのときどきの民意に基づいて判断していけばいい、という考え方もある。

 理屈はその通りかもしれない。だが、「外圧」という言葉に象徴される戦後の対米関係を考えた時、政治が本当にその役割を果たせるのか、心もとない。

 イラク派遣の時のことを思い出してほしい。小泉前首相が米国の判断を支持し、自衛隊を送ることまで決断した際、理由の一つとして強調したのが日米同盟だった。つまりは、米国の求めはむげにはできぬということだ。

 陸上自衛隊が無事に戻った時、前首相は胸を張った。戦闘に巻き込まれず、犠牲者も出さなかったと。そのことは良かった。だが、それは9条の原則と何とかつじつまを合わせようと、比較的安全な場所を選び、危険の少ない任務に専念した結果でもあった。

 9条に照らして疑問のある派遣だったが、実は9条に救われていたのだ。それがなければ、開戦の当初から米軍と戦闘正面に立ち、多くの犠牲者を出した英国のようになっていたかもしれない。

 日米同盟の安全装置としての9条のメリットは捨てがたい価値がある。

 そもそも、この60年をかけて培ってきた日本の「平和ブランド」を手放す損失は大きすぎる。日本ほどの経済力を持ちながら、軍事に厳しく一線を画す。このユニークさは国際社会にも知られ、重要なソフトパワーになっている。それを生かしてこそ、「国際公益の世話役」として日本への信頼を築くことができる。

(出所:朝日新聞HP)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする